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巨大なビルで大量生産…日本の名酒『獺祭』がちょっと変だぞ!? 日本酒好きのあいだでは賛否両論
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50774
2017.01.29 週刊現代 :現代ビジネス
安倍首相がオバマ大統領に振る舞ったことでも有名な山口の酒は、地酒のイメージとは裏腹に、杜氏も置かず、近代的な設備で造られている。確かに旨いが、日本酒好きのあいだでは賛否両論あって……。
■5年前のブームから……
「うちの店は10年前の開店当時から獺祭を出していました。日本酒にうるさいお客さんが持ちこんできて、『大将、飲んでみてよ』と言うから飲ませてもらったら、これまでの日本酒にないようなクリアな味わいで、びっくりしました」
こう語るのは銀座で日本料理店を営む店主。ところが、5年ほど前のこと、テレビ番組に蔵元の旭酒造の桜井博志社長(現会長)が出演し、獺祭ブームが起きてから事情が一変したという。
「仕入れをお願いしていた酒屋さんが、獺祭を卸してもらえなくなったと言うんです。オープン以来ずっと出してきたお酒ですし、なんとしてもお願いしたいと伝えたのですが、のれんに腕押し。
小さな蔵だとそういうこともよくあるのですが、許せないと思ったのは、テレビで社長が『ブームで買ってくれる人よりも、昔からのお客さんを大切にしたい』と話しているのを見たときです。言ってることとやっていることが違うだろうってね。
最近では大量生産化も進んでいるようで、どこでも買えるみたいだけれど、そんな酒にもう興味はありません。最近の獺祭を飲んだこともあるけれど、味も昔と変わってしまったのではないか」
日本酒輸出協会会長の松崎晴雄氏は、この酒がもてはやされる理由を、次のように分析する。
「獺祭は華やかな香り、フルーティな味わい、そしてフレッシュな口当たりを感じられる酒。誰が飲んでも『明らかに普通の酒ではない』と気付く、ツウ好みというよりはわかりやすい日本酒ですね。
また、精米歩合で種類を展開するブランディングも成功しました。原料米に最高の山田錦しか使わない、極限まで精米するといった点がウケているのでしょう」
獺祭という名前は、それほど日本酒に詳しくない人でも聞いたことがあるだろう。山口県岩国市で造られているこの酒の歴史はさして古いものではない。
蔵元の旭酒造の設立は1948年だが、獺祭という名を冠した純米酒を造り始めたのは'90年代初頭のこと。'92年には米の77%を磨き切って造る「磨き 二割三分」が発売され、日本酒マニアのあいだで高く評価されるようになった。
「磨きの違いを飲み比べるという楽しみも魅力の一つです」(松崎氏)
このような独自の戦略で人気を博した獺祭はたちまち「時の酒」となった。山口県が地元である安倍晋三首相によってオバマ大統領をはじめとする各国首脳にプレゼントされ、輸出される「ジャパニーズ・サケ」の代表格とみなされた。
意外なところでは、人気アニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の登場人物の部屋に、獺祭の瓶が無数に並んでいるシーンがあり、アニメ好きのあいだでもファンを増やしている。
「普段は地酒などあまりたしなまれないような雰囲気の、いわゆるアキバ系の人たちが、テイスティングにいらっしゃることも多いですね」(東京都内の日本酒バーの店員)
■ビルのような酒蔵
極度の品薄状態が続いたため、旭酒造は大量生産体制を整えようと、古い蔵を壊し、12階建ての新工場を建設した('15年に完成)。古い民家しかないような山奥の風景の中で、にょっきりと現れる無機質な工場は異様な雰囲気を放っている。
獺祭の製造法は杜氏を置かないという革新的なものだ。前出の松崎氏が語る。
「旭酒造は近代的な醸造機材を大量投入しています。これは、杜氏の長年の経験と勘に頼ることなく、新入社員でも均質な酒を造るにはどうすればいいかを追求する哲学があるためです。
酒造業界全体の問題として、杜氏の高齢化と人材不足があります。また杜氏の働きぶりにムラがあるのも事実。桜井氏は、そのような問題を解決する手段として、酒造りをデータに基づいてマニュアル化することを進めてきた」
しかし、このような製造法は日本酒愛好家のあいだで賛否両論を呼んでいる。
「杜氏が古い酒蔵で造ってこそ旨い酒ができると信じている人は多いですからね。私自身も、何百年も続く酒蔵で法被を着た杜氏が、櫂入れしている光景を思い浮かべて酒を飲みたい。いくら品質がいいといっても、近代的な工場でサラリーマンが造った酒に高いカネを払いたくない。
実際、旧来の獺祭ファンからは、大量生産化で味が変わったんじゃないかという声もある」(日本酒ライター)
一方で、日本酒に詳しいコラムニスト勝谷誠彦氏は、味は変わっていないと語る。
「桜井さんは稀少価値で値段が上下するような状況は間違っていると考えていて、絶対に品質を落とさずに、誰でも飲めるように生産量を増やそうと努力している。大量に出回ることで問題が生じているとすれば、きちんと保存管理をしていない酒屋や居酒屋が出てくる可能性があるということでしょう。
大量生産するに当たって一番難しいのはコメの調達です。いまは直接契約した農家に山田錦をどんどん増産させています。しかも富士通と組んでITでサポートしている。
だから、獺祭はいまや和民のような大衆居酒屋でも飲めるのです。『獺祭も和民が置くようになったらおしまいだね』なんて言う人もいますが、逆に和民に卸しても味がまったく落ちていないことは驚くべきことです」
旭酒造は、「日本酒は通常冬の寒い時期に仕込むもの」という常識も覆そうとしている。蔵の温度管理を徹底し、通年で醸造を行っているのだ。だが、この点についても旧来の日本酒ファンからは不満の声が上がる。
「食材や料理に旬があるように、日本の食文化に四季はつきもの。寒仕込み≠ニ聞くだけで、酒好きにはたまらない。冬の寒い朝、蔵人たちが白い息を吐きながら、仕込みを行う。私たちはそういう光景も含めて、酒を味わっているんです。
いつでも醸造できるなら、何月が新酒の季節かもわからなくなってしまう。常時美味しい酒が飲めるということは、ある面では素晴らしいことかもしれませんが、逆に季節感という大切なものを失っているのです」(都内の老舗酒屋店主)
このように保守的な酒好きからは、批判的な声が上がりがちな獺祭の酒造り。だが意外なことに、旭酒造の手法は伝統的な方法を守り続けている酒蔵からも一定の評価を受けている。岩手県の「南部美人」の五代目蔵元、久慈浩介氏が語る。
「獺祭は機械で造っているとよく誤解されるようですが、分析器がずらっと並んだ最新鋭の蔵なのに、麴は手作りし、米は小分けにして洗う。丁寧に米を洗うのは、吸水率を一定にしなければデータをきちんと取れないからです。
うちでもそうですが、そうしないと後の工程のデータが無用の長物になり、経験と勘に頼らざるを得ない。だから要所要所は手作業を徹底しているのです」
■虫混入は「奢り」の現れ?
このように徹底的に品質管理をしていても事故は起きる。昨年末、獺祭のボトルの中に虫が混入していることが発覚し、回収騒ぎになった。前出の日本酒ライターが語る。
「醸造工程ではなく、瓶詰の段階で混入したようですが、やはり急な生産拡大で目の行き届かない部分が出たのでしょう。業界内では『メディアでもてはやされた奢りが出た』といった声も聞かれる。桜井氏は地方経済振興の雄としても、経済誌などで引っ張りだこですからね」
事故後、旭酒造は、瓶詰の際に自動機械を使うと30〜60秒の隙間時間ができるため、手動により素早く打栓する方式に変更したと発表している。
獺祭の酒造りに対する批判の声に桜井会長はどう答えるのだろうか? 本人に話を聞いた。
「これまで日本酒業界は、一部でコメが余っているのに原料米不足になっていたり、杜氏がどんどんいなくなったりという状況に対して何の改善策も描いてこなかった。
そこに私どもは、真正面から突っ込んでいきました。美味しい酒を目指すためにはこの方法しかないということで、杜氏の勘に頼らない酒造りの形が出てきたわけです。ただ、真正面から行き過ぎるところがあるので、抵抗や反発の声が出てくるのは仕方がないことかと思っています」
最新設備で大量生産して海外にも進出――ビジネスとしては間違いなく「成功譚」だが、「前のほうがよかった」と思っている日本酒ファンの気持ちも汲んでほしいところだ。
「週刊現代」2016年1月28日号より
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