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「もうからない林業」でしたたかに稼ぐ人たち 日本と仁丹を救うオッサンの「根拠なき確信」森下仁丹が第四新卒の採用
http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/784.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 07 日 12:34:29: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「もうからない林業」でしたたかに稼ぐ人たち

記者の眼

個性派の林業経営者に学ぶ秘策とは
2017年3月7日(火)
宇賀神 宰司
 林業は「もうからない」と言われる。木材価格は1980年にピークを迎えた後、ヒノキが約4分の1、スギが約3分の1まで落ち込んでいる。背景には価格や物量で競争力を持つ輸入材に押されたこと、さらに木材需要そのものが住宅着工件数の減少などから下落を続けたことがある。

 だが、そうした長年に渡る逆境の中、林業経営でしっかり利益を出すことを追求しつづけている林業経営者たちがいる。

 その一人、岐阜県山県市にある極東森林開発の中原丈夫社長は「『林業はかつて儲かった。今は樹木を切るだけ損する』などといつまでも嘆いているのは『バブルの頃はよかった。崩壊して経営は厳しい』と言っているようなもの。それでは先に進めない。厳しい状況でも利益を出す方策はある」と明言する。

 こうした個性派の林業経営者たちを取材した。彼らの試みは厳しい市場環境にあるあらゆる業界で応用がきくはずだ。

たった1本の丸太をジャストインタイムで生産

 極東森林開発の中原社長は江戸時代、1731年から286年の歴史を持つ専業林家の9代目。岐阜県内に300ヘクタールの森林を所有し8人のチームで樹木を伐採し販売する。

 極東森林開発の特徴は、注文から3日以内に顧客の要望に応じた樹木を切り出せる「短納期」「ジャストインタイム」だ。さらには特殊注文材と呼ぶ、1本単位での注文も受け付ける「多品種・小ロット」の商品構成も取る。

 森林所有者は自ら樹木を伐採するか、作業を外部の事業者に委託して伐採してもらう。地域の森林組合を通じて、丸太の状態でセリにかけていく原木市場に持ち込んだり、住宅用の木材を作る製材工場に出荷したりする。当然、木材価格は上下する。タイミングが悪ければ、まとめて安く買いたたかれることもある。

 中原社長はこうした状況に疑問を持ち、どうしたら木材が高く安定して売れるか考えるため原木市場などで卸業者へのリサーチを開始した。そこで見えてきたのは生産者視点と消費者視点の違いだ。


林業の「見える化」を進めてきた極東森林開発の中原丈夫社長(写真:堀 勝志古)
 「林業家は自分たちのペースで樹木を切る。『そろそろあの斜面を切るか』という具合だ。そして切り出した丸太を市場に持ち込む。仮に『1カ月以内にこの太さのスギが100本、ヒノキが100本ほしい』などと要望があっても『まあ、切ってみないとなんともいえないけど、1カ月したら連絡するよ』という具合。そして実際には必要な丸太が揃っておらず『ある程度まとまるのはまた1カ月後だからそのころ来てくれ』という始末。これでは高く売れないのは当たり前だ」(中原社長)

 中原社長は林業でも在庫管理の考え方でマーケットニーズに対応できると考えた。そのためには当然、樹木の樹齢、樹種、伐採や植林の履歴など、森林の状況を正確に把握する必要がある。まず、これらの情報を先祖伝来の台帳を基にデータベース化した。「森林を倉庫に見立て、森林の『見える化』を図った」(中原社長)。

 2001年から注文を受けてから切り出す注文材の販売を開始。2003年から1本単位での受注も始めた。

 受注販売を始めてみると、売れないと考えられていた丸太も売り先があることが分かってきた。例えば、長さ13メートル、直径46センチといった大きな丸太だ。

 住宅用木材などへの加工のしやすさから中丸太と呼ばれる長さ3.65〜4.0メート、直径14〜22pの丸太が売れ筋で、それより大きなものは売りづらいと言われる。だが、中原社長は「少量なら確実にニーズはある。むしろ、売れない先入観から市場に出てこないので、ウチに注文が舞い込んでくる」と話す。生産者の思い込みを逆手にとって、少ない市場を確実にモノにする。丸太は体積で相場が決まっているので、太く長い丸太は売れれば高値が付く。さらに短期間の納期を守ることで価値が上がる。

 太く長い丸太を得るためには樹齢が高い樹木を育てる必要がある。樹木の価値が最大になる80〜90年まで育て伐採する。100年育てれば「100年杉」という価値も付く。

 中原社長は「『もうからない林業』はここには存在しない」と豪語。売上高は約6000万円と小規模ながら営業利益率は20%程度を確保している。

木材一貫生産で「稼ぐ」


「特殊な木材、加工も含めて1社で住宅1棟分の木材をすべて提供できるのが強みだ」と話す山長商店の榎本崇秀社長(写真:菅野勝男)
 和歌山県田辺市にある山長商店は木材の植林、伐採から住宅用建材として最終製品に仕上げるプレカット加工までを一貫して手がける。最終消費者の住宅メーカーから1棟単位で直接、木材の注文を受ける。この仕組みも、切り出した木材の付加価値を上げて販売する「林業で稼ぐ」方法だ。

 榎本崇秀社長は「自社で木材の生産、流通、加工すべてを手掛けているのは、全国的にも珍しいでしょう」と自信をのぞかせる。

 木材の伐採、製材、プレカット加工はそれぞれ事業者が異なり、流通の過程では卸業者など中間業者が介在する。住宅メーカーと森林所有者、林業家が直接、取り引きすることは一般的ではなく、特殊な木材などではあり得るが、丸ごと1棟分というのは珍しい。

 ある戸建て住宅の注文では柱、梁、土台などに使うスギやヒノキの加工木材だけで500本以上があった。木材費に加え、加工費も計上する。

 住宅メーカーにとっては1カ所ですべての木材が、現場で大工作業をする最終製品として揃えられるメリットがある。住宅を注文するお客である施主には合板や集成材ではない無垢材で「紀州材」ブランドを売りにできる。1本、1本に伐採から加工履歴があり、自分の家の木材がどの森林から来たものなのか、実際に森林を見学することも可能になる。商品に物語を付け顧客を引き付けるストーリーマーケティングを実践できる。

 こうした体制を整えるためには、まずは森林の状況を完全に把握するところから始まる。山長商店も300年以上続く老舗で和歌山県に約5000ヘクタールの森林を所有する。特殊な木材の注文にも対応できるよう、樹齢や樹種、伐採・植林履歴をデータベース化した。

 注文から1カ月以内に加工を終えて出荷する。過去の注文履歴から売れ筋の木材を把握して、常に3カ月分の木材をストックしておく。こうすることで急な注文にもスムーズに対応できる。これも全て一貫したデータ管理のおかげだ。

 樹木の伐採を手掛ける作業者は、注文状況に応じた伐採計画に従って、必要な木材を切り出す。

常識を打ち破り経営の多角化に舵

 山長商店では森林管理に加え、まず、丸太を材木にする製材業を自社で始めた。プレカット加工まで本格的に手がけるようになったのは、自社工場を新設した1997年から。

 榎本社長は「当時、輸入木材に押されて国産木材の需要が減り、木材価格も下がった。製材までしても利益が得られなくなった」と話す。木材市場でまとめて安く買い取られる状況があり、それを打破したかった。そこで住宅メーカーから直接、注文を受け、最終製品としてプレカット加工まで手掛ける決断をした。林業事業者がプレカット加工まで手掛けることは前例がほとんどなく勇気のいる決断だったが、業界の常識を乗り超えることで危機を脱した。「あの決断がなければ、今の山長商店はなかった」(榎本社長)。


山長商店のプレカット工場。作業を自動化した生産工程のほかに、複雑な加工は職人が手作業で仕上げる工程もある(写真:菅野勝男)
 木材流通の川上から川下まで直結したことで市場で求められる木材を必要なだけ必要な時期に切り出す計画生産ができる。中間事業者をなくすことで営業利益率の向上にもつながった。近年は売上高約20億円に対して、5〜8%で推移している。

 長らく斜陽産業と言われてきた林業にも最近、復活の兆しが見え始めている。供給量全体は横ばいで推移する中、国産材の供給量は伸びてきた。全体に占める国産材の割合である木材自給率は2015年には33%まで上昇し、30年ぶりに3分の1の水準に達した。

 価格の下落や円安で輸入材に対して競争力を持ったことや、戦後に植林され伐採に適した46年以上の樹木が全体の半数を超えるなど供給力が増えているからだ。人口減などから住宅着工件数は低位で推移しているものの、木材を使った公共建築物やバイオマスでの利用など新たな需要も生まれている。

 厳しい林業で生き残ってきたからこそ、個性派の林業経営者たちは工夫を重ねて「稼ぐ」仕組みを作ってきた。市場ニーズに合わせたジャストインタイム、多品種・小ロット、川上から川下まで一貫して手掛ける経営の多角化とブランド化など。林業復活に向けて、その知恵が生かされる時が来ている。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030600422

 

 


日本と仁丹を救うオッサンの「根拠なき確信」

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

仁丹曰く「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない」
2017年3月7日(火)
河合 薫

 久々にいいニュースである。

https://www.youtube.com/watch?v=vtC11L1y3WE

 昭和のオッサンたちの常備品だった「ひとつぶのんだら スーッとネ ジン ジン ジンタン ジンタカタッタッタタ〜」の仁丹を製造する森下仁丹が、“第四新卒”の採用をスタートさせた。

毎日新聞では「『第四新卒』おっさん、おばはんWANTED」
東京新聞では「森下仁丹が『第四新卒』採用へ おっさん、おばはん求む」
読売新聞では「求む中高年、森下仁丹が『第四新卒採用』」
日経新聞では「森下仁丹、50代中心の中途採用導入へ 幹部候補に 」
朝日新聞では……掲載なし(私が確認した限りでは……)。

 はい、そうです。ごらんのとおり“第四新卒”とは、おっさん、おばはんのこと。

 森下仁丹の定義によれば、
「社会人としての経験を十分積んだ後も仕事に対する情熱を失わず、次のキャリアにチャレンジしようとする人材」をいい、
「性別・年齢を問わず採用」
していくことを、第四新卒採用と呼ぶのだという。

 募集職種は、「食品・医薬品の営業、開発、製造および新規事業開発に関するマネージメント業務」で、前職での業種・職種は問わない、正社員採用(試用期間3カ月あり)。

 求められる資質は「やる気」のみ!

 そう。やる気だ。

 そこで今回は「やる気」についてアレコレ考えてみようと思う。

 では早速(2週続きで動画からスタートになってしまった)、採用募集の動画をご覧ください。……泣けます!


「オッサンたちへ」
「あの頃は仕事がすべてだったんです。」
「ずっといた場所から出てみたい、そう思ったんです。」
「まだ、できると思うんです。」
「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない。」
「オッサンも変わる。ニッポンも変わる。」

「瞬間、『やばいことしたな』と思ったものです(笑)」

「案外、オッサンたちがこの国の希望かもしれない」――。

 ふむ。いいコピーである。

 「女性を輝かせる」前に「オッサンを輝かせろ!」と、私はこれまで幾度となく訴えていたので、やっとこういった会社が出てきたことが、率直にうれしい。

 現在、日本の総人口は約1億2700万人。そのうち大人人口(20歳以上)は約1億500万人。40代以上は約7700万人。これが2020年には約7800万人に増え、「大人の10人に8人」が40代以上になる。

 つまり、「オッサンにニッポンを変えてもらわない」ことにはえらいことになる。「いやいや、あとは楽させてもらいますよ〜」なんて50過ぎで、心の引退をされては現実問題として困るのである。

 で、ここで疑問がわくわけです。

 「オッサンにやる気さえあれば、ニッポンは変わるのか?」と。

 とかく昨今のオッサンたちはお疲れ気味。時折やる気を見せるものの「あの人、やる気だけはあるんだけど……」と、周りからちょっとばかりウザがられたり、やる気を見ればみせるほど周りのテンションを下げる“残念なオッサン”も少なくない。

 いったいどんな「やる気」ならオッサン自身も、ニッポン(=会社)も変えることができるのだろうか?

 “オッサン”の連発で申し訳ないのだが、結論から述べると私はオッサンの「やる気」が、「人格的成長(personal growth)」というポジティブな心理的機能によるものなら、変わると確信している。

 「人格的成長」とは「自分の可能性を信じる」気持ちのこと。専門家の中にはこれを「チャレンジ精神」と同一に扱う人もいるが、実際には異なる。 チャレンジ精神が、 自分の行動する力に価値を見出していることに対し、人格的成長は、自分の内在する力に価値を見出すもので、

 先の動画でいえば
「まだ、できると思うんです」
という、実にシンプルかつ根拠なき確信である。

 そう。「根拠のなき確信」ほど、人間の底力を引き出す無謀な心の動きは存在しない。

 実は森下仁丹の駒村純一社長も、自分の可能性にかけ、会社を変えたひとりだったのである(詳細は同社HPをご覧下さい。以下、抜粋して要約)。

 駒村さんは元商社マン。イタリアに駐在した時には現地の出資先の社長も経験するなど、まさに順風満帆のキャリアを歩んだ人物である。

 ところが、ある日ふと「このままではつまらない人生になってしまう」と感じ始める。引退に向けて安定した人生が約束されていたにも関わらず、だ。

 そこで一念発起し、52歳で商社を退職したそうだ。

 「早期退職の意向をメールで送ったときは、エンターキーを押した瞬間に、『やばいことしたな』と思ったものです(笑)。

(中略)

 転職先が決まっていたわけではありません。まだまだ自分は一線で働きたいという思いだけで、退職を決めました」

 駒村氏はこう語っている。

周りは敵ばかり

 退職後は、キャリアを生かし外資系企業を中心に就職活動を始めたが、就職先は決まらなかった。

 無職となり5か月が過ぎようとしたとき、「経営状況が悪化している大阪の老舗企業が、経営の立て直しの人材を探している」と知り合いからオファーが届いた。それが森下仁丹だった。

「私には、そうした企業を黒字転換させてきた経験がある。自分のキャリアが生かせるかもしれない」

 そう考えた駒村氏は、執行役員として入社。

 が、中に入って知った会社の現状は、想像以上に厳しいうえに社内には「やる気が失われていた」。

 売り上げはピーク時の10分の1。それでも社員たちには「創業120年を超える老舗がつぶれるわけがない」と、危機感を全くもっていなかったのである。

 そこで経営の立て直しを進めようとするのだが、「外から来たやつが何を言ってやがる」と反感を持つ人も多く、周りは敵ばかり。

 「社内に蔓延する『つぶれるわけがない』という空気を変えるには、新しい風を入れるしかない」――。

 駒村氏は、外部の人材を積極的に起用し、管理職に抜擢。当然ながら、生え抜きの社員は猛反発。それでも氏はやり方を変えなかった。

「新しい人が来て結果を出していけば、それが刺激になる。会社が本気で変わろうとしているという危機感を持ってもらうためには、まず行動で示すことが大切でした。改革には痛みが伴う。その痛みを避けていては、前に進むことはできない」

 自分を信じ、中途採用を広げ、部長職の平均年齢も40代と大きく若返り、2006年には社長に就任。本社の工場敷地も売却し、財務状況を健全化させ、次のチャレンジをするための下地を整えた。

 その結果、生まれたのが現在の経営の柱となっている、独自のシームレスカプセル技術。10年間で売り上げを倍にし、今に至っているのだという。

 「このままではつまらない人生になってしまう」という感覚は、まさしく「人格的成長」であり、「自分の内在する力に価値」を見出しているからこそ、「自分のキャリアが生かせるかもしれない」と考え、周りが敵だらけでも「会社を絶対に再生できる」と行動できた。

 ただ、おそらく駒村氏自身が公言していない、「苦悩」や「情けない自分」との葛藤もあったはずだ。

「辞めなきゃよかった」という言葉が出そうになる

 前回(「やりがい搾取」の共犯?文科省公認の天職信仰)書いたとおり、すべてのサクセスストーリーは「後付け」で、そこには決して語られない、あるいは本人でさえも忘れてしまった「かっこ悪い自分」が例外なく存在する。

 全くレベルは違うし、ここで個人的な話を持ち出すのはおこがましいのだが、私もそうだったから。前向きな気持ちで崖から飛び降りた先には、いくつもの鋭利な砂利が転がっていて。それを乗り越えるには節操なく自分の可能性を信じる気持ちと、痛みを痛みと思わないずぼらさが必要なのだ。

 私は「このままでいいのかな。もっとなんか出来るんじゃないかな。自分の言葉で伝える仕事がしたい」と、若気の至りで28歳のときスッチーを辞めたわけだが、実際に辞める決心をしたのは、「2年後の自分」を想像したときだった。

 「2年後、今のままCAをしている自分と、他のことをやっている自分、どちらが魅力的か?」――。そんな問いがふとわいてきて、後者の自分に魅力を感じ、辞めた。

 なぜ「2年後」で、なぜそういう問いになったのか、自分にも分からない。辞めたところでナニかが決まっているわけでもない。

 でも、「他のことをやっている自分の方が魅力的」という根拠なき確信が、辞めたあとの不安をワクワクした感情に変えたのである。

 とはいえ、現実は想像以上に厳しい。

 28歳の小娘に「自分の言葉」などあるわけがなく、元気いっぱい辞めたはいいけど、何も決まらない、進みたくても、前に進む道筋すらちっとも見つけられない自分がいて。

 スッチーの同期が「明日からロスだよ」なんて電話してくると、「辞めなきゃよかった」という言葉が出そうになり、でもその言葉を口にした途端、自分がどうにかなってしまいそうで、絶対に口にできなかったのである。

 なので、気象予報士第1号となり合格当日にたまたま「ニュースステーション」に出演するまで、私は友だちと連絡をとっていない。

 多分、潔く辞めたはいいけど「何者にもなれていない自分」が、ちょっとばかり恥ずかしかったんだと思う。

 ただ、そこに至るまで私が踏ん張れたのは、「それでいいんだよ。踏ん張れ」と背中を押してくれる人たちがいたからに他ならない。民間の気象会社で出会った気象庁のOBのおじいちゃんたち、社内でサポートしてくれた上司、そして、何よりも気象のずぶの素人の私を受け入れてくれた当時の社長さんがいたからこそ、私は砂利道をなんとか歩くことができた。

 そんなときに自分にできることといったら、気象の勉強をひたすらやることだけで。給料泥棒にならないよう、必死で勉強し、少しでも仕事の質をあげるべく努力することくらいしかできなかった。

 おそらく駒村氏にも、痛みの伴う改革を断行するうえで応援団がいたのではないだろうか。同じように「会社の空気を変えなきゃ」と危機感を持ち、社外からきた駒村さんを信じ、駒村さんの可能性に賭けた人がいた。「敵」の中に数少ない応援団がいて、彼らがいたからこそ、駒村さんも自分に課せられた仕事の質を必死であげるべく努力したのだと思う。

「学び続ける覚悟」を持つこと

 人格的成長――。

 「自分の内在する力に価値」を見出す、前に開かれた感覚である人格的成長は、あくまでも“今”を成長への通過点と捉え、不甲斐ない自分、自分に対する批判、といった向き合いたくない「自分の市場価値」を受け入れるまなざしを持ち、危機感を持つ感覚と言い換えることができる。

 そして、目の前の仕事の「質」を高めるために、「自分にできること=学び」に励む。とにかく動く。アレコレ考えずにとにかく動く。自分をどうこうするのではなく、目の前の仕事を「少しでもいい仕事」にすべく努力する。その結果、人格的成長が強化されていくのである。

 つまり、真のやる気とは、結局のところ「学び続ける覚悟」を持つこと。

 ほんのちょっとでもいいから、仕事の質を高めるべく勉強する。「自分の成果物」の価値を上げるべく邁進する。それが、結果的に自分を進化させ、「うん、成長したかも…」といった自負につながっていく。

 かなり前に本コラム(定年延長で激化する「“オッサン”vs若者」バトル)でも紹介したが、高齢者雇用を通じて生産性を10年で3倍まで向上させた「VITA NEEDLE社」(米マサチューセツ州のステンレス製のニードルやチューブといった特殊部品を製造する会社)の従業員もそうだった。

 高齢者の方たちは、「自分を雇ってくれた会社」を信頼し、誠心誠意会社に尽くした。

 自らの持つ能力と知見を最大限に生かし、積極的にスキルを磨き、社員同士で助け合い、互いにスキルを向上させ、自分の人生の集大成としてひたすら一生懸命働き、企業の生産性向上に寄与したのである。

 オッサンを求める「環境」に、「真のやる気」と「経験」という係数が加わればオッサンは化ける。でもって、オッサンが「環境」を変える。

 これまで600名超の方たちをインタビューしてきたけど、いかなる状況になっても腐ることなく、自分を信じ、前に踏み出した“おっさん”たちがいた。

・「まだ終わりたくない」と一念発起し転職を試みたものの、直後にリーマンショックが勃発。職安通いを強いられた元一流企業の部長53歳。

・50代には仕事がないことに気付き、給与半減覚悟で小企業に転職したマンネン課長52歳。

・「発展途上国で自分の技術を生かしたい」と英語学校に通い、青年海外協力隊に応募したメーカー勤務の男性49歳。

・「もっと会社の役に立ちたい」と、誰も行きたがらない離島勤務を志願した部長さん53歳。

 中には私のインタビューに答えるうちに、「自分にももっとできることがあるのではないか」と前に踏み出した人たちもいた。

 彼らはいずれも、誰もが知っている大企業に勤め、そこそこ出世していている人たちだったが、そういった属性を捨て、まる裸の「自分」に勝負をかけた人たちだった。

 その“オッサン”たちは、みんなイイ顔をしていた。

 そんなオッサンたちを受け入れる質のいい環境が増える火付け役に、森下仁丹がなればいい、と心から願う。

 ちなみに同社広報によれば、「社員数300人規模の会社なので採用は数人程度と考えていますが、3月6日午前中の時点で、応募数は約1000人に上っています」とのこと。おぉ!「やる気」に満ちたオッサンは、たくさんいるのだ。

 オッサン、がんばれ! オバさん、がんばれ! はい、オバさんの私もがんばります!

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このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/030300094/  

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