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2017年の半導体市場は先行き不透明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170201-00000077-it_eetimes-bus_all
EE Times Japan 2/1(水) 23:10配信
■メモリ分野がけん引要素に
2017年の半導体業界は、世界の政治情勢の中の不確定要素が中立的かつ前向きな状態にある限り、好調を維持できるはずだ。DRAMやフラッシュメモリ、32ビットマイコン、アナログや車載用製品などが成長をけん引し、成長率5%で伸びていくとみられる。
【2017年のIC市場予測はこちら】
http://image.itmedia.co.jp/l/im/ee/articles/1702/01/l_mm170131_trump2.jpg
米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏が、米国シリコンバレーで開催された年次イベントにおいて、今後の展望を語った。同氏は、「2017年の半導体業界は、中国が現在構想している壮大な計画や、トランプ政権などによって、それほど大きな影響を受けることはないだろう。しかし、欧州で台頭しているポピュリズムが、成長の妨げとなる可能性はある」とみているようだ。
McClean氏は、「2017年は、重要な節目の年になるだろう。世界半導体売上高は3141億米ドルに達し、初めて3000億米ドルを超え、過去最高を記録する見込みだ。今後長期にわたり、年平均成長率4〜5%で伸びていくとみられることから、2023年には4000億米ドルを超え、次の大きな節目が来るだろう」と述べている。
同氏は、「2017年の半導体業界の成長を大きくけん引するのは、メモリ分野だ。同分野は過去2年間にわたり、足を引っ張る存在だったが、今後は成長率10%で伸び、上昇していく可能性を秘める。中でも、世界半導体市場において売上高が第1位のDRAMと、第3位のフラッシュメモリが、重要な役割を担うとみられる。いずれも価格が上下しやすいため、市場全体の3〜5%を変動させる可能性がある」と述べている。
特定アプリケーション向けの車載用アナログ部品と32ビットマイコンは、それぞれ成長率11%と12%で伸び、メモリを超える勢いをみせるだろう。さらに、オプトエレクトロニクスやセンサー、ディスクリートなどのさまざまな分野も、半導体市場全体を大きくけん引していくとみられる。
半導体市場では、過去2年間で実施された合併買収の合計金額が、2018億米ドルに達した。McClean氏は、「今後も数年間は、上位10社から25社の時価総額がますます増大する傾向が続くだろう」と指摘する。
NVIDIAは2016年に、35%という最も高い成長率で伸び、ファウンドリーを除く世界半導体メーカーランキングにおいて、2015年から順位を2つ上げ、第15位を獲得した。その後に、中国のSMICが成長率31%、イスラエルのTowerJazzが同30%で続く。
業績が好調だった大手メーカーとしては、成長率20%のMediaTekと、同14%の東芝(一部の事業部門を売却予定)、同11%のTSMCが挙げられる。一方、SK HynixとMarvell Technologyは、いずれも成長率を14%下げていて、三菱電機は17%減と最も減少幅が大きかった。
QualcommとNXP Semiconductorsは、それぞれ成長率が7%減と10%減で、不調に終わっている。しかし、両社が予定している合併買収が完了すれば、IntelとSamsung Electronicsに次ぐ第3位の半導体メーカーの座を獲得することになる。トップ10社の中では、唯一の大きな変化となるだろう。また、Huawei傘下の半導体設計開発メーカーHiSilicon Technologyは、15%の成長率で伸び、2016年のトップ20入りを果たした。
■先行きが不透明な要因
米国と欧州におけるポピュリズムの台頭は、予想を難しくしている要因の1つだ。
経済学者は、減税や規制緩和、インフラ投資といったトランプ大統領の政策によって、米国のGDP成長率が2%を超えるとは考えていない。McClean氏は、「米国が3%の成長を続けられる時代は終わったと考えている」という。同氏は、「トランプ大統領は4%の成長を目指しているが、実現は難しいだろう。実際の成長率は2%にとどまると予想される」と述べている。
さらに、「こうしたプログラムが資金を循環させ、変化を生み出すには時間がかかる。2017年はわずかに上向くと予想されるが、3〜4%の成長率を即座に実現できるとは誰も考えていない」と付け加えた。
同氏は、「トランプ大統領が中国と貿易戦争を始めれば、計画は台無しになるだろう。高額な関税を課すことになれば、ビジネスにはマイナスだ」と指摘している。
欧州では、シリア難民問題とイギリスのEU離脱による圧力の下、ポピュリズムが拡大している。同氏は、「オランダとフランス、ドイツ、そして恐らくイタリアも2017年に選挙を控えているが、選挙後の欧州の動向はさらに厳しいものになると予想される」と述べている。
同氏は、英国のEU離脱が実質的には2019年になることを挙げ、「もしイタリアがEUを離脱することになれば、大きな変化が訪れるだろう」と述べている。同氏は、「イタリアのEU離脱によってポピュリズムに拍車が掛かり、経済成長が鈍化する」と予想している。
■中国半導体業界の成長は
McClean氏は、「中国は2021年に、世界IC市場の50%近くのシェアを占める」と予想している。具体的には、中国のシェアは現在の38%(1120億米ドル)から44%(1660億米ドル)に拡大するという。中国は現在、世界のDRAMの半分、フラッシュメモリの3分の1近くを消費している。
ただし、同氏は、国内生産を大幅に増やすという中国の計画に対しては懐疑的な見方を示している。同氏の予測によると、「2021年の中国の半導体売上高は297億米ドルで、これは国内需要の約17.9%に相当する」という。同氏は、「現時点では、世界半導体市場における中国のシェアは4%だが、2021年には7.85%に増加する」と予想している。
同氏は、「中国は2021年に国内需要の40%を生産することを目指しているが、到底、達成できない目標だ」と述べている。
「中国は、政府および個人投資家から1600億米ドル近い資金を調達しているにもかかわらず、中核技術が欠如しているため、半導体産業を強化するというプロジェクトは目標を大きく下回る」と同氏は確信しているという。
「中国の計画は20年遅かった。成熟の進んだ市場に飛び込もうとしているが、中国の工場が導入している技術は最先端からは程遠いものだ」(McClean氏)
中国の工場新設によって、2017年の設備投資は前年比で5%増、そして2018年は9%増になるとみられている。だがMcClean氏は「バブルかもしれない」と述べる。「そういった傾向がどのくらい続くのか、誰にも分からない。(中国の半導体強化は)あくまでも政府が決めたことで、ビジネス的にそれがうまくいくかは、また別の話である」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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