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地域BWA高度化方式に対応した華碩電脳製のスマートフォン
日本各地で進む地域密着型の高速通信 その目的と展望は
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170319-00133687-hbolz-sci
HARBOR BUSINESS Online 3/19(日) 9:10配信
日本各地で地域広帯域移動無線アクセス(以下、地域BWA)制度を利用した新方式=地域BWA高度化方式の導入事例が増えている。今回は地域BWA制度の動向を紹介する。
地域BWA高度化方式とはいったい何なのか? その前に、地域BWA制度から説明しよう。
地域BWA制度とは、無線通信サービスを公共サービス向上や情報格差是正を目的とした地域密着型の無線通信サービスのことだ。周波数は2.5GHz帯の20MHz幅が割り当てられ、提供区域は1市町村の全部または一部、1都道府県の一部のように地域限定となる。免許取得の要件には自治体との連携が追加されているのが特徴だ。
総務省は2014年10月に地域BWA制度を改正し、地域BWAで高度化方式の導入が可能となった。従来は通信方式としてモバイルWiMAXを採用したが、高度化方式ではAXGPまたはWiMAX R2.1AEの導入が認められる。モバイルWiMAXから地域BWA高度化方式への転用、地域BWA高度化方式から新規参入など、日本各地で地域BWA高度化方式の導入事例が増加している。
地域BWA高度化方式の無線局免許は2017年3月までに日本全国で15社以上の地域事業者が取得した。数ある地域事業者のうちAXGPを導入した阪神ケーブルエンジニアリング(HCE)は展示会などで地域BWA高度化方式の展示を積極的に出展しており、ケーブルテレビテクノフェア in Kansai 2017では阪急阪神ホールディングスの一員として阪神電気鉄道と共同出展して地域BWA高度化方式を紹介していた。
◆大幅な高速化を可能にする地域BWA高度化方式
地域BWA高度化方式は従来方式より利点が多い。AXGPやWiMAX R2.1AEは国際的に広く採用されるTD-LTEと高い互換性を有する。HCEは世界標準のTD-LTEと表現しており、TD-LTEと同じと考えて差し支えない。周波数の合致など諸条件はあるが、TD-LTEに対応した端末を利用可能で端末調達が容易となる。
また、地域BWAの周波数は上側と下側ともに全国BWAの周波数と隣接する。上側はKDDI傘下のUQコミュニケーションズがWiMAX R2.1AE、下側はソフトバンクグループ傘下のWireless City PlanningがAXGPを運用し、いずれも地域BWA高度化方式と共通の通信方式である。モバイルWiMAXは全国BWAの周波数との間に干渉防止のためガードバンドが必要だが、地域BWA高度化方式は全国事業者と調整して同期を確保すればガードバンドを省けるため、地域BWAの周波数をフルに使えるのだ。
そして、大幅な高速化も実現できる。通信速度はモバイルWiMAXが下り最大15.4Mbpsとなるが、地域BWA高度化方式は基地局と端末側で4本ずつのアンテナを利用して通信する4×4 MIMOを適用すれば下り最大220Mbpsに達する。
◆存在感を示すHCE
地域BWA高度化方式の導入に際し、コア設備を持てば柔軟な回線設定や自社でSIMカード発行も可能となるが、財務面や技術面で障壁が高い。全国事業者のコア設備に回線接続する地域事業者も存在する中で、HCEは地域BWA高度化方式を導入した地域事業者としては唯一、自社でコア設備を保有する。
コア設備を保有すれば自社で閉域網の構築や優先度(QoS)の制御など回線設定の自由度が高まる。例えば、閉域網の構築で高セキュリティを実現するほか、災害時は災害用通信の優先度を高くするなど、状況に応じて柔軟に対応できる。これは地域BWA制度の本懐を遂げるうえで大きな利点と言える。
HCEはほかの地域事業者に対して自社のコア設備の利用も受け入れており、日本各地の地域事業者はコア設備を持たなくとも、基地局を設置してHCEのコア設備を利用すれば地域BWA高度化方式を導入できる。地域BWA高度化方式の導入を容易にして普及を促進するほか、地域事業者間で知見の共有など連携を深めることで、連携する地域事業者全体で規模拡大が期待できる。
HCEは地域事業者として柔軟かつ最適な対応を取れるため、コア設備の提供で全国事業者より優位に立てるアピールした。このようにHCEは先導的な役割を担い、存在感を示している。
HCEのコア設備を利用する地域事業者は2017年2月時点でベイ・コミュニケーションズ(ベイコム)、姫路ケーブルテレビ、秋田ケーブルテレビ、アドバンスコープ、ZTV、愛媛CATVで、いずれもAXGPを採用し、このうちベイコムと姫路ケーブルテレビは阪急阪神ホールディングスの一員である。
◆さまざまな導入事例
HCEは展示会で阪急阪神ホールディングス傘下の地域事業者をまとめて導入事例を展示し、気象観測カメラ、安全・安心見守りネットワーク、インターネットサービスが紹介された。
気象観測カメラは屋外に設置されたカメラで河川を撮影し、地域BWA高度化方式の通信回線を通じてインターネット上で河川の状況を配信しており、誰でもインターネットを通じて確認できる。
安全・安心見守りネットワークは伊丹市で実施しており、2017年1月末時点で900台の安全安心見守りカメラを設置し、通信回線に地域BWA高度化方式を用いる。
インターネットサービスは地域住民向け無線通信サービスで、通信速度は下り最大110Mbpsである。速度制限なし、容量制限なし、配線工事なしを特徴とし、端末は可搬型または据置型の無線LANルータを貸与扱いで提供する。2017年2月時点で加入件数はHCEが400件弱、ベイコムが約4,000件である。また、ZTVは数十件程度という。展示会では無線LANルータのほかに、地域BWA高度化方式に対応したスマートフォンやタブレットも展示されており、阪急阪神ホールディングス傘下の地域事業者はスマートフォンやタブレットを提供していないが、電波測定など社内業務では活用していると明かした。
地域BWA制度の目的から、やはり公共サービス関連で活用を拡大させる方針という。教育機関、病院、地域振興での活用を提案しており、教育機関では教職員の通信手段や防犯カメラなど、病院では医療従事者の通信手段、医療機器の管理、徘徊監視、患者向けインターネットサービスなどの回線として活用する案がある。また、地域BWA高度化方式をバックボーンとする無線LANスポットを展開し、観光客向けに無料で開放するなど、地域振興に活用する考えもある。
地域BWA高度化方式を活用したサービスの本格展開はこれからだ。今後、身近なところで気づかぬうちに地域BWA高度化方式を用いたサービスを利用していた、ということもあるかもしれない。
<取材・文・撮影/田村和輝>
ハーバー・ビジネス・オンライン
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