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禁煙派vs喫煙派の戦いが最高潮を迎えているが、「小規模飲食店の経営を守る」というスローガンで飲食店屋内禁煙を阻止するのは難しい。喫煙派は、もっと別の視点で勝負を挑む必要がある
「禁煙化で小規模飲食店が潰れる」は大ウソだ
http://diamond.jp/articles/-/120560
2017.3.9 窪田順生:ノンフィクションライター ダイヤモンド・オンライン
建物内禁煙としたら、小さな飲食店は本当に潰れるのか――。受動喫煙防止法案を巡って、反対派は小規模飲食店の存続危機を理由にしているが、世界の禁煙先進国を見ると、この攻め方はいかにもまずい手だということが分かる。(ノンフィクションライター 窪田順生)
■渡邊美樹氏の発言では
禁煙化を食い止められない
厚労省が「飲食店は原則禁煙」を打ち出している受動喫煙防止法案を巡って、反対派が「禁煙になったら小さな店が潰れる」というストーリーを強く打ち出し、攻勢をかけている。
今月3日、「日本経済新聞」で「受動喫煙防止法案、外食産業に8400億円の打撃」という報道がなされた。ちなみに、この8400億円は、富士経済が居酒屋やレストラン1020店の責任者たちの「売上予測」を聞いて試算したもので、禁煙学会などは「フェイクニュース」だと厳しく批判をしている。
ただ、そんな報道よりネットで注目を集めているのは、自民党・渡邊美樹氏の発言だ。5日に自身のブログで、「現実問題として10坪以下の飲食店で禁煙にしたら、間違いなくお店は潰れます」と断言したのである。
ご存じのように、渡邊氏はワタミの創業者。「居酒屋経営を極めたプロ」という立場から、10坪以下の飲食店を規制の対象外にすべきだと提言していらっしゃるのだ。
ただ、規制を緩めていくという目的を考えると、このメッセージはあまりよろしくない。世界的なタバコ規制の流れを見ると、「禁煙にしたら小さい店が潰れるぞ」という攻め方は、完全に「負けパターン」となっているからだ。
しかも、もっと言ってしまうと、現実としては渡邊さんが主張されることと逆で、「小さな店を例外にした方が経営難に追い込んでしまう」という側面もあるのだ。
■禁煙ファシズム先進国に見る
禁煙化で店は儲かる事実
愛煙家や飲食業のみなさんは、「おお、この国ではなんとも恐ろしい禁煙ファシズムが台頭してきている」と天を仰いでおられることだろうが、実はこの程度の規制というのは、先進国ではもうすいぶん昔から行っている。
もちろん、どこの国でも渡邊氏のようなことを主張する方はたくさんいたし、「バーでタバコが吸えなくなったら商売あがったりだ」という飲食業の方たちもたくさんいた。
しかし、「飲食店でタバコが吸えなくなったことで、ロンドンには潰れるパブが続出しています!」とか「パリで禁煙に反対するカフェ経営者のデモ隊が警官隊と衝突しました!」なんて海外ニュースは出てこない。ほとんどの国で大きな社会混乱を引き起こすことなく「飲食店全面禁煙」へと移行しているのだ。
たとえば、フランスあたりがわかりやすい。
イスラム教を茶化してテロ攻撃を受けても、「表現の自由を守れ!」と、さらにイスラムを茶化した風刺画を持ってデモ行進をする人たちが多いことからもわかるように、かの国の人々は「権利」や「自由」を日本人以上に主張する。
バー、レストラン、ナイトクラブなどを対象とする喫煙禁止令が2008年に敷かれる前に「フランスが世界に誇るカフェ文化が衰退していく」というような反対意見は出たが、「カフェやバー経営者を殺す気か!」なんてことを叫ぶ大規模な反対デモは起こらなかった。
なぜかというと、準備期間の間に、「全面禁煙」と「店が潰れる」ということに、なんの因果関係もないということが、先に規制をやっている国や自国の調査で明らかになったからだ。
《カフェやレストランではすでに、禁煙を実行しているところもあり、中には、顧客が増えた店舗もある。フランス政府は、イタリアがバーとレストランを禁煙にした結果、売り上げが20%増加したことを強調している》(2007/12/30 AFP通信)
■スペインの歴史が証明する
分煙化の失敗
日本よりも喫煙率が高く、日本人よりも「自由」へのこだわりが強いフランスで全面禁煙がソフトランディングてきたのは、こういう否定し難いエデビンスがあったということが大きい。
つまり、先進国でオセロのようにパタパタと飲食店が全面禁煙に転じているというのは、ヒトラーみたいな「禁煙ファシスト」が登場して、なにか独裁的な手法でタバコを迫害しているというわけではなく、ごくごくシンプルに経済性、合理性によるものということなのだ。
渡邊さんがおっしゃるような「禁煙にしたら小さな店は潰れる」という主張を続けていても、一発逆転ホームランにはなり得ないのだ。
そう言うと、「よその国ことなんか知るか、日本の分煙設備は世界一なんだから、そういう投網のような全面規制じゃなくて、『世界にひとつだけの花』的な多様性に富んだ受動喫煙規制ができるんだよ」という方がいる。感情的にはよくわかるのだが、実は残念ながらこれも「負けパターン」だ。
日本人の多くは「分煙」という概念を、なにやら日本人だけしか持っていない斬新なアイディアのように勘違いしているが、「タバコが吸いたい人と、煙が嫌な人を分ければいいんじゃね」という発想は、他の先進国でもちょくちょく実現されており、そして往々にして残念な結末を迎えている。
その代表が、スペインだ。
実はこの国では06年から公共施設や職場などで喫煙が禁止されたが、飲食店に限っては、敷地面積によって例外規定が設けられた。具体的には面積100m2以下の店の場合、「喫煙店」にするか「禁煙店」にするかを、所有者が自分で決められることにしたのだ。逆に面積100m2以上は、喫煙室を設置せよとなったのだ。
もうお分かりだろう、今の自民党たばこ議連が主張されていることと丸かぶりだ。つまり、「日本は分煙先進国を目指すべき」とか「世界に誇る分煙で外国人観光客をおもてなし」みたいな主張は特に斬新な話ではなく、10年前にスペインの愛煙家や飲食店関係者が実行に移しているのだ。
だったら、なおさら日本もやるべきじゃんか、といきり立つだろうが、残念ながらこの「スペインモデル」が世の中に定着することはなかった。11年1月2日にこの「例外規定」がとっぱらわれてしまうのだ。
■「例外措置」が実は
小さな店を追いつめる
原因は、「例外規定」というゆるいルール設定をしたことで、受動喫煙対策全体がナメられて機能しなくなる、という問題が起きてしまってまったことにある。
そのあたりは「科学的見地から―政策のために:ドイツがん研究センター、ハイデルベルク飲食店業における非喫煙者保護の「スペインモデル」:失敗した手法のモデル」(日本禁煙学会雑誌 第5巻第1号 2010 年(平成22年)3月10 日)というレポートに詳しいので引用させていただこう。ちなみに、OCUというのは消費者団体のことだ。
《OCU調査によれば、小規模飲食店の所有者の21%が法律で定められた「喫煙可」のステッカーをドアの外側に貼る手間さえ惜しんでいた。若者向けディスコで現行の全面的禁煙がどの程度まで遵守されているかを他の消費者保護団体が調査したところ、60%の店が法律に違反していることが確認された》
つまり、スペインでは規制がゆるすぎて守らない店が続出、法律を機能させるために必要な「平等性」を著しく欠いてしまったことで、形骸化してしまったのだ。こういうシステムエラーが見受けられる制度を日本に導入したところで、スペインと同じ轍を踏む恐れが高い。
さらにもう1つ、「例外規定」を設けると、ほぼ確実に引き起こされるであろう深刻な問題がある。小さな店を例外にすると、彼らの経営を助けるどころか、あべこべに経営難に追い込んでしまうという事実だ。
たとえば、もし渡邊さんが言うように、「10坪以下の飲食店を規制の対象外」にしたら短期的には「喫煙者バブル」で、その小さい店は大にぎわいをするだろう。しかし、残念ながらこの「バブル」はすぐにはじけてしまう。
喫煙者で賑わえば賑わうほど、小さな店の店内は煙の濃度が高くなる。そこは、最新のエアカーテンでという声もあろうが、そういう設備投資をする余裕がないからこその「例外」措置だ。国や自治体が補助金を出せばいいという人もいるが、その莫大な税金をどこから捻出をするのかという問題もある。
そうなると、この小さな店は喫煙者にとっては煙モクモクのパラダイスだが、非喫煙者にとっては苦痛以外の何物でもない。一方、「小さくない飲食店」では受動喫煙防止対策をしているので、そちらが普及をしていけばいくほど、その環境に慣れた非喫煙者には、「小さい店」のハードルは上がっていくという悪循環に陥る。
中長期的には、その小さな店の「味」や「雰囲気」にひかれて通っていたような非喫煙者でも、次第に足が遠のいていくのは間違いない。
■社会の流れに逆らった
飲食店は失敗する
つまり、社会の大きな流れに逆らって「例外」になることが、実は飲食店にとって最もやってはいけないことなのだ。
渡邊さんは、自身のブログで、こんな「経験」を語っている。
《実は私も、今から12年前に「禁煙居酒屋」を大手居酒屋チェーン店では初めて挑戦したのですが、1年足らずで撤退、つまり、「大失敗」してしまった経験があります》(渡邊美樹オフィシャルブログ)
渡邊さんは「禁煙にして失敗をした」と考えているようだが、それは違う。今から12年前といえば、「受動喫煙の害をどうにかしろ」と言うと、喫煙者が「禁煙ファシズムだ」と言い返すことができるような、おおらかな時代だった。分煙も今のように進んでおらず、子どもや妊婦の横でタバコをプカーなんてことも珍しくなかった。そういう風潮が主流の環境下で、渡邊さんが挑戦した「禁煙居酒屋」は、社会の大きな流れに逆らった「例外」だったのだ。
嫌煙家というマイノリティには支持されただろうが、顧客を大きく絞り込む行為だったから、1年足らずで失敗してしまったのだ。
今は当時とは流れがまったく違う。喫煙者の数は年々減っており、嫌煙家が社会の主流になりつつある。そんな環境にあって、小さな店が「喫煙可」を掲げるということは、短期的には儲かったとしても、中長期的には客足を限定させ、経営規模をどんどん小さくさせてしまうのだ。
もちろん、喫煙者のマスターがいる、喫煙者のためのバーという店や、シガーバーなどの専門店はそれでいい。ただ、「食事」がメインの小さな店は、間違いなく当初の愛煙家殺到バブルの後は死屍累々だ。
顧客の絞り込みは、まわりまわって自分たちの首を絞める、というのは実は聡明な「小さな店」の方たちは既に気づいている。たとえば、厚労省が業界団体へ向けて実施した公開ヒアリングで、飲食店業界の方たちが猛反対をするなかで、全国焼肉協会の方たちが強調したのは「平等」だった。
《全国焼肉協会は「喫煙室の有無で来客に影響すると不公平」として、より厳しい「建物内禁煙」を求めた》(朝日新聞 2016年11月16日)
協会に加盟している店の多くは小さな町の焼肉屋である。タバコが吸えるかどうかではなく、焼肉という「食事」で不特定多数の客に訴求をしているなかで、本筋ではない喫煙環境によって客足が離れてしまうことを懸念しているのだ。
ヒアリングに出た協会の方は、焼肉協会には小さいお店が多いので、すぐに店の外に出られるという特徴を挙げたうえで、吸いたいお客さんはそのたびに外で出た方がよほど「平等」でいい、というようなことをおっしゃっていた。まさに、この問題の本質をついた言葉ではないだろうか。
一昨日、厚労省の「原則屋内全面禁煙」という方針に反対している自民党たばこ議連の国会議員たちは、厚労省案を「原理主義的」だと批判、「喫煙を愉しむのも、憲法で認められている幸福を追求する権利」と主張した。
こちらの方が「禁煙で小さい店は潰れる」よりも、よほどいい攻め方だ。
国会提出を控えて、「情報戦」が熾烈を極めていくなかで、反対派はこれまでの「負けパターン」をひっくり返すことができるのか。動向に注目したい。
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