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1980年代、いわゆる「ジャパンバッシング」の風が全米各地で吹き荒れ、日本車がハンマーで叩き壊される姿も報道された。写真はイメージ(写真出典:bivainis/123RF)。
またハンマーで壊される? アメリカでの日本車販売、怖いのは関税より「バッシング」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170205-00010003-norimono-bus_all
乗りものニュース 2/5(日) 15:00配信
■「ジャパンバッシング」の悪夢再び?
アメリカのトランプ大統領が自動車メーカーに対して、厳しい注文をつけています。「メキシコに自動車工場を造るのはけしからん。メキシコで造ったクルマをアメリカに持ってこうようというのなら、高い関税をかけてやる」「日本車ばかり売れるのは公平じゃない」など、メキシコに工場を持つメーカーへの牽制だけでなく、貿易の不公平さまであげつらっています。
【写真】米国内工場で生産されるトヨタ「ハイランダー」
https://trafficnews.jp/post/64271/3/
そうした発言で思い出すのは、1980年代の日米貿易摩擦です。当時は日本からアメリカへ大量の日本車が流れ込み、アメリカ国内自動車メーカーの苦境と共に、一気に「日本車憎し」という雰囲気になりました。労働者が日本車をハンマーでたたき壊すパフォーマンスまであり、本当に驚かされたものです。
しかし、日本の自動車メーカーは、その解決策としてアメリカへの工場進出を加速させました。「日本車が売れると、アメリカの労働者の仕事がなくなる」というなら「アメリカ本土で生産して、アメリカ人を雇えばよい」と応えたのです。結果、今ではトヨタはアメリカに9か所の生産拠点を構えます。ホンダは7か所、日産は5か所、スバルも1か所の工場を持っています。
つまり、トランプ大統領が「国内の雇用を守るためにメキシコからの輸入車に高い関税をかける」と主張したところで、実際には日本車メーカーのほとんどがアメリカ国内に工場を持っていますから、たとえ高い関税が本当に実現しても、最終的には対応が可能なのです。
確かに、人件費の安いメキシコの工場でクルマを造って、そこからアメリカ本国へ輸出するという方法は、最近の自動車メーカーのトレンドでした。その方法論が潰されるのはもちろん痛手ですが、致命傷にはなりません。ただ、アメリカに工場がなく、メキシコに工場を造ったアウディとマツダの2社は、事態がどこに落ち着くのか不安でたまらないはずです。
■反日的世相が形成される前に
それよりも問題は、「日本車憎し」という雰囲気ではないでしょうか。トランプ大統領が、「日本車は公平じゃない」と叫べば、一定数の人が「そうだ、そうだ!」となるはずです。
アメリカにはトランプ大統領を強く支持する人がたくさんいます。その結果、1980年代のような「ジャパンバッシング」もしくは「日本車バッシング」という世相が生まれてしまう、これが一番まずいのではないでしょうか。もちろん、日本車は売れなくなるでしょう。中国で反日が荒れ狂った数年前と同じ状況が、アメリカで生まれるのだけは避けたいところです。
そのためには、「日本はアンフェアじゃない」という主張をしっかりして、小さな火種のうちに消してしまうのが肝要かと思います。「アメリカで販売される日本車の多くはアメリカの労働者が造っている」「日本車がアメリカで売れるのは、特殊なアメリカ市場のニーズに合わせたクルマを造っているからであり、日本でアメリカ車が売れないのは日本のニーズに合わせてないから」と主張すべきでしょう。
ちなみに、アメリカ市場向けに開発された日本車は、そのまま日本に持ってきても売れることはほとんどありません。それだけアメリカと日本では求められるクルマが違っているのです。
「正しければ黙っていても伝わる」ことは、アメリカのトランプ大統領を相手には期待しないほうが良いはず。上手に主張して、問題が燃え上がらないことを祈るばかりです。
鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
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