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「原子力から脱却しないと日本は二流国に陥る」 (日経ビジネス 2017/12/14)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/121300116/
カーシェアなどのシェアリングエコノミー(シェア経済)が世界中で広がっている。米ウーバーテクノロジーズや米エアビーアンドビーの普及に代表されるシェア経済拡大の背景にあるのは、技術の進化で可能になった「所有」から「共有」というパラダイムシフトだ。
脱原発や「インダストリー4.0」を進めるドイツのメルケル首相のブレーンとして知られ、モノのインターネット(IoT)の普及とシェア経済の拡大など「第3次産業革命」の到来を予言してきた文明評論家のジェレミー・リフキン氏は、同革命への日本の対応の遅れを指摘。その理由は「原子力から脱却できないことにある」と警鐘を鳴らす。
----- 世界の第3次産業革命の進展と、日本の現状をどう見ていますか。
ジェレミー・リフキン氏(以下、リフキン氏):欧州連合(EU)はスマートヨーロッパ、中国は『インターネットプラス』という計画を立て、第3次産業革命を起こそうとしています。エネルギーや、クルマなどの輸送手段をインターネットにつなぎ、効率性や生産性を極限まで高めるのが第3次産業革命です。
モノやサービスを生み出すコスト(限界費用)が限りなくゼロにつながり、民泊やライドシェアなどに代表されるシェア経済が台頭する。EUと中国が国家戦略として取り組むのに対し、日本はこのパラダイムシフトに対して計画を持っていません。この状況が続けば、長期的に壊滅的な影響をもたらし、日本は2050年までに二流国家になってしまうと思います。
なぜそうなるのか、もうちょっと細かく全体像を示しましょう。いまのパラダイム、つまり石油と原子力をエネルギー源とし、内燃機関で動く輸送手段によって成り立っている第2次産業革命の成果はいま、衰退状態にあります。GDP(国内総生産)は世界中で落ち、生産性はもはや伸びようがないのです。
もともと第2次産業革命は米国で起き、瞬時にコミュニケーションができる電話やラジオ、テレビが普及しました。テキサスで採掘された安い石油がエネルギーとなりヘンリー・フォードが自動車を大量生産し、車やトラックが普及した。これが第2次産業革命で20世紀まで世界が繁栄しました。
生産性の向上は限界
しかし、この中央集権的な通信や、原油と原子力に依拠したエネルギー、内燃機関を使う輸送手段という第2次産業革命のインフラに接続されている限り、生産性はもう天井を打ったと私は見ています。さらにそれがもたらした気候変動によって、人類は危機にさらされている。
例えば、温暖化によって水の量はどんどん増えています。生態系は水の循環によって影響を受けていて、温度が1度上がるごとに降雨量が7%増えます。その結果、予見できないような大きな台風や豪雪、春は洪水、夏は干ばつ、それから山火事につながる。この秋も、世界中で様々な場所で異常気象がありました。
生物種は4億5000万年の間に5回、大々的に絶滅しました。今、その6回目の絶滅の危機にある。気候変動がこのままいくと現在地球に生息している生物種の50%が、この80年で絶滅すると言われている。大々的に種が絶滅したら私たち人間は生き延びていけるのでしょうか。そう考えれば、経済の新しいビジョンに重要なのは炭素を排出しない計画ということになります。
----- EUや中国は積極的に再生可能エネルギーを導入しています。
リフキン氏:かつて半導体産業がそうであったように、再生エネの固定費はいま、指数関数的に下がっています。太陽光や風力発電の固定費もどんどん下がってきている。電力会社が20年などの長期的な電力の買い取り契約を結ぶようになり、1キロワット時(kWh)当たり4セントという場合もあります。太陽光や風力に燃料費は要りません。当然、原発や化石燃料はコストで競争できません。しかも再生エネの固定費はもっと安くなる。それを中国も欧州も分かっていて、導入を進めているのです。
エネルギーも分散
----- 産業革命が起きる時にはエネルギー、輸送、情報伝達の3つの要素でパラダイムシフトが起きると指摘しています。
リフキン氏:英国で起きた第1次産業革命は、交通が水蒸気で変わり、蒸気で動く印刷機が生まれました。第3次産業革命はデジタル革命です。センサーを付け、データをモニタリングするIoTの上で、「コミュニケーション・インターネット」「エネルギー・インターネット」、そして「輸送インターネット」が進展します。
デジタル化してお互いが接続し、それで社会を管理し動かしていく。ネットワークに誰もが接続できるようになったことで、太陽光や風力を使って自分のところで電気を作り、余剰があったら共有する。太陽光と風力という限界費用がほとんどゼロの安いものを使えるようになるのです。
こういう社会になった時、中央集権的なエネルギーの代表である原子力はどんな意味を持つでしょうか。あるいは化石燃料で競争できるのでしょうか。限界費用がほぼゼロの再生エネを使っているビジネスと、原子力や化石燃料のエネルギーを使っているビジネスが競争できるでしょうか。
ドイツのメルケル首相は第2次産業革命のインフラを使う限り、これ以上の成長はないという私の助言を受け入れ、インダストリー4.0という第3次産業革命へとかじを切りました。脱原発政策も進めています。第3次産業革命には、新しいエネルギーのインフラが必要なのです。
第3次産業革命では生産性が上がり、環境負荷はどんどん下がり、ライドシェアや民泊などの新しいビジネスと新しい雇用の機会を生み出します。日本は電気通信、ICT、自動車、電機といろいろな産業で世界トップクラスにあり、まさにこのインフラを構築するのに必要なものがすべてある。
それなのにまだ依然として原発に頼っている。昔ながらの原子力から脱却できないということが、日本が第3次産業革命を進められない最大の理由だと思います。
---------(引用ここまで)------------------------------
もっともな指摘です。
このまま原子力にしがみついていては、日本は二流どころか三・四流の後進国になる。
しかもまた事故が起きれば壊滅します。
原発絶賛大推進の日経も明らかに論調が変わってきたようです。
以前では、日経がこのような記事を掲載することは考えられませんでした。
環境問題は別として、純粋にビジネスの観点からしても、もう原子力ではビジネス戦争に
全く勝てないことがはっきりした、そういうことでしょう。
(関連情報)
「原子力礼賛大推進の日経新聞ですら原発が最もコスト高と認めざるを得なくなった」
(拙稿 2017/12/7)
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