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【寄稿】トランプ大統領に奇跡は起こせるか=元FRB副議長
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トランプ氏が米大統領選に勝利して以来、株式市場は活発な動きを見せている PHOTO:ISTOCK/GETTY IMAGES
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ALAN S. BLINDER
2017 年 1 月 23 日 16:12 JST
――筆者のアラン・ブラインダー氏はかつて米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長を務め、現在は米プリンストン大学教授。
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ドナルド・トランプ氏が米大統領選に勝利して以来、株式市場は活発な動きを見せている。株式トレーダーをこれほど興奮させたのは、経済成長が加速するという見通しだとされている。本当にそうだろうか。
トランプ氏は実質国内総生産(GDP)成長率を大幅に、恐らくは3.5%や4%、もしくはそれ以上へ引き上げると公約している。ヒラリー・クリントン氏とラスベガスで行った討論会ではこう述べた。「実際には4%以上にできると考えている。5%や6%へ到達できるだろう」。幸運を祈りたい。
面白い史実がある。ハリー・トルーマン政権以降、経済成長率は大統領が民主党から共和党に代わるたびに低下し、共和党から民主党に代わるたびに上昇している。バラク・オバマ前大統領の2期目はGDPの平均成長率が2.2%程度となる。これを上回っただけでも歴史からは大きく逸脱することになる。
トランプ政権は、例えば4%の成長をどのように達成できるだろうか。主に財政刺激策を用いてだと市場は考えているようだ。まず需要サイドから考えてみたい。
読者は、2009年に共和党が財政刺激策では成長など全く上向かないと主張していたことを思い出すかもしれない。だが昔は昔、今は今だ。今回は同じ共和党の多くの議員が、財政刺激策は特に所得税減税であれば非常に強力だと訴えるのだろう。
経済にスラック(余剰)が多い場合、そして歳出や減税が需要創出に的を絞り込んでいる場合、財政政策の効き目が強いことは分かっている。09年は両方の条件が少なくともある程度はそろっていた。だが、経済がほぼ完全雇用の状態にあり、トランプ氏の減税案が富裕層へ大きく偏っている17年は、いずれの条件もそろいそうにない。
その上、FRBは決して経済が過熱しないようにするだろう。FRBの当局者らは信じられない気持ちで首を振っているに違いない。彼らは実質的には何年もの間、需要を刺激することで経済を低迷から救い出すよう議会に要請した。だが議会は正反対のことをした。いまでは刺激策の必要がないのに、議会は実施を目指している。結果として金利が上昇することは想像に難くない。
では、トランプ流の成長の奇跡を供給サイドから起こすことはできないだろうか。うまくいかないことはとっくに分かっている。エコノミストのウィリアム・ゲール氏(民主党支持)とアンドリュー・サムウィック(共和党支持)は昨年、減税の供給サイドへの影響に関する膨大な学術研究を包括的に評価した。その結論は「米国では税制の大幅な変更に成長率の目に見える変化がほぼ伴わないことを過去のデータが示している」というものだった。しかし、富裕層の税率を引き下げれば、持たざる者から持てる者への所得再配分が行われる。株式トレーダーの笑いが止まらないのはこのためと思われる。
いずれ誰かが、トランプ氏の供給サイドの政策には減税以上の意味があると指摘するだろう。その通りだ。インフラ建設の拡大は名案だが、目先の刺激効果は小さい。その上、アラン・クルーガー氏(プリンストン大学教授)との先月の寄稿で指摘したように、民間資本を活用するというトランプ氏の計画では、われわれが必要とする類のインフラ計画の資金をまかなえないだろう。幸いなことに、ウィルバー・ロス新商務長官は指名承認公聴会で、トランプ氏のインフラ計画は民間資本以外も取り込むと言明した。
規制撤廃についてもほぼ同じことが言える。一部はそうすべきだが、魔法でも信じない限り経済成長に大きく影響することはなさそうだ。さらに重要なことに、撤廃の効果はどの規制をなくすかで変わってくる。顕著な例を挙げると、トランプ氏は10年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の撤廃を公約している。確かに同法は気が狂いそうなほど複雑で、成長率をやや押し下げる可能性さえある。だが、08年に世界を襲ったような災難からはしっかり身を守れる。一部の環境規制はGDPの伸びをやや抑えるかもしれないが、飲料水や大気の汚染で病気になるリスクは低下する。
トランプ氏が何より望んでいる供給サイドの奇跡は、全くの運次第だ。なぜなら、長期の経済成長は主に技術の進展によって促されるためだ。だが技術の進展、もっと厳密に言えばそのGDPへの影響は、ジョージ・W・ブッシュ政権の間に急減速し、オバマ政権下でも復活しなかった。具体的に言うと、いわゆる「多要素生産性の伸び率」(伸びれば同じ投入量でも産出量が大きくなる)は、95年〜05年の年平均が1.6%と高かったが、05年〜15年は0.4%へ急低下した。エコノミストらはこの原因を推測しているが、本当のところは誰にも分からない。
生産性が伸びなくなった理由が誰にも分からないため、いつ息を吹き返すかも誰にも分からない。大統領になってからのトランプ氏が大統領候補のときと同じくらい幸運であれば、多要素生産性の伸び率は不思議と持ち直し、48年〜05年の平均に当たる1.3%あたりへ達するかもしれない。そうなれば、トランプ政権が指一本動かさずとも、そしてロシアのプーチン大統領の助けがなくとも、2.2%の成長率は3.1%へ加速するだろう。
分別のある人ならこんな結末は予測しないだろう。だが考えて見れば、分別のある人はトランプ大統領の誕生など予想だにしなかった。
「第4次産業革命」と中間層の闘い
テクノロジーによる賃金格差の拡大はテクノロジーで解決可能
世界経済フォーラム(ダボス会議)の討論会に参加したマイクロソフトのサティア・ナデラCEO
By CHRISTOPHER MIMS
2017 年 1 月 23 日 14:25 JST
――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト
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暗黒郷(ディストピア)を題材にしたSF作品が大ヒットしているが、それには理由がある。そうした世界がますます現実味を帯びているからだ。「ハンガー・ゲーム」から「エリジウム」に至るまで、いずれも富と所得格差の拡大がとことん進む世界を描いている。
そうした筋書きは避けられないようだ。歴史がそれを示している。自動運転車に職を奪われかねない何百万人ものトラック運転手は、自分たちの職を奪った自動織機を破壊したラッダイト運動の労働者たちをほうふつとさせる。
われわれは今、自動化、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの急速なイノベーション(技術革新)に象徴される「第4次産業革命」のさなかにいる。
このことは、先週開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)でも話題に上った。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はAIに関する討論会で、それが社会不安や過度の規制を招きかねないと指摘。「うまく対処しなければ、悪循環が生じる」と述べた。
そうした産業革命は、少なくとも長期的に見た場合、大量の失業者を生むことにはならないとエコノミストは主張している。筆者も以前、自動化によって、より多くの新たな種類の仕事が生まれると書いた。ジャネット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長によれば、米国は完全雇用状態に近づいている。工業化から200年以上たった今も、大量の失業者が出ていないのは、より多くの新たな種類の仕事が創出されているからだ。
労働市場の「二極化」
しかし、仕事は手に入るとはいえ、率直に言って、その中身は以前とは同じではない。生活水準を向上させたとテクノロジーを称賛するエコノミストも、人々は昔ほど賃金や見返りの良くない雇用形態を余儀なくされていると指摘している。
中間層が製造職や事務職を失い、労働者がサービス業に移行したとき、彼らの賃金や福利厚生、職の安定に対する影響によって、エコノミストの言うところの「二極化」が進んだ。二極化された労働市場では、少数の高技能労働者、すなわちテクノロジーを活用して生産性を高められる人たちが、実質的に他の労働者に取って代わり、相応の支払いを受けるようになった。一方、その他の人たちの運命は暗転した。
二極化によって最も打撃を受けているのは中間層だが、人間の労働の価値の切り下げは高所得層にもいずれ及ぶ、と賃金格差を専門とするエコノミスト、ブランコ・ミラノビッチ氏は指摘する。
その一因は、われわれが以前にも増して、高賃金の知的職業を排除できるようになっているからだ。コールセンターから人事部門まで世界大手企業のあらゆる業務の自動化を手掛けるシンフォニー・ベンチャーズの共同創設者イアン・バーキン氏によると、こうした現象は「ノーショアリング」と呼ばれている。つまり、事務作業のデジタル化で業務が国内回帰(リショアリング)しても、雇用は戻ってこないという現象だ。
やはり多国籍企業の重要なビジネス機能の自動化を支援するブループリズムのアラステア・バスゲートCEOは「英国の電力小売り顧客の一社では、300台のロボットが600人分の仕事をこなしている」と話す。
さらにバスゲート氏は「それが相当大きなインパクトであることは想像がつくだろう」とし、「以前なら600人のスタッフを常駐させるためにビルが一棟必要だったが、今ではデータセンターの隅にキャビネット一台あれば済む」と述べた。
AIが加速する知的職業の排除
この傾向をAIが加速させる可能性がある。こう話すのは、アポまで取れるスマートなデジタル・アシスタント・システムを開発した新興企業x.aiのデニス・モーテンセンCEOだ。
同社でAIアシスタントをトレーニングした際、最初は米国の一流大卒者たちを雇い、ニューヨーク・マンハッタンのオフィスで働いてもらっていたが、トレーニングの大半が済むと、残りの作業は国外にアウトソースできたという。
モーテンセン氏によると、AIボットの特定の利用ケースについて解決できれば、あとは問題ないことが分かったという。
AIの生産性とAIの開発・維持に要した人員の数を図表化してみると、AIの影響は一目瞭然だ。モーテンセン氏の経験では、AIが達成できるタスクの数はある時点で急激に増える一方で、必要な人員ははるかに遅いペースで増えるか、変わらないという。
それがわれわれの経済の自動化可能なタスク全てに起こった場合を想像してみてほしい。マッキンゼーが今月公表した最近の調査によると、既存のテクノロジーを利用するだけで、労働者が仕事に費やす時間の49%は自動化によって置き換えることができるという。
解決策は技能ギャップの是正
だが、こうした移行を昔よりも意図的に操作できる可能性はある。
二極化への対応策の一つは、労働者に求められる技能と彼らが実際に持つ技能とが合致しない「技能ギャップ」を是正することだ。例えば、米労働統計局の予測では、2020年までに最大100万のプログラマー職が不足する見通しだ。
技能ギャップの解決策として教育が頻繁に挙げられるが、それは概して鈍器にしかならない、とシリコンバレーのシンギュラリティ大学でこの問題の解決策を研究したミュリエル・クローソン氏は話す。
クローソン氏らが考案した解決方法は「udexter」と呼ばれる。AIを利用して各職務を構成するタスクを研究し、どのタスクが自動化可能かを見極め、それによってどの職務が最もリスクにさらされているかを特定しようとするものだ。各個人が持つ技能を評価できれば、政府や企業は解雇される労働者が他のどの職務に適しているかを見極め、恐らく前もって、その技能を彼らに身につけさせることが可能になるはずだ。
ただし、このような解決策は、企業が労働者確保にそのようなツールを活用する意欲がどれほどあるか、あるいは、解雇された労働者が、政府が支援する再教育プログラムで、ますます適応力が高まる機械に勝る技能を身につけられるかどうかにかかっている。
ダボス会議で多くのCEOや政府首脳がテクノロジーによる雇用の「破壊」を話題にしたということは、まだ万策尽きたわけではないということだ。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjZr7i44tfRAhVBmZQKHXOzA54QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10852398588237353609804582576324017114082&usg=AFQjCNE22ESSh8d5pSOmRS5QCpvrOh-gvA
株式市場の強気姿勢を警戒せよ、盲信は禁物
信頼感は伝染するが、それに基づいて行動するのは危険だ
By JASON ZWEIG
2017 年 1 月 23 日 16:09 JST
――筆者のジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト
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信頼感は伝染する。しかし、それに基づいて行動するのは危険である。
最近少し値を下げてきたが、S&P500種指数は昨年11月の米大統領選以降で6%近くも上昇しており、各種調査によると投資家は急激に楽観的になっているという。
いい気分に浸るのは結構だが、警戒もしなければならない。新たな調査では、他人の信頼感が自らの経験以上に自分の判断に影響を与え得るということがわかった。株式も債券も同様に割高な今、投資家は他の人々の感情に押し流されるリスクに対して通常以上に用心する必要がある。
先週、ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス誌に掲載された記事によると、人間の脳の特定の部位は他の人々がその選択についてどれほど自信がありそうかをモニターしているという。
調査を率いた英サセックス大学社会的決定研究所の心理学者、ダニエル・キャンベル・メイクルジョン氏は「われわれには、自分の考えに関して、より自信がある人々からより大きな影響を受けてしまうという性質が生物学的に備わっている」と話す。
同氏らが実施した調査では、被験者たちは容器から次に取り出される玉の色が赤か緑かを予想した。参加者たちは、自分たちがそれまでに取り出した数個の玉の色を参考にすることができた。また、自分以外の最大4人の予想や、そうした予想に各自がどれほど自信を持っているかも参考にした。
容器から取り出された直前数回分の玉の色の大半が赤である場合、被験者たちは次の玉を赤と予想する傾向が強かった。
さらに、他の人々が自信を持って赤を予想したと知ると、被験者たちが赤を選ぶ傾向はさらに高まった。自信の度合いは、いかにその色を速く選んだか、選ぶときに笑みを浮かべていたかで判断されていたという。
脳スキャンでは、被験者の予想が自らの経験に基づいている場合と、他の人々の自信に基づいている場合で、前頭葉前部の反応が異なっていた。
「人間の脳は社会的な情報源を伴う不確実性に対処するための神経構造と共に進化してきた」とキャンベル・メイクルジョン教授は説明する。他の人々の自信の度合いを示唆するヒントへの感受性は「自らの経験による学習とは独立して機能し得る」という。
そして今、自信がありそうな投資家は至るところで急増しているようだ。
2013年に市場の効率性の研究でノーベル経済学賞を受賞したエール大学の経済学者、ロバート・シラー教授は、機関投資家と個人投資家の信頼感を長きにわたって測定してきた(ここでの「信頼感」は株式がプラスのリターンを上げると予想している投資家の割合を指している)。昨年12月、ダウ工業株30種平均が翌年に上昇すると予想した個人投資家の割合は68.5%から75.8%に急上昇した。シラー教授が毎月の数値を報告し始めた2001年以来で最も急激な拡大だった。
先週、スイスの金融大手UBSグループの富裕層向け資産運用部門、UBSウェルス・マネジメント・アメリカズが公表した2000人以上を対象とした調査では、全体の58%が今年の米国経済に楽観的だった。10月半ば時点の39%からは大幅な拡大だ。大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン氏を支持していた投資家たちでさえ、かなり楽観的になってきた。
また、株式投資を拡大する可能性が高いと述べた投資家は全体の42%で、大統領選前の9%から大幅に増えている。
UBSウェルス・マネジメント・アメリカズで顧客戦略担当の責任者を務めるポーラ・ポリト氏は、トランプ氏についてどう感じているかに関係なく、「(大統領選挙後の)上げ相場はすべての株式投資家をより楽観的にした」と指摘する。
しかし過去を振り返ってみると、投資家の信頼感は市場がどれほど堅調な動きをするかの予想にはあまり適していないことが分かる。シラー教授は2000年に発表した論文で、信頼感が時と共に変化すること、相場が上昇した後に上昇し、相場の下落を受けて低下することも多いということを示している。
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ヤンゴン証取、することがないトレーダー
上場わずか4銘柄で取引少なく、ドルのヤミ取引が人気の国
ヤンゴン証取の上場第1号となったファースト・ミャンマー・インベストメントの創業者サージ・パン氏は、上場初日に証取の鐘の支柱を抱き締めた(16年3月)
AMARASINGHE/ASSOCIATED PRESS
By JAMES HOOKWAY
2017 年 1 月 23 日 16:09 JST
【ヤンゴン(ミャンマー)】ヤンゴン証券取引所(YSX)では、ケーブルテレビ局のスタッフが毎日やって来て、その日の取引の概要をリポートする。最近の木曜日のリポートは――いつものように――短いものだった。
MYANPIX指数の終値は、2日連続で前日比変わらずの627.42ポイント。出来高は4万7000ドル(約540万円)弱だった。その時点で上場していた3銘柄の1つであるミャンマー・シチズンズ・バンクは、取引が全くなかった。20日には4社目が上場した。
ヤンゴン証取の鐘
ヤンゴン証取の鐘
ヤンゴン証取の近くにあるオフィスで、株式ブローカーのマーティン・ジャン氏(34)の電話が鳴った。彼は少し興奮した。顧客からの注文かもしれないと思った。
だが、その望みはすぐについえた。「客は株式市場から資金を引き揚げ、中古車に投資すべきかを知りたがっていた」という。
米国株は好調で、ダウ工業株30種平均は2万ドルに迫っている。だがラオス、カンボジア、ミャンマーといった世界最小規模の取引所の中には、取引が干上がっているところもある。ドル上昇を受けて、投機家たちの関心が通貨のヤミ市場に向かっているからだ。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)は最も忙しい日には1000億ドル以上の取引を扱っており、トレーダーたちはエスプレッソを片手にそれを乗り切っている。これに対し、ヤンゴン証取の証券会社のブースはおおむね閑散としていて、数本のペンとクリップが置いてあるだけだ。ここの株式市場は昨年3月の取引開始以降44%値を下げている。
1日の大半が雑談
ジャン氏は、ミャンマーの標準的な仕事着である白い襟なしシャツと濃い色のサロン(スカート状の腰布)を身に付け、喫茶店でうわさ話をしたり、オフィスに立ち寄った顧客とおしゃべりしたりして1日の大半を過ごしている。そうでないときは、新規顧客獲得のために勧誘の電話をかけたり、株式取引について人々に教えるために自ら開設したフェイスブック・ページの作業に取り組んだりしている。
「動画をアップロードすることもある。株式取引の仕組みや、投資家が企業のどこに注目すべきかを説明する動画だ。記事を書くこともある」とジャン氏は話す。「人々が投資を始めたいと思うときのための準備を手助けしようとしている」。最近の投稿のテーマは「ミャンマーの水力資源」だった。
ヤンゴン証取に集まった人々(16年6月) ENLARGE
ヤンゴン証取に集まった人々(16年6月) PHOTO: E AUNG THU/AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
ミャンマーの人々は取引が嫌いなわけではない。証取の建物の裏手に回ると、約150人がたむろしており、ドルのヤミ相場を紙に書きとめては携帯電話に向かって何か叫んでいた。
世界の多くの貧困国と同様に、ミャンマーでは証券取引所の存在がステータスシンボルになると考えられていた。1年余り前の選挙で元政治犯のアウン・サン・スー・チー氏が国の実質的な指導者になった後、同国がビジネスに開放されたことを示す証しになるとも思われた。
ジャン氏は昨年、KBZスターリング・コールマン証券のブローカーになった。同氏によると、地元の複合企業であるファースト・ミャンマー・インベストメント(FMI)社が最初に上場したときは、投資家がわれ先にと株式を買いあさった。同氏と同僚は午前7時までに出勤し、1日12時間働いて、新株の取引をしたいという人々を登録したという。
株より中古車
FMIの株価は上場初日、初値の3万1000チャットから4万1000チャット(約30ドル)近くにまで上昇し、取引所のサーキットブレーカーが発動された。FMI創業者のサージ・パン氏は、取引開始と終了を知らせるための真ちゅう製の鐘の支柱を抱き締めて上場を祝った。
だが高値は長続きしなかった。その後FMIの株価は3万2000チャットに下落した後、半値以下となる1万4000チャットにまで値を下げ、以降その水準にとどまっている。
ヤンゴン証取は生き残るだろう。ミャンマー政府と日本取引所グループ、それに大和総研の合弁事業だからだ。証取幹部は、外国人による売買を認める法案提出を期待していると述べた。
だが今のところ、証取周辺でうわさの中心にあるのは、日本からの中古車の輸入を制限する政府の新規制だ。このため中古車の価格が急騰している。
「人々は常に取引対象になるもうけ話を探している」とジャン氏は言う。「だが今のところ、それは株式ではなく中古車のようだ」
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ミャンマー新首都、訪れるなら今でしょ!
不可解な政治家になったスー・チー氏
ミャンマー新政権にのしかかる麻薬問題
http://jp.wsj.com/articles/SB11177354273695693774104582576552334834264
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