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日産・ノートe−POWER X(「Wikipedia」より/CEFICEFI)
充電せず走れる日産ノート、トヨタのプリウスを凌駕…開いてしまった「パンドラの箱」
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17814.html
2017.01.24 文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表 Business Journal
■EVは充電せずに走れるか
果たして電気自動車(EV)は充電せずに走れるのだろうか。答えは否である。EVは電池に蓄えた(つまり充電した)電気がなくなれば止まってしまう。EVは充電しなければ走れない。
ところが、2016年11月に日産自動車が一部を改良して発売した「ノートe−POWER」は、充電せずに走れるEVだという。それが功を奏したのか、発売と同時に2万台も受注し、たちまち月間販売台数で常勝のトヨタ自動車のハイブリッド車(HV)、「プリウス」と「アクア」を抜いて1位に躍り出た。しかし、なぜ充電せずに走れるのか。疑問は残る。
■ノートにはエンジンがある
実は、ノートには排気量1.2リットルのガソリンエンジンが搭載されている。最高出力は58kW(79馬力)である。搭載された電池をこのエンジンで充電する。これであれば、確かに自宅などの外部電源からは充電せずに走れる。そして、ガソリンがある限り電欠の心配はない。EVの弱点を克服したEVなのだ。
では、エンジンがあるのにEVというのは、なぜか。
ノートには、1.5kWhのリチウムイオン電池が搭載されている。これは750Wのヘアドライヤーを2時間使ったときと同等の電力量だ。あるいは100 Wの電球15個を1時間点灯したときの電力量と同等である。決して多いわけではない。
たとえば、一般家庭の1日の消費電力量は、2人世帯でエアコンを使わなければおよそ8kWh、使うと17kWh近くに跳ね上がる。搭載されたエンジンで1.5kWhの電力量を充電すると、ノートは10kmほど走れる。つまり、10kmはEVなのだ。では、さらに走るにはどうしているのだろうか。
■エンジンはタイヤを駆動しない
電池の電気がなくなると、今度はエンジンで発電した電気を使ってモーターを回す。エンジン→発電機→インバーター→電池→モーター→タイヤという経路でタイヤを駆動する。
これではあたかもエンジンがタイヤを駆動しているように見えるが、そうではない。タイヤを直接駆動するのは、エンジンではなくモーターだ。アクセルはモーターにつながれている。エンジンは、電池の電力量の残量とアクセルからの指令の2つのデータで、出力を自動調整する。電池に十分電気が蓄えられているときは、アクセルを深く踏み込んでもエンジンがかかるとは限らない。
ノートは、発電用のエンジンを持つが、モーターで駆動するHVである。従来の分類では、シリーズ型のHVとなる。
■アクアより優れた燃費
一方、プリウスに代表されるトヨタのHVの大半は、シリーズ・パラレル型ハイブリッド車と呼ばれる。これは、エンジンだけでも、モーターだけでもタイヤを駆動でき、かつエンジンとモーターの両方でもタイヤを駆動する。両者のもっとも効率の良いところを使うので、これまではノートのようなシリーズ型ハイブリッド車よりも効率に優れるといわれてきた。
しかし、日本の燃費(二酸化炭素:CO2)測定方法のJC08では、シリーズ・パラレル型のアクアのリッター37.0km(63.0gCO2/km)に対して、ノートはリッター37.2km(62.0gCO2/km)と、わずかだが優れている。もっとも、エアコン等の装備を省いて軽くしたモデルに限るが。
ただし、ほとんどエンジン駆動で走る高速道路では、この限りではないだろう。こうした走り方が得意なのはディーゼル車だが、今後はPM2.5やNOxなどの排出ガス規制が強くなり、これまでのような良い燃費をキープするのが難しくなる。
■自動車は燃費では選ばれない
ノートが人気なのは、燃費ばかりではない。むしろ走り心地、乗り心地の良さだ。「試乗するといっぺんに気に入ってもらえる」とディーラー関係者は言うのが、まさにこの点だ。
モーターは静かで、回転がスムーズだ。そればかりか、回転力(トルク)が強く、しかも回り始めがもっともトルクが強いので、発進が滑らかで力強い。そしてもっとも乗り手を魅了するのが、応答の良さだ。モーターはエンジンの1000倍近く短い時間でアクセルの踏み方に反応する。
その結果、アクセルペダルにタイヤがくっついたようなダイレクト感の強い走り味となる。これがノートの最大の魅力であり、試乗した人たちの心を揺すり、購入へと気持ちを強く動かす要因だ。
たとえば良く切れる包丁やハサミは、とても使い心地が良い。一度気に入ると、研いで何度でも使い、一生使い続ける人もいる。筆も、万年筆も、あるいはギターやバイオリンもそうだ。
実は、自動車もそうなのである。しかし残念ながら国産車の多くは、こうした使い心地の良さを最大の魅力、価値として考えてつくられてはいない。ほとんどのユーザーはほんとうの自動車の魅力を知らない。ここをノートが突いたのである。「私は燃費で自動車は選ばないぞ」という声の聞こえるパンドラの箱を開いてしまったともいえる。そうであれば、国産車は大きく変わるだろう。
■燃費は良いが走り心地は悪い
一方、1997年に登場して、今日までシリーズ・パラレル型というシステムを変えていないトヨタのHVは、モーターで駆動する範囲が狭く、かつモーターの力はノート(80kW)の半分近く(45kW)と弱く、電池の容量がノート(1.5kWh)の半分近く(0.94kWh)なのでモーターだけで走れる距離が短い。さらにエンジンも駆動に参加するので、上記のレスポンスが悪い。
これは、ノートとアクアを乗り比べると、はっきりわかる。エンジンを持ち、その力で(間接的に)走るノートはEVではない。しかし、モーター駆動で走る点はEVと同じであり、そこがノートの最大の魅力となると、思わず「これはEV(と同じ)だ」と叫んでしまう気持ちも理解できる。
■日産の巧妙な戦略とは
ところで、なぜ日産はノートをシリーズ型としたのか。効率からすればトヨタ式のシリーズ・パラレル型にすべきである。
おそらく理由は2つだ。ひとつは、トヨタのHVの特許に抵触せず、かつトヨタ式と違う個性を持たせたかったということだ。
もうひとつは、ガソリンがある限り電欠の心配のないノートで、安心してEVの走り味を楽しみ、ユーザーにその魅力に取りつかれていただいて、やがてリーフのような純EVのユーザーになってほしいという戦略だ。
もし、後者が理由だったとすれば、日産はなかなかの巧者である。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)
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