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ついに現実味を帯びてきた、タカタが中国資本に吸収される日 責任を擦り付け合っている間に…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51205
2017.03.14 井上 久男 ジャーナリスト 現代ビジネス
■再建スキームに三代目が難色?
「売り家と唐様で書く三代目」という諺がある。その意味は、初代が苦労して創業し、二代目は初代と一緒にあるいは後ろ姿を見ながら事業を大きく飛躍させるものの、苦労知らずの三代目は、事業は疎かにして習い事ばかりしていたので、商売が傾いて家を売る時には立派な文字で「売り家」と書くことができる、という皮肉である。
この諺がぴったりと当てはまる企業がある。勘の鋭い読者はすぐに思いつくだろうが、欠陥エアバッグが暴発して死傷者を出した自動車部品大手のタカタだ。同社はシートベルトなどの安全関連の部品も製造しているが、主力はエアバッグだ。
タカタの原点は1933年に高田武三氏が織物工場を創業したことにある。56年には法人化され、息子で二代目の重一郎氏が社長を継いだのが74年。この頃にエアバッグに参入、ホンダと二人三脚で開発に挑戦して、87年にはホンダ「レジェンド」に国内初のエアバッグが搭載された。現会長兼社長の重久氏は、創業者の孫で2007年に社長に就いた。
この「三代目」重久氏の評判が、社内外ですこぶる悪く、「彼の志と能力の低さがタカタ問題を大きくさせ、彼が経営陣に留まっていることで経営再建のスピードも極端に落ちている」(金融筋)と指摘する声は多い。
タカタ問題について簡単に振り返ろう。衝突を感知してエアバッグを膨らませる「インフレーター」と呼ぶタカタ製の主要部品で、同社はガスを発生させる材料に硝酸アンモニウムを用いたが、これが高温多湿化下では経年劣化を起こすことと、設計不備が重なって暴発が起こり、米国では11人が死亡した。
これが米国で厳しく批判され、米司法当局は17年1月、捏造データを自動車メーカーに渡したなどとして、タカタの元幹部3人を起訴した。これを受けてタカタは刑事責任を認め、2500万ドルの罰金を支払い、被害者への補償のために1億2500万ドルの基金を設立することなどを決めた。
さらに、自動車メーカーが1兆円以上のリコール費用を肩代わりしているとされ、このうち何割かをタカタが自動車メーカーに支払うことになると見られている。タカタの財務状況では負担に耐え切れないため、100%減資して法的整理によって一旦は倒産させ、スポンサー企業から出資を受けて再建に乗り出す局面にある。
しかし、金融筋によると、このスキームに重久氏が反対して、梃子でも動かない状態にあるという。重久氏が反対する理由は、減資によって自分の財産が紙切れ同然になることに反発しているのだそうだ。
タカタは、重久氏が個人では筆頭株主で、高田家関連の会社を含めると出資比率の過半数を創業家が抑えている。上場した際に高田家には多額のキャピタルゲインが入っているので、個人的にお金には困っていないが、重久氏は減資に猛反対しているという。
タカタ内部に詳しい複数の関係者からは「重久氏は感情的になっている」との声も漏れ伝わる。その要因の一つは、母親の暁子氏の存在だ。暁子氏はタカタ財団理事長を務め、隠然たる力を持つ。
「特に重久氏には厳しく、お父さんを見習って事業を大きくしなさいと叱咤激励し続けてきたので、重久氏は父や母に対してコンプレックスがあるうえ、自分の代で会社を潰してはならないとの思いが強いので、なかなか法的整理に踏み込めない」と、その関係者は見ている。
また、別の関係者は「重久氏は、暴発するエアバッグの問題はタカタだけの責任ではなく、採用した自動車メーカー側にも責任があるとの思いが強い」と言う。
■決心はまだか
金融筋や内部関係者の話を聞く限り、重久氏自身が、大株主と経営者の二つの立場で利益相反を起こしているように見える。株主であれば、誰もが自分の持ち株の価値がゼロになることはいやだろう。しかし、経営者として今は素早く決断するべき局面にある。要は、重久氏は甘えているのだ。とても齢51の経営者の行動とも思えない。
後述するが、タカタの場合、開発力やコスト管理力などメーカーとして根底となる競争力が完全に劣化したわけではなく、優秀な社員や技術もまだ残っている。重久氏以下、経営陣のリスクコントロールが甘く、エアバッグ問題の処理を誤ったため、被害を拡大させた面もある。
倒産寸前の駄目な会社の中にいては、人材も技術も腐ってしまう。再生は早い方がいい。すでに複数の外資が経営再建のスポンサーに名乗りを上げており、重久氏が決心して責任を取れば済む話ではないか。
海外では創業家が経営に影響を持つ会社を「ファミリービジネス」と呼ぶ。肯定的に捉えられているケースが多い。なぜならば、創業の精神を引き継ぎ、組織の求心力の役割を果たしているからだ。
一方で日本では創業家が支配する会社を「同族企業」と呼び、どちらかといえば否定的なイメージだ。経営能力に関係なく、創業者の子孫というだけで会社を私物化している印象を与えているからだろう。今のタカタは、重久氏が会社を私物化して再生を妨げているようにも映ってしまう。
最後に、「創業家論」から少し離れて、多角的な視点からタカタ問題を論じたい。そうでないと、この問題の本質は見えてこない。
タカタの法的整理問題は現在最終局面を迎えており、スポンサー企業として米国ミシガン州に本社を置く自動車部品メーカーの「キー・セイフティー・システムズ(KSS)」社の提案が優位に立っているという。同社も創業100年の歴史がある名門だが、昨年、中国の電子部品メーカーに完全買収された。
タカタは結局、中国資本に買収される流れが強まっている、ということになる。タカタにはセンサーなどの技術もある。こうした分野の情報が中国に流れ、自動運転などの将来有望な技術に転用されかねないし、少なくとも既存の中国車の性能向上には寄与するだろう。中国の有力自動車メーカー、たとえば長城汽車などはすでに輸出戦略を強化している。
いずれ日本車のライバルになる可能性もある。うがった見方かもしれないが、実は仲が悪く見えて仲良しの米国と中国の共同で、日本企業の弱点に付け込んだ買収劇を仕掛けたのではないかというようにも映ってしまう。
■アメリカの政争の餌食となったのか
昨年12月にも筆者は本コラムで指摘したが、このタカタ問題には不思議な点が2つある。まずは、すでにホンダは9年も前の2008年にタカタ製エアバッグをリコールしている点だ。初の死亡事故が発生したのも09年だ。その頃に問題は大きくならず、2014年米国議会で取りざたされるようになった結果、米運輸当局のタカタに対する態度は一転して厳しい対応に変化した。
暴発事故で亡くなった方がいることを重くみないといけないが、タカタ製インフレーターの高い普及率から見て、今回の事故は「隕石に当たるような確率ではないか」と指摘する専門家もいる。
ただ、自動車開発の世界では、その隕石に当たるような確率も起こらないようして臨むのが正しい姿勢だという。
日本の自動車業界の中には「大統領選を見据えて共和党が民主党のオバマ政権叩きにタカタ問題を使い始めた。タカタはアメリカの政争の生贄になった」と見る向きもある。タカタ叩きのロビー活動の背後には米フォードが控えているとの情報もある。
タカタの支援先企業としてはこれまで、米投資ファンドのベインキャピタルやKKRなどが候補に上がってきた。そして現在は前述したようにKKS社が最有力である。米国の政治と産業が結託して日本企業を叩き、弱ったところをかっさらっていく構図にも見えてしまう。もちろん、株式市場や米国の社会に対して、真摯に説明責任を果たそうとしなかったために、被害が拡大したというタカタの経営責任もある。
次にタカタ製エアバッグを採用した日本の自動車メーカーの腰が引けている点だ。自動車メーカーには部品を採用する選択権がある。国内では、不具合があった場合、その要因を綿密に詰めて自動車メーカーと部品メーカーの責任の比率を決めるのが一般的だ。しかし、今回はすべての責任をタカタに押し付けている面がある。
当初、自動車メーカーはタカタの創業家が求めた私的整理に同調しようとしたが、そのスキームでは債権放棄に応じなければならず、自動車メーカー側に株主代表訴訟のリスクが発生するために、その案を呑まなかった模様だ。
一見もっともな判断にも見えるが、これまでホンダを筆頭に自動車メーカーとタカタは二人三脚でエアバッグなどの開発に取り組んできて、日本メーカー同士、良い意味で阿吽の呼吸で取り組めた分もある。しかし、外資の傘下に落ちればそうしたことはできなくなる。これは自動車メーカーにとっては長い目で見ると、デメリットではないか。また、重久氏の態度に自動車メーカーが怒って感情的なやり取りになっていたという情報もある。
結局はタカタと自動車メーカーが意地をはり合い、責任をなすりつけ合っている間に、美味しい基幹技術を中国資本にさらわれることになるだろう。これは日本の国益にとってプラスではないし、日本の自動車産業の将来に禍根を残しかねない。
このタカタ問題、@創業家によるコーポレートガバナンスの是非Aコミュニケーション戦略のミスB自動車メーカーと部品メーカーの責任分担の在り方B政治も絡む熾烈な国際競争の舞台裏、といった4つの側面から見ていく必要がある。そうしない限り、問題の本質は見えてこない。
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