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デフレ脱却へ敗色濃厚な異次元の金融緩和策に代わるのは「異次元の財政政策」なのだろうか。
安倍晋三首相と近い浜田宏一内閣官房参与(米エール大名誉教授)が「目からウロコが落ちた」とはやすのは米国発の経済理論。積極財政でインフレを起こせばデフレ脱却にも財政再建にも役立つという。放漫気味な日本の財政運営を応援するような内容だ。
だが日銀緩和だけではなく、新たな案も財政破綻を招きかねない劇薬である。冒険的な政策はそろそろやめにして、次世代のため財政改革や成長戦略を地道に実行するときではないか。
ノーベル賞経済学者、クリストファー・シムズ米プリンストン大教授の来日で話題の「物価水準の財政理論」は超低金利下で金融政策が効かないとき、物価を決めるのは財政政策だとして減税や歳出拡大を説く。
ケインズ政策に似ているが、この考え方のミソは将来の増税や歳出削減を封印して消費や投資を促す点。それによりインフレになれば国の借金が目減りし財政再建が楽になる、と。
シムズ氏は「インフレ率が2%に達しないなら(2019年10月予定の)消費増税の延期もあり得る選択」と日本に呼びかけた。
今の内閣で10%への消費増税を2回延期しても物価は上がらなかった。理論通り物価が上がるか疑う向きもある。だがこの理論は政治家に、インフレになるまで増税延期や歳出拡大を続ける口実を与える。
歳出拡大などが続けばいつか物価は上がる。シムズ氏は2%インフレになれば「財政金融政策で引き締める」という。しかし金融引き締めは金利高を招き財政や経済に打撃となるので、日銀のさじ加減は難しい。
かといって増税や歳出削減に政治家が進んで取り組むとは思えない。2%を超えて高率のインフレとなる恐れがある政策だ。
それでも安倍政権にとっては心強い味方。1月の経済財政諮問会議で世耕弘成経産相はシムズ説に触れながら「財政が緊縮になりすぎてデフレ圧力とならないように」と技術革新への投資拡大などを主張した。
すでに政府は日銀緩和の限界から財政活用に軸足を移している。今年度の第3次補正予算では7年ぶりに1.7兆円の赤字国債を追加発行する。財政規律の緩みとの批判もあるが、シムズ理論はその盾となる。消費増税の延期を決める場合も、お墨付きを与えよう。 また首相が公約した財政健全化目標(20年度に基礎的財政収支が均衡)の達成は難しい。増税や歳出削減の封印を勧めるこの理論は渡りに船かもしれない。
安倍政権は「異次元の財政政策」に向かうのか。カギは日銀の対応にある。
2%インフレになり、日銀が引き締めのため金融機関から預かる当座預金の金利を上げれば、資産として持つ国債の金利を上回り損失を被る。2%の金利上昇なら日銀損失は数十兆円に上る。積極財政により金利が想定以上に上がれば損失はさらに膨らみ、日銀の信認はがた落ちとなる。
日銀が嫌う展開だが、これまでの黒田東彦総裁らの対応を見ると政府に寄り添う公算は大。
では政府がシムズ論に傾くとき経済は最悪、どんな道筋をたどるのだろう。
▼第1幕 政府が財政健全化目標や増税の延期を表明。インフレにはならず。
▼第2幕 そこで政治主導の積極財政が続く。日銀の異次元緩和も継続。
▼第3幕 「団塊の世代」全員が75歳以上となる25年が近づいて医療費急増による財政悪化が懸念され、物価が上がり始める。
▼第4幕 貯蓄の外貨への転換による円安などで物価が一段と上昇。だが日銀は金利上昇を嫌い厳しい引き締めをためらう。政治家は緊縮財政に動かない。
▼第5幕 人々の不安心理も重なりインフレが年10%超に加速。海外への資本逃避のほか政府と円の信用失墜、金融システム不安など経済は大混乱に陥る。
異次元緩和もシムズ説もインフレをテコに成長と税収増を促し財政再建を狙うという横着さがある。増税などに比べ政治的に容易でも、成否は読めず、失敗したときの代償は大きい。
運良く2%のインフレを維持できたとしても国内総生産(GDP)の2倍に上る政府債務はあまり軽くならない。またインフレは預金を目減りさせるので実質的には増税と同じだ。
「2%インフレといっても品目ごとに上昇率が違うので消費者によって不公平が生じる。一律2%の消費増税なら公平」(吉川洋・立正大教授)との指摘も。
やはり財政改革と成長促進策を着実に進め、社会保障などが持続する社会に改革したい。成長促進では、完全雇用に近い今、需要追加より生産性向上など供給力強化のほうが大切だ。
とはいえ財政の将来は甘くない。内閣府の経済財政試算のうち実質成長率が1%前後、消費者物価上昇率1%強など常識的な前提に基づく予想をみてみよう。基礎的財政収支は均衡せず21年度から悪化の一途をたどる。恐ろしい未来図だ。
のんびりはできない。それだけに政治家はまず財政の実態を正直に語るべきだ。首相が、できもしない財政健全化目標を「堅持する」と言う限り、人々に危機感が伝わらない。
インフレにかけるより、日本人の理解力と良識を信じ、それにかけてほしい。
2月27日 朝刊より
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