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瀬戸際の東芝を襲う4つの更なる「時限爆弾」
http://diamond.jp/articles/-/116787
2017年2月6日 週刊ダイヤモンド編集部
最大7000億円の巨額損失リスクが発覚し、債務超過転落が現実味を帯びる東芝。危機回避のためにさまざまな手段を講じるも、東芝の内部にはさらなるリスクが幾つも眠っている。
「アメリカであんなことになっているのだから、イギリスで同じことが起こらない保証はない」
1月下旬、日立製作所の幹部の間には緊張が走っていた。翌月早々に控えた取締役会で、英国での原子力発電所の新設案件が議題に上がる予定だったからだ。
昨年末、東芝が突如として発表した巨額損失リスク。その原因こそ米国の原発新設プロジェクトだった。ガバナンス改革を進め、“うるさ型”の取締役を多数そろえた日立。彼らが居並ぶ取締役会で英国での原発新設案件が議題に上がれば、「東芝と同じことは起こらないのか」と集中砲火を浴びるのは明らかだ。
そこで日立の原子力事業幹部は、英国案件を現時点でストップした場合を含めて、プロジェクトの進捗状況に応じた損失リスクを数パターン試算。その結果を取締役会で提示する準備に追われたのだ。
■「チャレンジ」の前科あり
一方、そのきっかけをつくった東芝は今、存亡の機にある。事の経緯を振り返ると、昨年末に米国の原子力事業において数千億円規模の損失が発生する可能性があると公表。不透明な損失額は、監査法人とのぎりぎりの折衝の中で5000億円、7000億円と膨らんで、債務超過転落の危機に陥っている。
その原因となったのが、米建設会社の買収だ。図のように、もともと米国で共に原発建設工事を進めていた建設会社を買収したものの、買収後に今回の巨額損失につながる“爆弾”を見逃していたことが発覚したのだ。
冒頭の日立のように、事業の損失リスクと向き合う姿勢があれば、今のような東芝の姿はなかっただろう。しかし、それは望むべくもなかった。東芝経営陣は監査法人と600億円規模の原子力事業の減損をめぐる攻防を繰り広げ、「減損額をゼロにしろという『チャレンジ』を現場に命じた」(東芝関係者)“前科”があるからだ。
「チャレンジ」──。東芝経営陣が現場に過剰な業績改善を要求する際に使い、不正会計の原因となった悪名高き社内用語だ。当時チャレンジの対象となったのが今回と同じ米国の原発新設案件、サウステキサスプロジェクトだった。
結果的に2014年3月期決算で310億円の減損損失計上の憂き目に遭ったが、実はそれでも数百億円の減損幅縮小を監査法人に認めさせていた。事業の損失リスクに向き合うどころか、無理やり目を閉じてきたのが東芝なのだ。詳細は別の記事(東芝を再転落させた「リスク管理不在経営」のDNA)に譲るが、不正会計問題によって旧経営陣が一掃されても、ガバナンス問題は払拭できなかった。今回の問題は起こるべくして起こったのだ。
最大7000億円もの損失リスクが判明した東芝は、債務超過への転落が一気に現実味を帯び始め、銀行に泣き付いた。その姿は、かつて同じく経営破綻の瀬戸際に追い込まれ、銀行管理下に入ったシャープをほうふつとさせる。
ただ、今の東芝の財務状況は、最悪期のシャープよりはましというのが、取引先銀行団の見立てだ。「しばらくは資金繰りに問題はない」(銀行団関係者)。また、ある取引銀行幹部は「まずは自助努力。東芝にはその余地がある。事業の処分にも向き合ってもらわないといけない」とみる。
そこで東芝は、17年3月期の通期決算において自力で債務超過を回避し、その後の銀行からの支援を取り付けようと躍起だ。
下図のように、最大7000億円の損失による自己資本の毀損は、今期の利益積み上げだけでは到底賄えない。そこで1月27日、東芝は、スマートフォンの記憶媒体などに使われる半導体であるNAND型フラッシュメモリーの事業の分社化を決定した。
この事業は世界2位という国際競争力を持ち、絶好調時には3割という驚異的な営業利益率をたたき出した“虎の子”。それを切り出して外部資本を募ることで、巨額損失の穴埋めをする算段だ。
ただ、東芝はフラッシュメモリー事業を完全に手放す気はなく、分社化する子会社への外部資本受け入れは20%未満に抑える。そのため、子会社株の売却益は2000億円程度にとどまるとみられており、債務超過の懸念を払拭し切れない。そこで、その他の上場・非上場のグループ会社や、東芝病院といった不動産も売却候補として俎上に載せられているのだ。
■なお抱える4大損失リスク
年度末まで2カ月を切る中での事業や資産の切り売りは綱渡りだ。しかし、その“綱”を渡り終えたとしても、東芝を待つのは“地雷原”だ。図のように、東芝はさらなる経営危機のトリガーとなり得る、四つの損失リスク“爆弾”を抱えているからだ。
一つ目は、中国での原発4基の新設プロジェクトだ。東芝の畠澤守原子力事業部長はこの案件について、工事の進捗状況を鑑みて「設計的、技術的な課題は小さい」と、昨年末の会見で説明した。
しかし、中国の案件は今回の問題案件と同じく建設工事が遅れており、かねて社内で収益性悪化が指摘されてきた。事情に詳しい関係者によれば、「次に問題が火を噴いてもおかしくない」。
二つ目は、原発事業会社であるニュージェネレーション(ニュージェン)だ。東芝は原発の新設案件を受注したいがために、英国の電力会社で原発建設計画があったニュージェンの買収に乗り出した。しかし、原発新設に電力会社の運営が重なる巨大プロジェクトに東芝の脆弱な財務が耐えられるのかという懸念は尽きない。
一時は不正会計問題発覚前の水準に戻っていた東芝の株価だが、原子力事業での巨額損失問題で暴落した。Photo:Kyodonews/amanaimages
三つ目は、液化天然ガス(LNG)の契約債務だ。13年、東芝は年220万トンのLNGを19年から20年間引き取る契約を結んだ。しかし、売り先が見つかっていない。調達契約をしたLNGが全く売れない場合の最大損失額は約1兆円にも上るという危機的状況だ。
東芝は、20年間の契約を一括評価して一気に1兆円規模の損失を計上することは考えにくいと説明する。早ければ19年3月期からLNGの損失評価を始め、少なくとも翌1年分の損失引き当てを計上するという。ただ、監査法人との間で会計上の取り扱いについて議論が必要であり、東芝の言い分がどこまで通るのか判断が難しい。
四つ目は、東芝が11年に約1300億円(出資比率60%、純負債を含む)で買収したスマートメーターメーカー、ランディス・ギアだ。東芝にはこの買収で発生したのれん代が1432億円残っており、ランディス・ギアの業績が計画を下回れば、そののれん代の減損を迫られる可能性が高いのだ。
■銀行に問う東芝救済の是非
東芝の取引先銀行団は、前述した東芝の自助努力の状況を踏まえて、2月末までは融資継続を決めた。そして、表「巨額損失問題をめぐるスケジュール」にあるように、2月14日に東芝が発表する今回の原子力事業での巨大な損失額や再発防止策を確認した上で、3月以降の支援の可否を決める考えだ。
ただ、前述した四つの“爆弾”が爆発すれば、事情が違ってくる。表「金融機関による東芝救済スキーム候補」あるような、劣後ローンや優先株の引き受け、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)といった金融救済スキームの適用が想定され、いよいよ銀行も身を切る羽目になる可能性が高い。
そのとき、銀行団は「本当に東芝を助けるべきなのか」をあらためて考えることになる。
銀行は巨大な取引先の「大き過ぎてつぶせない」問題に手足を縛られている。「19万人の雇用を守る」「原子力や半導体などの重要な日本の技術を守る」……。銀行にとって東芝を救う建前はそうでも、本音では「東芝をつぶしたら多額の融資が返ってこなくなる」というそろばん勘定が働いている。
しかし、そうした建前や本音による企業救済がネガティブな部分最適を生み、日本全体を考えたときに、起こるべき産業の構造転換やイノベーション、人材のシフトを阻害している面は否定できない。
一方、そうした事情は考慮せずとも、融資引き揚げを考える銀行も一部出てきた。東芝の信用リスクにこれ以上付き合い切れないと思い始めているのだ。ここに東芝のさらなる巨額損失が重なれば、そろばん勘定だけでも東芝から離反する銀行が増えるだろう。
四つの“爆弾”を抱えている限り、東芝の経営破綻リスクは消えずにくすぶり続けるのだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部)
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