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有名企業を退職した男たちが陥る「家庭内管理職」という病 オレが一番偉い、文句あるなら出て行け
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50863
2017.02.05 週刊現代 現代ビジネス
会社で偉かったオレは、家でも一番偉いんだ。文句があるなら辞めろ!……じゃなかった、出て行け! 思わずこんな態度をとってしまい、家族に愛想を尽かされる男性が増えている。哀しい実録。
■孫に対しても「成果主義」
〈同居する父が、管理職だった有名企業を数年前に退職後、家でも管理職のように振る舞い、困っています〉
こう書き出された相談内容を見て、「自分の家のことかと思った」と言うのは、都内に住む40代女性である。
「私の父は、いわゆる五大商社のひとつで役員まで勤めあげ、口癖といえば『オレは同期で一番出世したんだ』なんです。
もう私の子供も上は中学生ですが、毎年正月になると、孫全員を集めて順番にお年玉を渡していくのが父の恒例行事。
問題は、お年玉と引きかえに、子供たちに一発芸をさせるんです。小学生のころはまだ微笑ましかったですけど、中学生の男子に家で『ピコ太郎』を踊らせるなんて、新年会じゃあるまいし……。父だけが喜んでいますが、みんな辟易しています」
40年もの長きにわたって、人生のほとんど全てを会社に捧げてきた。定年を迎えて家に戻っても、退職の翌日から、急に気持ちが切り替えられるはずもない。ついつい癖が抜けず、家族を部下のように扱ってしまう――こんな「家庭内管理職」とも言うべき父親が急増している。
冒頭に引いた読売新聞「人生案内」(1月13日朝刊に掲載)の相談は、父親と同居する40代男性から寄せられたもの。この父親は、管理職を務めていた有名企業を数年前に退職。
今は悠々自適の生活を送っているものの、男性によれば〈意見など言おうものなら、妻や子どもに聞こえるのもお構いなしに、いつまでもネチネチと嫌みを言います〉〈現役時代は一切興味のなかった家事に口出しします〉という。
前出の40代女性はこう続ける。
「意見すると猛烈に怒るところも、うちの父と同じです。この前トランプさんが大統領になると決まったときには『ほら見ろ、オレはずっとトランプが勝つと思ってた』『予想を外した評論家はみんな辞めてしまえ』と言い出したので、私が『そんな言い方ないでしょ、みんな驚いてるわよ』と言ったら『何を言うか!』と真っ赤になって怒り始めた。
内容は関係ないんです。自分の発言を否定されることがイヤでたまらないんでしょう」
役員クラスまで上り詰めると、社長を除けば社内のほぼ全員が部下になる。日ごろ面と向かって意見されることも、まして叱責を受けることもまずありえない。
そんなエリートも、家庭に戻ればただの人。妻や息子、娘が「わかりました!」「ありがとうございます!」と平伏してくれるはずもない。相談に回答した、哲学者の鷲田清一氏は父親の心理をこう分析している。
〈お父上は、会社での「指示―服従」という関係の中で指示者でいた快感が忘れられないのでしょう。その快感がもはや得られないから、家族生活にそれを求める。厄介ですね〉
そして、こう添えた。
〈年がいってから生き方を変えるというのは至難のことです〉
■買い物の領収書をチェック
前出の女性の父親は、名門私立大学卒で学生時代はサッカー部に所属。持ち前の体力と根性、朗らかさと酒の強さで出世を遂げた、典型的な体育会系商社マンである。上下関係に敏感なのも当然のことだろう。
「家庭内管理職」には、他にもいくつかのタイプがある。鷲田氏が言う通り、会社でのその人のキャラクターが、定年後もなかなか抜けないからだ。
まず多いのは「神経質な上司」タイプ。神奈川県に住む50代女性の夫は、日本を代表する航空会社で花形部署の本部長を務めたあと、2年前に定年を迎えた。
「現役のころはそれほど気にならなかったのですが、どうやらうちの夫はものすごく神経質なようで……。
私が掃除をしたあと、自分は全然手伝わないくせに、『ほら、サッシの溝がまだ汚れてる』『電灯のカバーにホコリが』『シャンプーが切れてるぞ、気付いてるなら詰め替えろ』といちいち文句を付けてくる。
これを会社でもやっていたとしたら、相当な嫌われ者だったことでしょう」
長年の会社生活で板についた、「重箱の隅をつつく」能力。仕事では役に立つこともあっただろうが、退職後は、その矛先が部下ではなく家族に向かってしまう。
「そんなに気になるなら自分でやればいいんです。でも、全部私に指示してやらせる。毎日の買い物も、自分は行かないのに、買ってきたものとレシートを突き合わせて点検します。
ちょっとでも高いものがあったら、『この値段で養殖の鮭? バカだな、お前はダマされてる』『電気毛布なんて必要なのか。ストーブがあるだろ、返品してきなさい』と言い出す。経理の部署には一度もいなかったはずなんですが……。もうこりごりです」
この女性は思い詰め、「最近、夫との別居も頭をよぎる」と漏らした。男は自覚がないまま「家庭内管理職」になってしまうわけだが、それが取り返しのつかない事態につながることもある。
■町内会でも「仕事論」
もうひとつ代表的なのが、理系の職業に多い、「仕事一筋人間」タイプである。こちらもかなりのエリート、誰もが知る超大手電機メーカーで役員まで務めた男性のケースを妻が語る。
「夫はいかにも理系の研究者といった感じの性格で、世間のことにまったく興味がなく、これといった趣味も持たず、ずっと家と会社との往復で生きてきた人。食事はもちろん、スーツの準備、靴磨き、毎日のスケジュール管理さえも私がやっていました。
現役のころは、それでも仕事が大変なのだから仕方がないと思って、私も黙っていました。でも、退職してヒマになったのに、今まで同様、毎朝服を出して着せてあげないといけない。
最近になってはたと気付いたんですが、夫は私のことを部下のようなもの、言えばなんでもやってくれる存在だと思っているんでしょうね。悪気はないんでしょうけれど、長年一緒に暮らしてきたのに……と、悲しくなってしまいました」
この男性とは正反対の、文系、コミュニケーション上手で鳴らしてきた敏腕営業マンですらも、「家庭内管理職」と化してしまう。神奈川県の40代男性が言う。
「親父は中堅広告代理店の営業部門で、退職前は役員とまではいきませんでしたが、部長をやっていました。同じ会社の再雇用を嫌がって断り、自分で仕事探しを始めたんです。
自分ほどの実績と話術があればすんなり再就職できると思っていたようですが、それがうまくいかなかった。そもそも、60超えた人の話術を買ってくれるような会社なんてないんですよ。
結局、回ってくるのは警備員とか公共施設の保守点検といった、能力を活かせない仕事ばかりだったそうで、ヘソを曲げてしまった」
そこから、自他ともに認める社交的な人物だったはずの父親は、昔話を繰り返すようになった。
「会うたびに『あの役員は私の後輩だ』『あのプロジェクトはオレがいなきゃ回らなかった』『いいか、組織ってものはな』と講釈を始める。うちの中だけかと思ったら、町内会の集まりに出たときにも近所の人に向かって同じような話をしていたと聞いて、頭を抱えました」
これではいけないと考えた男性は、たびたび自分の息子を伴って実家を訪ねるようにしたという。
「孫の顔を見れば、仕事の話は忘れられると思って。この作戦は途中までうまくいっていたんですが、ある時『地雷』を踏んでしまいました。
親父は大学まで野球に打ち込み、会社でも野球部に入っていた野球人間で、息子ともよくキャッチボールをしてくれていた。それが、息子が小学校に上がったときに『サッカーがやりたい』と言い出したので、『オレの努力は何だったんだ』と完全に落ち込んでしまって……」
マジメに仕事をしていれば、会社の人たちは自分を認め、尊敬してくれた。みな自分の指示には二つ返事で従い、めったなことでは反論などされなかった。
しかし、家族にとって父親は、部長でも役員でもない。一日の大半を「上司」として過ごしていたときの態度のまま、家に居座るようになった父親を見て、だんだんと心が離れていく――。
武蔵大学助教で、男の生き方を研究する「男性学」を専門とする田中俊之氏が指摘する。
「現役の間は気付かないのですが、日本の父親は『自分の人生と引き換えに会社に尽くして給料をもらい、家族を養っている』という意識が強い。しかも家族の側も、父親には仕事以外期待してこなかった。
仕事にほぼ100%の能力と時間を割り振っていたのに、急にそれが0%になるわけですから、多くの人が切り替えられず『家庭内管理職』になってしまうのは仕方ないことです」
■友達がいない
やることがないのは恥ずかしい。現役時代は、手帳が真っ黒になるほど予定が詰まっていたものだ。そんな感覚が染みついた元エリートほど、肩書も何もない自分に耐えられない。
「定年世代の夫婦であれば、共働きでも妻は近所でパートという人が多い。地域に知り合いがいて、サークル活動などをしている場合もあります。
しかし夫は、自宅から遠く離れた都市部の職場に毎日通い続けてきた人がほとんど。定年になってから急に『何か仕事以外に生きがいを見つけましょう』と言われても、うまくいきません。そのため、家庭の中で自分の役割を確保したくて、家事に口を出し、手応えを得ようとしてしまう。
『家庭内管理職』を脱するには、やはり億劫でも外に仲間を作ること。そして、麻雀やカラオケといった気を遣わなくていい趣味を持つことだと思います」(前出・田中氏)
「人生案内」の回答の中で、鷲田氏も同様のことを言っている。
〈打開策はたぶん一つしかない。気をよそへ向けることです〉〈上下関係のない居酒屋とか囲碁会といった近所のたまり場でもいいし、多様な人が集まるボランティアの活動でもいい。ペットとの、とにかくかわいくて威厳なんか何の意味もない関係でもいい。こんな交わりだってあるんだよ、と〉
サラリーマン時代の人間関係の大半は、つきつめれば地位や肩書、会社の看板があるからこそ成り立つ。しかし、妻や子供は「会社で偉いから」という理由で、父親を愛し尊敬するわけではない。
むしろ、何の肩書も能力もなかろうと、それでも愛してくれるのが家族というもの。これに気付けるかどうかが、「家庭内管理職」になるか否かの分かれ道だろう。
「週刊現代」2016年2月4日号より
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