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中国の怪しい統計が新たにここに
事故による死亡者が減少しているのはホント?
2017年2月17日(金)
The Economist
中国の事故は本当に減っているのか(写真:Imaginechina/アフロ)
中国の炭鉱は危険なことで悪名高い。だが数字を基に判断すると、近年、その度合いは大幅に低下している。政府は今年1月、炭鉱事故による死亡者数が2016年には538人にとどまり、10年前のわずか11%に減少したと発表した。石炭生産100万トン当たりの死亡者数は過去最低を記録した。
炭鉱業だけでなく中国の産業全体にわたり、安全に関わるデータは改善している。2002年には14万人が労働災害で命を落とした。2016年はこの数字が3分の1以下に減少している。交通事故についても同様の改善がみられる。交通事故の死亡者は2004年の10万7000人から2015年の5万8000人に減った。政府関係者はまだ決して「満足のいくものではない」と認めるが、安全性を高める努力は効果を生んでいるように見える。
罰則を避けるために?
恐らく、安全性は高まっているのだろう。だが数字を鵜呑みにしてはいけない。ボストン大学のレイモンド・フィスマン教授 と南カリフォルニア大学のヨンシャン・ワン准教授 は、近々発表する論文で、中国政府が2004年に実施した労災および交通事故による死亡率減少を目指すキャンペーンについて分析した。同キャンペーンは全国および地方単位で死亡者数の年間上限目標を課した。この目標を超えると、担当者が罰せられることになっていた。
このキャンペーンの結果はどうなったか。フィスマン教授とワング准教授は、各省に与えられた上限を分母、発表された死亡者数を分子とする比率を計算した。ほとんどの省は目標に近い数字になった――つまり1を若干上回るか下回る――と予想することだろう。
だが実際には、算出された比率はほぼすべて1を下回ったのだ(図表を参照)。このことは、統計がごまかしであることを示唆している――政府が高すぎる上限を設定したとは思えないからだ。両氏は、中国の安全性は統計が示唆するほど改善したわけではなさそうだと結論付けている。
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Feb 11th-17th 2017| From the print edition, All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
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このコラムについて
The Economist
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http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/021400123/
残業削減の特効薬ではない「インターバル規制」
ここが間違い、女性の攻め方
2017年2月17日(金)
野村 浩子
2月に入り「働き方改革実現会議」で、「長時間労働是正」に向けての議論が始まった。争点は、「残業時間の上限規制」と「勤務間インターバル規制」の導入。先んじて制度を導入している先端企業の事例から、その効果と課題を探りたい。まずは、「勤務間インターバル規制」を既に全社員に導入しているKDDIを訪ねてみた。
夜11時――。残業を終えてようやく帰宅の途へ。
「家に着くのは12時。ビールを一杯飲んで、風呂に入って寝るのは2時。明日は朝9時から会議だから、睡眠時間はせいぜい4、5時間かなあ」
翌日の出社時間から逆算して、何時間眠ることができるか。忙しい会社員なら、こんな計算をしたことがあるだろう。ところが、これからは悩むことなく少なくとも6時間は睡眠が確保できるようになるかもしれない。いま「働き方改革実現会議」で議論されている「勤務間インターバル規制」が実現し、仕事が終わったあとに11時間の休息時間を取らなければならないとされたら、夜11時まで残業した場合、翌日10時までは出勤しなくてよいことになる。
「勤務間インターバル規制」は、長時間労働是正のひとつの策として現在導入が検討されているもの。お手本はEUで、すでに1993年からインターバル規制が導入されており、「1日の仕事の終了後に11時間の休息を確保しなければならない」とされている。
現在日本で、勤務間インターバル規制を導入する企業は2%ほどとされる。そのひとつとして知られるKDDIを訪ねてみた。
月100人は"違反者"が出るが、健康管理の意識高まる
KDDIでは2000年に、設備の保守運用を手掛ける社員に限ってインターバル規制を導入した。24時間体制で保守を行うなか、連続シフトはNG、最低でも次の勤務までに7時間は空けることとした。
2012年には裁量労働制の導入に伴い、企画型の仕事をする裁量労働の勤務者に限定し、働き過ぎを防ぐために、8時間のインターバルを置くとした。
さらに2015年、組合の要求を受け入れる形で、インターバル規制を全社員約1万4000人に広げた。その方法は以下の2つである。
(1)非管理職は「8時間のインターバルを設けること」とする就業規則を導入
(2)管理職を含め全社員を対象に、「インターバルが11時間を切る日が1カ月の半分を超えたら健康チェック」を義務化
ルールを守れないと人事面談もあり。場合によっては異動も
その結果、どうなったか。まずは、就業規則に組み込んだ必達目標である(1)の「8時間インターバル」。仕事の継続性、連続性が必要な場合、また突発的な仕事に対応しないといけない場合は認めるという「例外規定」はあるものの、「8時間インターバル」が守れない人が対象社員約9600人のうち月100人ほどいるという。ただし、いずれも「常習」ではなく月1回程度で、かつ翌日は健康配慮のために早帰りか休日とするといった対応がほぼ100%達成されているとか。
(2)の「月半分以上の11時間インターバル」はどうか。対象となる全社員約1万4000人のうち月20〜30人は、このルールに抵触して健康管理の対象者となる。まずは、セルフチェックによる問診票を提出。ここで「要確認」となった人は、人事部のスタッフと面談、さらには産業医の面談に進む人もいる。人事との面談では、ケースバイケースの判断がなされる。「2、3日有給休暇を取るように」「向こう3カ月残業禁止」などと人事担当が申し渡すこともある。直属上司と相談したり、仕事の負荷を軽減したり、場合によっては異動とすることもある。
「見えにくい過重労働が『見える化』化した。働く側は、より健康に気を付けて仕事をするようになった」と、人事担当は健康管理面での効果を強調する。そもそもインターバル規制の導入は「社員の健康管理のため」だったという。
EUのインターバル規制の目的は残業削減ではない
日本がモデルとするEUのインターバル規制もまた、実は残業削減ではなく、従業員の健康管理を目的とするものだ。「その制定根拠は、労働者の健康と安全を保護すべきとのEC条約第137号」にあると、労働政策研究・研修機構の主席統括研究員の濱口桂一郎氏は解説する。
従来の日本型企業では、猛烈に頑張る社員は睡眠時間を削ってでも走り続けるもの――こうした神話がまかり通っていた。しかし、それがいかに健康を害するものか、いかに生産性を下げる働き方であるかというレポートがいま次々に出されている。
そのひとつが『スリープ・レボリューション』(日経BP社刊)。インターネットメディア「ハフィントンポスト」の創始者で知られるアリアナ・ハフィントン氏は、仕事と子育てに睡眠を削ってフル回転して、ついには倒れて頬骨を折る大けがを負うに至ったことを吐露する。自身の経験から、睡眠不足がいかに心身の健康を蝕み、そして職場の生産性にもマイナスとなるか、さまざまなデータで説いている。
睡眠不足と、うつ病との関連性は、先の電通の女性社員の過重労働による自殺でも知られている通りだ。さらに、睡眠不足は心臓疾患、脳血管障害、免疫の低下など身体にさまざまなダメージをもたらす。脳の働きに及ぼすマイナス面も大きい。
長時間労働をしている「脳」は、酒気帯び程度の認知力?
「6時間睡眠を2週間続けるだけで、私たちの能力は24時間眠っていないのと同じくらい低下する」
「オーストラリアの研究によれば、17〜19時間眠らずにいると(多くの人にとって日常のことに違いない)、認知能力は血中アルコール濃度が0.05%(米国の多くの州の酒気帯び運転基準よりわずかに低い値)のときと同程度まで低下するという。さらにあと2〜3時間起きていると、0.1%、つまり酒気帯び運転と同程度に達する」
睡眠不足で頭が働かないのはよくあることだが、酒気帯び運転と変わらない程度だと数値をつきつけられると愕然とする。これを仕事の生産性の低下として換算すると、経済的にも大きな損失だと、同書は畳みかけるように解説する。
「人々が睡眠を削って働いたことで生産性はがた落ちしている。米国労働者一人あたりの低下分は1年間で11日以上、金額にして約2280ドルだ。睡眠不足が『アブセンティーイズム(常習的欠勤)』や『プレゼンティーイズム(出勤していても生産性が上がらない状態)』というかたちで米国経済に与えている損失は年間630億ドルを超える」
従業員の心身の健康を守るためにも、そして職場の生産性を上げるためにも、休息時間の確保を保証する「インターバル規制」は、効果があるといえそうだ。
実は「残業時間の削減」には、直接の効果はない?
では、いま導入が議論される「勤務間インターバル」は特効薬かというと、そうばかりとも言えない。
海外の雇用制度に詳しい雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏によると、ドイツ、フランス、英国などは、11時間のインターバル規制を設けるものの、厳しい違反罰則が国内法にはない。日本で導入しても「『法が守られない日本』では、違法行為が蔓延することも考えられる」と、その効果を疑問視する。
悪しき前例が「サービス残業」だという。「労働基準法37条1項で、サービス残業自体はすでに禁じられている。にも関わらず、未だに横行している。法律があっても守られない日本社会では、新たに法律を作るだけでは、規制として物足りない」というのだ。
実効性を高めるには、北風と太陽の両面作戦が必要だろう。労働基準監督署の立ち入り検査の対象を広げるといった北風作戦、また制度を導入した中小企業への助成金制度を導入するといった太陽作戦も検討されている。電通社員の一件をみてもわかる通り、長時間労働は悪であるという意識を高め、社員の健康を守らない企業は許されないという世論を高めることも、外圧となるだろう。
再び、規制に先んじて制度を導入したKDDIの事例をみてみよう。いま議論の盛り上がる残業削減を実現するうえで、インターバル規制はどの程度効き目があったか、改めて尋ねてみた。
「会社全体でみると、インターバル規制のみで残業が大きく削減されたとはいえない」
とやや拍子抜けする答えが返ってきた。というのも、導入前から同社はすでに、全社平均で残業は月30時間という水準だった。2016年12月からは「働き方改革」をさらに加速し、今年に入り原則20時以降の残館禁止とすることで、全社の残業時間は月25時間にまで減ったという。
インターバル規制も含めての「働き方改革」で、残業削減効果が最も上がったのは、新規事業の立ち上げ部署など長時間労働となりがちな部門だ。(残業の上限規制を定める労働基準法の)三六協定の特別条項を適用しない範囲である月30〜45時間の水準まで残業が削減された。
繰り返しになるが、同社のインターバル規制の導入目的は、あくまでも社員の健康を守るため。長時間労働の是正は「労基法の三六協定の見直しと、インターバル規制などを組み合わせれば、効果が上がるでしょう」という。
真の壁となるのは「社員の意識」
インターバル規制は打ち出の小槌ではなく、あくまでも残業時間の上限規制などとの「合わせ技」により、長時間労働の是正につながるというのだ。さらに、真の壁となるのは「社員の意識」だという。一律に時間で管理したがる管理職、がむしゃらに働きたいという社員の意識を変えない限り、規制を入れたからといって残業はなかなか減らないという。
では、インターバル規制など導入しても無駄ではないかと思われる方もいるかもしれない。しかし、私自身は、残業時間の上限規制と併せてインターバル規制を導入する意味は大きいと考える。長時間労働が常態化している職場では、残業を減らすことにつながるだろう。また、「インターバル規制」という枠を設けることで形から変え、意識変革を促すことになる。
たとえ罰則規定がなくても、規制があることで、「違反企業」には社会的な監視の目を光らせることができる。インターバル規制の導入は、従業員の健康を守ることがいかに大切かという意識を高めると同時に、従業員の休息の確保は組織の生産性を高めるという認識を共有するきっかけともなる。インターバル規制は、働き方改革の重要な打ち手のひとつとなるはずだ。
『女性に伝えたい 未来が変わる働き方』(野村浩子著、KADOKAWA刊)
元『日経WOMAN』編集長が提案する、二極化時代の新しい生き方、働き方
働きにくさ、生きづらさを変えるためのヒント。
男女雇用機会均等法の施行から30年が経ち、女性たちの働く環境はどう変わったか。多様化する時代の中で、自分らしく働くためにはどうすればよいか。豊富な事例から、新しい時代の「働き方」「生き方」を探る。
このコラムについて
ここが間違い、女性の攻め方
働く女性を後押ししよう――、あちこちで「女性活躍推進」の大合唱が聞かれる。ところが、そこには大きな壁がある。「勘違い」や「思い込み」である。2013年4月、安倍晋三首相は「働く女性の環境を整えることこそ、成長戦略の大きな柱」とスピーチ、その中で「3歳まで抱っこし放題」を実現すると発言した。「ああ、わかってないな」、多くの女性がため息をついたものだ。企業はいま、女性社員が働き続けるための環境を整え、女性管理職の登用を進めるものの、経営幹部の「刷り込み」がネックになることも少なくない。
一方、消費の場面に目を転じると、女性顧客の力が増している。しかし、従来の発想では、女性市場は攻めきれない。家族のあり方が大きく変わり、女性の経済力も増すなかで、ライフスタイルが大きく変化しているからだ。
女性社員を、女性市場を、企業はどう攻めればいいのか。「ダイバーシティ推進」「ワークスタイル」「ライフスタイル」の3つの柱を軸に、働く女性の心理を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/261748/021300013
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