http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/848.html
Tweet |
スシロー再上場で激化する回転寿司チェーンの「仁義なき戦い」 かっぱ寿司は赤字転落…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51160
2017.03.09 加谷 珪一 現代ビジネス
回転寿司最大手の「あきんどスシロー」が東京証券取引所に再上場する。
回転寿司の市場規模はここ10年で1.5倍に拡大しており、日本では数少ない成長市場であり、スシローが上場すれば時価総額は1000億円を超えるともいわれている。
だが、一方で同業のかっぱ寿司が直近の決算で赤字に転落するなど競争環境は厳しい。スシローの再上場によって、各社のサービス競争がさらに激化すると予想されている。
■例外的な成長市場
東京証券取引所は2月22日、「あきんどスシロー」を運営するスシローグローバルホールディングスの上場を承認した。
同社は経営権をめぐる争いから2009年に上場を廃止、ファンドの傘下で資本関係の整理を進めてきた。上場予定日は3月30日で、株式市場への復帰は8年ぶりとなる。
投資ファンドは今回の上場によって資金を回収できるので、同社は今後、ファンドの意向に縛られず、積極的に事業を展開することが可能となる。
農協の事業組織である全国農業協同組合連合会(JA連合)がスシローへの出資を決めるなど、周辺の動きも慌ただしい。業界関係者は、今回の上場が回転寿司業界特有の激しい企業間競争を復活させるのではないかと見ている。
寿司全体の市場は他の外食産業と同様、人口減少や消費低迷の影響で緩やかに縮小している。だが、回転寿司は例外的に成長が続いており、市場規模は約6000億円と、ここ10年で1.5倍に伸びた。
回転寿司の業界は競争が激しいことでも知られているが、この競争環境こそが市場を拡大させてきた原動力ともいえる。
今のところ、スシローが首位をキープしており、牛丼チェーンのゼンショーが展開する「はま寿司」、くらコーポレーションの「くら寿司」、コロワイドグループの「かっぱ寿司」、元気寿司などが続く。
スシローは、寿司ネタはもちろん、それ以外のメニューでも味にこだわっており、回転寿司とはいえ、美味しさを求めて来店する客も多い。店舗面積が大きいこともあるが、1店舗あたりの売上高は何と3億円を超える。これは外食産業としては驚異的な数字である。
くら寿司は、4大添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)無添加をうたっており、スシローと同様、品質や味がウリとなっている。
一方、はま寿司は「平日1皿90円」のキャンペーンを前面に押し出していたこともあり、安さが魅力である。
最近では他社に押されて存在感が今ひとつとなっているが、かっぱ寿司も最大の魅力はやはり値段だろう。
■牛丼チェーンも殴り込み
回転寿司市場をおおざっぱに分類すれば、味や品質をウリにして客単価を高めに設定するスシロー、くら寿司に対して、安さやエンターテインメント性で勝負するはま寿司、かっぱ寿司、元気寿司という図式になる。
だが、以前の回転寿司市場は、現在とはだいぶ異なっていた。かっぱ寿司が高いシェアを持ち、業界のリーダーだった時代が長く続いた。ここに外部から殴り込みをかけてきたのが牛丼チェーンのゼンショーである。
回転寿司の潜在力に着目したゼンショーは回転寿司市場への参入を試み、2007年にかっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトに資本参加した。しかし、資本提携からわずか半年で両者の関係は崩れ、1年後には提携関係を解消してしまう。
ゼンショーは同じタイミングで、今回、上場するスシローの買収も目指していた。
創業家の内紛をきっかけにゼンショーは株式の一部を取得することに成功したものの、一方で投資ファンドもスシローの争奪戦に参加。最終的にゼンショーはスシローから撤退し、同社はファンドの傘下で経営を続けることになった。
今回の再上場は一連の資本関係の整理がすべて完了したことを意味している。
スシローの買収に失敗したゼンショーはその後、方針を転換し、自社の回転寿司チェーンである「はま寿司」の展開を強化した。牛丼チェーンのノウハウを生かして急激に店舗を拡大し、はま寿司はスシローに並ぶ規模にまで成長。売上高ではスシローに水をあけられているものの、店舗数ではほぼ互角の状況にある。
ゼンショーとの資本関係を解消したかっぱ寿司には、その後、元気寿司との合併話が持ち上がったが、最終的には居酒屋チェーンを展開するコロワイドの傘下に入り、現在に至っている。
■回転寿司は完璧な設備投資産業
回転寿司の競争が激しいのは、飲食店としては珍しく、初期投資の大きい設備投資型産業であるという部分が大きく影響している。回転寿司は、ベルトコンベアーやすしロボット、個別注文を受け付けるタッチパネルなど、一般的な飲食店に比べて多額の初期投資が必要となる。
1店舗あたりの設備は平均すると数千万円レベルになっており、大きめの店舗の場合、新規出店時に1億円以上の投資を行うケースもある。
しかもこうした機器類は早期に償却する必要があり、顧客の回転率を高めに維持しなければならない。確実に集客できる場所に店を出せなければ減価償却を捻出できないので、出店戦略においては緻密さが求められる。
これに加えて原価の管理が難しいという課題もある。通常、飲食店の原価率は20〜30%程度であることがほとんだが、回転寿司チェーン各社の原価率は40〜50%程度とかなり高い。食材の中には輸入品も多く、為替の影響を受けやすい。
回転寿司チェーン各社の輸入食材に対するスタンスは様々で、できるだけ為替の影響を受けないよう工夫するところもあれば、価格を優先して輸入食材を多用するところもある。
カッパ・クリエイトは、2016年4〜12月期の決算において6億6200万円の営業赤字に転落し、2017年3月期の見通しについても9億3400万円の営業赤字を見込んでいる。
直接的な原因はオペレーションの失敗だが、その遠因となったのは円安である。
かっぱ寿司は低価格路線を追求するため、積極的に輸入食材を活用していた。円高のうちはよかったが、円安への転換で食材価格が急騰。
メニューの工夫で原価率を調整することができず、業績が悪化した。立て直しを図るため路線転換を行ったものの、これが裏目に出てしまった格好だ。
■回転寿司は値上がりするのか
設備の償却負担が重く、原価率も高いということになると、相当な数の来客がないと利益は出ない。しかも為替の動向を常に気にする必要があるなど、回転寿司はかなり難しいビジネスといってよいだろう。
だが、そうであるが故に、これらをうまくコントロールできれば、大きな利益を上げることもできる。厳しい競争環境にもかかわらず、市場がこれだけ活況を呈していることにはこうした背景がある。
ではスシローの上場をきっかけに、回転寿司の市場は今後、どのような展開を見せるのだろうか。
ファンドという制約条件がなくなったスシローは、上場を期に大型の資金調達を行い、思い切った投資を実施してくる可能性が高い。
まずは店舗数でトップを争いをしているはま寿司との顧客獲得戦争がさらに激化するだろう。
はま寿司を経営するゼンショーは、一昨年、牛丼チェーン「すき家」において深夜の1人体制(いわゆるワンオペ)が問題視され、その対応に追われた。だが、すき家のオペレーションの問題はほぼ収束し、業績は回復基調にある。
ゼンショーについても、はま寿司に対する投資余力が大きくなったとみてよいだろう。スシローとはま寿司がどれだけ先行投資を続けられるのかで、両社の勝敗が決まることになる。
もうひとつの注目点はかっぱ寿司と元気寿司である。
かっぱ寿司はかつては業界のリーダーだったが、現在は業績の低迷に苦しんでいる。かっぱ寿司は2013年、コメ卸大手の神明ホールディングスと資本提携し、同じく神明と資本関係のある元気寿司との合併が模索された。
だが、1年後に居酒屋チェーンのコロワイドがかっぱ寿司に対して公開買付を行い、同社の獲得に乗り出した。統合は白紙となり、結局、かっぱ寿司はコロワイドの傘下に入っている。
回転寿司大手の中で、元気寿司とかっぱ寿司の店舗規模は小さめで、両者のビジネスモデルは近い。コロワイドの事業戦略に依存する話ではあるが、再び元気寿司との統合という話が出てきてもおかしくない。
各社の中で異彩を放っているのがくら寿司である。くら寿司は1店舗あたりの売上高もスシローに近い水準となっており、利益率も高い。しばらくは独自路線の追求が続くことになるだろう。
トランプ政権の誕生で今後は円安になる可能性が高まっており、一部の関係者は回転寿司も値上がりするのではないかと心配している。
だが筆者はそうはならないと見ている。顧客獲得競争から簡単に値上げはできないからである。回転寿司の競合が激しくなることは、各社にとっては荒波かもしれないが、利用者にとっては朗報だ。しばらくの間は、以前と同様、安く回転寿司を楽しめそうだ。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民119掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。