http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/431.html
Tweet |
米国の嫉妬も当然?軽自動車は「匠の技」の塊だ
JBpress 2/20(月) 6:15配信
米国の嫉妬も当然?軽自動車は「匠の技」の塊だ
新型ワゴンRの各モデル(筆者撮影、以下同)
先の日米首脳会談の場では直接議題になることはなかったが、トランプ大統領が自動車分野における日米の貿易不均衡に強い関心を持ち、問題視していることは確かである。
安倍晋三総理は帰国後にテレビ出演時などで、日米はいま、80年代に貿易摩擦があった状況とは大きく違い、自動車を含めた日系企業がアメリカ国内で製造拠点を持っておりアメリカでの雇用を生んでいることをアメリカ側にしっかりと説明したと語っている。今後は、麻生副総理兼財務大臣とペンス副大統領の間で経済対話を進めるとしており、自動車分野もその中に含まれる模様だ。
自動車分野での日米間の交渉というと、TPPでの日米二国間協議を思い出す。2013年の二国間協議で米国側が指摘したことの1つが、日本固有の車両規定だった。アメリカ車を日本国内で販売する場合、車両の細部にわたる適合が必要だ。それに伴う書類の作成やコストなどが非関税障壁になっている、という批判だった。
さらに、アメリカ側は軽自動車をやり玉にあげ、車両規定の見直しも要求してきた。当時はそれを受けて「軽自動車がなくなるかもしれない」といった報道もあった。
今後、トランプ政権との交渉の中でも、「なぜ日本でアメ車が売れないのか?」についてアメリカが再検証し、日本側に対応を求めてくる可能性は十分にある。
■ 新型ワゴンRがフルモデルチェンジ
こうした中、日本では軽自動車の王道であるスズキ「ワゴンR」がフルモデルチェンジした。1993年の初代発売から数えて今回が6代目となる。同車の累計販売台数は約440万台、現時点で市場にある保有台数は約280万台と推定される人気車種だ。
新型ワゴンRの商品特徴は大きく4つ。(1)デザインを大幅に刷新、(2)全モデルがマイルドハイブリッド車(発進・加速時にエンジンをモーターでアシストするハイブリッド)で、モーターのみの走行も可能に、(3)独コンチネンタル社製の先進的な運転支援装備を搭載、(4)軽ワゴンで最大の室内長を誇る広い室内、である。
モデルは大きく3つ設定された。ベースモデルの「FX」、主力の「FZ」、さらに斬新なボディデザインとターボエンジンが特徴の「スティングレー」だ。価格は、廉価モデルの約108万円からスティングレー・ハイブリッド Tの約180万円までと幅広い。
燃費はリッターあたり33.4キロメートルと、軽ワゴンでは最良の数値である。その実現のために、エンジン本体の改良に加えて、モーター付きの発電機(ISG)の出力を上げ、リチウムイオン2次電池の容量を増やした。
改良による改良が重ねられている軽自動車
新型ワゴンRの走り味は見事だった。
試乗は東京の調布市周辺の一般路で行った。主力モデル「FZ」と「スティングレー」にぞれぞれ乗ってみたが、逸品なのは「FZ」だった。
走り出してすぐに感じたのは「やさしい走り味」だ。ステアリング操作に対するクルマ全体の動きが実に素直であり、柔軟だ。そして安心感が高い。これらを総合する言葉を走りながら考えたが、出てきたのは「やさしさ」だった。
車体の剛性を上げ、サスペンションの稼働幅を広げ、重量を20キログラムも軽量化。そして、モーターで走行した時の心地良い押し出し感。新型「ワゴンR」の良い点は「FZ」の方が分かりやすく感じることができた。
また、スティングレーを含めて圧巻はインテリアだ。車内各部の質感は、300万円級のミニバンに匹敵すると言っても過言ではないステアリングにはカーナビやラジを操作するスイッチが装着されており、非常に使いやすい。さらには、スピード表示などの走行情報を運転席正面の反射板で映し出す「ヘッズアップディスプレイ」を軽自動車として初めて装備するなど、軽自動車とは思えない“上質”な空間が広がっていた。
軽自動車は日常の足として使うユーザーが多いため、メーカーには細かく厳しい要望が数多く寄せられる。しかも近年は、スズキ、ダイハツの2強にホンダがNシリーズで対抗し、三菱自動車も日産向けOEM供給で売り上げを伸ばす「デイズ」や「ルークス」を展開するなど、軽4メーカーによる競争が激しくなってきている。
そうした状況の中で各社は、ボディサイズが全長3.4メートル×全幅1.48メートル×全高2.0メートル、エンジン排気量が660tを上限とする車両規定のなかで、改良による改良を重ねている。
軽自動車の技術開発は、まさに「匠の技」とも言える領域だ。アメリカの自動車メーカーは「この価格で、どうしてここまで造り込めるのか」と思っていることだろう。軽自動車は、アメリカ人技術者が嫉妬するような商品なのだ。
日本のユーザーにとって、軽自動車がどんどん進化するのは非常にありがたいことである。だが、アメリカにとってはやはり「邪魔な存在」なのかもしれない。日米首脳会談の数日後、最新型の軽自動車を運転しながら本気でそう思った。
【筆者からのお知らせ】
新刊『自動運転でGO! 〜クルマの新時代がやってくる〜』 (マイナビ新書) が発売されます。目からウロコが落ちるような「自動運転の未来」を紹介しています。ぜひご一読ください。
[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]
桃田 健史
前へ
1
2
次へ
2/2ページ
【関連記事】
日本ではなぜ報じられないのか?車の潮流はEVへ
ベンツの高級ピックアップが“聖地”を狙わない理由
中国での売れ筋モデルが示す電気自動車の未来
日産はしてやったり、安い買い物だった三菱自工救済
主要産油国の減産ゲームに飽き始めた市場
最終更新:2/20(月) 11:05
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170220-00049214-jbpressz-bus_all&p=2
ボルボ、東京に「クルマなし販売店」
ニュースを斬る
新投入の「S90」はウェブ予約限定、販売デジタル化へ布石
2017年2月23日(木)
島津 翔
「『S90』はオンラインでの予約販売限定となります」
2月22日、スウェーデンの自動車大手ボルボ・カーの日本法人は高級セダン「S90」や高級ワゴン「V90」など3車種を同時に国内発売した。発表会見での木村隆之社長の何気ない一言に、同社の戦略が隠されていた。
にほん
ボルボが22日に発売した「S90」。木村隆之社長は「3車種で2500台を売る」と意気込む
同社の90シリーズは、新プラットフォーム「SPA」を初採用した高級ライン。第一弾のSUV(多目的スポーツ車)「XC90」は2016年に国内発売し、予想の倍に当たる1000台が売れた。より顧客層の広いセダン「S90」とワゴン「V90」「V90クロスカントリー」の3車種を同時発売し、ボルボは国内で前年1500台増となる1万6000台の販売を狙う。
ボルボの強みは安全へのこだわりだ。本社のあるスウェーデン・イエテボリに自前の事故調査隊を常駐させ、半径100km以内で事故があれば地元警察と連携して事故の原因分析に当たる。どの角度からでも衝突実験できる本社横の「セーフティセンター」は、ボルボの象徴ともいうべき場所だ。
安全へのこだわりは新発売した90シリーズにも現れている。ボルボの事故調査隊によれば、スウェーデンにおける重傷者発生事故の要因のトップは、路肩などに転落する「道路逸脱事故」だった。
90シリーズでは、世界で初めて逸脱回避機能を搭載した。車載カメラと赤外線レーダーが車線や縁石などを認識して、逸脱が差し迫っている場合には自動でステアリングとブレーキを操作する。
世界初となる逸脱防止機能をS90などに搭載した
ボルボは近年、自動運転で米ウーバーテクノロジーズといち早く提携するなど独自路線を走ってきた。欧州では2014年にウェブでの限定予約を開始。S90をウェブ限定発売するのも、この独自路線に沿ったものだ。
同社の木村社長が日経ビジネスの取材に応じ、クルマのデジタル販売について狙いを語った。意外にも、その狙いは「中国生産」を見据えたものだった。
700万円のクルマを『ポチ』は無理
ボルボ・カー日本法人の木村隆之社長。1987年にトヨタ自動車入社。2003年にユニクロを展開するファーストリテイリングに営業本部長補佐として転職。2008年に日産自動車へ移り、2009年インドネシア日産社長などを経て、2014年にボルボ・カー・ジャパン社長に就任
会見では一言だけ「S90をオンライン限定で発売する」とのアナウンスがありました。その具体的な中身とは?
木村隆之社長(以下、木村):「S90」は日本国内では当面、スウェーデンの本社工場製の500台を限定で販売します。輸入車の場合、台数が限定されていると全国の各販売店が在庫に配置して、その販売店の顧客がそれぞれのクルマを買う。でもこの売り方は公平じゃない。
全国にあまねく存在する顧客に平等に知ってもらうためには、ウェブは非常に有効な手段です。全ての(オプションやカラーリングなどの)組み合わせを500台分、ウェブでオープンにして、そこから自由に選んでもらおうと。それが出発点です。
決済までウェブでやるのでしょうか。
木村:いや、取引まではやりません。EC(電子商取引)の流れは理解していますが、私はクルマで簡単にECが普及するとは思っていません。クーリングオフの問題もある。ナンバーを付けたクルマを納車してクーリングオフされたら我々も困ってしまう。
ただ、購入プロセスの一部をデジタル化することは非常に価値がある。顧客は販売店に行かずにウェブ上で予約だけして、実際にクルマを見たり試乗したりして気に入らなければ買わなくて構わない。そのクルマはまたウェブ上で予約できる状態に戻るだけです。
正直な話をすると、ボルボのような700万円もするクルマをアマゾン・ドット・コムのようなサイトを使ってワンクリックで「ポチっと」買うか。買わないですよ。
より欲しいクルマを買えるようにデジタルの力を使う。これが本筋でしょう。
500台を売るためだけにウェブサイトを立ち上げると、かえって効率が悪くなる気がします。
木村:もう一つの狙いがあります。実は、500台という制約は生産面から生まれたものです。S90の生産場所は、現在のスウェーデン本社工場から、建設中の中国工場に切り替わります。S90だけは欧州向けも北米向けも全て中国工場で生産することになる。
在庫商売はもうやめる
木村:日本法人では、これを機に輸入車ではほとんど例がない受注生産に切り替える検討をしています。つまり、日本で自分の好きなように仕様を組み合わせ、それを受注してから中国工場で生産する。
つまり、「在庫商売」をやめるということです。各販売店が限られた在庫を持っていると、「この色なら安くしますよ」となりがちなんですね。こういうのはもうやらない。
ウェブで限定発売する「S90」
まずS90の限定発売で「ウェブでしか買えない」という流れをつくり、中国生産に切り替わってもウェブで仕様を選んでもらう形にしたいと思っています。
加えて、500台の販売で顧客の嗜好をつかみたい。先ほど言った通り、販売店が在庫を持っていると、どうしても「うちに黒の在庫があるから黒を薦める」というセールストークになる。これは販売店からしたら当然の考えなんですね。でも、これでは本当に客が欲しかった仕様が何なのか分かりにくい。
S90はセダンで、我々は(メルセデス・ベンツやBMWなどの)独プレミアムメーカーにチャレンジする立場。ドイツ車ではなくてボルボのクルマに乗りたいと思う層がどんな嗜好を持っているのかを知りたいんです。挑戦者なので、新しいことをしなければならない。
昨年10月にホーカン・サムエルソンCEO(最高経営責任者)にインタビューした時、デジタルと融合した超小型店舗を、東京やマンハッタンなど世界で4カ所に設けると日経ビジネスに明かしました。
木村:その話でCEOに火を付けたのは、我々日本法人なんですよ。だから日本発と言ってもいい。「絶対に必要だ」と進言したんです。
なぜ必要だと。
木村:「あなたの思い通りの一台が作れます」という店舗にしたいんです。楽しさがあるでしょう?全てオーダー制にして、在庫を持たない。デジタルで選んでもらって、実車は近くのディーラーで確認してもらう。店舗の内部空間も、北欧らしい空間にしたいと持っています。
日本には青山などの都心にブティック型のクルマの店舗がありますが、どの自動車メーカーもうまくいっていない。小さい販売店の機能しか持たないものと、博物館のようなものに二極化しています。我々はどちらにもしたくない。デジタルと店舗の融合をやります。
新店舗の進ちょくは?
木村:青山周辺で立地の選定は終わりました。近々発表します。オープンの前に、青山通りで予告広告を出します。
トランク配送サービス、日本でも
北欧では、ECサイトで買った商品を配送会社がボルボ車のトランクに不在時でも届けてくれる「インカーデリバリー」を始めました。日本での導入予定は?
木村:これは、日本でできる限り早く始めたいと思っています。ただ、今はグローバルで実験段階中。北欧限定で開始していて、セキュリティー面の検証をしています。
注文した荷物がトランクに届く「イン・カー・デリバリー」
日本は世界トップクラスのスマートフォン普及率で、ECサイトも充実している。ただし、物流の観点で「ラストワンマイル」の問題点が指摘されています。全ての戸建てに宅配ボックスを設置するのは現実的ではありませんが、クルマのトランクにならすぐに届けられる。非常に望まれているサービスだと思います。日本独自サービスの機会が当然出てくるでしょう。様々なEC事業者との会話も必要になると思います。
新世代の90シリーズが発売され、2020年までには主力の40シリーズ、60シリーズも登場予定です。中期的な販売戦略は。
木村:これはシンプルで、2020年に国内販売2万台。これが目標です。ただ、ターゲットとしては過去最高の2万4000台を見据えています。
まずは投入した3車種で2017年に2500台の販売目標を立てています。私は国内市場の二極化が進むと思っています。先に、下の需要が顕在化した。軽自動車の保険や税が安いという理由があるでしょう。ラインナップも増えた。
ただ、高級車市場は消費者の選択肢が依然として少ない。ホンダもアキュラブランドを投入していないし、日産自動車もインフィニティブランドを売っていない。トヨタ自動車のレクサスもまだ12年の歴史しかない。まだまだ高級車市場には開拓の余地が残っています。
S90やV90は、それに応えられるクルマだと思っていますよ。
このコラムについて
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/022200584
オペルの雇用不安で揺らぐドイツの誇り
PSAによる買収提案、選挙イヤーに独仏関係の緊張が高まる恐れ
2017.2.23(木) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年2月20日付)
GM、オペル従業員1万人を削減の方針
ドイツ・ルッケンヴァルデ(Luckenwalde)で撮影されたオペル代理店の看板(2009年9月9日撮影)。(c)AFP/MICHAEL URBAN〔AFPBB News〕
通常なら社会党の率いるフランス政府は、国内最大級の事業会社が関わる数十億ユーロ規模の大型合併のニュースが出たならば盛大に騒ぐはずである。数千人規模の雇用喪失につながりかねないM&A(合併・買収)は、特にそうだ。
だが、「プジョー」や「シトロエン」を生産するフランスの自動車大手グループPSAが米ゼネラル・モーターズ(GM)の赤字の欧州事業を買収する交渉をかなり進めているとのニュースが出た後も、フランス政府は珍しく落ち着いていた。実際、したり顔だったと言ってもいいくらいだ。
「非常にポジティブだ」。政府に近いある関係者はこう言い、オペル買収は一段と大きなフランスのチャンピオン企業を生み出すと付け加えた。PSAの仏キリスト教労働者同盟(CFTC)代表者の1人、フランク・ドン氏は、「これはすごい朗報だ」と述べた。
アナリストや業界関係者らによれば、フランス側がこのような態度を見せる理由は、雇用削減の圧倒的多数がドイツ、英国、スペインにあるオペルの6工場に割り当てられ、6万5000人いるPSAのフランス人労働者はそれに比べると無傷で済む可能性が高いからだ。
「フランスがこれで敗者になるとは思えない。むしろ(英国とスペインの)周辺工場を合理化する可能性の方が高い」。LMCオートモーティブの幹部ジャスティン・コックス氏はこう述べたうえで、その理由の1つは、フランス政府がPSAの主要株主だからだと指摘する。
一方、ドイツと英国の政府は、折しも反グローバル化を掲げる過激主義政党がすでに欧州の元工業地帯で台頭しているときに、何千人もの怒れる労働者を抱え込むことになるのを懸念し、雇用維持の保証を模索してきた。
フランスと同じように選挙イヤーに入っているドイツにとっては、特に微妙な問題だ。アンゲラ・メルケル首相は極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」からの脅威に直面しているだけでなく、世論調査では、主流派のライバル、マルティン・シュルツ氏にも追い上げられている。
メルケル氏は2月17日、「ドイツの雇用と工場が確実に安泰であるようにするために」政治的に可能なことはすべてやらねばならないと述べた。
3つの工場と本社のほか、オペルの従業員3万8000人の3分の2が拠点を構えるドイツでは、自動車産業は国の経済的アイデンティティーの心臓部を占めている。買収は、雇用だけの問題ではないのだ。
ドイツ政府は、メディアの報道によってPSAとオペルの協議について知ったとき驚愕し、フランス政府も当該企業も知らせてこなかったことに激怒した。
メルケル政権の怒りは、欧州の最も重要な政治的関係である独仏間の緊張を高める恐れがある。もっとも、協議に通じたある人物は、フランス政府はドイツ政府より先に買収提案について知っていたわけではないと主張している。
ドイツ政府はここへ来てGMおよびPSAと話し合いの場を持った。当初、閣僚らは自分たちの深い懸念をはっきり表明していた。
「労使協議会の関与なしで、このような交渉が行われていたことは受け入れられない」とブリギッテ・ツィプリース独経済相は述べ、さらにオペルの工場での雇用の保護を「最優先事項」にすべきだと付け加えた。GMの幹部らは、政治家と話し合い、緊張を和らげるためにドイツに駆けつけた。
オペルが1899年から自動車を生産してきたドイツのリュッセルスハイム工場で雇用が失われるとの不安がある。この工場は難しい小型車市場で、レンヌにあるPSAのフランス工場とともに競い合っているからだ。
仕事を終えてリュッセルスハイム工場から去るエンジニアの集団は、大規模なレイオフを心配していると話してくれた。1人はこう言った。「もしフランスから来るプラットフォームプラットホーム(車台)を再設計するだけになったら、我々のエンジニアリングをどれほど守れるのか。再設計をやるには約半分の人員がいればいい」
別の人は、残される仕事の質も問題だと言った。「我々は、ただのシトロエンの継子にはなりたくない。シトロエンは好成績を上げてきた・・・だが、それは我々が作りたいような車ではない」
英国では、買収提案は特に微妙なタイミングで訪れた。国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めたことが、すでに自動車産業で不確実性を生んでいるからだ。オペルが「ボクソール」ブランドで事業を展開している英国での懸念は主に、英国、欧州大陸向けに小型車「アストラ」を生産しているエルズミア・ポート工場を取り巻くものだ。
英国がEU離脱を決めた後、この工場はすでに立場が弱いと見られていた。生産の約80%を大陸に輸出する一方で、部品の大半を輸入しているからだ。英国が単一市場から離脱したら、エルズミア・ポート工場は大打撃を受ける恐れがある。
ドイツと英国の政府が心配するのは当然だ。PSAのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は、名高いコストカッターだ。2014年にCEOの座を受け継いで以来、自動車事業の利益率を5%超に引き上げるという偉業を成し遂げた。これは独フォルクスワーゲン(VW)をも上回る水準だ。
利益率の改善は部分的に、サプライチェーン(供給網)の改善とモデル数の削減、力強さを増す欧州市場のおかげだったが、人員削減も貢献した。PSAは2014年以降、従業員数の1割以上に当たる1万4000人の雇用を削減し、現在、さらに数千人減らしている途中だ。
これは政府にとっては悪い知らせかもしれないが、投資家にとっては朗報かもしれない。
PSAはタバレス氏が着任する前の2年間で72億ユーロの損失を出した後、破綻の瀬戸際に立たされていた。あるアナリストは、そのPSAでタバレス氏が成し遂げた迅速な経営再建を、「月面を歩きながら、同時にヒトゲノムを分裂させる」ような偉業になぞらえた。
だが、ほかの人たちは、タバレス氏はマジシャンではなく、欧州でオペルの再生を図るのは、PSAよりかなり難しいと話している。PSAでは、代々のCEOが着手したリストラの途中まで来ていたからだ。
「PSAでは、タバレスは非常に包括的なリストラ計画を受け継ぎ、それが欧州市場の回復の追い風と相まって、利益の急上昇につながった」と、エクサーヌBNPパリバのアナリスト、ドミニク・オブライアン氏は言う。
だが、市場にとって大きな問題は、M&Aから生じるシナジー(相乗効果)のレベルだ。シナジーの一部は共同調達とプラットホーム共通化から生じるが、工場合理化と、ほぼ確実に雇用削減からも生まれる。
そして、その成功は少なくとも部分的には、政治に行き着く。リュッセルスハイムでは、ドイツ全体と同様、この買収においては経済性と並んで国家のプライドがかかっていることが明白だった。
オペルに就職するために出した願書が却下されることを心配している機械工学科の学生は、地元の人たちはもう、お互いに「グーテンモルゲン」と挨拶しなくなったと言う。「今じゃ、みんな、『ボンジュール』と言ってますよ」
By Michael Stothard in Paris
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49259
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民119掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。