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貿易赤字は国の「損失」にあらず
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170222-00159801-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 2/22(水) 20:31配信
ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任して1カ月が経ちました。入国制限の大統領令などに対し米国内で反発や批判が高まっていますが、トランプ大統領は強硬な姿勢を続けています。
そんな中で行われた先日の日米首脳会談では、心配された貿易・為替問題について同大統領から日本を批判する発言は出ませんでした。これは日本側が事前に準備して、批判をうまく封じたと言えます。
しかし、いずれまた日米貿易不均衡や円安への批判を再開するのではないかとの不安は消えません。前回の当コラムで貿易赤字などをめぐる同大統領の主張には「ウソ」が多いことを指摘しましたが、そもそも貿易赤字についての同大統領の認識自体に問題があるように見受けられます。今回はそれを検証しましょう。
トランプ大統領のこれまでの発言を見ると、貿易赤字を「ロス(損失)」と表現し、貿易不均衡の是正を「ディール(取引・交渉)」ととらえています。前回のコラム配信後、新たに2016年の貿易収支が発表されました。それによると16年の「モノ」の貿易赤字は7343億ドルでした。トランプ流にいえば、米国は7343億ドルの損失を出したことになります。
しかし、それを財務諸表のひとつである損益計算書の「損失」のようにとらえるのは誤りです。貿易赤字、つまり輸出より輸入のほうが多いことは、その国の需要を賄うために多くのモノを海外から輸入した結果であり、国内の景気が拡大し消費が増加すれば輸入は増えます。
換言すれば、世界一の経済大国の需要を賄うにはある程度、輸入に頼らざるをえないのです。むしろ、米国内には足りない多くのモノが海外から集まって需要を満たすのですから、それは「損失」とは言えないわけです。
■ 赤字分は米国へ還流し株価など下支え
それぞれの国によって必要とする品目や得意とする品目は異なります。貿易は多国間の輸出・輸入を通じて自国の需要を賄うために行うものです。したがって二国間だけで、しかもディールによって収支を均衡させようとすること自体が適切ではありません。
しかし、思い起こせば、米国は1980〜90年代に最大の貿易赤字相手国だった日本に対して黒字削減を強く要求。個別品目でも不均衡是正を迫りました。しかもそれを交渉によって日本に譲歩させようとするものでした。まさに現在、トランプ大統領が言ったことと同じようなことをやっていたのです。というよりも、同大統領の頭の中に、かつての米国の“経験”があると想像できます。
この問題は、別の角度からも見る必要があります。米国の場合、貿易赤字は別の形で“利益”をもたらしていることです。貿易赤字によって同国から流出したおカネは日本や中国など貿易黒字国が得るわけですが、その一部は米国株や米国債への投資となって同国へ還流しているのです。
それらの投資資金が米国株や債券市場を支える役割を果たし、ドルの信認につながっていることを忘れてはなりません。これは米国が世界一の経済大国の市場であり、ドルが基軸通貨であるからこそ成り立っている構図です。
こうした動向は、国際資本統計の対米証券投資額で見ることができます。同統計は株式、国債、政府機関債、社債などに対する投資資金の流出入の状況について米財務省が毎月中旬に発表しているもので、先日発表された16年12月の長期証券投資額を基に計算すると16年(1〜12月)は2555億4000万ドルの買い越しでした。
対米長期証券投資額は多くの年で大幅な買い越しとなっており、以前は買い越し額が貿易赤字額を上回ることも珍しくありませんでした。つまり、貿易赤字を上回る資金が米国に流入していたのです。このように、米国に出入りする資金の流れは貿易収支だけではなく広いカテゴリーで見る必要があるわけです。
■ 米国債保有でインフラ投資増に貢献
対米証券投資の動向でよく話題になるのが、米国債の保有国です。これも国際資本統計で毎月発表されています。最新のデータである16年12月末時点ではトップが日本で1兆0908億ドル(前年末比2.8%減)、2位が中国で1兆0584億ドル(同15.1%減)でした。
国・地域別の米国債保有額ランキングは08年以降、中国がトップでしたが、9年ぶりに日本が1位へ返り咲きました。日本の保有額は前年末よりも減少しましたが、中国の保有額の減少が大きかったため、順位が入れ替わりました。
米国債は言うまでもなく、米国の財政赤字を賄うため発行されています。トランプ大統領は雇用増加を目指して公共インフラ投資や大幅減税などの政策を打ち出しており、その財源として国債の増発は避けられないでしょう。そうなれば、米国債の最大の保有国である日本の存在感は一段と増すことになります。
この面からも、日本は間接的に米国経済と雇用増加に貢献しているのです。逆に言えば、もし日本や中国が国債保有を大幅に減らしたり、対米証券投資全体が大幅に細ったりすることになれば、ドルへの信認が危うくなりかねません。
このように貿易赤字の米国と貿易黒字国は一方的な関係ではなく、双方が絶妙なバランスの上に立って支え合っていることを再度強調しておきたいと思います。貿易赤字だけを取り上げて相手国を批判することは極めて一面的であり、それは両国双方の経済にとってプラスにならないことは明らかなのです。
日本政府には今後、こうした視点からもトランプ政権に対して丁寧に説明し、同大統領の認識を改めさせる努力が欠かせません。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞社に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岡田 晃
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