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日本の総人口が減少する一方で、東京圏の人口は増え続けている(© tayukaishi – Fotolia)
「東京一極集中」がさらに加速、いよいよ「危険水域」に到達か
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170126-00033167-biz_plus-bus_all
ビジネス+IT 1/26(木) 6:10配信
東京圏1都3県の人口転出入を、2020年までに均衡させる政府目標の達成が危険水域に突入した。地方での雇用創出効果が見えないまま、転入超過が拡大し、東京一極集中が加速しているからだ。一時、話題になった企業の本社機能移転も、東京圏に移す企業が過去最多となっている。政府は東京圏の大学生向けインターンシップ(就業体験)を実施する地方企業を倍増させるとともに、東京23区内で大学や学部の新増設を抑制する仕組みについて検討することを決めた。しかし、明治大政治経済学部の加藤久和教授(人口経済学)は「2020年までに一極集中の流れを止めるのは難しい」とみている。
●東京圏1都3県は12万人近い転入超過
総務省の2015年住民基本台帳人口移動報告によると、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を合わせた東京圏の転入は48万7,251人、転出は36万7,894人で、11万9,357人の転入超過になった。
東京圏への転入超過は20年連続。2006〜08年は毎年13万〜15万人台の転入超過が続いていた。2008年のリーマンショック後、転入超過幅の減少が続き、東日本大震災が起きた2011年に6万2,809人まで下がったが、その後緩やかな景気回復とともに転入超過が拡大し、リーマンショック以前の状況に戻りつつある。
年代別の内訳を見ると、転入超過の大半は若い世代に集中している。20〜24歳の6万6,517人を筆頭に、15〜19歳2万6,484人、25〜29歳2万68人、30歳代6,065人と続く。反対に50歳代や60歳代は転出超過となっている。
東京圏の現状について、総務省国勢統計課は「2015年も若い世代を中心に転入超過が続き、東京一極集中が加速している」と分析している。
全国の都道府県で転入超過となったのは、東京圏1都3県のほか、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県だけ。2014年に転入超過だった宮城県は転出超過に転じた。
転入超過8都府県のうち、東京都が単独で8万1,696人も人口が増加し、東京圏の3県がそろって1万人台の超過だったのに対し、東京圏以外の4府県はいずれも1万人未満。人口の東京一極集中ぶりをあらためて浮き彫りにする形となった。
3大都市圏を見ても、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)は9,354人、名古屋圏(愛知県、三重県、岐阜県)は1,090人の転出超過。ともに東京圏への人口流出が増えたのが響いた。
都道府県別で転出超過が著しいのは北海道の8,862人がトップ。兵庫県の7,409人、新潟県の6,735人、青森県の6,560人、静岡県の6,206人と続く。
山間部などの過疎地域では、65歳以上の高齢者が過半数を占める限界集落が珍しくない。自治体総人口の半数以上を高齢者が占める限界自治体も増え、地域消滅に向けた足音が次第に高まりつつある。
●地方移転の掛け声届かず、民間企業の本社機能も東京圏へ集中
政府は東京一極集中を是正し、地方を元気にするため、2014年度から専任の担当大臣を置くなど地方創生を看板に掲げてきた。その中で打ち出されたのが、2020年までに東京圏の人口転出入を均衡させるという大目標だ。
政府はそのための方策として、地方に10万人の雇用をつくり、地方から東京圏への転入者を6万人減らす一方、東京圏から地方への転出者を4万人増やすとした。地域活性化や雇用創出を目指して投じられた予算は4兆6,000億円以上。「まるで地方創生バブル」とやゆされるほどの資金が投入されてきた。
それと同時に、政府機関の地方分散を図るとともに、民間企業の本社機能地方移転を目指し、優遇税制の導入を目玉事業として打ち上げた。政府と大企業が率先して地方に移り、地方回帰のムードを醸成しようとしたわけだ。
しかし、中央省庁で地方への全面移転を決めたのは京都府へ移る文化庁だけ。地方移転の模範を示すはずの政府の思惑は、東京を離れたくない官僚の激しい抵抗を受け、掛け声倒れに終わった。
民間企業の本社機能移転も一部にとどまり、むしろ東京圏へ本社機能を移す企業が増えている。民間信用調査機関・帝国データバンクの調査では、2015年に東京圏へ本社機能を移した企業は前年比13%増の335件。集計可能な1981年以降で最多となった。逆に東京圏から地方へ移った企業は前年比14%減の231件にとどまっている。
2016年1〜9月も東京圏への転入が225件に達し、転出164件を大きく上回った。帝国データバンク情報部は「これまでは景気の回復基調が続くと東京圏へ転入する企業が増えていたが、今は人材不足から企業が東京へ向かう傾向も強くなっているようだ」とみている。
●東京23区内の大学新増設抑制を計画
こうした現状を受け、政府は2020年までに、東京圏の大学生向けにインターンシップを行う地方企業を2016年の2倍に当たる1万3,000社に増やす目標を設定した。さらに、今夏をめどに東京23区内で大学や学部の新増設を抑制する仕組みを取りまとめることを決めた。
23区内の大学抑制は2016年末、全国知事会が要望したもので、全国知事会地方創生対策本部長の古田肇岐阜県知事は全国知事会議に出席した安倍晋三首相に対し「大学の新増設を抑制し、若者の東京一極集中に歯止めをかけるべきだ」と訴えた。
若い世代が東京圏へ流入するのは、大学進学か就職時が大半を占める。文部科学省は地方の地元大学進学率を36%、大学新卒者の地元就職率を80%まで向上させる目標を立てているが、若い世代の間で東京圏の有名大学、大企業へのあこがれは根強い。地方国立大学でも、卒業生の半数以上が東京圏で就職するところも珍しくない。
政府は東京圏の大学進学者数を強制的にこれ以上増やさないようにしたいわけだが、日本の18歳人口は2018年を契機に減少に入る。大学進学率は既に50%に達し、これ以上伸びる保証はない。2020年の東京五輪に向け、人、もの、金が東京へ集中しようとしていることもあり、大学進学対策だけでは東京一極集中を防げないとの声も出ている。
●最も成果を出せていないのが「若者の東京圏転入超過対策」
加藤教授は「地方定着の鍵を握るのは雇用だ。東京圏に出てきた若い世代を地方の拠点都市に雇用を創出して呼び戻すことが必要になる。対策としては拠点都市に雇用、とりわけITや先端サービス業など若い世代に魅力のある仕事を創出し、東京圏へ移動する必要性を低下させることに尽きるのではないか」と指摘する。
欧米の先進国では若い世代がいったん首都に出ても、40歳や50歳前後で地元に戻ることが多いという。若い世代がそのままとどまり、首都の人口が増え続けるのは日本ぐらいで、安倍政権が進めてきた地方創生で最も成果を出せていない部分が、若い世代の東京圏転入超過対策といえる。
政府は地方大学から地元の優良企業へ就職する成功モデルづくりなども視野に入れているようだが、地方創生の成否は若い世代に魅力ある職場をどれだけ地方に創出できるのかにかかっている。
政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)
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