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オタクの悲鳴だけではすまない、東京ビッグサイトが使えない深刻度 「2020年オリンピック展示会場問題」を考える
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9105
2017年3月17日 多賀一晃 (生活家電.com主宰) WEDGE Infinity
世界一のメガロポリス東京。東京都が、経済活性化のためにと、五輪招致を発案。国を挙げて招致したまではいいのだが、その後は、めちゃくちゃだ。メイン会場となる国立競技場の建て替えなどは最たるもの。正直、個人的にはザハ案が優れて良いとは思わないが、あの収束の仕方はうなずけない。続いてエンブレム問題、競技施設の見直し。そこまできても、まだ「後は実務だけ」にはなっていない。今回取り上げる「展示会場問題」もあるし、多分今後「食料認定の問題」も叫ばれると思う。
今回は、メディアと深い関係のある「展示会場問題」をレポートする。
■展示会場問題とは何か?
東京ビッグサイト
展示会場問題というのは、2015年11月東京都から、『「東京都の持ち物であるビッグサイトを改造、2019年4月〜2020年11月までの20カ月、一部ないし全部をオリンピックのメディアセンター(総合報道センター)として使うため、展示会場としては使えない」と宣告されたことにより、発生する種々の問題』の総称だ。
これは狭い日本としては、かなりゆゆしき問題だ。当初、この期間、開催できなくなる展示会に関しては、東京都は「ビックサイトから1.5kmの所にある東京テレポート前の敷地に仮展示会場を作るので、規模を小さくして開催してほしい」という旨を発言。しかし、その後、「この仮設会場も、オリンピック時はバスターミナルにするため、2020年3月以降使えなくなる」ことが判明。2020年4月〜11月、東京都のお台場で大規模な展示会ができなくなることが明らかになった。
■日本の展示会場問題
展示会の大きな目的の一つは、展示品でのビジネス、商談だ。このため展示場と会議場が併設されるのが通常のスタイルとなる。世界最大の家電ショーIFAが行われるドイツのベルリンにあるメッセ・ベルリンがそうだし、国内でも千葉の幕張メッセ、東京のビッグサイト、博多のマリンメッセ福岡コンベンションセンターなど多くの施設が、そのような配置だ。これは展示で刺激を受けながら、いろいろなことを取り決め、ビジネスに結びつけるためだ。
世界の主要都市には、ビジネスのために、こうした展示会場があるのが普通だ。しかし、日本の場合はちょっと事情が異なる。それは首都東京にあまりにもビジネスが集中し過ぎて、展示会場とビジネスのつながりが足らないのだ。
いわゆる東京エリアには、大きな展示会場が2つある。「東京ビッグサイト」と「幕張メッセ」だ。施設面積は、9万3000m2と7万2000m2。ちなみに「メッセ・ベルリン」が、16万m2。この2つを合わせた面積を有する。東京エリアで1万m2以上ある展示会場は、この他にパシフィコ横浜(2万m2)があるだけ、この下は有楽町の国際フォーラムなので、ぐっと小規模化する。単純に言うと、東京のビジネス規模に対し展示会場は慢性的に不足しているのが現実なのだ。ちなみにビッグサイトは、2016年に拡張工事をしている。
メッセ・ベルリン
東京は確かに凄い街ではあるのだが、ビジネス的な仕掛けはプア。展示会場不足もその一つだ。このため、ビジネスの仕掛けとして重要なメジャーな展示会を、ほとんど海外、特に中国に奪われつつあるのが現状だ。一番影響を受けやすいのはベンチャー企業。技術系が多い日本のベンチャー企業の泣きどころの一つは営業。持っている技術、製品のアピールが不十分だったりすると正統な利益を得られない場合が多々ある。そんな多くのベンチャー企業の頼りが展示会だ。
展示会が半年以上中止となると、死活問題となる場合も多い。つまり展示会場がないということは、実ビジネス及びビジネスポテンシャルが切られていくことを意味するのだ。
■ビジネスと無縁のようなオタクにも大きな影響がある
ビッグサイト名物に「コミケ(コミックマーケット)」がある。20万人近い来場者が整然と並び、同人誌を買い求める姿は海外でも賞賛の嵐だが、これは自主イベント。学校で授業もない「マンガ」「アニメ」で、優れた日本人クリエイターが育っている一つの理由がこのコミケだ。引きこもりがちなマンガを描くという趣味。それをオープン化したコミケ。作り手と読み手の交流会でもある。
ここで評判を取ろうと思ったら、なまじの画力では駄目。またコミケで評判となるためには、コミケも含めてガンガン描かなければならない。描いて読んでもらうという、本当のビジネスにも似たことを多数の人が行う。日本のマンガ、アニメのクリエイター層が、ぶ厚い理由でもあるのだ。
官がこれらを「クール・ジャパン」として世界発信するのは構わないが、自主的に育った文化だから、大きな顔をしてもらっては困ると言いたい(昔、PTAなどでマンガはよく悪書扱いされたものだ)。
今回、ビッグサイトが使えないと、コミケは都合3回開けなくなる。これは自主の精神で運営しているコミケからいうと「バカにするな!」「冗談じゃない!」ということになる。ちなみに、コミケは、ビッグサイトを隅から隅までフルに使う催し物だ。ビッグサイトと同等以上の会場を用意してもらえないと、吸収することはできない。「マンガ」「アニメ」を「クール・ジャパン」として使うなら、新産業を護るという意味でも、東京都は会場を提供することくらいはすべきだと思う。
■重要なメディアセンター
さて質問。「今のオリンピックで最も大きい建物は何でしょうか?」そう、メインスタジアム。東京オリンピックでは、新国立競技場がそれに当たる。「次に大きいのは?」 こんな問いをするくらいなので、お分かりと思う。メディアセンターだ。
今のメディアセンターは、IBC/PMCに分かれ運営される。IBCはInternational Broadcasting Centerの略。地上波、衛星放送、ワンセグ、CATV、ネット等々、あらゆる放送へ24時間、情報を流す。記者会見、動画編集もここで行われるので、動画の全拠点と思って頂いてもいい。責任はOBS(Olympic Broadcasting Services)。メインコンテンツはお金と同じなので、中央管理される。PMCはPress Media Centerの略。スチールを中心に、新聞、雑誌、など。こちらは開催地の五輪組織員会が責任を持つ。あと、プレスの居住空間が必要だ。住むわけではないが、モノを食べないでいることはできないし、休憩スペースも必要。これら3つを総合し、プレスセンターは成り立っている。
もっとも成功したといわれるロンドンオリンピックの時、メディアは2万人。メディアセンターの面積は、ざっと10万m2。なぜここまで大きいかというと、 IBCは共同会見他のスタジオなどが必要だからだ。機材も多岐に渡る。放送局を作るのと大差ないかもしれない。オリンピックがスポーツ世界の最高峰を名のるのであれば、その優れた技、スポーツがもたらす感動は、世界のどこからでも見られることが必要。それは次世代のプレーヤーを育てるために不可欠だからだ。メディアセンターは、オリンピックで重要な意味を持つ。
■なぜ、新規ではなく、改造で対応しようとするのか?
これは私の憶測だが、国内での前例があるためだと思われる。1964年の東京五輪の時、メディアセンターの役割を果たしたのはNHKだそうだ。代々木の国立競技場と渋谷のNHKは、目と鼻の先ほどとは言えないが、かなり近いことは事実。また当時は、現在までの参加国はないし、アナログTVがメイン。ちなみにテレビのほとんどは白黒の時代。さて時代は移り近しいビッグイベントは2002年のサッカーのワールドカップ。これは横浜パシフィコを改造してのり切ったそうだ。2002年はテレビ放送はデジタル化されてないし、まだネットで動画を見るにはちょっと早い時代。当然、参加メディアも現在ほど多くはない。だからこそ乗り切れたのではないかと思う。
が、ここで一種の実績ができたわけだ。日本のお役所行政は慣例を重要視する。これに、今回の地理的条件、そしてロンドンのメディアセンターのサイズを合わせた時、ビッグサイトが適当とされたことは想像に難くない。また巨大化するオリンピックに対し、スリム化が叫ばれる昨今、あるモノは使って、安くあげろと言うわけだ。ちなみにロンドンのメディアセンターは、当時新しく作ったもので、評判は上々だったが、これは再開発がらみである。規模の縮小が叫ばれながらも、巨額な経費が掛かるとして、中規模都市がオリンピックの開催からどんどん脱落しているのも事実だ。さらに、今回のビッグサイトの改造が、今のメディアのニーズを盛り込んで考えられているかは、不明だ。
■数値で見る損出
この状況を鑑み、日本展示会協会が試算した損失が数値で出ている。2020年の7カ月に限っての試算だそうだが、
1.3万8000社が展示会で得ているビジネス、約1兆2000億円の売り上げ消滅
2.同時に、3万8000社近くの中小企業が倒産などの経営難に陥る
3.約8000社の海外企業の参加なし、約7万人の海外バイヤーがこない
4.海外企業との取引が減少し、訪日ビジネスマンの減少を招く。
5.展示会場支援企業(約1000社)の、約1337億円が消滅。
このうちの4)は、直接響くので、単にビッグサイトを使えなくする場合、漁業権保障のような問題が持ち上がると考えられる。1337億円というと、新国立競技場の当初予算とほぼ同額だ。これ以外にも、先ほど上げたコミケなど数値化されない影響も多数ある。あるべき場がなくなると大きな影響がでることとなる。
■代替え案は?
ロンドンオリンピックが上手く行ったと評されるのは、エリア再開発とオリンピックによる景気向上とを実に上手くマッチングさせ、一粒で二度美味しい状態を作ったからだ。日本の場合は、オリンピックにすっぽりはまる再開発はない。せいぜい、新国立競技場の建て替えとマッチさせたくらいのもの。メイン会場以外は国際基準に達している施設を使うわけだ。スポーツ施設は、まだ、都内各所にあり利用が可能。しかし、放送局をまるまる一つ作ることに等しいメディアセンターを、その後使うことはまずないと思われる。このためメディアセンターを、その後、どうするのかを考えるべきだ。
ベストは、東京都がメディアセンターを新たに作り、終了後は展示会場に改造して、運営する。これだと展示会場不足という問題に対してもアプローチできるので、一粒で二度美味しい。
次の案は、同じ位の規模で、使われていない建屋を探して使うこと。「そんなのないだろう!」って。あるにはある。豊洲の新市場がそれだ。
豊洲新市場
何やら、現在ものすごいことになっており、「豊洲じゃだめ、新市場は作り直し!」と言われかねない状況にある。ただ建屋はあり、電源は確保済、駐車スペースあり。しかも冷暖房完備。メディアセンターに必要な要件は満たしているのだ。こうなると「使わないなら、貸しください」と思ってしまう。
これ以外には、東京都が持っている土地を提供してもらい、上物は東京都以外が建てる方法がある。利益が出た後で、取り壊し土地返却が基本ですが、東京都から土地を買い、運営を続けるのもあり。
奇策としてはお台場に社屋を持つフジテレビにメディアセンターを事業として受けてもらうというのはどうだろうか。スペース拡張が困難なエリアだが、近しいところの土地をそれなりの価格で提供すれば、可能性はあるかもしれない。
■時間がない!
さて、いずれの場合も膨大なお金が行き来することになる。このため「ゴメン。時間切れ。後は適当に」とされる可能性もあると、邪推しておく。これは始まりが一方的な通告だったためだ。ビッグサイト改造案で、オリンピック委員会の方には申告済のはずなので、手間がかかる修正を嫌がる人は多いと思う。(それでなくても一連の騒動で、日本のメンツはない状態)。しかし、そのまま実行されると多くの国民が困る、というより景気刺激の目的を持つビッグイベントのために、今あるビジネスで大損失、なんてことはあってはいけないはずだ。
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