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東芝は原発と心中するつもりか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170202-00010000-socra-bus_all
ニュースソクラ 2/2(木) 14:40配信
■経産省に逆らってでも、廃炉ビジネスに転換せよ
米国の原発事業で巨額損失を計上する見通しとなった東芝は、待った無しの経営再建を迫られているが、肝心の目指すべき方向が時代の変化に逆行しているように見える。
当面の財務基盤を強化するため、同社が育ててきた成長事業を次々と切り売りし、斜陽産業化した原子力事業を温存させる経営では明日への展望が描けない。このままでは東芝は原発に足を取られ経営破綻への坂道を転げ落ちるだけである。
東芝の米原発事業で発生する損失は最大7000億円規模に膨らむ可能性が出てきた。昨年9月末時点で東芝の自己資本は約3600億円あったが、7000億円の損失が発生すれば債務超過に陥る危険がある。それを避けるためには資本増強策が急務だ。
同社は主力のフラッシュメモリー(半導体)事業の分社化、買収などの新規事業の中止、不採算部門のリストラの先送りなどによる支出の抑制、さらに銀行融資などで資本増強を進める計画のようだ。当面の財務基盤の強化策としては妥当なように見えるが、長期的視点に立つと、経営基盤を弱めるだけだ。
同社の最大の課題は、依然として原発事業を成長産業と評価し経営の中心に位置づけている点にある。冷静に考えれば、2011年3月の福島原発事故を境に原発事業は完全に斜陽産業に陥ってしまった。地震・火山列島の日本では、今後長期にわたって原発の新設は難しい。
インドやトルコなどの途上国や中国向け輸出で活路を見出そうとしても、環境アセスメントや発電所の安心・安全対策、万一事故が起こった場合の賠償などを考えれば、ビジネスとしてリスクが高過ぎる。欧米先進国では安全対策費が毎年増加し続けており、建設費が当初計画の数倍、完成時期も大幅に遅れている。今回の東芝の巨額損失も日本国内ではなく米国で発生したことに注目する必要がある。
原発がもはや東芝の経営を支える主力事業になり得ないことは明白である。東芝社員、東芝OBの多くもそう思っている。それにもかかわらず、東芝の経営再建にあたって原発事業の縮小、撤退が議題として登場してこないのはきわめて不思議なことと言わざるを得ない。融資先の主力銀行もこの点に触れたがらないようだが、原発推進路線が行き詰まれば、銀行の審査能力の欠如が問われることは必至である。
経営学に「サンクコスト」(sunk cost=埋没費用)という用語がある。企業が採算ありとして投下した資金が何らかの理由で回収不能になり、戻ってこなくなる資金のことだ。サンクコストが大きければ、大きいほど経営責任も大きくなる。
それだけに投資を決めた経営陣は、投入資金が実際にはサンクコストであるにもかかわらず、それを認めずその延長線上で無理な経営を続けようとする。上位下達の社風が強い企業では部下がサンクコストを認識していても口に出せない。
東芝の会計不祥事が明らかになった15年夏以降、同社は経営再建に取り組んできたが、再建の方向は原発事業を温存させ、所有株式の売却や東南アジアでの白物家電事業の見直しなどだった。財務危機が深刻化した今回も、成長事業の医療機器や白物家電の子会社売却、半導体事業の分社化などの切り売りで危機を乗り切ろうとしている。
だが、同社の会計不祥事の遠因は原発事業を成長産業と見なし、06年10月に米国の巨大原子炉メーカー、WH(ウエスチンハウス)を54億ドル(当時の為替で6600億円)で買収し、同社を子会社化したことから始まっている。当時、専門家の間では、ピークを過ぎたWHの市場価値は、最大その半分の3000億円、あるいはそれ以下と言われており、「東芝は高い買い物をした」とささやかれていた。
同社にとって不幸だったことは、買収数年後の08年9月にリーマンショックが発生、追い打ちをかけるように11年3月の深刻な原発事故などが重なり、原発需要は激減し一気に斜陽産業に転落してしまった。
不適切会計は、期待した原発事業が利益を生み出せなくなったため、その穴埋めとして他の事業分野の利益を水増しするという形で不正行為が会社ぐるみで始まった。
福島原発事故後、メルケル独首相は22年までに原発全廃を宣言したが、その直後に同国最大の原子炉メーカー、シーメンスは原発事業からの撤退を表明した。東芝がこの時期にシーメンスと同様に、原子力事業の売却、撤退、最終的に発生するサンクコストを受け入れ、新規資金を成長事業に投入する決断をしていれば、今日のような苦境に追い込まれることはなかったろう。
それができなかった最大の理由は、サンクコストの顕在化を恐れ、隠し続けた当時の経営陣にあることは言うまでもないが、それを引き継いだ現経営陣の責任も重い。
もう一つは経産省との癒着構造だ。原発事故前、「原子力ルネサンス」を標榜し、原発時代の到来を煽った同省は、原発事故後もその方針を改めていない。東芝は経産省の方針を体現する優等生として位置づけられ、数々の便宜を与えられてきた経緯もあり、経産省に逆らって原発事業から手を引くという決断ができないという事情もある。
だが、東芝が生き残るためには、経産省に逆らっても、斜陽産業化した原発事業から早期撤退する道しかないだろう。
原発事業の売却、縮小、撤退、サンクコストの顕在化によって、経営をガラス張りにして新たな資金は損失の穴埋めではなく、成長事業に集中的に投入する出直し的な改革こそ求められる。
先月の本欄でも指摘したように、東芝が原発事業から撤退する場合、廃炉ビジネスを成長産業に育てていく分野が残されている。世界には400基を超える原発が存在するが、そのかなりの部分が今後10年以内に「寿命40年」(設立後40年)を終え、廃炉の時期にさしかかる。
1基の廃炉に千〜5千億円の費用が必要とされ、廃炉工事期間も40年近くかかる。原発の廃炉に当たっては原子炉の取り壊し、高レベル放射性廃棄物の処理、運搬などを含め、高度の技術が求められる。幸いなことに原発建設と廃炉に伴う専門知識の多くは重なっているため、原発技術者を廃炉技術者に転換させることは十分可能だろう。
■三橋 規宏(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B−LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。
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