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東証は2010年の「アローヘッド」のサービス開始と同時にコロケーションサービスも開始、日本でもHFTは増えている(撮影:尾形文繁)
善か悪か、「超高速取引」のおそろしい実態
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170321-00163716-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 3/21(火) 20:51配信
先月のコラムで筆者は「今年はポピュリスト政治が負ける」と書いたが、さっそく実現している。
3月11日、オーストラリアの西オーストラリア州で行われた州議会選挙で、野党労働党が勝利し、極右政党ワンネーションは敗北した。同選挙のポイントは、昨年から勢いにのっている、極右・ポピュリスト政治の初の敗北という点であり、象徴的出来事といっていい。ワンネーション党は移民と外国人労働者の受け入れ制限を掲げており、ターンブル首相の自由党とも選挙協力をしていた。
オーストラリアに続いて3月15日のオランダの下院選挙でも、「反イスラム」や「反移民」を掲げた極右ウィルダース氏の自由党(PVV)は敗北した。この一連の出来事は偶然ではなく、フランス大統領選挙へと続くだろう。昨年はポピュリズムが台頭した年であったが、今年は後退する年となりそうだ。
■ 10億分の1秒の男たち
今月紹介する本はマイケル・ルイス著『フラッシュ・ボーイズ』(2014年、文藝春秋刊)である。米国の超高速取引業者についての本だが、素人にはわかりにくい超高速取引の「実態」を非常にわかりやすく解説している。
2010年5月、ダウ平均株価がわずか数分で1000ドル近く下落する事件が起きた。これは当時「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれ、誤発注やシステム障害が原因ではないかと指摘されたが、調査しても本当の原因はわからなかった。
米国には株の取引市場が多数あり、上場株の取引分散化が進んでいる。電子取引の普及で株式の注文は数十カ所に分散されてしまう。電子取引は株式の注文を便利にしたが、同時に市場の仕組みを非常に複雑にした。この複雑性を自己売買に有利に利用している人たちがいる。超高速取引(ハイ・フリークエンシー・トレーディング=HFT)と呼ばれる、事前に決められているアルゴリズムを使って高速で大量の取引を行う業者のことである。
超高速取引(HFT)は市場の出来高を増やし、売りと買いのスプレッド(開き)を縮めるので一般投資家にとってはよいことであると言われてきた。しかし、この本では大きな問題を指摘している。それはHFT業者による「フロントランニング」である。
フロントランニングはある投資家の注文を実行される前に知って、先回りして売買を行うことであり、禁止されている。たとえば、大型の買い注文が来るのを知って、先に株価を吊り上げて高い値段で売りつける行為はフロントランニングの一例である。HFT業者はコロケーションと呼ばれるサービスのおかげで、多数の取引所に分散される注文の中身を誰よりも早く把握することができるのだ。
コロケーション(Co-Location)とはHFT業者のサーバーを取引所のデータセンターの隣に設置できるサービスのことで、サービスを提供しているのは取引所自身であり、当然有料である。取引所が多数あるアメリカでは注文は分散して出されると書いたが、この仕組みを利用すれば、ある取引所に来た注文を誰よりも先に知ったHFT業者は、その注文が他の取引所に届く前に先回りして売買を行えるのだ。これはマイクロセカンド(1秒の100万分の1)レベルの早業であり、HFT業者が使用している光回線とシステムが優れているからできるのである。
ネットスピードを少しでも速くするために都市の一般回線を使わず、プライベート回線を、それも直線で引いている業者も多数存在するという。本書の冒頭でもシカゴとニューヨークの取引所を直線でつなぐプライベート光ケーブルの建設の話が紹介されている。HFT業者のせいで取引コストが上昇し、機関投資家や個人投資家は毎年数千億円以上の金額をHFT業者に支払うという恐ろしいことが起きてしまっているという。
この問題にいち早く気付いたのは、カナダロイヤル銀行(RBC)の元従業員ブラッド・カツヤマ氏だった。RBCの株式売買部門のヘッドだったカツヤマ氏は、HFT業者のアドバンテージをなくすために電子注文をわざと遅らせるシステムを開発した。HFT業者の注文を遅らせることによってすべての市場参加者の注文が同時に市場に届くようにしたのである。後に彼と仲間たちはRBCを離れ、このシステムをベースにしたIEXと呼ばれる新しい取引所を立ち上げた。
本書が大きな反響を呼んだために、直近ではニューヨーク証券取引所も「スピード・バンプ」と呼ばれる注文を遅らせるシステムを導入した。HFT業者の活躍は米国に限ったことではない。日本では東京証券取引所が2010年に「アローヘッド」と呼ばれる高速取引システムを稼働、同時にプライマリサイト内で前述のコロケーションサービスの提供を開始した。
日本市場でも近年HFT取引が増えているが、50以上の取引所がある米国と違って、日本の株式取引はほとんどが東証に集中している。そのため米国で起きているフロントランニングを日本で実行するのは難しいが、日本の取引所も常に一般投資家を保護すべく対策を考える必要がある。
エミン・ユルマズ/トルコ・イスタンブール出身。1996年高校3年生の時に国際生物学オリンピックで世界チャンピオンとなり、97年国費留学で来日。1年後に東京大学理科一類に合格、その後同大学院で理学修士を取得。2006年野村証券入社、投資銀行部門、機関投資家営業部門に携わり、16年から複眼経済観測所取締役。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
エミン・ユルマズ
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