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Amazon Alexaを搭載したデバイスが次々に発表されている。写真は今年のCESで発表されたLGのAlexa対応冷蔵庫 (写真・DAVID BECKER/GETTYIMAGES)
家電も小売りも飲み込むAmazon Alexa「真の狙い」 Amazon Echo年内上陸へ、対応不可避の日本企業
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8978
2017年2月28日 宮田拓弥 (Scrum Venturesゼネラルパートナー) WEDGE Infinity
毎年、年が明けてすぐ、世界中の家電メーカーやスタートアップが集まる巨大イベントがラスベガスで開催される。
世界最大級の家電見本市、CESだ。ここ数年は、コネクテッドカーや自動運転などが大きく注目されている大手自動車メーカーも揃って出展するようになり、さらなる盛り上がりを見せている。
今年のCESで、家電メーカーや自動車メーカーを押しのけて、世界中の話題をさらったのが、Amazonであった。eコマースサービスのイメージが強いAmazonだが、2007年にリリースされた電子書籍リーダーKindle以降、いくつかのハードウェア製品を発表している。
今回のCESで注目を集めたのは、14年11月に米国で発売された円筒型のワイヤレスAmazon Echo(エコー)、そしてその心臓部である「Amazon Alexa(アレクサ)」スピーカーだ。
Amazon Echoは、高さ20センチ強の円筒状の形状で、スピーカーと7つのマイクから構成されている。タッチパネルはついておらず、声で「Alexa」と呼びかけると、音声を認識し、様々な操作が可能となる。アラームなどの機能のほか、ネットワーク経由でAmazonやパートナー企業の様々なサービスと繋がり、音楽をストリーミングする、タクシーを呼ぶ、ピザを注文するなど、多種多様な機能が「話しかけるだけ」で操作可能となっている。
人の声を認識する音声認識技術はここ数年で、認識精度が飛躍的に向上している。Amazon Echoと同様の音声認識型端末Google Homeを発売しているGoogleによれば、スマホから音声で検索をする人の割合も急増しており、現在モバイルでの検索の20%にも達しているという。この割合は今後ますます高まっていくものと予想される。
私自身もAmazon Echoをキッチンとデスクに置き、毎日のように利用しているが、その認識精度はほぼ問題がないレベルだと感じている。
■万人のためのインターフェース「声」
Amazon Echoは、米国で大ヒット商品となっている。15年にはBOSEなどのスピーカー専業メーカーを抑えて、オンラインで最も売れたスピーカーとなっている。16年には「Amazon全体で最も多く販売された商品」となり、昨年末のクリスマス商戦では、人気のため品切れ状態が続いていた。
米国で大ヒットしている「Amazon Echo」(写真・AP/AFLO)
Amazonは、自社のハードウェアであるEchoに加えて、当初から心臓部であるAlexaの「パートナーシップ戦略」を展開してきた。16年には、大手自動車メーカーのFordと提携し、車の中から自宅にある家電を声で操作したり、家の中から車を操作する機能の提供を発表したりしている。
今年のCESでは、自動車にとどまらず、Alexaの音声インターフェースを採用した企業や製品カテゴリーは一気に増加した。LGや米Whirlpoolなど多くの大手家電メーカーと提携して、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ロボット、スマホなど様々な「Alexa家電」が発表された。
例えば、洗濯機に「Alexa、残り何分?」と声で聞くと、洗濯機が「あと15分です」と音声で回答したり、テレビに「Alexa、スポーツ番組は今何やってる?」と聞き、自分の好みのチャンネルに変えさせるといったことが可能になったりしている。
ハードウェアの操作インターフェースの進化といえば、近年ではタッチパネルの登場が大きな役割を果たした。キーボードは多くの人にとって敷居が高かったが、使いやすいタッチパネルは、世界で20億人もの人々が使うようになったスマホ普及の立役者となった。そして、次は「声」という訳だ。
「声」にはいくつかのアドバンテージがある。1つ目は、「ながら操作が可能」なことだ。Amazon Echoの設置場所は、キッチンが圧倒的に多いという。料理をしていて両手がふさがっている時に、振り向きもせずに「Alexa、タイマー8分セットして」と指示をし、パスタをゆでることができる。Echoの人気の利用シーンは、上位から「タイマー」「音楽」「ニュース」となっており、いずれもスマホでも操作可能だが、何かをしながら作業ができるというのが人気になっているようだ。
2つ目は、「多様な操作が可能」なことだ。Alexaは、「スキル」と呼ばれる機能があり、この名称と具体的な指示の内容を組み合わせるだけで操作が可能だ。例えば、「Alexa、X証券に、Y社の株価を聞いて」と話しかければ、X証券のスキルから今の株価を教えてくれる。慣れてしまえば取り扱うのは簡単だ。
暖房をつけたい時は、「Alexa、リビングルームを25℃にセットして」と話しかければ良い。この組み合わせだけであらゆる操作が可能なのだ。このAlexa向けアプリとも言える「スキル」を開発する企業は現在急増しており、16年末の約1000個から、現在では8000個を超えている。
3つ目は、「ほとんど誰でも使える」ということだ。我々は日々声を使い様々な会話をしている。家族に話しかけるのと同様に使えるAlexaは、まさに「万人のためのインターフェース」だと言える。タッチパネルはスマホの普及に大きな役割を果たしたが、多くの人が自由に操れる「声」によるインターフェースは、それ以上に大きな存在になる可能性を秘めている。
Echoの利用シーンで、人気が高いのが「買い物」だ。3割程度のユーザーが、Amazon経由で実際に買い物をしているという調査結果もある。商品を選ぶためのスクリーンもないスピーカーから、利用者は一体どんなものを購入しているのであろうか。
Amazonが、15年から販売している「Amazon Dash Button」というハードウェアがある。Amazon Dash Buttonは、WiFiに接続される消しゴム程度の大きさのボタンで、それぞれ一つのブランドのロゴが表示されている。
トイレットペーパー、洗剤、浄水器のカートリッジなど、頻繁に注文する日用品を、「ボタンを押す」だけでAmazonで注文できるハードウェアだ。Amazon Dash Buttonは、米国では200種類以上まで拡大しており、利用も大いに広がっているようだ。
Amazon Echoでの買い物は、このDash Buttonに非常に似ている。Echoからは、日用品、ペット用品、子ども用品など商品選択の余地があまりないものが、たくさん注文される傾向にある。洗い物をしている途中に洗剤がなくなり、「Alexa、洗剤買っておいて」という具合だ。昔はパソコンを立ち上げていたものが、今はスマホのアプリとなり、これからは「家電に話しかける」という時代がやってくる。
「Alexa冷蔵庫」はAmazon Freshと連動(写真・KEVORDJANSEZIAN/GETTYIMAGES)
今回、家電メーカーのLGからAlexaが搭載された「冷蔵庫」が発表された。LGのAlexa対応冷蔵庫は、さらにAmazonが展開する生鮮食品デリバリーサービス Amazon Freshとも連動している。冷蔵庫を開けて牛乳がなければ「Alexa、牛乳買っておいて」と冷蔵庫に話しかけると、2時間以内に自宅まで届くということだ。
まずは日用品から始まり、生鮮食品へ。将来的には、Alexa対応の鏡で洋服のバーチャル試着ができるようになれば、洋服なども家電から注文する時代が来るかもしれない。
みずほ証券の調査によれば、将来的に、Alexa経由でのeコマースの売り上げが、Amazon Echoのハードウェアとしての売り上げを追い抜くと予想されている。つまり、Amazon Echoの本質は、「ハードウェア」ビジネスではなく、「eコマース」ビジネスなのだ。
自社のハードウェアEchoが大ヒットしているにもかかわらず、それと競合するかもしれないハードウェアを多数生み出すことになるAlexaのパートナーシップ戦略には、「IoTコマース」というまだ見ぬ巨大マーケットにおける覇権を握ろうというAmazonの深謀遠慮が隠れているのかもしれない。
■「家族の会話」や「足音」も聞いているAlexa
Amazonの戦略の核となっているのが「プライム会員」と呼ばれる会員制度だ。米国では年会費99ドルを支払ってプライム会員になると、2時間以内の商品の即時配送、配送料無料などの特典が付与される。特典はこうした配送関連にとどまらず拡大を続けており、現在では、音楽聴き放題、映画/ドラマ見放題、Kindle読み放題などコンテンツ分野にも及んでいる。こうした取り組みも功を奏して、会員数は順調に伸び、すでに8000万人を超えたと言われている。
Amazonで買い物をすると、過去の購買履歴や他人の情報などからオススメの商品をレコメンドされるのは有名だが、これが音楽や映画などの世界にも広がっていくことになる。裏を返せば、Amazonが我々について「知っている」ことは、これまでは買い物の傾向だけだったものが、趣味嗜好などさらに幅広い分野に広がっていくことになる。Echo、Alexa家電が普及することで、さらに拡大する。
Alexa対応端末は、指示を聞くために「常に電源がON」の状態で家の中の音を聞いている。また、複数のAlexa端末が同じ空間に存在することを想定して、利用者がどの端末に話しかけているかを理解するための空間認識機能が付いている。つまり、家庭の中で、音がどこから発せられているかを常に把握することが可能なのだ。
すると、これまでは家族しか知らなかった、自宅の中での家族の行動パターン(起床時間、食事時間、入浴時間など)、移動ルートなど非常に細かい家庭内での情報がAmazonに溜まっていくことになる。企業は、新商品の企画や広告効果の測定などの際に、現在でも限られたサンプル数のユーザー調査などを活用している。
今後Amazonは、Alexa家電を通して、例えば「家族全員で食事をするのは週に何回あるか?」「食事中にTVをつけている家庭の割合は?」「TVCMから影響を受けて商品を購入した割合は?」といったことを具体的なデータとして把握し、レコメンデーションなどに活用する可能性もある。
最近Amazonが力を入れているのが「プライベートブランド」だ。乾電池、ペットフード、皿など現在800アイテムを超えるプライベートブランド製品を提供している。最近では、日本でもCMをやっているが、映画やお笑い番組などのコンテンツでもプライベートブランド化、つまり自社制作の作品をどんどん増やしているのはご存じの方も多いだろう。
当初は、「オンラインでの買い物を理解して他社商品をレコメンドする」のがAmazonであった。これからは、「リアル/オンラインであらゆるデータを収集し、それを元に企画製造した自社商品を販売する」Amazonへと進化していくのだ。
■噂される年内の上陸日本企業がすべき対応
現時点ではAmazon Alexaは日本語対応しておらず、Amazon Echoは日本では販売されていない。音声認識技術はデータの蓄積が非常に重要となるため、日本語対応にはかなりの時間を要するのではないかと言われていた。だが、複数のハードウェアメーカー関係者に話を聞いたところ、どうやら年内に日本で発売されるようだ。Google Homeも年内発売ということだから、日本にも「声」の時代が一気にやって来るということだろう。
Amazonに負けじとGoogleが開発した「Google Home」(写真・SPENCER PLATT/GETTYIMAGES)
Alexaが切り開く「声」のインターフェースが、今後大きな存在となることは間違いない。Amazon EchoやGoogle Homeという新しい音声デバイスの上陸を控え、日本企業はどんな対応が考えられるのであろうか。
私のアドバイスは、まずはいち早く「利用者の声を聞き始める」ということだ。いくつかの方法があるが、一番手っ取り早いのは「スキル」を提供することだ。米国では、小売り、金融機関、メーカーなどありとあらゆる業界の企業がスキルの提供を始めている。
Alexa家電自体が新しいコンセプトのため、どのようなカテゴリーのどんなスキルがヒットするのかはまだわからないが、スマホにおけるアプリのような大きな可能性を秘めている。いち早くユーザーの「声」を聞き始めることで、商品企画などのヒントも見つかるかもしれない。
もう一つはハードウェアを作っているメーカーであれば、Alexa家電の開発を検討することだろう。Amazonは、Alexaに関してパートナー戦略を採っており、基本的にはメーカーが、無料でAlexaをハードウェアに組み込むことができる。OSとスキルを握られた中でAlexa家電を展開することにどれだけの旨みがあるかは未知数だが、ヒット商品となれば、Amazonと同様にいち早く「家庭の声を聞ける」ことになるのは大きな意味がある。
もちろん望むらくは、Alexaと正面から戦いたいところだ。この戦い方をしているのは、現時点ではGoogle Homeを出しているGoogleと、中国で独自OSのYun OSを展開しているAlibabaのみだ。いずれもAndroidをベースにしており、技術的には実現可能だが、この戦略を採るには膨大な予算とリソース、そして時間が必要であり、現実的ではないかもしれない。
07年のiPhone誕生から10年の時を経て、今度は「声」の時代がやって来る。この新しいカテゴリーの製品が、人々の暮らし、ライフスタイルをどのように変えていくのか非常に楽しみだ。同時に、スマホでは非常に厳しい結果となった日本メーカーが、この新しいカテゴリーでどのような戦い方をしていくのかにも注目していきたい。
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