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首脳会談を契機に、トランプが日本の自動車産業に打つ危険な一手 「口撃」の次は、反トラスト法強化か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50962
2017.02.12 井上 久男 ジャーナリスト 現代ビジネス
■日米経済、このまま無事に進むとは思えない
2月10日未明に開かれた日米首脳会談。その共同声明では、日米間の貿易・投資関係の強化が打ち出された。自由で公正な貿易ルールに基づく日米経済関係の強化も確認された。
日本に対して強硬姿勢を示すのではないかと見られていたトランプ大統領は、安倍晋三首相をハグして迎えたとも報じられ、一見、両国首脳の友好関係は深まっていたように見える。
貿易赤字の大きな要因だとして、トランプ氏の「口撃」対象になっていた日本の自動車産業の代表でもあるトヨタ自動車の豊田章男社長は11日、静岡県湖西市で記者団に対して、
「日米の経済関係は自由で公正な取引をベースにすると大統領も言っており、産業界としても心強い発言だと感じた。米国でも良き企業市民であるように努力を続けていく」
などと述べ、日米首脳会談が友好的に進んだことを評価した。日本の自動車メーカーに対して何らかの強い要求が打ち出されたわけではないので、きっと内心安堵したことであろう。この日は、豊田章男氏の曾祖父に当たる豊田佐吉翁生誕150年記念式典が行われた日でもあった。
(筆者撮影)
友好的に進んだ日米首脳会談を受けて、日米の経済交渉が今後も摩擦なく進展していく、ととらえてよいのだろうか。筆者はこのまま無難に進むとは到底思えない。ビジネスマンのトランプ氏は交渉相手に対して、ふっかけて様子を見ながら落としどころを探るのがうまい、と言われる。手を変え、品を変え攻めてくるだろう。
そして、無知を装いながら無理難題を押し付けて、相手がどう出てくるのかを窺ってくる。今回、日本側がかなり下手に出たことで、トランプ氏は「口撃」は有効だったと判断、さらに日本側の譲歩が引き出せると踏んでいることであろう。
筆者は、今後もトランプ氏は日本の自動車産業をターゲットにしてくると見ている。多くのメディアが報じているように、すでに日本の自動車メーカーは米国内で多額の投資を行い、雇用創出に貢献している。
1980年代に日本からの輸出が問題になっていた時期とは産業構造が変わっている。大手3社の米国生産の加速ぶりはもの凄い。トヨタの1995年の米国生産は64万台だったのが、2016年は138万台にまで増えた。ホンダは55万台から129万台、日産は46万台から100万台にそれぞれ増えた。
こうした現状から考え、さすがに完成車の現地生産を増やすことは簡単ではない。これ以上、米国での完成車生産を増やしたら、日本からの輸出が減少して雇用問題になりかねないからである。さらに、完成車工場の建設には最低でも500億円近い投資が必要なうえ、用地選定などに時間もかかるので、簡単にはいかない。
この点については米国側も理解しているはずだ。だからトランプ氏がまず求めてくるのは、部品の「現地調達比率」の拡大であろう。
たとえば、トヨタの米国生産車の現地調達比率は70%程度で、残り30%は日本などから輸出している。この比率を引き上げさせるために、日本の部品メーカーに対して米国内での生産増強を求めるか、米国企業からの調達増大を求めてくる可能性が高い。特に後者を強く求めてくるのではないか。
■アメリカが握る「反トラスト法」という武器
もし、トヨタがトヨタグループ企業の米国内の拠点から調達を増やした場合、米国側は反トラスト法(独占禁止法)の適用を視野に入れてくるだろう。オバマ政権時代から反トラスト法が強化され、担当者にも刑事罰が簡単に課せられるようになり、日本企業の担当者が収監される事態が相次いだ。
2011年ころから15年までの間に、デンソー、矢崎総業、日立オートモーティブシステムズ、東洋ゴム、ブリヂストンなど42社、65人が談合などによって摘発、起訴され、多くの日本人が米国内の刑務所に収監されている。これは一般にはあまり知られていない話だ。
米国内の弁護士らは、政権交代はさらに反トラスト法の適用は強化されると見ている。容疑が露見する前に日本に帰国した社員を、日米の犯罪人引渡協定に基づいて米国側に送還するように求めることなどが想定される。
ロビー活動が盛んな米国では、日本の部品メーカーとの競争に負けた米国企業が一丸となってロビー活動を展開し、日系企業を摘発するように政治家や閣僚に働きかけることなんて朝飯前だ。
これも一般読者にはあまり知られていないことだが、収束しつつあったタカタのエアバッグ問題が急に大統領選の局面でクローズアップされたのは、「タカタ問題をオバマ政権の運輸行政叩きに利用しようとした共和党の動きがあったため。その共和党の背後にいたのがフォードのロビイスト」(米国の事情通)と言われる。
フォードのマーク・フィールズ社長はトランプ大統領と近い。「米国はタカタを徹底的に叩きのめし、弱ったところで米国の投資ファンドが買収、転売して利益を売る筋書きを描いている」と見る日本の自動車部品メーカー関係者もいるほどだ。
米国は市場がオープンで公正な競争が行われていると日本人はイメージしがちだが、ロビー活動によって、いとも簡単に白が黒となり、黒が白となる一面がある。
2009年、米国でトヨタ車がリコール問題でさんざん叩かれ、心臓部の電子制御の不具合まで指摘されたが、当時の運輸長官は問題が落ち着いた頃に一転して「トヨタ車には何も問題がなかった」と平然な顔で語った。
叩かれている間に、トヨタの販売は減少しブランドイメージも地に堕ちた。「当時、リーマンショック後で経営が苦しかったビッグスリーを助ける猶予期間を造るために、競争上手ごわいトヨタを国家ぐるみで攻撃したのではないか」(日本の大手自動車メーカー幹部)とする見方もあった。
さらにトランプ政権が日本を揺さぶってくるために使うと見られる手段が、移転価格税制だ。ある製品を日本本社から米国子会社に輸出する場合に、日本と米国社で利益をどのように計上しているのかのチェックが厳しくなるだろう。
米国の税務当局は、米国で払う法人税が多くなるように、米国子会社での利益計上を多く求めてくるのが一般的だ。米国法人勤務の日本人の所得税などの税務処理が適正に行われているかといったチェックも厳しくなる可能性がある。
経済競争は血を流さない「戦争」といった局面がある。日本と米国の自動車産業の力を比較すれば、コスト、商品開発、品質などの表の競争力は日本が断然上だろう。
だからこそ、競争相手は姑息な手段を使って裏から「敵」を攻めてくる。これを防御するには、情報網を張り巡らして脇を固めるか、攻撃される前に攻撃するしかない。
ここで言う「攻撃」とは、米国でのロビー活動を怠らないことと、米国内に人脈を地道に築いていくことに他ならないのだ。
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