http://www.asyura2.com/17/hasan118/msg/296.html
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コラム:トランプ相場を襲うブレグジット第2波
田中理第一生命経済研究所 主席エコノミスト
[東京 25日] - 年明け以降、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をめぐって、ポンド相場が荒っぽい動きを続けている。昨年6月の国民投票後に広がった不安が比較的早期に沈静化したことで、多くの市場参加者にとって、もはやブレグジットは最大の関心事ではなくなっていた。
なにしろ、実際に離脱するのは2年以上も先のことで、離脱後の英国経済や進出企業を取り巻く環境がどうなるかは、まだ始まってすらいない協議の行方を見守る以外にない。残留派が多数を占める議会やスコットランドの反対で離脱が阻止されることや、EU側の厳しい態度に後悔した国民が離脱を思いとどまるとの淡い期待も一部にあった。
しかも、政府関係者の発言には一貫性がなく、政府が離脱に向けた確たるプランを持っているのかすら疑わしい。現時点で相場に織り込むにはあまりにも不確定要素が多すぎる。
その上、英国では懸念された離脱の悪影響が出るどころか、投票後に進んだポンド安によって、輸出企業の業績が上向き、海外からの観光客増加で消費も潤っている。投票後に英国株は大幅に上昇し、英国景気は予想以上の底堅さを保っている。トランプ相場による市場のリスクセンチメントの回復もあり、多くの人々はブレグジットについて軽い思考停止状態に陥っていたのではないか。恥を忍んで打ち明ければ、筆者もそうした1人だった。
<最高裁判決でも議会のブレグジット阻止は困難>
そんな矢先、メイ英首相は8日のテレビインタビューで、EU離脱後の英国がどういった国を目指すか、離脱協議にどう臨むか、近く政府の戦略を発表することを明かした。17日の首相演説に先立ち、英国政府がハードブレグジット(強硬なEU離脱)の方針を発表するとの報道が相次ぎ、市場参加者の間に不安が広がった。
20日のトランプ米大統領の就任式を控え、市場のリスクセンチメントが後退していたことも、こうした不安を増幅した。単一市場からの完全撤退を表明した首相演説、議会関与を必要とする最高裁判決に一喜一憂し、単一市場へのアクセスが阻害されるハードブレグジットならばポンド売り、単一市場へのアクセスを重視するソフトブレグジット(穏健なEU離脱)ならばポンド買いの反応を繰り返している。
17日の演説でメイ首相は、移民制限やEU予算の拠出回避を優先し、「ヒト・モノ・カネ・サービス」の移動の自由を保証するEUの単一市場から完全に抜けることや、EU以外の国・地域とも自由貿易協定(FTA)を結ぶため、域外共通関税を課す関税同盟から部分的に抜ける方針を明らかにした。
それと同時に、1)EUと包括的なFTAを結ぶことで、離脱後も単一市場へのアクセスを最大限確保する、2)自動車や金融サービスなどの戦略産業については、従来通りの事業環境が保たれるように例外適用を求めていく、3)必要なEUの政策に部分参加するため、限定的な予算拠出の可能性を排除しない、4)新たな関税協定を結ぶなどして、関税・非関税障壁・通関手続きが極力ない貿易関係を維持する、との意向を表明している。
このことは、EU離脱後の英国が表向きはハードブレグジットを選択するとしているが、実際にはソフトブレグジットを目指していることを意味する。
英国の最高裁判所は24日、正式な離脱手続きを開始するには、英国議会の採決が必要とする一方、スコットランドなど自治政府議会の採決は必要ないとの判決を下し、議会が離脱を阻止できるかについての法廷闘争は結審した。
国民投票で残留を支持した議員の多くは投票結果を尊重する方針で、議会が離脱を阻止することは困難とみられている。残留派が多数を占めるスコットランドや北アイルランド議会が離脱を阻止する可能性もあったが、今回の判決でその望みは絶たれた。政府は近く、ごく短い法案を議会に提出する方針で、上下両院での審議と採決を経て、3月末までの離脱手続きの開始を目指す。
議会審議の争点は離脱阻止の是非ではなく、1)政府の離脱方針をより明確にする、2)協議の進捗状況を議会に報告する、3)英国とEUの合意案を議会が否決した場合にEUと再交渉する、となろう。
<ポンドと英国株の逆相関が崩れるときが危険>
このように政府の方針が明らかになり、法廷闘争が決着したわけだが、EU離脱後の英国をめぐる不透明感は半年前から何一つ変わっていない。2年間の期限内に合意できるのか、EUや他国とのFTA締結にどの程度の時間がかかるのか、自動車や金融業の特例が認められる可能性はあるのか、どういった形で段階的な移行期間が設定されるのか、合意案を議会が覆すことができるのかなど結局のところ分からないことだらけだ。
しかも、表向きは単一市場へのアクセスを断念した形を採っているが、関税の極力かからない貿易関係を維持し、戦略産業や重要政策での特例を求める英国の要求を、EU側は「いいとこ取り」と受け止める可能性が高い。実際に離脱協議が始まれば、両者の対決姿勢が鮮明となり、再び金融市場の動揺を誘う局面がやって来そうだ。
ブレグジットの負の側面は英国経済や英国企業に徐々に影を差し始めている。メイ首相の演説後、単一免許を失う恐れが高まったとし、大手金融機関は大陸欧州諸国に事業や人員の一部を移転する可能性を相次いで示唆している。政府が単一市場からの完全撤退を表明したことで、英国進出を思いとどまる企業が増え、英国から他国に事業拠点を移転する動きが本格化しよう。
実体経済面でも、昨年12月に英国の消費者物価が2014年以来の上昇率に加速し、同月の小売売上高が2012年以来となる大幅な減少を記録したことは、ユーロ安による輸入インフレが家計の実質購買力をむしばみ始めている可能性を示唆している。
年明け後、ブレグジット不安が再燃してからも、英国の為替相場と株式市場の逆相関関係は崩れていない。これは、英国の代表的な株価指数の構成銘柄に多国籍企業が多く、ポンド安による業績改善が期待されるためだ。
だが、離脱後の英国企業を取り巻く事業環境の悪化を考えれば、いつまでもポンド安による株高を正当化することは難しい。つまり、金融市場はまだブレグジットを本気で織り込んでいない。ポンドと英国株の逆相関が崩れ始めたときこそが、真の離脱ショックに注意が必要となる。
*田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-tanaka-idJPKBN1590GH
日銀オペめぐり「テーパリングの可能性」との声、 債券一時急落
船曳三郎、三浦和美
2017年1月25日 12:18 JST 更新日時 2017年1月25日 16:02 JST
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「何もしなかったということで超長期が売られた」−バークレイズ証
中期オペ頻度が減る、いわゆるテーパリングの可能性−三菱モルガン
この日の日本銀行による長期国債買い入れオペをめぐり、債券市場が揺れた。中期ゾーンの国債買い入れオペの回数が減らされるとの見方や、超長期国債利回りを抑制する措置が講じられていないことを嫌気した売りが相場の下げを急拡大させたためだ。一部の市場関係者からは、テーパリングの可能性が高まったとの声が出ている。
日銀は午前10時10分の定例金融調節で、残存期間10年超と物価連動債の長期国債買い入れオペ実施を通知した。金融緩和の一環として進めている国債買い入れは原則的に金利の下げ圧力となるはずだが、この日は1年超5年以下が通知されなかったことに加えて、10年超の金額が前回と据え置きとなったことが分かると、債券市場では直後から売り圧力が一気に強まり、利回りが上昇した。
債券市場に浮上したダブル懸念
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メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「残存1−5年の国債買いオが今日通知されず、このペースなら今月は5回に減る計算なので売られている」と説明。「1−5年は日銀の買い入れが巨額で売り物がない状況だったので、今回のタイミグは予想外だったが、いずれ買い入れが減るとみていた。4月以降は発行も減る。オペが札割れするよりはここで減らしておいた方が良いとの判断ではないか」と述べた。
長期国債先物の中心限月3月物は一時、前日比54銭安の149円85銭まで下落。日中取引ベースの下げ幅は昨年12月13日以来の大きさとなった。新発5年債利回りは5ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.095%と約1カ月ぶり高水準を付けた。超長期債利回りも軒並み大幅上昇となり、新発20年債、30年債、40年債の各利回りは11カ月ぶり水準まで売られた。
バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「今日は二つ側面がある。短いところが大きく売られている要因としては、1ー5年の買いオペが入らなかった。従来月6回だったところが5回になることを事実上意味している。オーバーナイトで米債や為替もリスクオンのセンチメントの中で、債券売り材料がある中で、超長期のオペは据え置き。一部期待感を持っている人がいたと思われる。何もしなかったということで超長期が売られた」と指摘した。
日銀は昨年12月14日に、急激な超長期ゾーンの利回り上昇に対応するため、同年9月に長短金利操作を導入して以降、初めて長期国債買い入れを一時的に増額した経緯がある。国債入札の対象となる年限を前日のオペに行ったことや、次回のオペを予告するなど異例尽くしの措置となった。
日本銀行本店
日本銀行本店 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
国債買い入れ運営方針
日銀金融市場局は昨年12月末、1月の国債買い入れの運営方針について、残存1年超5年以下のオペのオファー回数の表記をこれまでの6回程度から5−7回程度に変更するなど各年限をレンジ表記にした。金融市場局では、月間のオファー回数はこれまでも固定的なものではなかったが、 今回こうした運営方針をより明確に表記したと説明していた。
中期ゾーンを対象にしたオペ回数はこれまで4年近く月6回行われてきただけに、市場参加者は1月も従来通りを予想していたようだ。1月は24日までに4回実施されている。残り5営業日のうち、流動性供給入札の26日、2年債入札の30日、日銀決定会合の最終日に当たる31日は、原則オファーしない。この日は残り2回のうちの1回が行われる見込みだった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「今月のオペ通知候補日は、25日と27日の2日しか残っておらず、両日で1回ずつ中期債のオペが通知されるとみられてきた」と説明。「流動性供給入札となる26日に通知がある可能性はゼロではないもののかなり低い。1月は中期の買い入れ頻度が1回減る、いわゆるテーパリングの可能性が高まった。仮にそうなれば2013年4月の異次元緩和導入後で初めてのことだ」と指摘した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-25/OKBEBQ6JIJUO01
習近平主導「軍民融合」が示す軍事経済の始まり
中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
市民のバブル待望が、戦争待望に変わる事態に備えよ
2017年1月25日(水)
福島 香織
習近平にまた新たな肩書が増えた。中央軍民融合発展委員会主任。その狙いは?(写真:AP/アフロ)
肩書マニアと揶揄されるくらい、組織トップの肩書を自分のものにしたがる中国の国家主席・習近平に、また一つ肩書が増えた。新たに設置される中央軍民融合発展委員会の主任である。そもそも、軍民融合とは何なのか。なぜ党中央の委員会まで作って、その指揮を習近平自身がとりたがるのかを考えてみたい。
軍需産業の民営化?
1月22日に政治局会議が招集され、中央軍民融合発展委員会の設置が正式決定し、習近平が主任となった。軍民融合が統一的な党中央の指導によって進められることになる。ところで軍民融合とは何なのだろう。ここ数年、習近平は軍民融合の掛け声の下、2016年8月には、中国航天科技集団など中央軍産企業、大手金融機関など13企業による初の軍民融合産業発展基金を設立している。基金規模は302億元にのぼる。
一見すればこれは軍産企業の民営化であり、軍事技術の民生利用促進かと思うのだが、報道の詳細を読むと、そう単純なものでもないようだ。
フェニックステレビの軍事チャンネルが比較的明解に説明していたので、それをもとに考えてみる。
フェニックステレビはこう言っている。
「軍民融合とは、国家の運命の大事に影響するものである。軍民融合がうまくできなければ、軍備が落ちぶれるだけでなく、国家経済が破たんする。世界上の軍事強国は、早々に軍民融合を果たしている。例えば米国陸軍の未来の戦士システムでは、兵士一人ひとりが携帯電話端末を持たなくてはならないが、この端末はサムスン製だ。いわゆる軍内の専門工場で生産された軍用携帯電話ではない」
「日本も同じで、日本には軍産企業は表向きない。しかし、日本の軍需産業は極めて強大だ。そうりゅう型潜水艦、10式タンク、いずも型護衛艦、これらの武器をだれが作っているのか。中国人の多くは知らないだろうが、日本の大企業には、いずれも軍工部門があるのだ。三菱、富士、東芝、住友、ダイキン、リコー…。これらはすべて民営企業であり、武器を生産する、日本の特色ある軍民融合である」
「世界の軍事強国で唯一、軍民融合を行ってこなかったのは旧ソ連だ。国家が重工業を担い、採算を考えずに軍事産業を発展させたがために、軍事強国にはなったが、長期的に支えきれず、最終的に国家経済は軍事工業によって破たんさせられたのだ」
「中国の軍事産業は、ずっと旧ソ連モデルで建設されてきた。それが唯一の選択肢だった。だが、旧ソ連の解体が中国の軍事産業発展の在り方に警鐘を鳴らしている。このままでは、国民経済が支えきれないのだ」
「昨年末、珠海航空展示会と同じ時期に軍民融合展示会も開催され、政治局常務委員は全員参観した。これは対外開放されていなかったのだが、参観した軍事専門家の王雲飛(元海軍装備部門のエンジニア)によれば、展示品は非常に先進的で想像を超えていたという」
国民経済のスロットル
「軍民融合は中国国防発展の正確な選択である。ではこの軍民融合委員会設立にはどういう意味があるのか。まず、軍民融合は中央政治局、政治局常務委員会が直接責任を負うということであり、次にその指揮は習近平がとるということである。これで、軍民融合の難易度に説明がつくであろう」
「李克強首相はかつてこう言った。改革が利益を触発するが、利益の触発は、魂の触発よりも難しい。軍民融合とはつまり改革であり、それには一部の人たちを触発し、軍産企業の利益を生み出さねばならない。軍民融合の難易度は、既得権益者の妨害からくるものだ」
「軍民融合の例を挙げれば、陸軍の05式装甲車。これは中国が国内用と輸出用に開発したものだ。タジキスタンの内政部長の車列が襲撃にあったとき、部長はこの装甲車の性能によって命を助けられた。実は、この装甲車は陝西の民営企業が生産したものだった。この民営企業の会長によると、この装甲車は某大型国営企業が研究開発したのだが、この民営企業の活力、効率、品質がすでにその国営大企業を超えていたので、生産はその民営企業に任せたのだ」
「結論を言えば、未来の中国において、軍民融合は国民経済のスロットルであり、軍隊装備をパワーアップさせ、同時に国有企業改革の道を模索するものである。だからこそ、習近平主席自らが主任になったのだ」
長い引用だが、中国の現状と狙いがわかりやすく書いてある。
端的にいえば、軍民融合発展委員会というハイレベルの機構を新設した目的は、軍事建設によって国家経済を支えるという習近平政権の方針を明確にしたということではないだろうか。軍事建設と経済建設の一体化、軍事ケインズ主義、あるいは、共産党中央を独占体とした戦時国家独占資本主義経済を目指している、といってもいいかもしれない。中国の現状として、軍事・治安維持予算が、けっこう国内経済を圧迫しているようだが、それを解消するのが党中央主導の軍民融合ということだろう。
興味深いのは、旧ソ連を引き合いに出していることだ。中国が現在直面する最大のリスクの一つは経済崩壊の危機だが、習近平政権としての政策のプライオリティの一番は強軍化だ。このプライオリティを守るために、中国はどうやらトランプ政権には経済上の譲歩はする心づもりでいた。ジャック・マーがとトランプに会いに行き、米国で100万人の雇用を創出すると約束したのは、民間ビジネスマンとしての判断だけではない。
トランプの方針はまだはっきりとは見定められていないが、対中強硬姿勢を強く打ち出し、台湾問題や南シナ海をめぐって軍事的対立の先鋭化は避けられない状況となった。強軍化を最上位に掲げる中国は米国に対抗するために、軍拡競争に突入せざるを得ない。
旧ソ連の轍は踏まない
ここで習近平政権が一番懸念しているのは、おそらくかつてのレーガン政権がぶち上げたSDI構想(スターウォーズ構想)によって軍拡競争に引きずり込まれた旧ソ連が、国内経済を疲弊させ財政バランスの矛盾を表面化させてしまったことで政権の足元がゆらぎ、崩壊に追い込まれた歴史の轍を踏むことだろう。
トランプが、政権発足前から中国に対して挑発的な言動を繰り返していることの真の狙いが、中国から譲歩を引き出すことなのか、それとも中国共産党体制の崩壊をもくろんでいるのか、実のところ中国もはかりかねている。経済貿易上だけの譲歩が目的なら対応の余地はあるが、軍事上の譲歩、特に「一つの中国(一中)」原則放棄をカードに出されて、中国が譲歩するようなことがあれば、共産党の執政党としての地位自体がひっくり返りかねない。軍部の不満やウイグル、チベットの独立派の動きを誘発し、国内の分裂や動乱を招きかねない。「一中」カードを米国が本当に切るのであれば、目的は譲歩ではなく、中国共産党体制を崩壊に追い込むことではないか、という疑いが中国側に起き始めた。
つまり、トランプの挑発目的は、中国を軍拡競争、あるいは紛争に引きずり込み、軍事予算を拡大させることで、経済を破たんさせることかもしれない。そういう懸念に対して、中国は軍民融合で対応し、「中国は旧ソ連の轍を踏まない」ということを喧伝しているのだ。これは、トランプ政権に対するメッセージでもあり、中国の軍拡路線が本気であることの宣言でもあろう。
もう一つ興味深い点は、国有企業改革の処方箋として、軍民融合を説明していることだ。国有企業改革の処方箋について、実は、首相の李克強と国家主席の習近平の間には微妙な路線対立がある。
李克強路線は、国有企業のスリム化、民営化による改革で、政府の関与をできるだけ小さくする方針だ。2014年に国務院系コングロマリット・中信集団に民営資本と外資を注入して香港で上場させたやり方は、まさしく李克強路線の好例といえる。
一方、習近平の目指す国有企業改革は、中小国有企業を大手国有企業に併合していき、その超大手国有企業を党中央が直接指導していき、市場に対する党中央のコントロールを強化させていく方向にある。市場の自由化とは逆方向だ。
次のバブル分野に
この路線の対立によって中国の国有企業改革は混乱が生じており、なかなか進まないのだが、面白いのは、記事中で、李克強の軍民融合について「既得権益問題」の発言を引用しつつ、しつこいほど、なぜ軍民融合発展委員会の主任を習近平が担うかを説明している。これは李克強が当初考えていた軍民融合の方向性や、国有企業改革が、その主導権を習近平に移されることで、その本質が変わってきているということを示唆するものではないだろうか。李克強は、主に軍事技術の民生利用促進を強調していた。だが、この記事からは、優れた民営企業の技術・サービス、資産を軍事利用することで、民営企業に対する党中央の指導も強化される面が強調されている。
例えば中国で一番サービスのよい物流企業・順豊エクスプレスは、アジアで最初の民営貨物集散センターを湖北・鄂州市に建設する計画だが、これも軍民融合空港建設プロジェクトの一つだ。国防功能を備えた民営空港を建設し、順豊の物流能力を軍事利用していくということである。もちろん順豊にも利便のよい土地を与えてもらえるといったメリットはあるが、これはまるで民営企業の国防動員である。
ちなみに軍民融合企業株が、この委員会設立を受けて軒並みストップ高となった。軍民融合企業は基礎インフラ分野、科学技術・宇宙開発・電信分野、インターネット分野と多岐にわたるが、これら軍民融合関連株が、次のバブル分野、という見方もある。中国において国防動員は、人民、社会に対する強制義務であるが、株式市場で利益をもたらせば、より積極的に広く軍事費、技術、資源を調達できるようになる。国防動員法が2010年にできた当時から、こうした考え方は主張されてきた。環球時報によれば、米国は軍民融合によって毎年、軍備購入費の2割にあたる300億ドルを節約できているという。
さて、習近平主導の軍民融合は成功するのかどうか。
個人的感想をいえば、民営企業に優れた技術をもつものが多く、経営上も成功するのは、国有企業と違って党の干渉が比較的小さく、利益優先、市場原理にのっとった経済活動に専念できるからだ。多くの国有企業の経営がうまくいかない主要な原因は、党の干渉がきつく、経済活動よりも政治的要因で人事やプロジェクト、経営方針が決定されがちだからだ。
とすると、もともと優秀な技術やサービス資源をもつ民営企業を軍事産業に参与させ、あるいは国有軍産企業に融合させ、しかもその指揮を党中央、習近平直属の機関がとるとなると、むしろ民営企業本来の競争力が発揮できなくなるかもしれない。権力闘争が激しく利権派閥が複雑な共産党が指導する限り、米国式の軍産複合体が実現できるとは、私には思えない。
人民の戦争期待ムードに不安
しかし、隣国の日本にとって、より重要なのは、中国の軍民融合がうまくいくのかどうかということではなく、習近平政権が軍拡を本格化させ、軍事主導型経済を方針として掲げた、という点である。国家を挙げての軍民融合の掛け声は、来る戦時を想定した国家動員スキーム始動の合図ではないか。しかも、そこに新たなバブルを期待する人民が集まれば、それが国内の戦争期待ムードにつながるのではと、まったく不安にさせられる。
いや、不安がることはない、日本にはすでに優れた“軍民融合企業”があるじゃないか、と中国人たちはいうのだが、日本には、今のところはそれを使いこなせるだけの法整備もなければ、心構えもできていないのだ。
【新刊】中国が抱えるアキレス腱に迫る
『赤い帝国・中国が滅びる日』
「赤い帝国・中国」は今、南シナ海の軍事拠点化を着々と進め、人民元を国際通貨入りさせることに成功した。さらに文化面でも習近平政権の庇護を受けた万達集団の映画文化産業買収戦略はハリウッドを乗っ取る勢いだ。だが、一方で赤い帝国にもいくつものアキレス腱、リスクが存在する。党内部の権力闘争、暗殺、クーデターの可能性、経済崩壊、大衆の不満…。こうしたリスクは、日本を含む国際社会にも大いなるリスクである。そして、その現実を知ることは、日本の取るべき道を知ることにつながる。
KKベストセラーズ刊/2016年10月26日発行
このコラムについて
中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/012400085/
ドル113円半ばにじり高、米長期金利が持ち直し
[東京 25日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べ、ややドル安/円高の113.61/63円だった。午前に113円前半まで下押しされたが、米長期金利の持ち直しを横目に底堅さも意識され、午後は113円半ばにじりじりと上昇した。
午後のドル/円は、正午あたりから113円半ばを軸にしたもみ合いが続いたが、午前中にやや低下した米10年債利回りが2.46%付近に持ち直すのを眺め、ドル/円もじりじりと水準を戻した。
ただ、上昇の勢いは出ず「明確な方向感は出ていない」(国内金融機関)と見られた。中国などでの春節休暇を控えたポジション調整の動きも紛れ込んでいたもよう。
みずほ銀行の国際為替部次長、田中誠一氏は、目先はトランプ政権の動向を見極める展開が続くとみているが「(3月利上げの可能性を測る材料として)米雇用統計などの数字がなければ、トレンドは出にくそうだ」と指摘している。
午前のドル/円は、午前8時台と9時台に114円を試したものの乗せきれず、短期筋のロングの投げを誘発して反落した。
その後は、前日反発した米長期金利の反落や、日経平均の上げ幅縮小などを受けて改めて売りに押され、113.37円まで下押しした。
市場では「目先の動きはよくわからない。ただ、トランプ大統領の内向き政策に対する不安があるのは確かで、腰の入ったドル買いが出にくい」(証券会社)との声が聞かれた。
財務省が発表した12月の貿易統計速報によると、貿易収支(原数値)は6414億円の黒字となった。この結果、2016年通年の貿易黒字は4兆0741億円となり、通年では6年ぶりの貿易黒字。
対米国の商品別輸出では、12月の日本からの自動車輸出は対前年比9.7%増の4704億円と、2007年12月以来9年ぶりの高水準となった。
ドル/円JPY= ユーロ/ドルEUR= ユーロ/円EURJPY=
午後3時現在 113.61/63 1.0724/28 121.84/88
午前9時現在 113.86/88 1.0726/30 122.13/17
NY午後5時 113.78/80 1.0730/32 122.08/12
(為替マーケットチーム)
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東京マーケット・サマリー(25日)
ドル100円半ば、イベント前に「煮詰まり感」広がる
正午のドルは100円半ばでイベント待ち、実需の買い一巡後は停滞
正午のドルは100円前半でもみ合い、イベントにらみ方向感出ず
東京マーケット・サマリー(24日)
http://jp.reuters.com/article/tokyo-forex-idJPKBN1590HH
日経平均は大幅反発、米国株高・円安好感し1万9000円回復
[東京 25日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は大幅反発。前日の米国株高やドル高/円安方向に振れた為替相場が買い手掛かりとなった。
寄り付き後に上げ幅は345円まで拡大、その後は戻り待ちの売りで伸び悩んだが、押し目買いで持ち直した。終値は3営業日ぶりに節目の1万9000円を回復した。
TOPIXも反発。だが上昇率は1.01%と日経平均(1.43%)を下回った。ソフトバンクグループ(9984.T)は、出資先の中国の電子商取引大手、アリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)の好決算が材料視され堅調。ファーストリテイリング(9983.T)やファナック(6954.T)を含めた3銘柄の上昇が、日経平均を約74円押し上げた。
業種別では鉄鋼、機械など景気敏感セクターの一角が上昇率上位にランクイン。その他金融、食料品、建設を除く30業種が値上がりした。大型株ではトヨタ(7203.T)、ホンダ(7267.T)、日立(6501.T)などが日経平均を上回る上昇率となったが、取引時間中はドル/円JPY=が113円台で弱含んだことが重しとなり、上げ幅を縮小した。
東証1部売買代金は2兆円を上回ったものの、全体相場に対しては、これから本格化する国内企業の決算発表を見極めたいとの姿勢も広がった。「日経平均で25日移動平均線(1万9241円10銭=25日終値)に迫ると、戻り待ちの売りが出やすい。一方で1万9000円を割れた局面では押し目買いが入るようなレンジ内の動きが当面、続きそうだ」(証券ジャパン・調査情報部長の大谷正之氏)との声があった。
個別銘柄では タカタ(7312.T)がストップ高。同社は24日、再建に関する一部報道に対してのコメントを発表。法的整理を前提に進められるような誤解を招きかねない報道で混乱をきたしたことは「誠に遺憾」とし、「かかる法的手段による再建を選択することは当社として想定していない」とした。
半面、日本電産(6594.T)が反落。24日、2017年3月期(国際会計基準)の利益予想を上方修正すると発表した。市場予想をやや上回る内容となったほか、自社株買いも発表されたが、好材料出尽くしと受け止めた売りに押された。
東証1部騰落数は、値上がり1529銘柄に対し、値下がりが385銘柄、変わらずが88銘柄だった。
日経平均.N225
終値 19057.50 +269.51
寄り付き 19091.23
安値/高値 18987.45─19133.18
TOPIX.TOPX
終値 1521.58 +15.25
寄り付き 1526.59
安値/高値 1516.90─1528.93
東証出来高(万株) 193434
東証売買代金(億円) 22344.87
(長田善行)
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http://jp.reuters.com/article/nikkei-jump-idJPKBN1590FY
日本株は3日ぶり反発、米景気刺激策と円安−輸出、素材中心買われる
佐野七緒
2017年1月25日 08:04 JST 更新日時 2017年1月25日 15:38 JST
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為替は一時1ドル=113円90銭台、日経平均上げ幅は大発会以来
25日の東京株式相場は3営業日ぶりに反発。トランプ米大統領の景気刺激策が始動、スピーディーな政策運営に加え、為替の円安も好感された。海外の景気動向に敏感な輸送用機器や機械、電機など輸出株、鉄鋼や非鉄金属、ガラス、化学といった素材株中心に高い。
TOPIXの終値は前日比15.25ポイント(1%)高の1521.58、日経平均株価は269円51銭(1.4%)高の1万9057円50銭。
りそな銀行アセットマネジメント部の黒瀬浩一チーフ・マーケット・ストラテジストは、トランプ大統領の政策で「米景気が良くなれば、日本に好影響との見方がある」と指摘。一方で、米景気の好転が「メキシコのように、日本をたたいた上で成り立つ可能性もある」とし、当面は米新政権の発言に日本株も揺さぶられるとの認識を示した。
東証
東証 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
トランプ米大統領は24日、キーストーンXL、ダコタ・アクセス両パイプラインの建設プロジェクトを推進させる2つの大統領令に署名。米政府にとってより良い取引を求め、再交渉する方針も示した。
同日の米国株は、素材やエンジニアリング関連が買われ、S&P500種株価指数は0.7%高の2280.07と過去最高値を更新。今後の景気刺激を見込む格好で国際商品市況も上げ、ニューヨーク原油先物は反発、ロンドン金属取引所のアルミニウムは1年8カ月ぶりの高値を付けた。
24日の米長期金利の上昇を受け、きょうのドル・円相場は午前に一時1ドル=113円90銭台と、前日の日本株終値時点112円89銭からドル高・円安方向に振れた。カブドットコム証券の河合達憲投資ストラテジストは、「パイプラインやTPPの大統領令署名などトランプ氏の行動力の高さが見える」とし、減税や財政政策が実行されれば、「米国の債券需給は悪くなる。米金利上昇、ドル高の第2幕が始まった可能性がある」と言う。
この日の日本株は米景気に対する楽観的な見方や米国株高、円安推移を好感する買いが幅広い業種に先行、日経平均は朝方に345円(1.8%)高まで大きく上げ、上げ幅と上昇率は大発会の4日以来、3週間ぶりの大きさを記録した。ただ、その後は円安の勢いが一服、米新政権の保護主義傾斜に対する不透明感もあり、伸び悩んだ。
ニューヨークタイムズ紙は、トランプ氏が米国の南部国境に壁を建設するため、連邦資金を充てる大統領令に25日に署名する計画と伝えた。シリア難民の入国を阻止することやテロ傾向の国家からの難民の入国を削減する計画も検討する、という。フィリップ証券の庵原浩樹リサーチ部長は、「米国外にはショッキングでネガティブなニュースも多い。不安定な状況で、投資家は為替の動きに神経質」と話す。
東証1部33業種は鉄鋼、機械、非鉄金属、ガラス・土石製品、輸送用機器、化学、電機、証券・商品先物取引、精密機器など30業種が上昇。その他金融、食料品、建設の3業種は下落。東証1部の売買高は19億3434万株、売買代金は2兆2345億円。上昇銘柄数は1529、下落は385。
売買代金上位では、中国アリババ・グループ・ホールディングの好決算を材料にソフトバンクグループが上げ、SMCやファナック、JFEホールディングス、TDKも高い。クレディ・スイス証券が目標株価を上げたアルプス電気は大幅高。これに対し、東芝や日本電産、大東建託、エムスリーは安い。日電産についてカブコム証の河合氏は、「業績修正期待で上昇してきたため、好材料出尽くしで売られた」とみていた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-24/OKB2YC6KLVR401
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