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貧困×認知症×暴力=「高齢者犯罪」拡大の現実
パラシュート無き落下の日本学 首都圏の今後
高齢化社会が直面する難題、見て見ぬふりはもうやめよう
2017年3月8日(水)
山本 一郎
2014年12月4日、NHK『クローズアップ現代』で、高齢社会研究の関係者の間で大変ショッキングな内容の放送があり、話題になった。タイトルは「犯罪を繰り返す高齢者 〜負の連鎖をどう断つか〜」[1]。府中刑務所では高齢の犯罪者の受刑者が急増し、10年で2倍の400名になったという事実だ。家族がなく失うものもない高齢者が、犯罪を繰り返しては逮捕、収監され、刑務所で衣食住を満たすという負のスパイラルが報じられている。犯罪者の更生を政策レベルで考える上で、再犯率引き下げの実現を阻むものは「犯罪を犯すことで失うものがある」あるいは「犯罪を行わないことで安寧な生活を送ることができる」ことだ。こう考えられる状況にないか、考える能力がない高齢犯罪者の実態が詳らかになったことに多くの関係者は衝撃を受けた。
悲劇の主役は「取り残された人々」
もともと、戦後の犯罪史的にも、世界的な犯罪動向でも、必ずしも高齢者による犯罪そのものが累犯率が高いものとは言えない。高齢になってから窃盗や寸借詐欺などを働いて検挙される人の初犯率は90年代までにかけてずっと高い割合で推移している。つまり、いままで犯罪には縁のなかった人が、高齢になって初めて犯罪に踏み込んでしまう傾向だ。むしろ、衝動的な犯罪や強盗・殺人など重度の犯罪はずっと若者が主たる割合を占めていた。この手の犯罪を抑え込むには若者の社会化を促したり、職業・家庭の安定といった、将来を見据えた居場所づくりを奨励していた。未熟な若者が「犯罪など犯さずとも幸福に暮らしていける良い環境づくり」を社会や地域、家庭、職場が一体となって行うことで、高度成長を背景に豊かであった日本社会は、若者による犯罪の抑え込みに成功したと言える。
しかしながら、2000年代以降になると高度成長が終わり、失われた10年を経て日本経済自体の低成長が日本人の「未来に対する安心感」を損ない始めた。また人口構成上も急速かつ不可逆に進行する高齢化、少子化の影響を受けて、犯罪の年齢構成も徐々に変容していった。また、それまで明るみに出ることが少なかった高齢者同士の介護疲れからの殺人が増加。2000年の介護保険制度導入前の1998年には20件であった介護疲れによる殺人や無理心中事件が、2014年には42件と倍増。重大な刑事事案にはならない日常的な高齢者への虐待も問題視されるという意見が増えているが、水面下で具体的にどのくらい増えているかは現段階では分からない。また、介護する側の認知問題や経済困窮などの事由もあり、事情を加味し本人に反省があるなどとして、起訴されないケースも多数報告が上がるようになっている。高齢社会と言われて久しい日本において、むしろ繁栄から取り残された人々が高齢者の犯罪の主役になってしまっているのが実情と言えよう。
法務省は2007年、高齢者と犯罪の関係についての研究文書『高齢犯罪者の実態と意識に関する研究』を発表[2]。その後も、重点的な再犯率抑え込み政策の主眼として10年間の取り組みにおける数値目標として、「刑務所出所後2年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後10年間で20%以上削減する」ことを定めた『再犯防止に向けた総合対策』(2012年)[3]を策定。また2016年には「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策 〜立ち直りに向けた"息の長い"支援につなげるネットワーク構築〜」を閣議決定[4]し、前面に打ち出している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/022700001/hanzai.PNG
浮かび上がるのは、窃盗など軽微な犯罪を繰り返しては摘発され続ける貧しい老人の姿だ。10〜20代のころから犯罪行為に手を染め検挙され続けそのまま歳を重ねて老人になるケースも一定の割合で存在する。一方、65歳以上になってから軽度の窃盗で検挙され、起訴されなかったものの二度目の窃盗で有罪判決を受けて以降、常習犯になっていくケースも少なくない。高齢者になってからの初犯が、累犯に進行する事例は目につく。いずれも犯罪を行ったことが周辺に知れ渡って社会から孤立し、さらに貧しくなって窃盗に走らざるをえなかったり、自力で生活する経済力がないため人生を諦めて刑務所のほうが快適だとまで述懐してしまう状態に陥ったりもする。
粗暴犯、認知症、マイナスのスパイラル
また、2000年以降目立って増加しているのは高齢者の粗暴犯である。高齢者の刑法犯検挙人員に占める粗暴犯の比率や人数を見ると、1989年(平成元年)の高齢者の一般刑法犯6,625件のうち、殺人48件、強盗8件、障害141件、暴行48件だったのに対し、2014年(平成26年)はまず高齢者の一般刑法犯自体が約8倍の47,252件となった。その73%にあたる24,518件は比較的軽微なものも含む窃盗犯である。しかしながら、高齢者の殺人は192件、強盗117件、障害1,649件、暴行3,478件である。確かに高齢者自体が増えているとはいえ、人口比で見ても類型で見てもはるかに速いペースで増えてきており、粗暴犯が高齢者の刑法犯検挙人員の11.9%を占めているという状況は見逃せない。とりわけ、粗暴犯の代表格である暴行事案が高齢者において激増していることは、この四半世紀の間に高齢者における犯罪の類型や捉え方が激変していることの証左と言えよう。
おそらく、都市型高齢化問題を考える上で現象として出てくるのは目に見える高齢者犯罪の数値だけではない。水面下の高齢者に対する虐待と、高齢者同士の対立による障害事件など、検挙に至らないため数字に出にくい粗暴犯であろう。高齢者絡みの生活相談件数の増加でとりわけ目立つのは長い企業勤めを終えて引退した団塊の世代前後が自宅で暮らすようになって、家庭内やマンション管理組合、電車・バスなどの公共交通機関で自分の思い通りにならずキレて暴力行為に及ぶ場合である。軽微なものであれば犯罪にはいきなりならず、家庭内であれば配偶者が我慢するなどしてなかなか表面化しない。地域に居場所を作ろうにも、それまで企業勤めに励む一方、地域行事に積極的に参加した経験が乏しい年代でもあり、住んでいる地元に接点が少ないのも特徴だ。1947〜1949年の3年間に生まれた団塊の世代だけで、現在806万人いる。1947年生まれであれば2017年現在70歳だ。これらの予備軍が、生物である人間が運命的に避け得ない認知症に一定の割合で陥ったとき、認知症による犯罪と社会はどう向き合うべきか考える必要がある。
この問題で特筆すべきは、2015年に法務省が調査を実施した内容だ。高齢受刑者のうち、その刑期が短期か長期かを問わず認知症傾向があるとされる者は約17.2%、1,100人にのぼると見られる[4]。逮捕された時点で責任能力の有無を確認して起訴するかを判断しているはずが、起訴して有罪判決を受けて刑務所に入ったら中程度以上の認知症だった、という事例は事欠かないことを意味する。あるいは、軽度認知症レベルで責任能力ありとして起訴され有罪になって収監後に、それまでの生活が一変して一気に痴呆が進む場合もある。高齢者犯罪に対しては、「地域社会とつながった指導・支援を刑事司法の各段階において実施」とマイルドな表現に徹しているが、裏側に隠された意味は重い。それは、ふたつの意味で破壊的な作用を日本社会にもたらす。ひとつは、冒頭のNHKの番組でも問われている「帰るところのない、失うもののない老人」が起こす強いマイナスのスパイラル。もうひとつは、本人が健常ならば犯罪などするはずもない善良だった人が、加齢による判断能力の低下で「うっかり犯罪者になってしまう」ケースだ。
高齢者による犯罪への考察では、現在の刑法において起訴され有罪とされるのは「責任能力のある人物に限る」という点は加味しなければならない。つまり、すでに認知症を発症してしまっている高齢者が行う犯罪への検挙は、かなりの割合が不起訴か、書類送検すらされないと見られる。認知症による心神喪失とされると、責任能力なしと判断され起訴猶予ではなく犯罪不成立となる。そして、その高齢者は問題を抱えたまま、家族や地域に帰されることになる。
疎外と貧困問題、地域定着支援に光明も…
そして、高齢受刑者には必ずと言っていいほど、社会から疎外された貧困という問題がつきまとう。高齢者犯罪の実態研究では、明らかに社会に行き場のない事実に対する戸惑いや鬱積が浮かび上がる。「経済的に困ったとき助けてくれる人はいますか?」の問に対し、「いない」と答える高齢受刑者の割合は42.6%。「あなたの現在の生活で、悩みや心配事はありますか」と聞くと、複数回答で「健康がすぐれない」46.4%、「お金がない」34.5%、「仕事がない」30.9%、「借金がある」15.5%と続く[2]。健康を害し、働けなくなった老人が、助けてもらえる人もいない状況で生活費に困り犯罪を繰り返してしまう姿は、受刑者のインタビューからも垣間見えよう。
この現実を受け入れる関連省庁、地域、自治体も政策的な対応に奔走している。厚生労働省では矯正施設退所者の地域生活定着支援(地域生活定着促進事業)[5]として、釈放後に必要な福祉サービスを受けることが困難となっている、高齢や障害を理由として釈放後の行き場のない人に対し矯正施設収容中から、矯正施設や保護観察所、既存の福祉関係者と連携する仕組みを構築している。その結果、2014年には受け入れ調整(コーディネート)された者が年齢の別を問わず1,396名、うち半分以上の752名がコーディネートされた受け入れ先である帰住地に入所した。
このうち、再犯に及んだとみられるケースは確認できない。この良好な結果を見る限り、高齢者による犯罪については釈放後の居場所確保と、経済的な安定、活動での出番を準備することが再犯率を引き下げる大きな要因になっていることは理解できよう。高齢犯罪者は、原則として関係者の献身的な努力もあったうえで受け入れ先さえきちんと用意できれば、再犯率を効果的に引き下げることは可能だ、と評される。分類を細かく見ると、65歳以上の帰住者のうち、中度以上の知的障害を持つ者は355名中46名(12.9%)、精神障害を持つ者は355名中54名(15.2%)と一般社会における知的障害、精神障害の罹患率からすると格段に高い(平成28年度版『障害者白書』)[6]。
また、帰住者分類の65歳以上のカテゴリーでは軽度認知症や精神的なものも含む障害を持つとみられる者も、355名中238名の中に入っている。社会から切り離され孤独に暮らしている高齢者が、人との関わり合いを絶たれて健常的な判断能力を喪失し犯罪に及ぶ場合も広く見られる。貧困や社会との断絶によって孤立した高齢者が犯罪に及ばないようにするには、家族単位、あるいは更生保護施設、グループホームなど孤立を避けるためのユニットを充実させていくことが重要だ。犯罪に立ち入らない精神的安定を企図したり、家族や高齢者同士の監視を行うことしか解決へと導く方策がないのもまた事実である。
一方で、時系列でみた場合に完治のない不可逆の疾病でもある認知症については、ひとくちに人とのつながり、見回り、監視といっても馴染まない状況であることもまた多く見られる。独居老人が独居である理由として、性格、価値観、環境その他、一人で暮らすことを人生の経過の中で選択しているケースから、伴侶に先立たれて結果として独居になってしまうケースまで様々である。地域とのかかわり自体を持ちたがらないうえに、現在住んでいるところから離れたくないと希望する独居老人がどの省庁、自治体の調査でも過半である。東京都が実施した実態調査では、認知症が疑われる250名を対象に訪問による聞き取り調査を行ったところ、24.4%が「一緒に住んでいる家族はいない」と回答している(在宅高齢者実態調査 平成20年調査、平成21年発表)[7]。また、さいたま市の高齢者調査では、独居老人を示す単身高齢者率は12.9%と前回調査の3年前に比べて実数で36.6%増、単身率で18.3%増となっている(さいたま市高齢者生活実態調査 平成27年)[8]。
さらに、「誰か近くに話をする相手はいますか」の設問に対しては高齢者のみの世帯がさいたま市平均で5.0%であるのに対し、単身高齢者は11.8%。「誰か近くに困ったとき頼れる方がいますか」では高齢者のみの世帯では9.3%に対し単身高齢者は15.0%である[8]。
日常的なコミュニケーションから困ったときのちょっとした頼み事まで、孤立している高齢者のケアが必要だと再犯防止の観点から必要であると理解される。しかしながら、地域の見守りや声掛けがそこまではスムーズにいっていない現状が見て取れる。同様の状況は、千葉、神奈川でも散見される一方、その受け皿となるべき地域包括ケアの事業上の稼働状況は限界に近い。例えば、単純に活動している民生委員を地域で暮らす高齢者で除しても、もっとも低い行政区分でも150名近い生活者が活動・保護対象となる。民生委員法上、これら対象となる高齢者が介護保険の要介護認定されていれば、保護対象からは外れる。とはいえ、地域児童の安全やドメスティックバイオレンス対策など幅広い市民生活の護持を目的としているボランティア同然の民生委員にこれ以上多くを期待するのも困難と言えよう。
この傾向は日本全体で普遍的に存在する高齢化社会の現象の一断面と相似形であって、東京都や各都市部の行政に問題があって独居老人が増えたと結論付けられるものではない。むしろ、高齢者の生活の実態を詳らかにしていく過程で、高齢者による犯罪を防ぐという必要な目的ひとつとっても、その犯罪動機の重要な一部である困窮や社会的孤立に対して適切な手段が充分には講じられていない、というのは特に重視されるべき点である。暮らしている高齢者に対して地域が適切に孤立対策をするというテーマは誰にも否定されるものではない。一方、その解決の道筋を政策的に実現するとなると、最終的な政策予算の裏付けもない善意のボランティアシップによらなければならないというのでは改善をすぐに期待できるものではない。
2030年、善意とやりがいでは乗り切れない
また、認知症を患う日本人の破壊的な増加については次回に詳しく論述するが、高齢者犯罪による社会秩序の混乱を防ぐという意味合いを超える。つまり、日本全体がこれから空前の規模の認知症患者の出現とそれへの対応を迫られることになる。平成24年(2012年)時点での認知症を患う人の数は推定で462万人と見られるのに対し、その13年後の平成34年(2025年)には700万人を超えると予測されている(認知症施策推進プラン)[9]。その意味では、高齢者犯罪に対する再犯防止の考察は、来たる大量認知症時代を克服するための先導研究として社会的に切り離されている高齢者に対してどのようなアウトカムを目指す政策を打ち出していくのかを考える上で、極めて重要な知見を与えてくれるものと言えよう。
極めて強いマイナスの要因は、経済的な低成長の常態化と国家の税収・財源不足、これに伴う予算の硬直化である。日本には、青天井の社会保障費を担い得るだけの財政的、人口的余力はもはやない。予算が維持できたとしても、これから激増する高齢者、とりわけ団塊の世代が2030年には後期高齢者入りをしたとき、一人当たりにかけられる社会保障費は一層減る。受け持つべき老人は増えるのに、受け止める福祉・介護の現場に落ちる予算が変わらなければ、現場の仕事量は増えるばかりだ。貧困や繋がりをカバーできるだけの民生委員、ケアマネージャー以下福祉や介護に携わる人たちの低待遇が公共サービスの質的低下を強く惹起し、一定の社会的な善意ややりがい、温かさを前提としてきた地域の受け入れ態勢が崩壊する懸念がある。
さらには、日本社会における晩婚化や少子化の影響どころか、結婚そのものをしない未婚割合の増加とそれも価値観として許容する多様性を確保した結果、労働年齢を超えて仕事を離れたり趣味に費やせる可処分所得を失うと一気に社会から孤立する傾向に拍車がかかる。結婚しないという選択は現代社会における個人の責任と自由の範囲内であるが、若くて働けるころは良い。しかし、親の高齢化や自分自身が病気、怪我で働けなくなったとき、さらには自分自身が高齢者になったとき、高齢者犯罪の傾向として顕著な「話せる人がいない」「困ったとき頼れる方がいない」という身寄りのない、切り離された個人が大量に出現するという深刻な状況に直面することになる。若いころの選択として結婚しないと判断して独身を謳歌しながら、いざ親の介護や自身の病気・怪我、さらには高齢になって「こんなはずではなかった」という状況に陥る。結果として、これらの国民の救済は公的機関と地域で受け止めなければならなくなる。
このような問題や見通しを踏まえて、変遷を続ける日本の社会観、家庭観、結婚観や老齢の親や兄弟、伴侶に対する介護の状況に合わせた「受け入れられる地域づくり」のビジョンが強く求められる。とりわけ所得の低い独身世帯の孤立について、高齢者になり身動きが取れなくなる前に防いでいかない限り、この問題は不可逆的に悪化していくことだろう。この高齢者犯罪の要因に貧困が結び付いたときでも、生活保護の状態に陥った独居老人を犯罪者予備軍とするわけにもいかず、地域との結びつきを強要する施策が実現できるわけでもない。実際、貧困に陥っても犯罪に手を染めることなく慎ましく暮らし一生を終える高齢者は96%以上であり、そのような善良に暮らしている高齢者を疑いに晒す必要はない。
一方で、不幸にして認知症を患い街角や隣家の畑で窃盗や万引きをしてしまい摘発されてしまう老人や、生活的困窮に耐えられず万引きを犯してしまう老人の現状は、一歩間違えばどのような人物でも間違った判断に追い込みかねない。高齢者が高齢者同士を支え合う、家庭内の老老介護を地域や社会が一体となって共に暮らし、緩やかに老いるコミュニティーを形成するために何ができるのかを早急に模索するべき時期が来ていると言えるだろう。
都市部で増殖する「キレる高齢者」
ここで改めて、都市型高齢化の懸案となる東京都の状況を整理する。東京都では、認知症を含む高齢者ケアに関する専門家会議や、続発する万引き対策についての検討会が多数開催されているが、東京都の高齢者犯罪に関する特徴、とりわけ伸び率の点では窃盗だけでなく暴行の割合が高くなっている。1992年(平成14年)に比べて12年後の2014年(平成26年)までの傾向を見ると、60歳以上の一般刑法犯のうち暴行がこれは東京都近隣県と比べても有意に高い傾向があり、実数で3.1倍。東京都に在住の65歳以上の高齢者は198万人(1992年)から94万人増の292万人であることから考えても、都市部特有の傾向として人口過密ゆえの粗暴犯の傾向が見て取れる。
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いわゆる「キレる高齢者」問題は、とりわけ都市圏で集中的に発生し認知されている。もちろん人口が多く認知件数が増えやすい傾向があるのは事実であり、地方と単純な比較はできないものの、粗暴犯の傾向として「見知らぬ人物とのトラブル」は状況認識をするうえで大事なポイントとなる。飲酒の有無は別として、鉄道など公共交通機関で駅員などに対する暴力事件の発生件数は2015年(平成27年)は792件と前年比8件減少したが、年齢別構成割合では60代以上が188件(23.8%)と全年代トップとなっている[11]。うち112件が東京都内で発生していることも踏まえて、都市部における高齢者犯罪への対策の在り方と、釈放後の再犯を抑え込む仕組みについて弾力的に考えていく必要があろう。
これを踏まえて、次回は日本社会で破壊的に増加すると見られる認知症を患う老人と社会全体の構造について状況を整理し、考察を行う。
<参考リンク>
[1] 犯罪を繰り返す高齢者 〜負の連鎖をどう断つか〜 | NHK クローズアップ現代
[2] 高齢犯罪者の実態と意識に関する研究
[3] 再犯防止に向けた総合対策
[4] 薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策 〜立ち直りに向けた"息の長い"支援につなげるネットワーク構築〜
[5] 矯正施設退所者の地域生活定着支援(地域生活定着促進事業)
[6] 平成28年度版(2016年) 障害者白書
[7] 東京都在宅高齢者実態調査(専門調査) 平成21年度
[8] さいたま市高齢者生活実態調査 平成27年度
[9] 認知症施策推進プラン(新・オレンジプラン)
[10] 東京都 万引きに関する有識者研究会
[11] 鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について
このコラムについて
パラシュート無き落下の日本学 首都圏の今後
少子高齢化が進み、人口減少時代を迎えた日本。課題は多く、即効薬はない。しかし、手をこまぬいているわけにはいかない。パラシュートを付けずに落ちるに任せるわけにはいかない。まずはリアルなデータを基に現状を見つめ直すところから始めよう。例えば、声高に叫ばれる「地方の衰退」だけでなく、「首都圏の老朽化」も深刻だ。貧困、孤立がもたらす「高齢者犯罪」などもまた、暗い影を落とす。もう、浮かび上がってきた難題から目を背け、やり過ごそうとするのはやめよう。打つべき手を、打つために。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/022700044/022700001
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