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農家 離農止まらず 水田委託、受け手も限界 生産性査定、継承を後押しも
コメ農家の離農が止まらない。日本の食を支える農家の平均年齢は70歳を超えた。引退を決めた農家は所有農地での作付けを委託する引き受け農家を急いで探すものの、請負農地が増えすぎて、受け手側の限界は近い。来年の生産調整(減反)廃止を引き金にした大量離農時代の到来が懸念される。
コメの名産地でも農業をやめる人たちは多い(新潟県南魚沼市)
鎌田敦子さん(74)は千葉県君津市の農家に嫁いで、およそ半世紀にわたってコメづくりをしてきた。5年ほど前、夫が体調を崩してからは老体にムチを打ってきたが、「田んぼの水の管理もできなくなった」。2016年秋の収穫を終えると、「もう無理」と離農を決めた。
「跡継ぎはいない」。市役所に相談を持ちかけ近隣の農家へ管理を委託した。鎌田さんの水田を借りてコメを作ることになった榎本富美雄さんは「最近、請け負う田んぼが増えてきた」とぼやく。減反が廃止される来年は「持ち込まれる話はもっと多くなる」とみる。
同じような光景が各地のコメどころで起きている。農林水産省によると、コメを主に作付けする農家は15年時点で62万戸と15年間で半減した。離農の原因は高齢化がほとんどという。減反の廃止によるコメの自由化は高齢農家に競争激化を意識させ、作付けをやめる口実になりやすい。
離農後の遊休農地を仲介する「農地バンク(農地中間管理機構)」。2年目にあたる15年度の農地の貸し出し面積は7万7千ヘクタールで、政府の年間目標(14万ヘクタール)には届かなかった。原因はどこにあるのか。
コメどころ、新潟県南魚沼市。上越新幹線の浦佐駅から車でうねる山間道を抜けると、風光明媚(めいび)な棚田が見える。ここでコメを作る佐藤政雄さんは農事組合で30ヘクタールを作付けする。「毎年3〜4農家はやめていくかな」と離農者から水田を引き受けている。
山間地は寒暖差が大きく、おいしいコメができるといわれるが平地の水田に比べると生産効率は悪い。「これからもっと離農者は増える。でも、これ以上は請け負えない」とこぼす。さらに耕作面積を広げると逆に採算が悪化する。
ただ離農をチャンスに変えようと新たな動きも出始めた。公認会計士の原田佑嗣さんは監査法人のトーマツから独立して離農コンサルティングを手がける。離農者の農地や農業機械の価値を査定し、後継者を選定する。離農後の生活設計や資金計画も助言する。
離農者の農地を十把ひとからげにするのではない。農地の生産性や場所などを考慮して、どうすれば事業を継承できるか見抜いたうえで引き受け手の農業法人を探る。「農地バンクがやろうとしていることはわかるが、(農家の)生産性まで踏み込んで考えていない」
離農者は増え続ける。原田さんは「離農希望者の情報を集めて、次代への橋渡しをしたい」と力を込める。
[日経新聞2月4日朝刊P.22]
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