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幻冬舎plus2017年02月28日 11:30
「物価水準の財政理論」がなぜ今盛り上がっているか
(補足かつ重要な議論) <経済政策大全>第9回 - 小幡 績
この議論が今話題になっていることの背景、および理論自体の根本の構造の問題点について、最後に述べたい。
まず、この理論の学会における位置づけだが、基本的には異端の理論であり、世界的にもほとんどの経済学者は懐疑的だ。理論自体は1990年ごろ形となって登場し、90年代半ばに発展し、そして21世紀に入ってからも理論的には精緻化されてきた。ただし、理論としては進化してきたが、依然として異端であり続けている。
では、なぜ今盛り上がっているのか。それは、世界的に(成熟経済においては)、金融政策の限界が懸念されるようになってきたからだ。ゼロ金利が日米欧で長期にわたって継続し、日欧は抜け出る目途が立たず、米国も依然低金利である。
その中で、長期停滞論のように、経済構造が変化し、雇用を理想的な状態で安定させるには、実質金利がマイナスになることが必要だ、という議論が出てきた。これは現実の低成長経済、賃金上昇率の低下、質の高い雇用機会の減少という事実に直面して、経済学者や政策担当者の一定数の人々が考えている(悩んでいる)ことである。
そうなると、名目金利をゼロにしても、まだ実質金利が高すぎるから、その分、インフレ率を上げて、実質金利(名目金利−インフレ率)を引き下げることが必要という議論になる。
ここで、問題なのは、インフレにならない、ということである。極端な金融緩和を続けても、とりわけ量的緩和などの非伝統的金融政策と呼ばれる政策(短期金利を引き下げる政策以外は非伝統的政策。マイナス金利も含む)を長期に継続してもインフレ率が上がってこない。金融政策ではインフレをコントロールできないのではないか、という懸念、危機感が高まり、何か代替的な手段はないか、という模索の中で、ずっと90年代から異端だった理論にも出番が回ってきた、一つの代替案の候補として脚光を浴びることとなったのである。
しかし、これは理論の話、学問の世界での話であって、日本以外でまじめにこれを政策として取り入れようとする政府や中央銀行はないし、学者ですら、「物価水準の財政理論」の提唱者以外には、政策の候補と考える人はいない。つまり、一つの代替案とは、理論的な物価水準の説明としての理論の候補であり、実際の政策の候補にはなっていないのである。
以前、このコラムで書いたように、実際に財政赤字を増やしてインフレにするという政策をとった場合には、「物価上昇で政府債務である国債の実質価値が目減りする」のではなく、「国債のリスクプレミアムが上昇し(人々が国債を保有すると値下がりするという懸念が拡大し)、国債の実質価値が目減りすることになる」ため、インフレも起きないし、国富が減少する。「物価水準の財政理論」の結論、財政赤字で物価をコントロールする、というのは誤りなのだ。
一方、「物価水準の財政理論」による政策的なインプリケーションで意味のあることもある。第一に、財政政策と金融政策の相互依存ということは重要な視点で、当たり前のことがないがしろにされていたことに思い出させたことは意味がある。
第二に、中央銀行がバランスシートポリシー(量的緩和)で、国債などのリスク資産を抱えることは、将来、インフレにせよ、国債の実質価値下落にせよ、いずれにせよ「国債の価格下落により、大きな損失を抱えることになり、それは政府として埋め合わせるしかないから、財政支出を将来行うことになるという大きなリスクを抱えている」と警鐘を鳴らしたことも大きな貢献である。
最後に理論的に根本的な問題を指摘しておこう。
私の考えでは、金融政策で物価が変化しない最大の理由は、金融政策は資産市場をコントロールしているが、物価は財(ざい)市場の話であり、財市場に直接働きかけるのは財政政策の方なので、物価は金融政策よりも財政政策に強い影響を受ける、というのは自然な話である。とりわけ、量的緩和というのは、資産を買う政策で、金利を動かすことが直接的な手段ではないから、金利は資産市場にも財市場にも直接働きかけるが、資産を買うことは財市場には間接的な影響しかないから、ゼロ金利の下での量的緩和の枠組みでは、財政政策が重要になるのは当然だ。
一方、それでも、「物価水準の財政理論」が現実において妥当でないのは(要は眉唾[まゆつば]であるのは)、資産市場ではなく、財に直接働きかけるから財市場の物価に影響する、というのは考え方としては筋がよいのだが、物価に影響する(物価を上げる)メカニズムが、要は、資産効果であり、財市場ではなく、金融市場の価格付けに依存しており、結局、資産市場の話になってしまっているからである。
さらに、財市場の財の価格である物価に関しても、将来物価の期待水準の変化、という“期待”に働きかけるものであり、この期待のメカニズムに実体がない。金融政策で金融市場の期待を動かすことができないのに、財政政策で財市場の期待を動かすことができる、と考えるのは無理がある。なぜなら、資産市場は期待で動きやすい市場であり、明確にリスクという将来への予測を値付けする市場そのものであるのに対し、財市場は基本的に現在に関する市場であり、将来期待の織り込み方は間接的だからだ。
金融政策で期待を動かすことが不可能であることを批判して、自らは“期待”に期待する、というのは、危ういどころか、矛盾しているのだ。
小幡績(おばた・せき)
1967年生まれ。慶應義塾大学ビジネススクール准教授。個人投資家としての経験も豊富な行動派経済学者。メディアなどでも積極的に発言。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。著書に『リフレはヤバい』(ディスカバートゥエンティワン)、『成長戦略のまやかし』(PHP研究所)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(東洋経済新報社)などがある。
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「消費増税再延期」がデフレ退治の必須条件だ
政府のブレーンがノーベル賞学者に従うワケ
リチャード・カッツ :本誌特約記者(在ニューヨーク) 2017年2月25日
金融政策の限界論を提唱し、注目されている米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授。1月30日、都内で撮影(ロイター/Toru Hanai)
アベノミクスの生みの親、浜田宏一・内閣官房参与(米イェール大学名誉教授)が、消費税率引き上げを再延期すべきとの認識を示した。すべての食料品とエネルギーを除いた「コアコア」のインフレ率が現状の0.1%から上昇して1.5%水準で安定すれば、消費税率を年間1%ずつ引き上げても安心だが、それまでは据え置くべきとの主張だ。
消費税率は現行の8%から2019年10月に10%へと引き上げられる予定だ。安倍晋三首相はつねに浜田氏の主張を採用するわけではないが、今回は耳を傾けるべきだろう。
財政出動でデフレ退治を
浜田氏は、ノーベル賞経済学者、クリストファー・シムズ氏(米プリンストン大学教授)が提唱した「物価水準の財政理論」(FTPL)を、日本で実践すべきと主張している。
両氏は2月10日、米コロンビア大学で開かれたセミナーで講演し、財政刺激策を内需拡大だけでなく、デフレ退治にも活用できると主張した。こうした主張は安倍首相にとって、喜ばしいものだ。
経済学者の大半は、中央銀行が希望どおりの水準のインフレを創出できるという、故ミルトン・フリードマン氏の主張を信奉してきた。しかし日本銀行の黒田東彦総裁が2015年度のインフレ率2%目標達成に失敗したのを受けて、多くの学者が立場を変えた。
浜田氏もその一人である。同氏は国際NPOプロジェクト・シンジケートの英文コラムで、見解を変えた理由を次のように述べた。「シムズ氏が説明したように、インフレを起こすには金融政策だけではなく、財政赤字増大を伴った財政政策が必要だ。2012年のアベノミクス開始当初は日銀による大量の流動性供給がデフレを克服すると予想されていたが、量的緩和が需要を喚起する効力は時間の経過とともに薄れる」。
FTPL学派は、デフレ克服には、政府が政策をやり抜く覚悟と中央銀行による支援が不可欠としている。同学派の重鎮であるエリック・リーパー氏は、コロンビア大のセミナーで、過去の成功例として1930年代のフランクリン・ルーズベルト時代の財政政策を挙げた。
円高是正策は首相の耳に届かない
浜田氏は、円相場に関するメッセージも発したが、こちらの方は安倍首相の耳には響きそうにない。浜田氏の主張を容れれば、トランプ米大統領に逆らう形になるからだ。
浜田氏は、日本経済の回復が円相場の反発で阻害されているとして、円高是正には為替介入と日銀による外債購入が必要と主張した。第2次安倍内閣発足直後の2013年に開かれた20カ国・地域(G20)財相・中銀総裁会議で、米国などが円相場押し下げ目的での外債購入を行わないことで合意したのを受け、日銀は今、購入対象を国内債に限っている。
金融緩和の副作用として円安が続くかぎり、世界各国の金融当局はそれを許容する。だが一国の中銀が外債購入による介入に踏み切れば、保護主義者だけでなく、多くの政府がそれを為替操作だとみなすだろう。
安倍首相はこうした問題を双方の財務相に委ねることでトランプ氏と合意し、とりあえずの勝利を収めた。だが、トランプ氏のツイートを止められるわけではない。今後トランプ氏に挑戦する姿勢を示せば、カウンターパンチを食らいかねない状況にある。
http://toyokeizai.net/articles/-/159165
【第9回】 2017年2月20日 村上尚己
「日銀=手詰まり」論は誤り。注目すべき2政策とは?
メディアが報じない「マイナス金利」以降の金融政策
マイナス金利の導入以降、日本銀行の金融政策は手詰まりになったという通説がそこかしこで見られるようになった。しかし、日本の経済メディアが十分に報じていないだけで、実は日銀は新たな手を打ちはじめている。外資系金融マーケット・ストラテジスト村上尚己氏の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。
中央銀行の仕事は「コミュニケーション」である
以前の連載で見たように、マネーの価値は中央銀行・政府が打ち出す「政策」と、それに対する市場の「思惑」とのなかで決まってくる。その意味で、中央銀行・政府には市場にわかりやすくメッセージを伝えていく工夫が求められる。
「中央銀行と市場とのコミュニケーション」の代表格が、インフレ目標(Inflation Targeting)である。これは「中央銀行は一定のインフレ率を達成するまで金融緩和を続ける」ということを市場に確約する、一種のコミットメントである。インフレ目標があることで、投資家は明確な基準を持ちながら、安心して取引を進めていくことができる。
一方、こうしたコミュニケーションがうまくいかないと、政策と市場のベクトルが合わないこともある。2016年の夏頃までの日本でも、このチグハグ状態が続いており、その結果として円高・株安が長引いていたというのが実情だ(幸運にもその風向きはトランプ当選により大きく変わったが…)。
たとえば、日銀は2015年12月に「償還期限の長い国債の購入量を増やす」という内容の発表を行っている。これを実施すれば、当然、20年物、30年物など、超長期の国債金利は一段と低下する。つまりこれは、事実上の利下げ策であり、金融緩和的な効果を持つアクションだったわけだ。
しかしどういうわけか、日銀はこの措置を「金融緩和」と表現しなかった。そのため、市場関係者は日銀の真意を測りかね、市場内にしかるべきリアクションが起きることもなかった。これは市場との対話の典型的な失敗例であり、2016年前半の日銀のコミュニケーションミスの発端だったと言える。そこで今回は、その失敗の典型としての「マイナス金利」について見ていくことにしよう。
[通説]「マイナス金利の大失敗。日銀・政府はもう手詰まり」
「対話ミス」としてのマイナス金利
日銀が従来の金融緩和の枠組みに加えて、2016年1月末に導入したのが例のマイナス金利である。これは、金融機関のあいだでの日々の資金の貸し借りのレート(無担保コール翌日物金利)や短期国債の金利を、マイナスの領域にまで引き下げる政策だ。レートがマイナスだということは、資金を調達すればするほど利子が得られるということだ。こうなれば、銀行の貸出金利は一段と押し下げられるので、企業などの資金繰りがより楽になる。理論上は、景気刺激的な作用を期待した緩和策である。
ただ、ご存知のとおり、日銀のこの政策は想定されていた効果を発揮しなかった。その背景には2つの事情がある。一つは、2014年6月に欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入した際、ユーロドル相場などに影響しなかったという先例があり、円安の思惑を市場内に形成するほどのインパクトを持ち得なかったこと。
そしてもう一つは、同時期に米FRBが2回目の利上げ先送りを発表し、期待されていた円安材料がなくなったことだ。結果として、マイナス金利導入後に、円安に転じたのはわずか2〜3日で、その後は大きく円高・ドル安が進む結果となった。
ドル円相場の推移(マイナス金利導入前後)
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私も自分のコラムなどで、一連の日銀の行動については「迷走」とやや厳しい言葉で評価していた。未曾有の領域で試行錯誤をする日銀を一方的に批判するのはアンフェアかもしれないが、市場との対話という観点からすれば、とても合格点とは言えないミスが続いたのは事実である。
実際、投資家たちが日銀のこれらの対応を「デフレ脱却を再起動させる緩和強化」と見なすことはなかった。円高に追い討ちをかけるように原油安が続いたことで、インフレ率はマイナス圏にまで下落し、世の中のインフレ期待は著しく低下することになる。ダメ押し的に4月末の金融政策決定会合での追加緩和措置の見送りがあり、その後、ドル円相場はほぼ2年前(2014年半ば)の1ドル100円前後の円高にまで逆戻りした。
あまりにひどい状況が続き、夏場に日銀は総括検証を通じて軌道修正を余儀なくされた。中央銀行が金融政策を通じて適切に市場を運営していくうえでは、巧みなコミュニケーションを通じた信認形成が不可欠である。一連の失策により「2%インフレ」への信認が失われていき、日本の経済メディアはこれを喜ぶかのように「アベノミクス失敗」を騒ぎ立てた。
「強い市場介入」を可能にするYCC導入
そんななか、2016年末に向けて市場の雰囲気が円高・株安から円安・株高へとガラッと変わってきたのは、何もトランプ大統領誕生が決まったからだけではない。2つの通貨の動きは両国の経済政策に大きく左右される。日本の側でも、しかるべき金融政策が打ち出されていたからこそ、この円安・ドル高が実現しているのである。
日本側で起きていた転換は2つ、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と「オーバーシュート型コミットメント」である。これらの政策では、金融緩和を確実に進めていくという日銀の意志がしっかりと表現されている。
日本の経済メディアは、この政策フレームワークの転換を十分に報じていない。また、伝えるにしても、ひどく歪んだ形でしか取り上げていない。これらの政策が持つ意味合いを正しく把握していただくために、ごく手短に解説しておくことにしよう。
まずは9月に打ち出された長短金利操作付き量的・質的金融緩和(Quantitative and Qualitative Monetary Easing with Yield Curve Control)である。イールドカーブ・コントロールの頭文字をとってYCCと呼ばれることが多い。なお、量的緩和とは国債購入によって日銀のバランスシートを拡大させインフレ率の押し上げを図る手段、また質的緩和とはETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の購入によって金融市場のリスクテイクを後押しする手段のことである。
YCCは、日銀による金融緩和の政策目標を、従来の「ベースマネーの量」から「短期金利と長期金利のレート」にも広げることを意味するのだが、それだけ言われてもよくわからないという人がほとんどだろう。事実、メディアでは「従来の量的緩和が限界を迎えたので、金利を目標にせざるを得なくなったのだ。アベノミクスは敗北した」というきわめていい加減な報道があふれていた。
そもそも日銀は、追加緩和策としてのベースマネー拡大を捨てたわけではない。黒田東彦総裁や事務方らの説明を聞いていても、現行の400兆円程度で「国債購入の限界」がやってきたなどと主張する人がなぜ出てくるのか、本当に理解に苦しむところだ。現在の日本の状況に鑑みれば、公的債務残高の1000兆円規模までベースマネー拡大は理論的に可能である。結局のところ、YCCが持つ真の意味をつかみかねているということだろう。では、YCCとは何なのか?
「長期金利」もコントロール可能に
一般に、中央銀行が国債売買などの公開市場操作を通じてコントロールできる金利(政策金利)は、満期がきわめて短い取引(無担保コール翌日物など)の短期レートである。
しかし、これまで大量の国債を購入してきた日銀は、通常は制御できない10年物国債などの長期金利であっても操作できるようになっている。中央銀行が長期金利の水準までをもゼロ近傍にコントロールする金融緩和は、国債市場への介入度合いという観点で言えば、国債購入を一定ペースで購入し続ける通常のオペレーションよりも「強い」介入策である。これがYCC導入の本質的な意味合いだ。
さらにこの政策には、イールドカーブをスティープ化させ(満期が短い国債に比べて、満期が長い国債の金利を上昇させる)、超長期国債への投資を行う金融機関や年金基金の基盤を安定させるという防御的な意味もある。マイナス金利でダメージを受けた負の部分を手当てし、銀行などの株価を下支えするという配慮も備わっていたわけだ。
2016年9月のYCC導入直後、私は「『進化』と呼ぶに相応しい日銀の政策転換が円高修正と日本株高をもたらす」と評価・予測しており、これが実現した格好である。今回のトランプ相場では米大統領選という海外要因ばかりが注目されるが、日本の側でも大きな枠組みの転換が起きていたことも見落としてはならないのである。
「2%インフレ」を確約する
オーバーシュート型コミットメント
YCCとともに重要な日銀の政策変更が、オーバーシュート型コミットメントである。これは政策目標である「インフレ率2%」が実績値ベースで数カ月にわたって達成されたあとでも、日銀が金融緩和を継続すると約束するものだ。
通常のインフレ目標の枠組みでは、目標値は達成目標であると同時に、急激なインフレを避けるための「上限」としても見なされる。そのため、インフレ率が目標に達すれば、その時点で中央銀行は引き締めに転じるのが基本だ。一方で、今回の「オーバーシュート型コミットメント」は、インフレ率が2%よりも上振れするのを日銀が許容する用意があるということを意味しており、早期の目標達成により強くコミットする姿勢を明示したものにほかならない。
こちらの政策についても、日銀からのかなりわかりやすいメッセージを曲解して、「日銀の金融政策は持久戦に入った」などと断定する的外れな評価が日本のメディアには見られた。オーバーシュート型コミットメントは、日銀が能動的にインフレ期待を押し上げて、2%インフレ達成の時期を前倒しすることを本来の狙いとしている。
これら2つの新フレームワークの効果は、トランプ相場の到来によって見事に示された。また、2016年12月末にFRBが2回目の利上げを決めたが、それでも日本の長期金利がゼロ近傍に抑えられたままなのは、YCCによって長期金利をゼロ誘導した結果である。まさに時宜を得た日銀の深謀遠慮と言うべきだろう。
なお、予告的に言えば、今後の連載で解説する予定の「トランポノミクス」が加速していくなかでも、これらの新政策は日本経済にとって重要な意味を持っている。
[通説]「マイナス金利の大失敗。日銀・政府はもう手詰まり」
【真相】否。2つの大きな「政策転換」が再起動のカギ。
村上尚己(むらかみ・なおき)
アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト。1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(中央経済社)がある。
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