http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/501.html
Tweet |
トランプ政権は、アジアで日本が主体的に協調体制を築くラストチャンスとなる可能性も否定できない (※写真はイメージ)
「トランプ時代」の世界で日本が生き残るヒント〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170223-00000062-sasahi-bus_all
AERA 2017年2月27日号
ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して約1カ月。新大統領は意に沿わない企業やメディアをツイッターなどで厳しい言葉で恫喝してきた。グローバル企業は戦々恐々としている。トランプ政権で世界はどう変わるのか。AERA 2017年2月27日号では、「トランプに勝つ日本企業」を大特集している。
米国の保護主義は今に始まったことではない。米国の通商政策の本質を捉え、「トランプ時代」の世界で日本が生き残るヒントを探る。
* * *
米国の通商政策は大きく捉えれば、1776年の建国から1945年の第2次世界大戦に至る時代は保護主義、その後は自由貿易が基調といえる。
だが、第2次大戦後も米国は、保護主義的な顔をのぞかせる局面が幾度もあった。
「歴史的に見ても米国の通商政策は必ずしも自由貿易、保護主義のどちらかに固定的にコミットしてきたわけではありません」
●転機はニクソン時代
津田塾大学の西川賢教授(米国政治史)はこう解説する。
欧米先進国が戦後、自由貿易体制を牽引したのは、ブロック経済が第2次大戦を引き起こす要因になった、との反省があるからだ。1929年の世界恐慌の際、自国産業保護に傾く各国の関税引き上げ競争に拍車をかけたのが、30年に米国が共和党主導で制定したスムート・ホーリー関税法だ。同法に基づく広範囲の高関税措置により国際貿易額は大幅縮小し、景気低迷の長期化、ひいては世界大戦の誘発につながったとされる。
こうした認識に基づきトルーマン政権時代の48年に発効したのが、多国間交渉を旨とする関税貿易一般協定(GATT)だ。ケネディ大統領が提唱したケネディ・ラウンドは画期的な関税引き下げを実現した。
転機はニクソン政権時代の70年代に訪れる。経常赤字に転落した71年、米国はドルと金の交換の一時停止や、輸入品に10%の課徴金を課す緊急政策(「ニクソン・ショック」)を発表。74年には通商法301条を制定し、「不公正貿易慣行の是正」や「二国間交渉の強化」にシフト。これらが後の「日米貿易摩擦」へと連なっていく。
このように、米国は二大政党の下、「労組に支持された民主党」は保護主義的で、「産業界の支持を受けた共和党」は自由貿易の推進を標榜してきた、との単純な枠組みには収まらない。
労組の衰退、共和党内の宗教右派の台頭、反グローバル感情の広がりなどを受け、近年はさらに状況は複雑化している、と西川教授は指摘する。
●80年代と現在は違う
今月の日米首脳会談で、トランプ大統領は対日貿易、為替批判を表面上封印。今後は麻生太郎副総理、ペンス副大統領が包括的な「経済対話」を進める。日本はどう対応すべきか。
80年代の対米貿易交渉に臨んだ元外務事務次官の薮中三十二氏はこう強調する。
「80年代と現在の日米の経済構造の違いを、冷静に見据えなければいけません」
最大の変化は、日本企業の現地生産が進んだことだ。日本自動車工業会によると、日本の自動車メーカーがもたらす雇用は全米で約150万人に上る。
さらに決定的な違いは米国の最大のターゲットは日本ではないことだ。米商務省発表の2016年の貿易統計(通関ベース)によると、モノの貿易での対日赤字は全体の9%。47%を占める中国とは大きな開きがある。
「これから本格的な米中貿易交渉が始まります。その前に矢面に立って、あたかも日本が一番の問題国のような振る舞いをするのは賢明ではありません」
薮中氏が留意するのは、トランプ大統領が早々に離脱表明した環太平洋経済連携協定(TPP)の政治的側面だ。TPPには、日米が中心になってアジア太平洋地域の自由貿易圏を確立し、台頭する中国に先んじてルールを決める体制固めの狙いがあった。
TPPが事実上崩壊した今、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)締結に向け、日本がリーダーシップをとるべきだ、と薮中氏は唱える。RCEPは、日中が東南アジア諸国連合(ASEAN)に共同提案した経緯がある。
「日本はTPPで議論した内容も盛り込み、より先進的なルールを提案できます」(薮中氏)
●雇用イニシアチブは愚
一方、保護主義を擁護する識者もいる。
評論家の中野剛志氏は著書『世界を戦争に導くグローバリズム』(14年、集英社新書)で、「自由市場という制度は、経済が縮小する中では、緊張と摩擦を生み出す」と主張する。確かに、イギリスのEU離脱の流れもしかり、とうなずかせる。
さらに中野氏は「1920年代末以降の保護主義の台頭が、世界経済を崩壊させ、第2次世界大戦の経済的な原因となったという通説」についても、「疑わしい」と唱える。理由はこうだ。
「世界経済の崩壊の原因は、保護貿易よりもむしろ世界恐慌の勃発にある。だが、その世界恐慌の原因となったバブルとその崩壊(いわゆる「暗黒の木曜日」)は、保護主義ではなく、むしろ資本移動の自由がもたらした」
日米首脳会談に向け、日本政府は米国へのインフラ投資などで70万人の雇用を生み出す「日米成長雇用イニシアチブ」を準備した。中野氏はこうしたアプローチに否定的だ。
「これはトランプ氏が批判する、日本の対米貿易黒字を前提としているため愚策です。それよりも、日本は財政拡大により内需主導で成長すれば、対米貿易黒字額も減り、日米双方にとって利益になります」
経済と安全保障は表裏一体だ。保護主義的な「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領の誕生で、中国の覇権的な動きがより活発化するのに備え、自主防衛強化を説く声も広がりつつある。
●日本は今がチャンス
元中国大使の丹羽宇一郎氏はそうした風潮に釘を刺す。
「自分の国は自分で守る覚悟が必要です。ただし、中国との力と力の対決は避けなければなりません。専守防衛を維持し、日本の国是である平和と自由貿易を守ることが何より重要です」
超大国である中国と軍事面で対抗しようとすれば、その負担とリスクは計り知れない。貿易が縮小しても、「自活」できる米国やオーストラリアといった資源国とは異なり、日本は貿易立国の立場を失えば、立ちゆかなくなる。だがこれは、13億人超の人口を抱え、エネルギーや食料、水、自然環境をめぐる深刻な課題に直面している中国も同じなのだ。
「グローバリゼーションは日本の国是であると同時に、中国の国是でもあるのです」(丹羽氏)
RCEP推進を唱える前出の薮中氏も、こう説く。
「中国と経済を含む幅広い分野の協力関係を構築することが、日本の安全保障の強化にもつながるのです」
外務省のASEAN加盟国を対象にした対日世論調査(14年)では、「最も信頼できる国」として日本を選択した割合は33%でトップ、中国は5%。最新(15年)の調査では日本22%、中国18%だった。
「日本が東アジアでリーダーシップをとるうえでの強みは日米同盟の後ろ盾に加え、ASEAN諸国の信頼を得ていること。そうした環境の中で中国と向き合っていく、今はそのチャンスです」(薮中氏)
中国を敵視するのではなく、国際社会のルールに導く役割が日本には求められている。米国の覇権が着実に衰退していく過程にある今、トランプ政権は、アジアで日本が主体的に協調体制を築くラストチャンスとなる可能性も否定できない。(編集部・渡辺豪)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民119掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。