http://www.asyura2.com/17/hasan119/msg/121.html
Tweet |
日経ビジネスオンライン
無価値でも売れる!「値付け」で都市型錬金術
凄い値付け
洋酒、規格外野菜、卵の殻やローン提案も
2017年2月13日(月)
西 雄大
たとえ無価値だと思われるものでも、アイデア次第で価値を持ち値段を付けられる。日経ビジネス2月13日号特集「凄い値付け」でも、5円のマンボウを500円で卸す鮮魚流通ベンチャーを紹介した。ほかにもまだまだある。企業は最低限のコストで新たな収益源を構築できる可能性を秘める。それは、まるで都市型錬金術とも言うべき手法だ。
「応接間のサイドボードに、お酒眠ってまへんか」。こう問いかけるのはのぶちゃんマン(京都市)の滝下信夫社長。同社が100円均一でパンを販売するチェーンを展開するほかに、最近力を入れているのが酒の買い取りだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020900110/021000002/01.jpg
家庭内に眠るウイスキーなどを買い取るのぶちゃんマンの滝下信夫社長。(写真撮影:菅野勝男)
一般家庭に眠るお酒のボトルを買い取る。かつて多くの家庭には応接間があり、そこには応接セットとサイドボードを置くことがステータス。そして飾り棚には高級食器や洋酒を並べるのが定番の使い方だった。
1970年代は海外旅行が珍しい時期でもあり、おみやげに洋酒を贈られることも多かった。だが、その多くは飾られるだけで放置されていることが少なくない。特に若い世代はお酒を飲む量が減っているため、使い道がないままとなっている。
一方で古いお酒を探しているマニアはたくさんいる。サイドボードに眠るお酒たちは、マニアにとって宝物だ。そこで不要な家庭から買い取り、マニアへ販売している。1970年代のジョニーウォーカーブラックラベルを例にすると、1本300円前後で買い取る。これを店頭で約3000円で売る。価値が10倍になった計算だ。
さらに2月に、そうやって集めた酒を飲めるバーを開店する。高級感あふれる内装にしたバーで1杯1000円前後で提供する予定。1本のボトルから20杯は作れるので、2万円以上の売り上げが見込める。これで価値は60倍以上になる。「北新地や祇園のバーで飲めば1杯5000円はする。それを1000円で飲めるからお客さんも得」(滝下社長)。ほかにも、ビンテージワインなどでは20万円を超える買取金額を提示することもあるという。まさに眠っていた金鉱脈を掘り当てたようなものだ。
MFSが展開するローン相談窓口
0円が20万円に
さらに無価値なものにアイデアを加えて、値段を付けられたサービスもある。無料の情報を加工し、20万円のサービス料を取り事業を成立させている企業がある。MFS(東京都新宿区、中山田明社長)だ。顧客から20万円で住宅ローンの最適な借り換えを提案している。
金利情報は店頭に行けば誰でも見られる。わざわざ顧客が大金を払うのは手数料を支払っても、最適な借り換えにより平均400万円以上のローン残債を減らせるからだ。月々の支払い負担が軽くなるため、高い金利で借りていた世帯から注目されている。
塩澤崇取締役COOは「銀行と一般消費者の間には情報格差がある。穴埋めするのが我々の仕事」と指摘する。
銀行各社の金利情報が掲載された比較サイトには、金利が安い順に表示されている。消費者は最も安い金利の銀行に融資を申し込みたくなる。だが「全員がその金利で借りられるとは限らない」(塩澤COO)という。
そのためローン審査を申し込んでも断られてしまうケースが多い。住宅ローンの融資は年収や預貯金のほか、自動車ローンなどの債務状況や過去の延滞履歴など総合的に判断する。
消費者はなぜ審査に落ちたのか分からないケースが少なくない。銀行は住宅ローンの融資基準を公開していないことが多いためだ。
そこでMFSが銀行と消費者の間に立ち、その顧客が利用可能で最も有利なローンを提案するのだ。まずMFSが消費者の資産や返済能力をヒアリングする。その内容でより有利な条件で貸し出してくれる銀行を探してくれる。ここに20万円の価値がある。
銀行にもメリットがある。低金利になったことで借り換え需要が高まり、多い月には1万件以上の審査依頼が届くという。MFSが仲介することで適切な申込者しか依頼がこなくなり、MFSを通じた顧客を優先することで業務効率が向上する。最近、MFSが自社のサイト上で、自分の融資能力が分かるサービスを立ち上げた。塩澤COOは「今後は金融機関から、我々だけにより良い条件の金利を引き出せるようにもしたい」と意気込む。
有料で捨てたものも値付けに成功
無料どころか有料で捨てていたものに価値を見出し、商品化にこぎつけた企業もある。
長崎県平戸市にあるベンチャー、アイル(早田圭介社長)が目をつけたのが規格外野菜だ。規格外野菜とはサイズが不揃いであったり、傷がついているといった理由で出荷できない野菜のことを指す。農家が収穫した野菜のうち4割程度は市場に流通できず廃棄処分となると言われている。
野菜を海苔のように乾燥させた、ベジート
これを原材料にして、アイルは「ベジート」を製造している。野菜をペースト状にし、海苔を製造する要領で乾燥させる。パリッとした食感でにんじんや大根の味がそのまま残っている。早田社長が海苔と同じような食感となるように数年間研究を重ねた結果、出来上がった。早田社長は「海苔の代替商品ではなく、サンドウィッチといった新しい需要を開拓したい」と話す。早田社長によると海外の展示会に出展すると反応が良いという。
このベジートは農家だけを救うものではない。のり業者が使わない夏場の乾燥機が使えるため、生産量が増えればのり業者に機械の使用料を支払える。アイルがある平戸市は有明海にも近く海苔業者が多くいる。彼らの収入アップにも貢献しそうだ。
まだある。たまごの殻を使って新しい価値を見出したのが、佐賀県佐賀市にあるベンチャー、グリーンテクノ21(下浩史社長)だ。
下社長は卵の殻を集めるために割卵業者や食品メーカーを回っている。下社長は「当初『たまごの殻を譲ってもらえませんか』と話をすると不信がられた」と笑う。それもそのはず。たまごの殻は産廃業者へ委託し、廃棄するものだった。1トンあたり2万円ほどかかるゴミを、下社長はわざわざ1キロあたり1円で買い取る。食品メーカーに卵の殻を乾燥し粉砕する機械を置く。定期的にグリーンテクノが回収する。
同社が卵の殻で作るのはラインマーカーだ。小学校などの校庭に線を引く際に使うもの。20キロで800円ほどになる。40倍に化けるのだ。下社長がラインマーカーに目をつけたのが理由がある。市場性だ。「競合も少なく、販売価格が乱高下しない。安定した計画が立てられる」(下社長)。シェアはまだ5%ほどで「まだまだ開拓する余地がある」(下社長)。
いずれの商品やサービスも発想を転換し、市場の見方を変えたことで新しい需要を掘り起こせた。コストを重視した同質市場から抜け出して、無駄に消耗しない戦い方を身に付けられる可能性も秘めている。
このコラムについて
凄い値付け
経営の神様こと松下幸之助氏ですら長年、頭を悩ませたと言われる「値付け」。
経営の最重要事項であるはずのそんな価格戦略で、日本企業の迷走が深まっている。
収益力の向上を目指し値上げに踏み切ったものの、客離れを招く企業あり。
逆に「デフレは続く」と一段の値下げに走った結果、業績が低迷する企業もある。
成熟時代には、中途半端な値段を付ける戦略では十分な利益は上がらない。
常識価格を大きく上回る値段を設定し、その分、消費者が驚く付加価値を乗せるか、
前代未聞の安値を打ち出し、顧客を力技で引き寄せる。いずれかの姿勢が必要だ。
モノを売りたきゃ倍値か半値──。そんな「大胆値付け戦略」を先進企業に学ぶ。
日経BP社
Copyright © 2006-2017 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020900110/021000002/
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民119掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。