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許していいのか?経産省主導の怪しすぎる「東芝救済プラン」の中身 負担は国民にのしかかります
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51021
2017.02.21 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■税金で助けるプラン
世界的な原子力不況への対応の遅れと企業としてのガバナンスの欠如が災いして、深刻な経営危機に陥っている東芝に対し、国民の眼に見えない形で政府・経済産業省が公的支援を行う案が、にわかに現実味を帯びてきた。
東芝は、支援に辿り着くために、実質的な経営破たんに当たる債務超過に陥ることが確実な今2017年3月期決算を自力で乗り切る必要がある。
そのため、同社は、収益の大黒柱である半導体・メモリー事業を別会社化、過半数以上の持ち分を売却することで急場をしのぐ方針だ。
これを受けて、東芝の破たんに伴う巨額の貸し倒れの発生を避けたい三井住友銀行、みずほ銀行など主力各行は、自力での債務超過回避のメドがついたとして、融資の継続に応じる方針という。
半導体・メモリー事業を売却するか Photo by GettyImages
この後が政府・経済産業省の出番となる。
同省は、今後40年間に少なくとも8兆円(単純計算で年2000億円)を見込んでいる東京電力・福島第一原子力発電所の廃炉予算を優先的に東芝が開発・販売する「廃炉ロボット」などの購入に充てるほか、耐用年限を迎えた全国各地の原発の廃炉作業に関連した発注の東芝シフトを電力各社に促して、東芝再建を支援する検討を密かに進めているというのだ。
ここで重要なのが、最終的な資金の負担者が誰かというポイントだ。
そもそも福島第一原発の廃炉費用はとりあえず公的資金で賄い、将来、政府保有の東電株の売却益で回収するというが、実現する保障はない。また、一般の廃炉費用は、我々国民が負担する電力料金が充当される仕組みである。
政府・経済産業省が検討している、この東芝支援策は、資本主義の原則を損なう禁じ手だ。が、実態が国民にわかりにくく、状況の検証・監視も困難なことから、行政の裁量で、なし崩し的に実施されるリスクが非常に高くなっている。
■もう1つの「深刻な問題」
実に皮肉なことに、ビジネスに失敗した巨大企業の支援・救済に、血税や庶民が支払う電力料金を充てる、理不尽このうえない施策が検討されるきっかけになったのは、ある大物政治家の庶民感覚を重視する「鶴のひと声」だったらしい。
一昨年に続いて決算発表ができない異常事態に陥った東芝問題には、原子力事業で7215億円という巨額の減損が発生したことに加えて、もう一つ深刻な問題がある。
このもう一つの問題について、東芝の佐藤良二監査委員長は2月14日の記者会見で「従業員から、経営者による不適切なプレッシャーの存在を懸念する指摘があった」ため、「予期していなかった内部調査が必要になった」と述べている。
翌15日、日本テレビが独自ニュースとして報じたところによると、この内部通報は、昨年12月に巨額損失の発生が判明した際に、東芝の志賀重範会長と東芝の子会社ウェスチングハウスのロデリック会長がウェスチングハウス幹部に、東芝に有利な会計処理を迫る圧力をかけたという内容だ。
志賀会長と言えば、この15日付で米原子力事業の巨額損失問題の責任をとって取締役と代表執行役を辞任した人物だ。
■まさに「崖っぷち」
件の大物政治家は、この話を聞くと、東芝問題について「これはスキャンダルだな」と発言、政府・経済産業省主流派の東芝積極支援論者らに自重を促したという。
事情通の電力会社幹部によると、この発言が効き、例えば、政府・経済産業省が東京電力に対して行ったような公的資金の注入を柱にした、国民の目に明らかな支援・救済策は消えた。
東芝に対し、債務超過の転落回避策として、早くから政府系金融機関が増資を引き受ける案などが取り沙汰されていたが、こうしたことが不可能になったというのである。
ところが、追い詰められた東芝は、件の記者会見の席上、稼ぎ頭の半導体・メモリー部門の分離策の当初案を見直す方針を打ち出した。
同部門は将来の飯のタネなので、当初は別会社として分離後に手放す株式の持ち分を全体の20%以下としていたが、債務超過回避のために背に腹を変えられず「過半数超でも構わない」(綱川智社長)と方針転換に踏み切ったのだ。
これを受けて、まず態度を軟化させたのは、何よりも巨額の融資が回収不能になることを恐れていた主力各行だ。
筆者の取材に、ある主力行は「過半数超とか丸ごと半導体・メモリー部門を売るのならば、帳簿上は今期本決算(3月末)が債務超過でも、早期に解消が見込める」として、「(支援の意味を込めた)融資の継続をする用意がある」と柔軟姿勢に転じた。
この主力行は「持ち分を過半数から全額売却すれば1〜2兆円を入手できるはず。これだけあれば、今回未計上のWH関連の訴訟費用の計上や、天然ガス権益を巡る減損処理など他の問題が発覚しても即座に資金繰りに窮する心配はない」と安堵のため息を漏らしている。
阿吽の呼吸だったのだろう。3月末の本決算を乗り切れれば、残る問題は、昨年の医療機器子会社「東芝メディカル」に続く半導体・メモリー事業の売却で稼ぎ手のない会社になる東芝がどうやって新たな収益源を開拓するかという点に収れんされる。
そこで、政府・経済産業省が、福島第一原発を含む原発の廃炉ビジネスで東芝の収益を下支えしていくシナリオにすかさずシフトしたというわけだ。
もちろん、これで東芝が自立できるほど十分な収益が上がるとは考えにくい。ただ、実施に必要なのは、東電や電力各社に東芝への発注比率を引き上げるように水面下の行政指導を徹底することぐらいだ。
これといった法律改正や予算措置を必要としないだけに、国民やマスメディアの監視の目を逃れて、このプランが密かに強行される可能性は非常に高い。
巨大企業、メガバンク、官僚――。そういったエスタブリッシュメントには、自分たちの仲間を守るためならば、庶民にツケを回しても痛痒を感じない、そんな共同体意識が今なお根強く残っているのだろうか。
末長く国有東電のパラサイト(寄生虫)として、ゾンビのように永らえる、そんな東芝の将来が現実味を帯びてきた。
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