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Photo:TOYOTA
トヨタ・ホンダ・日産それぞれの「生存戦略」は奏功するか
http://diamond.jp/articles/-/117427
2017年2月10日 佃 義夫 [佃モビリティ総研代表] ダイヤモンド・オンライン
■スズキとの提携でさらに「グループ拡大」を進めるトヨタ
トヨタとスズキは2月6日、業務提携に向けた覚書を締結したことを発表した。両社はこれにより「環境技術」「安全技術」「情報技術」「商品・ユニット補完」などに関して提携内容を詰めていくことになる。また、両社とも資本提携に踏み込むことも検討しており、スズキはトヨタグループの一員として先進技術対応への生き残りの道を確保することになった。
トヨタは、昨年4月に製品群別の7カンパニー制度を発足させ、8月にダイハツ工業を完全子会社化する一方で、10月にスズキとの提携検討を発表。2009年6月に社長就任から今年で8年目を迎えた豊田章男体制下、あらゆる事業活動を通じて環境保全に努めつつ、サスティナブル(持続可能な)・モビリティを重要視する方向性を明確に打ち出してきた。
スズキのトヨタグループ入りは、「将来技術の開発に懸念を抱えるスズキから求めた提携関係であるが、トヨタが熱意を持って協議に応じてくれた」(鈴木修・スズキ会長)のが実情だ。
これにより、トヨタグループとしての自動車メーカーは連結対象のダイハツ・日野に加え、資本提携にある富士重工業(スバル)といすゞ、包括業務提携のマツダとスズキの7社となり、まさに日本連合といった観がある。トヨタが目指すものは、先進技術に向けて共感する仲間作り、ルール作りということだろう。
■ホンダは「自前主義」へのこだわりを捨て「異業種協業」へ
一方、昨年12月に日産が三菱自動車を傘下に収めたことで、孤立化を問われたホンダがここにきて「自前主義」へのこだわりを捨てる動きを一気に進めてきた。
ホンダと米GMは、1月30日(米現地時間)に燃料電池車(FCV)の基幹部品(スタック)を米合弁生産で量産化することを発表した。ホンダは2013年にGMと燃料電池システムや水素貯蔵技術などの開発で提携したが、今回、両社が1月初めに総額8500万ドル(97億円)を折半出資し、合弁で米工場を設立して2020年にも量産化することで大きく踏み込んだことになる。
ホンダとGMの提携関係がこのFCVに限らず、環境技術全般や自動運転やコネクテッドカー(つながる車)技術にも広がる可能性も出てきたといえよう。
さらにホンダは2月7日、日立製作所の子会社である日立オートモティブシステムズと電気自動車(EV)など電動車両の基幹部品であるモーターで提携することを発表した。開発・生産の共同出資会社を設立し、日本の他、米国と中国でも工場を新設することを計画している。
Photo:HONDA
ホンダは、本田技術研究所という創業者・本田宗一郎氏以来の技術・開発部門が始祖であり、歴代の社長も本田技術研究所出身という特異なメーカーである。それだけに従来から技術も「自前主義」だったが、今年1月、米ラスベガスでの世界最大の家電見本市「CES2017」で、松本宣之・本田技術研究所社長は「いかなる企業でも幅広い技術をすべてまかなうことは不可能となりつつある。だからこそ当社は戦略的な協業を積極的に仕掛けていく」と宣言した。
ホンダがEV関連で提携した日立は、本来なら芙蓉グループとして日産との関係が深い。ゴーン体制以前の日産は、トヨタグループにおけるデンソーの役割を日立に求めたこともあるのだ。
しかし、ホンダはFCVでの提携を深化させた米GMのEV「ボルト」にもモーターを供給している、日立との提携に動いた。昨年には米グーグルと自動運転の共同研究で合意し、ソフトバンクグループとAI(人工知能)の共同研究で提携したように、戦略的な協業を進めてきている。その意味ではホンダ独自の協業戦略が加速しているわけで、ホンダの孤立化は当たらないといえる。
このように、トヨタは大きな枠の中での仲間作りとルール作りを進めるのに対し、ホンダは自動車メーカー間のグループ入りとは一線を画した協業戦略を推進しているのだ。
■トップ3に肩を並べたルノー・日産連合
もう一つのグループだが、日産は8日、ルノー・日産連合の2016年暦年のグローバル販売実績を発表した。それによるとルノー・日産連合の2016年世界販売台数は996万1347台となった。これには昨秋に34%の株式を取得して傘下に収めた三菱自動車の93万4000台も含まれ、ゴーン日産社長による「1000万台規模のアライアンス」が裏付けられたことになり、トップ3のトヨタ、VW、GMに肩を並べるものとなった。
Photo:NISSAN
その内訳は、日産が555万9000台、ルノーグループが318万2000台、三菱自動車が93万4000台、露アフトワズが28万4000台ということである。ルノー・日産連合に三菱自が加わる中で、世界販売は日産主導ではあるが、伸び率はルノーグループが13.3%増と回復トレンドにある欧州を主体に好調な販売を示している。
日本の自動車業界構図は、スズキも加えて日本連合的に広がったトヨタグループとルノー・日産連合の傘下になった三菱自のグループに、独自に協業戦略を進めるホンダの3つに分けられたわけである。
■幅広い協業も進め「業界標準化」を目指すトヨタの動き
トヨタは、独BMWとFCVの基幹システムで共同開発の提携関係にあり、仏PSA・プジョーシトロエン(以下、PSA)とも欧州で提携している。また、コネクテッドカーでは米マイクロソフト社と提携、ライドシェアで米ウーバーと提携、カーシェアで米ゲットアラウンドと提携と幅広く協業を進める。
さらに注目されるのは、今年1月4日に米フォードとトヨタが発表した、スマートデバイスリンク(SDL)を管理する「スマートデバイスリンク コンソーシアム」の設立だ。これによってSDLの業界標準化を目指そうというものである。
SDLは、スマホとクルマを繋げ、スマホアプリを車内で利用可能とするためのオープンソースプロジェクトのこと。フォードの子会社であるリビオが開発し、フォードは2013年にスマホアプリと車載器を連結させる「アップリンク」システムを採用。アップリンクは世界で500万台を超える車両が利用できる。
トヨタもSDLを用いた車載システムを2018年には商品化することにしている。今回のコンソーシアムには、トヨタ、フォードに加え、仏PSAにスバル、マツダとスズキも参加している。また、関連サプライヤーも参画し、オープンソースSDLとしてアップルやグーグルに対抗して業界標準化を狙っているのだ。
スズキの原山保人副会長も、トヨタとの提携覚書締結時の会見で、「トヨタの『オープン化』にスズキが一緒になることがいかに重要か。オープン化の世界が広がっていき、業界標準化にも一緒に組んでいかなければならない。これから、より具体的な協力関係を進化・拡充していく」と述べている。
このように、いまや自動車メーカー間の提携や連携協力にとどまらず、電機・IT(情報技術)・AI(人工知能)の異業種企業との提携が重要になっているし、先進技術のグローバルスタンダードへの先陣争いも熾烈だ。
■400万台クラブから1000万台クラブの時代へ
今回、トヨタがスズキまでグループに入れることで、トヨタ協業連合は、年間世界販売台数の合計で1800万台にまで広がり、ホンダは単独で500万台の規模とグローバル生産・販売での彼らの差はさらに大きくなる。ルノー・日産連合も三菱自を加えて1000万台規模となった。
かつて1990年代末の「自動車世界大再編」で生き残れるのは400万台規模の「400万台クラブ」と言われた。当時、これに反発したのがホンダのトップだった。いわく、「『400万台クラブ』なんて何の根拠もないし、ウチは生き残って見せる」。
あれから20年近くが経ち、今や「1000万台クラブ」と言われる時代だ。カルロス・ゴーン・日産社長は「三菱自動車が加わってルノー・日産アライアンスは1000万台規模になり、世界のトップに伍するものとなった」と胸を張り、さらに独ダイムラーとの協業も広げる構えを示している。
確かにトヨタグループに独VWグループと復活してきた米GMが1000万台規模を固めて世界トップ3となっていたが、これにルノー・日産連合が加わる構図となった。この中でトヨタグループはスズキまで含めると、1800万台連合と他を大きく引き離すものとなる。
ただ、スケールメリットが勝ち残りの道に繋がるのか、ホンダのように異業種企業との戦略的協業が成功するのかどうかは未知数だ。
いずれにしても、米トランプ政権の動向の見極めなども含め、自動車産業を取り巻く環境は激変している。その中で自動車各社はサスティナブル・モビリティの方向を模索していくことになるだろう。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
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