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少子化に歯止めかからず、2016年の年間出生数初めて100万人下回る(写真= Pshevlotskyy Oleksandr /Shutterstock.com)
少子化に歯止めかからず、2016年の年間出生数初めて100万人下回る
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170125-00000002-zuuonline-bus_all
ZUU online 1/25(水) 7:10配信
2016年1年間に国内で生まれた赤ちゃんの数が98万1000人と初めて100万人の大台を下回る見通しとなったことが、厚生労働省のまとめで分かった。出生数が死亡数を下回る人口の自然減は10年連続で、人口減少に歯止めがかかる兆しは見えない。
全国の自治体は2015年度に策定した人口ビジョンで少子化対策による出生率向上を打ち出しているが、スタート直後に出ばなをくじかれた格好。50年後に人口1億人を維持する政府目標の達成に向け、早急な対策が必要となりそうだ。
■人口の自然減、戦後初めて30万人を超す見込み
厚労省の2016年人口動態統計年間推計によると、出生数は前年の100万5677人から2万5000人減少した。これに対し、死亡数は前年より6000人多い129万6000人で、戦後最多となった。その結果、自然減は戦後初めて30万人を超す見通しだ。
人口動態調査の確定数で出生数が最も多かったのは、1949年の269万7000人。その後、第2次ベビーブームの1973年に209万2000人を記録して以降、減少傾向が続いている。
出生数は2014年、過去最少の100万3539人を記録したが、2015年には100万5677人と5年ぶりに増加に転じていた。女性が生涯に産む赤ちゃんの推定数を示す合計特殊出生率は2005年、過去最低の1.26を記録したあと上昇に転じ、2015年は1.45まで持ち直している。
しかし、出産に適した年代とされる15〜49歳の女性人口は年々、減少している。特に2010年から2015年は毎年20万人以上の高い減少ペース。しかも、晩婚化、晩産化傾向も強まり、第1子を出産したときの母親の平均年齢は、2011年から30歳を上回っている。第1子の出産が遅いほど、子供の数が減る傾向がある。
高齢化社会の進行に伴い、年間の死亡数はこの30年ほど、右肩上がりで増加してきた。それに伴い、自然減も次第に幅を広げつつあり、今後も人口減少が続くとみられている。
厚労省人口動態・保健社会統計室は「出生数低下の最大の原因は母親になる年代の女性が減少していることだ」と分析している。
■自治体の人口ビジョンで現状打開は困難
長年にわたる少子化で出生数がいつか100万人の大台を割るのは、時間の問題と考えられてきた。政府は希望出生率1.8の実現と50年後の人口1億人維持を目標に掲げているが、有効な策を打ち出せなかったつけがはっきりと表れた。
子育てに金がかかり、仕事との両立が難しい現状は、昔とさほど変わらない。大都市圏の待機児童問題はいつまで経っても解決しない。出産や育児による休職が企業の中でハンディとなる話も聞こえてくる。女性の社会進出は徐々に進んでいるものの、先進国内ではいまだに最低水準。昔ながらの男社会の弊害が少子化に少なからぬ影響を与えている。
自治体側の取り組みも十分とはいえない。全国の自治体は人口ビジョンの中で見事なV字回復を予測しているが、実現性には疑問の声が出ている。例えば、静岡県は2014年で1.50の合計特殊出生率を2020年に2.07に引き上げるとしている。徳島県は2014年で1.46なのに、2025年で1.80まで上げ、2030年に2.07と推計する。
合計特殊出生率2.07は自然増と自然減の境界線とされ、日本では高度経済成長期の数字に当たる。世界各国で見ても人口爆発が問題になっている途上国の数字で、先進国でこの数字を達成している国は見当たらない。
仮にベビーブームが新たに到来したとしてもそう簡単に日本の人口が回復するわけではない。2005年と2015年を比較すると、合計特殊出生率は1.26から1.45に回復したが、年間出生数は5万6853人も減っている。
母親となる年代の女性減少と晩婚化がこれほど影響を与えるわけだ。しかも、既に成熟社会に到達した日本が、簡単に以前の多産社会に戻るとも考えにくい。
■東京都港区や島根県海士町は支援策が奏功
少子化対策には口先だけのアピールではなく、国や自治体がこれまで以上に予算を投入して出産や子育てをしやすい社会に変える必要がある。それと同時に働き方改革の推進も忘れてはいけない。
スウェーデンやフランスは手厚い支援策を講じ、高い出生率と女性の就労を実現した。国立社会保障・人口問題研究所のまとめでは、2011年度の家族関係の社会支出が国内総生産に占める割合は、スウェーデン3.46%、フランス2.85%。これに対し、日本は2013年度で1.25%にすぎない。
国内の自治体の中にも合計特殊出生率の上昇を手厚い支援で実現しつつあるところが出てきた。東京都の人口動態統計によると、港区は2003年の0.87が2014年に1.39まで上昇した。出産育児一時金の増額など区の支援が効果を上げたとみられる。
島根県海士町は第1子出産に10万円、2子に20万円、3子に50万円、4子以降は100万円の祝い金を出している。町の合計特殊出生率は2012年度で1.64。海士町健康福祉課は「それ以降、合計特殊出生率に上昇の気配が見える」と喜んでいる。
子供たちは将来の日本を支える労働力であるとともに、社会保障の担い手だ。社会保障の効率化など痛みを伴う改革になるが、未来への投資として国、自治体の財源を振り向ける価値はある。
結婚、出産を望んでも果たせず、先延ばしを余儀なくされる障壁が、日本の社会には多すぎる。国と自治体が本気で切り込まない限り、日本の出生数低下に歯止めをかけることはできそうもない。
高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧(https://zuuonline.com/archives/author/takadatai)
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。
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