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いつも掛け声倒れの「中国崩壊論」 経済は持ち直す? 残る最大の懸念は習主席(写真= corlaffra /Shutterstock.com)
いつも掛け声倒れの「中国崩壊論」 経済は持ち直す? 残る最大の懸念は習主席
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170220-00000019-zuuonline-bus_all
ZUU online 2/20(月) 17:45配信
中国崩壊論は結局いつも掛け声倒れに終わる。2015年以降、株式市場崩壊、不動産市場再バブル、人民元下落、外貨準備高の減少、地方財政の危機、鉱工業生産力の過剰、疑惑のGDP成長率など危機は次から次へとやってきた。その都度、今度こそ崩壊だと論者たちは語気を強めた。しかし彼らの予想を裏切り中国は存在し続けている。それどころか経済指標は上向いてきた。どうして中国は崩壊しないのか。改めてその原因を改めて考察してみよう。
■欧米流の概念は当てはまらない
第一の原因は、中国崩壊論者が取り扱う概念をはき違えていることである。中国では、自由、民主、個人、政府など用語の意味が異なる。例えば中国人は独裁の圧政にあえぎ、民主的な社会の実現を目指して闘っている。または闘っているはずだ。という思い込みである。しかし実際に闘っているのは一部のインテリだけである。
一般の人たちは、自らの利益を求めての闘いにひたすら明け暮れている。儒教の「仁・義・礼・智・信」という徳目は、父子、君臣、夫婦などそれぞれの相対的関係を定めたものに過ぎず、それらを統合した実現すべき「社会正義」は存在していない。
つまり中国の正義は人の数だけあるのだ。そして儒教徳目に大きく反しないかぎり、中国人には広範な自由空間がある。ひどい大気汚染や交通事情、果てしない賄賂社会なども、それら自由な活動の結果として見れば理解しやすい。
個々で交渉し自分たちの自由(その結果としての富貴)を実現すればそれでよく、他人にも国家にもあまり関心はない。つまり今の抑圧的な政治体制では、民主的な自由を求めて民衆の不満が爆発しないはずはないという外国識者の議論はまったくあたらない。既得権者は現政権を支持しているし、中国では元々民衆からの革命などあり得ない。中国人を欧米人ならびにその影響の強い日本人などと同じように考えてはならない。
■高い問題解決力
第二の原因は、中国は問題を解決していることである。崩壊論者はこれを全く評価していない。中国政府は2015年6月の株式市場暴落時、あらゆる手を打った。
例えば国有企業に持ち株の売却を一定期間禁止することまでやった。それらは市場経済の原則に大きく反する強引な手段と世界には映った。
しかし国有企業を含め、国家機関をトータルコントロールするのが共産党の使命である。したがってどんな手であろうと打てる。いわば損害の付け替えを平気で行えるるのだ。欧米の組織論とは全く別の基準で動く。その結果、上海株式市場は3000ポイント代前半ですっかり落ち着いた。効果は上がったのである。
また議長国として臨んだ2016年9月の杭州G20サミットでは、過剰生産力の調整を国際的に約束させられた。
しかし最新のニュース(上海証券報)によると、2015年末の石炭、粗鋼、セメントの設備稼働率はそれぞれ64.9%、67.2%、67.0%まで落ちていたが、生産調整を急いだ結果、2016年10月、つまりサミットの1カ月後には、石炭と粗鋼の2部門ですでに年度削減目標を、16.0%と44.4%も超過達成したという。
石炭業界の利潤率は前年比▲56.9%とV字回復した。強引で性急な政策により、生産現場は理不尽な仕打ちを受けることになる。しばしばニュースとなるのはこうしたシーンだ。また帳簿の飛ばしなどで、問題を隠蔽している可能性もある。とはいえ中央集権の威力によって得られる短期的効果は十分だ。
外の世界から見れば、中国はこのところ経済危機の連続だった。しかし問題をしっかり認識し、解決することを繰り返している。またIT関連などのベンチャー産業には、各地方政府が競うように投資ファンドや特区作りに励んでいる。産業の高度化も強引に進めているのだ。怪しい統計データを出し続けて表面上を取り繕っているうちに、内実も備わってきた。2016年第四四半期ではほとんどの数字が上向いている。景気低迷も腕力で振り切りつつある。
■群を抜く個人の強さ
第三の原因は、中国では個人の強さが卓越していることである。一人一人が交渉力の高い手ごわい商人だ。彼らは政府に何かしてもらおうとは思っていない。政府とは利用するものに過ぎない。そして治安を守れず商売の役に立たなくなくなった政府は、交代させられせる。現政権が治安維持にこだわるのもこのためだ。
一般に「上に政策あれば下に対策あり。」と表現されるが、実は個人も政策をしっかり持っている。金持ちはすでに対策を終えている。外貨、海外不動産、外国保険商品、美術品、奢侈品、などに保有資産を細かく分散させた。もう政府の政策変更で倒れる金持ちなどいない。ただし分散の流れが止まらないというのが今の状況だ。
貧困層と呼ばれる人たちも実は侮りがたい。5〜10万元(80〜160万円)くらいの貯金はみな平気で持っている。いざとなれば親戚を通じてこの2倍くらいは手配できるだろう。そのいざというときに備え、じっと何かが起きるのを待っているのだ。待っていた甲斐はあり、最近はそうした農村の貧困層にも、ネット金融を通じて資金が流入するようになった。農村にも新たな事業の次々に育つ可能性が出てきたのである。とにかく中国人は自らの富貴しか眼中にない。現行の政府が崩壊しても顔色を変えずそのまま商売を続けるだろう。
■最大の不確定要素
中国はダイナミックに変化している。1〜2年前の中国崩壊論の前提はすでに崩れているし、何しろアメーバのような組織のため、一カ所切断しても他所で再生し生き残る。この苦境の1年を耐えたことでさらに強靭さを増している。もう簡単に崩壊することはない。
ただし懸念は残っている。そのうち最大の不確定要素は誰あろう習近平主席の去就である。前任者たちのように2期10年ですんなり降りるのか、それとも「指導的核心」として居座りを画策するのか。秋の第19回党大会において、次期主席候補をしっかり選ぶかどうかにかかっている。これが3月の全人代から党大会まで、中国政治の中心テーマとなる。
こんなことに振り回されていて本人が目指す「法治国家」と言えるのだろうか。経済はダイナミックに変化しても、このばかばかしさだけは不変である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)
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