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ダウ2万ドル、裏付けの弱さに要注意
25日の米株式市場でダウ工業株30種平均が史上初めて2万ドルを突破したが、経済のファンダメンタルズに裏付けられたものではない
By GREG IP
2017 年 1 月 26 日 16:26 JST
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
***
英国が欧州連合(EU)から離脱しようとしており、ホワイトハウスには保護主義者がいる。フランス大統領選の最有力候補はユーロ圏からの離脱を望んでいる。だがおかしなことに、投資家は世界のリスクは高まっているのではなく、低下しているとの結論を下した。その結果、株に買いが集まり、25日の米株式市場でダウ工業株30種平均が史上初めて2万ドルを突破した。
経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)でこれを説明するのは難しい。ドナルド・トランプ氏が昨年11月に大統領選でまさかの勝利を収めてから、経済のファンダメンタルズは改善しているが、それほど大きい改善ではない。ウォール・ストリート・ジャーナルが大統領選後にエコノミストを対象に実施した調査によると、今後2年間の米経済成長率見通しは0.3ポイント引き上げられただけだった。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らは昨年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で、自身の経済成長率予想にはほとんど言及しなかった。アナリストらの企業利益予想もほとんど変わっていない。
変わったのは、アップサイドリスクとダウンサイドリスクのバランスに対する投資家の評価だ。投資家はトランプ氏の保護主義的な政策や、ユーロに対する欧州のポピュリストたちの脅威が高まっていることを懸念している。だが、「トランプ政権の企業寄りの姿勢」や「インフラ投資の拡大と減税が見込まれること」、「債券利回りの上昇と、中央銀行によるマイナス金利深掘りの可能性の低下によって銀行の利益が改善していること」、「石油輸出国機構(OPEC)とその他の主要産油国の減産合意が米石油会社の追い風になっていること」などを重視している。
リスク選好度の上昇を示す確かな証拠の1つは、株式市場と債券市場の動きの乖離(かいり)だ。昨年6月に英国で行われた国民投票でEU離脱が決まった後、10年物米国債は価格が急上昇した一方で、利回りは1.4%を割り込み過去最低となった。これは、物価上昇に向けた、いかなる説得力のある道筋をもってしても、つじつまが合わなかった。むしろ、ユーロ圏の分裂やマイナス金利の深掘りなどの脅威からの保護を必死で求める様子を反映したものだった。
米大統領選の投票日直前に、10年物米国債利回りは1.9%前後に回復し、その後、2.5%を突破した。FRBが引き締めペースを加速するという観測は、その背景のごく一部で、大半は単に世界のリスクが低下していることから、極めて安全な資産が物色されていないというだけだ。株式市場が債券市場と逆の動きをしているのは、同じようにリスク選好度が変化したためだ。
ニューヨーク大学のアスワス・ダモダラン教授によると、昨年11月時点で株式投資の期待リターンは債券投資を6.3ポイント上回っていた。その差は今月25日までに5.7ポイントに縮小した。
それでも歴史的には高水準にあり、従来の価値判断では株式が割高に見える中で、緩衝材としての役割を果たしている。過去12カ月の利益に基づく米国株のPER(株価収益率)は現在21倍と、ダウ工業株30種平均が2013年に1万5000ドルの大台を突破した時の15倍を上回る。ただ、1999年のドットコム・バブル期に1万ドルを超えた時の24倍には及ばない。
投資家は我を忘れているのだろうか。おそらくそうだ。米議会とトランプ氏はともに減税を目指しているが、その方法については合意しておらず、赤字で身動きがとれなくなるだろう。議会はトランプ氏のインフラ投資計画にもあまりいい顔をしていない。オバマ政権時代の金融・医療関連の法律は大半が存続する可能性がある。
だが重要なのは方向性だ。たとえ規制や税制がさほど緩和されなくても、オバマ政権の規制強化路線とは大きく異なる。同様に、先の経済見通しの引き上げは小幅ではあったものの、これまで引き下げが相次いでいたことを考えると、胸のすくような変わり様だ。
こうした状況を踏まえれば、FRBが先月、政策金利を引き上げ、今年の利上げ回数予想を9月時点の2回から3回に引き上げた後に、株価の下落がごく一時的なものにとどまったのもうなずける。投資顧問会社のビアンコ・リサーチによると、FRB当局者らの利上げ回数予想の中央値が引き上げられたのは2年ぶりだ。これはまさにFRBが、米経済に対するリスクがもはや景気を押し下げることはないという市場と同じ結論に達したことを示す。
米経済が過去7年にわたる低成長から抜け出したことを示す兆候はまだほとんど見られないが、これも変わる可能性がある。企業のアニマルスピリット(将来に対する主観的期待)が株式市場のそれと同じようになれば、設備投資とリスクテーキングが回復し、生産性を高めるかもしれない。
とはいえ、株式市場は現実を把握する必要がある。米国の景気拡大は7年余りに及び、リセッション(景気後退)時の余剰生産能力を使い果たして勢いが乏しい。4.7%という失業率は、FRBが完全雇用状態にあると見なす水準だ。
8年にわたる超金融緩和政策は、資産価格の上昇と金融工学を駆使した取引という厄介な遺産を残した。ニューヨークの経済コンサルタント、ゲイル・フォスラー氏によると、企業利益の伸びは鈍化しており、企業のキャッシュフローは設備投資資金と配当金を何とか賄っている状態だ。また、債券市場はFRBが利上げペースを加速せざるを得ないことを示唆している。同氏は、これらは企業が財政難に陥る要因で、18年にリセッションを引き起こすとの見通しを示した。
もしフォスラー氏が正しかったら、ダウ工業株30種平均が、1999年に1万ドルを突破した後のように、再び2万ドルをつけるにはかなりの時間がかかるかもしれない。
投資家は、トランプ氏は企業に干渉することや海外の貿易相手国を痛めつけることが好きなため、企業に有利な税制改正によって生まれる同氏への好意がほぼ消えうせる可能性があることを忘れてはならない。
貿易障壁の増加がリセッションを引き起こすことはない。投資調査サービス会社のバンク・クレジット・アナリストのピーター・ベレジン氏によると、過去にそうした前例はほとんどない。企業が海外から米国に生産を回帰させれば、投資と雇用は一時的に増えるだろう。だが本当の問題は、保護主義とは海外製品がすぐに入手できずに国内の旺盛な需要を満たせず、インフレ圧力と金利の上昇を招くことを意味することだ。それだけでなく、国際協力をむしばみ、地政学的関係を不安定にするという。
これは、優良企業の利益にとって次の10年間は今までの10年間よりも厳しいものになることを示唆する。そのため、投資家は過大な期待を抱かないようにした方がいい。
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「Dow 20000(ダウ2万ドル)」と書かれた野球帽をかぶったニューヨーク証券取引所のトレーダー(25日)
「Dow 20000(ダウ2万ドル)」と書かれた野球帽をかぶったニューヨーク証券取引所のトレーダー(25日) PHOTO: BRENDAN MCDERMID/REUTERS
By JASON ZWEIG
2017 年 1 月 26 日 13:05 JST
――筆者のジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト
***
私が以前もらった「Dow 10000(ダウ1万ドル)」と書かれた記念の野球帽は、どうなったのだろう。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)のフロアにいた株式ブローカーがこの帽子をくれたのは、1999年3月のことだった。ダウ工業株30種平均株価が初めて1万ドルの大台に乗せて取引を終了した時だ。
私は自宅の庭で、この帽子をかぶってよく作業したものだ。しかし、そのうちに泥だらけになり、どこにあるのか何年間も見ていない。
ダウが初めて2万ドルを突破したなかで、消えたあの帽子は重要なメッセージを思い起こさせる。前に進むために、投資家たちは過去を振り返る必要がある。
統計会社S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズの上級アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によれば、ダウは1999年初めに1万ドル台に乗せたが、その後この1万ドル水準の上下を実に33回も行ったり来たりした。最終的に1万ドル台にしっかり定着したのは、約10年後の2010年8月27日のことだった。
確かに、投資家たちはその間ずっと配当を得てきた。そして、ダウは2007年7月、1万4000ドル強でピークとなった。
しかし、1999年に1万ドルをつけてから2010年に元の水準の1万ドルに再び戻るまでの間、われわれは2009年3月に6547.05ドルへの下落を経験し、それを乗り越えねばならなかった。高値の1万4000ドルからわずか1年半あまりの間にダウは半分以上値を下げた。
そして、この大変動は(1万ドルに初めて乗せた翌年の)2000年1月から02年10月までの間で38%下落した数年も後の出来事だった。
さらに歴史をさかのぼると、ダウは1954年末まで、1929年の終値ベースの最高値を超えることはなかった。実に四半世紀以上も後のことだ。
これは配当を計算していないが、当時、大半の投資家は配当を再投資していなかった。たとえ再投資していたとしても、それは1929年の株価大暴落に伴う巨額の損失をほとんど緩和しなかっただろう。
見えざるインクで描かれる軌道
つまり、株式を保有するリスクが報われるためには、腹立たしいほど長い期間待たねばならない可能性があるのだ。もう一つの教訓はもっと捉えがたい。それは、金融の歴史は実際以上に予測可能に見える、あるいは見えたというものだ。
市場というものは、長期的で広範なサイクル(循環)の中で変動するのがしばしばだ。それは何年間ないし何十年間も上昇気流に乗り、その後、何年間も続けて停滞ないし下降する。
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25日の米株式市場でダウ工業株30種平均が初めて2万ドルの大台に乗った。ダウの歴史を政治的・経済的出来事と共に振り返る(英語音声、英語字幕あり)Photo: Associated Press
1966年から1982年を考えてみよう。当時、株価はどこにも行かず、大きく変動しなかった。その後、1982年から2000年初頭まで歴史上で最大級の強気市場になった。さらに2000年から2009年までの時期を考えると、2度の急落があり、09年から今年に至るまでは上昇に転じて株価は一気に3倍になった。
こうした本格的なサイクルは、歴史的なパフォーマンスのチャートを振り返れば、ほとんど明々白々だったように見える。子どもでさえ予想できたのではと感じられるほどだ。
しかし市場はいつもその将来の軌道を見えざるインクで描いてきた。過去のサイクルの明晰(めいせき)さは幻想であり、後知恵の贅沢(ぜいたく)なのだ。
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初めて2万ドルを突破したダウはさらに上昇するのか。WSJのコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」のケン・ブラウン編集長に聞く(英語音声、英語字幕あり)Photo: Getty
とすれば、学者やアナリスト、投資家たちが長い間、予測ツールを求めてきたのも不思議ではない。株式市場が何年間も連続して高リターンになったり、低リターンになったりする時点がいつなのかを特定できるツールだ。
そうしたツールを手に入れ、それが役に立つと分かれば、株式市場の上昇に乗ったり、下落を回避したりできるだろう。
CFA協会研究財団から委託された金融市場史に関する新研究で、AQRキャピタル・マネジメントのプリンシパルのアンティ・イルマネン氏は、この分野の包括的な研究結果をまとめている。
あてにならない指標
同氏によれば、配当利回りがその長期平均を下回っている時、将来の株式リターンも平均を下回る傾向がある。
同様に、株式が長期的な利益(インフレ調整済み)と比較して高価格で取引されている時、将来の株価パフォーマンスは低い傾向がある。
配当利回りは現在、ダウについては約2.5%、S&Pについては2%で、歴史的低水準からかけ離れていない。また株価は、インフレ調整済みの多年度利益のほぼ29倍と、長期的な平均の約16倍を大幅に上回った水準で取引されている。このため、リターンは今後数年間にわたって精彩に欠ける(たぶん劣化しさえする)と予想するのが賢明なようだ。
残念ながら、配当利回りないし長期的な株価収益率(PER)を使って、正確あるいは実用的な予測を出すことは誰にもできないようだ。イルマネン氏は、この種の予測指標は「どちらかといえば粗雑なシグナルを出すだけで、一つのサイクルにおいてあまりにも早い時期に買いや売りを推奨することになっている」と書いている。
株式がこの種の指標からみて過大評価されているように見え始めたのは遅くとも1992年ごろだ。だが株式はそれ以降、2008年と09年の数カ月間を例外として、ほぼ四半世紀全体にわたって割高に取引されてきた。
イルマネン氏によれば、こうしたシグナルを駆使することは「極めて難しく、それを試してみたという誘惑に駆られても、大半の投資家はやめておいた方が良い」という。
2万ドルといった概念的な節目に達したとしても、それは売りを推奨する魔法のようなシグナルではない。つまり、ダウが今後ここから漂流したり、下落したりすることを示す指標ではないのだ。
しかしダウ指数自体の歴史は、良い時代が永遠に続かないことをわれわれ全員に思い起こさせるはずだ。したがって、ダウ2万ドル突破によって、われわれは警戒感を持つべきであって、浮かれ騒ぐべきではない。
株式の保有は長期的な取り組みであり、必要なのは忍耐だけではない。多くの投資家が認識している以上に、苦痛と不透明さへの高い寛容さをも必要とするのだ。
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By JAMES MACKINTOSH
2017 年 1 月 26 日 15:03 JST
ダウ平均に見切りをつけるときがやってきた。導入から120年が経過した今、ダウは情けないほど時代おくれの代物となった。プロからは見放され、愛着を感じているのはその多くが頭が回らないメディアだけだ。ダウ平均は今の時代に合うように改定する必要がある。いや、いっそのこと退場したほうがいい。
ダウ平均を発明したのは本紙(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)の創刊者の1人だ。筆者の直属の上司とそのまた上司はダウ平均を構成する30銘柄を決定する委員会のメンバーだ。テレビのニュースも米国株式市場の動きを示す指標としてダウ平均の数字を伝えてきた。
しかしコラムニストの仕事はお世辞を言うことではなく、事実を提示することである。そしてこの場合の事実とは、ダウ平均には大きな欠陥があるということだ。ダウ平均は市場全体の物差しとしてふさわしくない。実のところそのように設計されてもいない。投資の目安としても優れているとも言えない。その計算方法も理にかなっているわけではない。その上、正しくもない。
まず最後に触れた正確さの点から議論しよう。ビリーニ・アソシエイツの計算によると、紙と計算尺が使われていた時代の間違いを修正すると、ダウ平均は先月、史上初めて3万ドルの大台に乗った。
最大の間違いは構成銘柄が12銘柄から20銘柄に増えたときの単純な再計算によるものだ。米国の株式市場は第1次世界大戦開戦を受けて4カ月にわたって閉鎖されたが、公式記録によると、1914年に市場が再開された当日のダウ平均は1日の下落率としては最大の24%も下げたことになっている。実際にはこの日、市場もダウ平均も上昇したのだが、2年後にダウ平均の構成銘柄が12銘柄から20銘柄に増えたとき、記録は一切調整されることなく再計算された。新しく加わった銘柄のうち一部の銘柄の株価が低かったせいで、ダウ平均の水準が下がったというわけだ。だから実のところ、ダウ平均が2万ドルを超えたといって大騒ぎする理由はないのである。
その水準以上に重要なのは計算方法だ。ダウ平均は株価の平均値なので、機械式の計算機が統計処理の最新技術だった時代には早くて簡単に計算することができた。しかし株価は発行済み株式数に左右されるため、どんな数字にもなりうる。一部の企業の株価が極端に高ければ、時価総額がそれほど大きくなくてもその企業はダウ平均に大きな影響力を持つ。今どきの指数は時価総額を加味した加重平均で、購入可能な浮動株が考慮されているものも多く、市場全体や購入可能な株式の動きをより正確に表している。
そのせいで、ダウ平均は市場全体とは大きく異なった動きを見せることがある。この3カ月がまさにそうだった。昨年11月の初めからの上昇率はダウ平均が10%、より広い銘柄をカバーするS&P500種株価指数は7%だった。
その大きな理由はゴールドマン・サックス・グループだ。ダウ平均が奇妙なまでに株価を重視しているため、ゴールドマンはダウ平均に対して時価総額以上の影響力を持っている。ゴールドマンの現在の株価は1株当たり236.59ドルで、ダウ平均構成銘柄の中でも最も高い。これはダウ平均に対して、ゴールドマンがアップルの2倍の影響力があることを意味する。アップルの時価総額はゴールドマンの6倍を超えているにもかかわらずだ。
取引が活発ではない公益事業会社や不動産会社が除外されていることも最近のダウ平均にとっては追い風だ。公益事業企業と輸送企業はダウが工業株平均であることを理由に除外されている。しかし、1924年に小売業のシアーズ・ローバックが加わった時点で、ダウ平均は純粋な工業株平均ではなくなった。
まさに同じ理由でダウ平均は2009年3月以降、鈍い動きを繰り返し、市場に後れを取っている。ダウ平均とS&P500の動きが大まかに一致する傾向にあるのは事実で、この20年では2つの指数のリターンはさほど変わらない。
ただ動きが大きく異なる時期もあった。例えばリーマンショック以降の上昇率はS&P500は234%だが、ダウ平均はそれより30ポイント以上も低い。
こうした理由から、ダウ平均は投資家の動きを示す物差しとしては不十分なものとなっている。そのことが、ダウ指数に退場を求める大きな理由の1つだ。
市場の指数――平均値であっても――のもう1つの意義は資金を働かせることにある。ウォール街はダウ平均の欠点を認識しており、この点でもダウ平均には落第点がつく。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのハワード・シルバーブラット氏によると、ダウ平均に連動したファンドの総額は359億ドル(約4兆円)にすぎないが、S&P500種指数に連動したファンドは総額2兆1000億ドルに上る。
ダウ平均の唯一のとりえは、歴史が長く、構成銘柄に有名企業が選ばれ、知名度が高いことだ。ダウ平均は紛れもなく1つの象徴だ。しかし名前が知られていること自体も欠点になっている。メディアはダウ平均が100ドル動けば大騒ぎするが、100ドルが指数に占める割合は20年前の2%からたった0.5%に下がっている。
実のところ、ダウ平均は2012年にS&PグローバルとCMEグループの合弁会社に売却されており、ダウ・ジョーンズはもはや所有者ではない。しかし葬り去るにしては惜しいブランドではある。ダウ・ジョーンズ米国トータル・ストック・マーケット・インデックスのような不格好な名前の指数にダウ平均の名前を付ければ、適切な物差しになるかもしれない。ダウ・ジョーンズ米国トータル・ストック・マーケット・インデックスは市場の動きを示す素晴らしい指標だが、ないがしろにされている。ただしその場合、ダウ平均がカバーする銘柄数は30銘柄から、実に3850銘柄に激増することになる。
導入から1世紀以上経った今、ダウ平均は更新する必要がある。
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By JOHN CARNEY
2017 年 1 月 26 日 13:20 JST
ダウ工業株30種平均の2万ドル達成では、米金融大手ゴールドマン・サックス・グループがゴール寸前まで持ち込んだ。ただ、最後の一押しを加えたのは米IBMと米航空機大手ボーイングだった。
ゴールドマン・サックスは米大統領選挙直後、ダウ平均の上昇を大幅に後押ししてきた。昨年11月8日以来のダウの上昇は1735.77ドルだが、ゴールドマンはこのうち378.91ドル分(21.9%)に貢献し、2万ドル乗せ最大の立役者となった。
トランプ政権が銀行規制を緩め、減税を実施し、成長志向の政策を推進するとの期待から金融株全体が急上昇するなか、ゴールドマン株も大統領選挙以来30.4%もの急騰を示した。ここで重要なのは、トランプ政権による一連の措置は、銀行の収益性改善を支える金利上昇につながるということである。実際、KBWナスダック銀行指数は大統領選挙以来、ダウ平均の2倍以上の上げ幅を記録している。
投資家の楽観的見方を反映するように、バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は25日、米国経済の「足場は非常に強固」であり、大統領選挙以来、消費者や企業の信頼感は大幅に改善していると指摘した。
同氏はニューヨークに本部を置くシンクタンク、外交問題評議会(CFR)に対し、トランプ大統領の政策に言及しながら、「就任1週間にも満たない中、事態は動いている」とした。また、「今後の実行を見極めなければならない」ものの、消費者と企業の信頼感を高める可能性は高いと付け加えた。
モイニハンCEOが上機嫌なのも当然だ。バンク・オブ・アメリカの株式はゴールドマン株以上に急伸したのだ。大統領選挙以来35%という上げ幅は、大手銀行株でも最大である。
ただ、バンク・オブ・アメリカ株はダウ平均の構成銘柄ではない。また、1月半ばの2016年10-12月期(第4四半期)決算発表を受けて同社株がさらに上昇したのに対し、ゴールドマン株は勢いを失った。ゴールドマンの第4四半期収益はアナリスト予想を上回っていたが、金融株については2017年に期待されている好材料の多くがすでに織り込み済みとなっているようだ。
この時点で、ダウ平均のモメンタムを支えたのはIBMとボーイングだった。両銘柄はそれぞれ、大統領選挙以来のダウ平均上昇に2番目と3番目の貢献を果たした。
ただし、その上げ幅の大半は今月に入ってからのものである。この二つの銘柄は、300ドル近い年初からのダウ平均の上げ幅のうち、80ドル以上の貢献をしている。
ボーイングの決算がアナリスト予想を上回ったため、同社株は25日だけで4.2%も上昇した。一方、クラウドコンピューティングや人工知能(AI)関連事業の大転換に取り組むIBMは、年初から7%以上も急騰している。
ダウ2万ドル目前で失速したゴールドマン株だが、ダウ構成銘柄のうち、大統領選挙以来の上昇への貢献度が10%を超えるのは同社株だけである。
ゴールドマン株の上昇は、株価に基づく経営幹部の報酬計画にとっても支えだ。同社株は、2007年10月に記録した終値ベースの過去最高値247.92ドルに肉薄している。
ただ、ゴールドマンがダウ平均大台突破の余韻に浸っている様子はない。今月初め、決算発表後の電話会議でハービー・シュワルツ最高財務責任者(CFO)は「自社の株価を常に見守っている」としつつも、そのためにゴールドマンが「経営方針の変更を検討する」ことはないと付け加えた。
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ストラテジーレポート
配信日:2017年1月26日
チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆しているコラム広木隆の「新潮流」はこちらでお読みいただけます。
プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
NYダウ平均、史上初の2万ドルの大台へ 広木 隆
ダウ平均が2万ドルの大台に到達した。トランプ大統領も、Great!とつぶやいた。
昨年11/25付の僕のブログで述べたように、 19,000ドルの大台更新まで 483日を要した。18,000ドル越えから約2年かかった。それが今回は42営業日。ITバブル期以来、史上2番目に速い大台替りである。
いま、ブログの日付を見て思った。ブログの日付は11/25、そしてダウが2万ドルに乗せた昨日が1/25。ちょうど2カ月である(ダウ平均が 19,000ドルを付けたのは11/22)。この2カ月の間には、感謝祭、年末商戦、FRBによる利上げ、クリスマス、大納会、大発会、そしてトランプ大統領就任式といろいろなことがあったが、2016年が終わり2017年という新しい年が始まるその前後1カ月という期間で、NYダウ平均は大台替りを果たした。トランプ氏が大統領選で勝利した2週間後にダウは19000ドルに乗せ、トランプ氏が大統領に就任した5日(3営業日)後に2万ドルに乗せた。この躍動感、このダイナミズム。まさに新しい時代の到来を予感させるような動きではないか。
僕はトランプ大統領就任から「トランプラリー第2幕のスタート」と主張してきた。ダウ平均2万ドル達成は、その号砲である。
トランプ新政権の政策が不透明だ、などという、とってつけた理由でこのところの相場低迷を説明する解説が多かったが、前回のレポートで述べた通り的外れであろう。政権がまだ本格稼働していないにもかかわらず、トランプ大統領は積極的にメッセージを発し続け、米国経済を活性化させようとしている。外交や通商政策は確かに不透明だが、減税や規制緩和の方針は変わっていないことが読み取れる。それに企業も米国市場も鼓舞されている感がある。
折しも米国は決算発表が佳境に入ってきている。トムソンロイターの調べでは、S&P500の利益の伸びは2016年Q4が6.3%となる見込み。以降、四半期ごとに13.6% 11.9% 10.2%と2ケタ増が続く。米国企業の業績回復が株高の背景にある。
もっとも、それら2ケタ増益の向こう4四半期の業績を織り込んでPERは17倍だ。このバリュエーションの高さをどうこなすか。特に金利見合いのバリュエーションは割高感が強い。米国の10年債利回りがボトム(1.3579%)をつけた昨年7月8日のS&P500は2129.9で4四半期先の予想PERは16.5倍だった。益利回りは6%以上あり、金利とのスプレッドは4.7%あった。現在10年債利回りは2.5%にまで上昇する一方、PERはさらに上昇して17倍、益利回りは6%を下回り、金利とのスプレッドは3.36%に低下している。
金利見合いのバリュエーション、すなわちイールドスプレッドの適正な水準をどこに求めるかについては正解がない。単純に過去平均を当てはめるわけにはいかないだろう。過去35年にわたった金利低下の時代が終わった可能性があるからだ。2015年5月11日に書いたストラテジーレポート「米国金利は上昇するか」ではこう述べている。
<イールドスプレッドの1985年から現在まで過去30年の平均は1.5%であるのに対して、現在は3.8%である。つまり、金利見合いのバリュエーションという観点では株はまだ割高ではなく、歴史的にプレミアムがたっぷり上乗せされた状態であり、むしろ割安と見ることさえできるかもしれない。(中略)
https://info.monex.co.jp/report/strategy/20150511_01.html
株式が割高でないのか、あるいは金利が低すぎるのか?われわれはこの議論をさんざん繰り返してきた。ざっくりとした感覚で言えば、株はバブルの入り口、債券は既に超バブル - そんなところだろう。株式は「かなり割高」ではないが、明らかに「割安」ではない。一方、債券は異常に買われ過ぎているため、現在の超低金利を基準に物事を評価するのは大変危険である。>
いずれにせよ、新たな時代、新たな局面に突入したことは間違いない。前掲したブログのタイトル・バックに使ったWSJの見出しをもう一度ここで引用しよう。
"Blue-Chip Stocks Power Through New Milestone"
日本語にすれば、「優良株(ダウ平均のこと) 新たなマイルストーンに」ということだが、実は"Power Through"という言葉がミソである。"Power Through"には、「困難であってもやり遂げる」という意味がある。史上初の2万ドルに乗せたNYダウ平均。ここから先は、タフな相場を乗り切っていかなければならない。
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