仮処分「決定」と裁判の本訴での「判決」とは違う。 仮処分とは、債権者からの申立てにより、民事保全法に基づいて裁判所が決定する暫定的処置である。金銭債権以外の権利を保全する点で仮差押と異なる。目的・態様に応じて「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」の二種類がある。 いずれも、手続の流れとしては、仮処分を認めるかどうか裁判所が判断する仮処分命令の段階と、仮処分命令に従ってその執行をする段階に分かれる。 今後は、四国電力が、「異議」を申し立てるか、「仮処分の効力を止める執行停止」を申し立てて、その後再び高裁が判断することになる。 そもそも裁判の本訴で判決が出ておらず、原告側に担保物件の「確保」(債務者からの占有離脱)や「時間経過による担保物件の換金価値下落を防止する」などの緊急の必要性があるわけでもないのに、原発の運転差し止めに関して、直ちに効力を発揮する仮処分を適用すること自体が間違った法の運用だ。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の仮処分即時抗告審での運転差し止め決定は、広島高裁の言い掛かり・こじつけ・曲解による電力会社イジメだ。 簡単に言えば、広島高裁には常識が通用しない、非常識ということだ。 決定理由が、いかにも反対意見に配慮した風の体裁を取り繕っているのが、より偽善的に感じる。 高裁が地裁の顔色を窺っているのも変な話だ。 国民は広島高裁の横暴を許してはならない。 「明らかに許容できるリスクを超える」と確実に確信を持って判断できる場合以外は、裁判所が軽々しく運転差し止め仮処分決定を出すことは、断じて許されない。 今回のケースは仮処分の悪用又は権利の乱用だ。 裁判所の判断自体もおかしいし、原告の政治運動に加担した仮処分の運用自体も司法の暴走である。 例えば仮処分が適している事案の例では、所有権留保をした自動車の割賦販売契約などがある。 債務者が支払いを遅滞し、なおかつ任意の自動車返還に応じない場合、債権者が裁判所に仮処分を申し立てる場合がある。 この場合、担保物件である自動車の確保(債務者からの占有離脱)の必要性や時間経過による自動車の換金価値下落を防止するため、 @債権保全の観点から裁判所が担保物件である自動車を一時保管後に本訴で決着をつけて、債権者が勝訴後に自動車を売却処分する(執行官保管の仮処分) A又は裁判所が担保物件である自動車を一時保管せずに、直ちに債権者が自動車を売却処分する(断行の仮処分) というものだ。 Aの場合、万一、債権者が自動車を売却処分した後で敗訴すれば、その時は金銭でカタをつけるということだ。 仮処分決定には本訴での判決を待たずに即効性があるのだ。 このようなケースでは債権者の債権保全の観点から、仮処分は有意義であり有効であり合理性がある。 ところが原発運転差し止め仮処分決定では、本訴で原告が負けた場合、運転できなかった間の電力会社の損失「得べかりし利益(逸失利益)」は誰が負担するというのか。 今回の場合、原告にそんな資力はない。 裁判所が負担するというのか。 もし裁判所が負担するということになれば、我々の血税の一部が裁判所の判断の誤りのせいで無駄に使われたということになる。 また、電力会社は国家賠償請求を検討すべきだ。 2017.12.15 01:00更新 【阿比留瑠比の極言御免】 原発差し止めと「菅直人理論」 司法が政治運動に利用された? 自ら一枚かもうとした? いずれにせよ国民不在だ http://www.sankei.com/premium/news/171215/prm1712150005-n1.html 再稼働済みの四国電力伊方原発3号機に対し、広島高裁が運転停止を命じた。 伊方原発から130キロの位置にある阿蘇山の約9万年前の過去最大の噴火を想定すると、火砕流が原発敷地に到達した可能性が 「十分に小さいと評価できない」 との判断である。 一方で高裁は、破局的噴火の発生頻度は国内で1万年に1度程度とされることや、そのような災害を想定した法規制はないことを認めている。 また、 「破局的被害をもたらす噴火で生じるリスクは無視できると容認するのが日本の社会通念とも考えられる」 とわざわざ指摘してもいる。 他紙の社説に当たる14日付本紙の「主張」は、これについて 「全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定」 と書いたが、同感である。 1万年に1度程度国内のどこかで起きる噴火が、運転期間は原則40年である原発の運転差し止め理由になるのだろうか。 仮に阿蘇山でそんな噴火が起きたら、周辺100キロ程度が火砕流で壊滅状態になり、国土の大半が10センチ以上の火山灰で覆われると予測されている。 高裁の理屈に従えば、そもそも日本全体が人間の居住に適さないということにならないか。 天が落ちてきたり、大地が崩れたりしないかと無意味な心配をし続けて、夜も眠れず食事も取れない状態になった古代中国の杞の国の人をまねるのは、賢いこととはいえまい。 ◆「薪や何とかで十分」 高裁決定に「どこかで聞いたような屁理屈だな」と感じ、記憶をたどり思い出したのは、菅直人元首相(立憲民主党最高顧問)が唱えるエネルギー論、いわば 「菅直人理論」 である。 菅氏は首相時代の平成23年7月、長野県で開催されたエネルギー政策に関するシンポジウムで脱原発を唱え、こう述べていた。 「1億分の1でも、1回で地球が崩壊するようなリスクはとれない」 1回で地球が崩壊する原発事故はあり得ないと考えるが、それはともかく、広島高裁の強引な論理展開に似てはいないか。 高裁も菅氏も、別の事象を無理やり結びつけ、極端に飛躍した結論ありきの筋立てをつくる点が共通している。 菅氏はシンポで、必要な電力は全て再生可能エネルギーで賄えると訴え、こうも語っていた。 「今から200年前、300年前は山に柴刈りに行ったおじいさんが、薪や何とかで全部やれた。新しい技術に転換してやればいいだけだから、十分可能だ」 そして26年7月のブログでは、こう嘆いていた。 「私が講演で『昔の人の生活は、童話に出てくるように、おじいさんは山に柴刈りに行き、おばあさんは川に洗濯に行く、全て再生可能な自然エネルギーだったのだ』と言ってもまだなかなか納得されない」 納得できると思うほうが不思議であり、まず自ら山に柴刈りに行くことから実践してほしいと思う。菅氏が言う 「新しい技術」 が確立されたとは聞いたことがないし、国民生活を一体どうしたいのだろう。 ◆訴訟弁護士スカウト 菅氏は今回の高裁決定に関し、13日付ブログに 「本当にうれしい」 「(運転差し止めの仮処分は)極めて効果的な裁判戦術の成果です」 と記し、原発訴訟にかかわった弁護士を立憲民主党から立候補させるアイデアを披露している。 司法が意味不明の 「菅直人理論」 に同調して反原発の政治運動に利用され、また自らそれに一枚かもうとしたのだとすれば、国民不在というほかない。 (論説委員兼政治部編集委員) 2017.12.15 05:03更新 【産経抄】 反原発裁判官はヒーローの仲間入り 12月15日 http://www.sankei.com/column/news/171215/clm1712150003-n1.html 「伊方原発運転差し止め」のニュースは、専門家にとっては「想定外」だったようだ。速報が入った瞬間、近くにいた司法と科学担当の記者は絶句した。 ▼両方とも門外漢の小欄も、広島高裁の決定には首をかしげるばかりである。福島第1原発事故の教訓を踏まえて、世界一厳しい基準が新たに策定された。伊方3号機は新基準に基づき、原子力規制委員会の安全審査に合格している。 ▼3月の広島地裁の決定では、規制委の判断に「不合理な点はない」としていた。では、広島高裁は何を問題視したのか。持ち出してきたのは、伊方原発から130キロ離れた阿蘇山で約9万年前に起きたとされる巨大噴火である。 ▼噴火により火砕流が伊方原発の敷地に到達する可能性が小さくないから、「原発立地としては不適当」と指摘した。数万年に1度の規模の巨大噴火ならば、原発の有無にかかわらず、西日本全体が壊滅状態となる。ばかげた議論というしかない。 ▼決定に従えば、火山国の日本ではどこにも原発が造れなくなる。今後のエネルギー政策を左右しかねない、重みを持つ。にもかかわらず、運転停止期間を「来年9月30日まで」と逃げ道も残した。証拠調べが十分に行われないまま判断する「仮処分」を理由とした。稼働停止によって、毎月35億円が失われる。誰が負担するのか。疑問を挙げれば、きりがない。 ▼原発をめぐる裁判では、これまで判断が分かれてきた。運転差し止めを決めた裁判官は、左派メディアからヒーロー扱いされる。広島高裁の野々上友之裁判長(64)も晴れて仲間入りを果たした。今月下旬に退官を迎えた後、どんな活躍をされるのか。なぜか、前川喜平前文部科学事務次官の顔が目に浮かんだ。 ●伊方原発差し止め 裁判官は定年直前のベテラン 2017年12月14日 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で13日、差し止めを認める決定を出した広島高裁の野々上友之裁判長(64)は任官37年目で今月下旬に定年退官を迎える。専門性の高い原発の安全論争に、概略的な証拠に基づく仮処分手続きがなじまないとの指摘がある中、ベテラン判事があっさりと差し止めを認めた。 決定では、熊本県・阿蘇カルデラで約9万年前に起きた大規模噴火を想定し、約130km離れた伊方原発に 「火砕流が到達する可能性が小さいとは評価できず、立地には適さない」 とした。 武蔵野学院大の島村英紀特任教授は、阿蘇カルデラの噴火を 「いつ起きてもおかしくない」 と話す。 だが、9万年前の噴火では 「九州は全滅し、人が住めなくなる事態となった」(島村氏) と言い、 原発1基を止めるかどうかといった問題とは次元が異なる。 日本全体の問題である原発の安全性については専門性が高いため、慎重かつ十分な議論が必要となる。伊方原発3号機の仮処分申し立て決定で、広島地裁は2017年3月に出した決定で、こうした問題の検証は仮処分の手続きになじまず、通常の訴訟で行うべきだと指摘していた。 こんな簡単に重大な決定が出されていいのか。 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。理学博士。東大理学部助手を経て、北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。『直下型地震 どう備えるか』(花伝社)など著書多数。 ●2017.12.14 05:03更新 【主張】 伊方停止の決定 阿蘇の大噴火が理由とは http://www.sankei.com/affairs/news/171214/afr1712140001-n1.html 再稼働済みの四国電力伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)に対し、広島高等裁判所が運転停止を命じた。 広島地方裁判所は、地元住民から出された運転差し止めの仮処分申請を3月に却下していた。高裁判断は、これを逆転させたものである。 同高裁は、運転を認めない理由として、伊方原発から130キロの位置にある阿蘇山の巨大噴火を挙げた。 9万年前の破局的噴火の規模なら、火砕流が到達する可能性は否定できないとした。 あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか。 高裁は、逆転決定の理由の中で、想定したレベルの破局的噴火の発生確率が 「日本の火山全体で1万年に1回程度」 であることを認めている。 また、その種のリスクを、無視し得るものとして容認するという社会通念が、国内に定着しているという常識論も述べている。 その一方で、原子力規制委員会が策定した火山事象の安全審査の内規に、破局的噴火の火砕流が含まれていることを、運転差し止めの根拠とした。 全体に強引さと言い訳めいた論理展開が目立ち、説得力の乏しい決定といえる。 しかも、広島地裁で審理中の本訴訟の行方をながめ、異なる判断がなされる可能性もあるとして、運転停止期間を 「来年9月30日まで」 と限定する自信のなさだ。 仮処分の決定なので、四国電力は現在、定期検査中の3号機の運転ができなくなった。 同社は 「到底、承服できるものではない」 として異議申し立てを表明した。 電力の安定供給を担う事業者の立場では当然である。 原発の再稼働とともに、運転差し止めを求める仮処分の申請が各地裁などで相次いでいる。その結果は分かれているが、抗告審での高裁判断は、耐震強化などの対策を施した原発の安全性を認めたものとなっていた。 今回の広島高裁の決定は、こうした大勢に水を差す対応に他ならない。規制委の安全審査に合格した原発への仮処分自体、そもそも不適切ではないか。 高裁の判断は、今後の各地裁でのよりどころとなるべきであるにもかかわらず、混乱を助長するものとなった。極めて残念だ。 ●2017.12.13 13:41更新 伊方原発3号機、運転差し止め 高裁段階で初判断 原発政策、再び打撃、定期検査後も稼働不可 広島高裁 http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130056-n1.html 【産経新聞号外】伊方原発差し止め[PDF] 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市の住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、運転を差し止める決定をした。対象期間は来年9月30日まで。四国電が3号機の稼働を定期検査後の来年1月に再開する計画は事実上不可能となり、政府や電力会社の原発再稼働方針には再び大きな打撃となった。四国電は高裁に異議申し立ての手続きを取る方針。伊方3号機の昨年8月の再稼働前後に周辺の4地裁・地裁支部で始まった仮処分のうち、初の高裁判断。差し止めを認めなかった今年3月の広島地裁決定に対し、住民側が即時抗告していた。 原発の耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)に関して四国電側が算出した結果の合理性や、東京電力福島第1原発事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準による審査の在り方、事故時の広域被害の恐れや近隣の火山が噴火した際の危険性が主な争点だった。 住民側は地裁での審理と同様、四国電は基準地震動の算出に当たって南海トラフ巨大地震や原発近くを通る中央構造線断層帯の影響を過小評価していると主張。新規制基準は福島事故の原因解明が十分ではない中で策定され、原発の安全性確保の目的を果たしておらず、事故や災害時は広範囲で大きな被害が及ぶと訴えた。 四国電側は 「安全を確保しており、危険性はない」 と反論していた。 広島地裁決定は新規制基準や四国電の地震、津波想定などには合理性があると判断。 「住民側が事故に伴う放射線被ばくで重大な被害を受ける具体的な危険はない」 と申し立てを却下していた。 伊方3号機は昨年8月に再稼働し、現在は定期検査中で停止している。来年1月22日に送電を再開、同2月20日に営業運転に入る見通しだった。 即時抗告したのは広島市と松山市の計4人。伊方3号機に対する同様の仮処分は松山地裁の却下決定を受けた高松高裁での即時抗告審のほか、大分地裁と山口地裁岩国支部で争われている。 ●四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた2017年12月13日の広島高裁の決定要旨は次の通り。 【火山による危険性以外の争点】 基準地震動策定や過酷事故対策、テロ対策の合理性などの争点について新規制基準は合理的。 【火山の影響による危険性】 伊方原発から約130km離れた熊本県・阿蘇カルデラは、火山学の知見では、伊方原発の運用期間中に活動可能性が十分に小さいと判断できず、噴火規模を推定することもできない。約9万年前に発生した過去最大の噴火規模を想定すると、四国電力が行った地質調査や火砕流シミュレーションでは、火砕流が伊方原発の敷地に到達した可能性が十分小さいと評価できない。立地は不適で、敷地内に原発を立地することは認められない。 広島地裁決定は、破局的噴火については、原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されない限り、自然災害として想定しなくても、安全性に欠けないと示した。確かに、現在の火山学の知見では、破局的噴火の頻度は国内で1万年に1回程度とされ、仮に阿蘇で起きた場合、周辺100km程度が火砕流で壊滅状態になり、国土の大半が10cm以上の火山灰で覆われるなどと予測されているが、そのような災害を想定した法規制はない。発生頻度が著しく小さく、破局的被害をもたらす噴火で生じるリスクは無視できると容認するのが日本の社会通念とも考えられる。しかし、高裁の考える社会通念に関する評価と、原発の立地評価について原子力規制委員会が策定した「火山影響評価ガイド」の立地評価の方法・考え方の一部に開きがあることを理由に、地裁決定のように、火山ガイドが考慮すべきだと定めた自然災害について、限定解釈をして判断基準の枠組みを変更することは原子炉等規制法と新規制基準の趣旨に反し、許されない。 【結論】 火山の影響による危険性について伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理で、申立人らの生命、身体に具体的危険があることが事実上推定されるから、申し立ては立証されたと言える。 伊方原発は現在稼働中であるから、差し止めの必要性も認められる。現在係争中の本訴訟で広島地裁が異なる判断をする可能性を考慮し、運転停止期間は平成30年9月30日までとする。 ●2017.12.13 20:18更新 【伊方原発運転差し止め】 130キロ先、阿蘇噴火想定 「日本のどこにも造れない」電力関係者当惑 http://www.sankei.com/life/news/171213/lif1712130055-n1.html 伊方原発3号機の運転差し止めを命じた13日の広島高裁決定。約130キロ離れた阿蘇山の火砕流到達を想定した内容について、電力関係者からは 「日本のどこにも原発が造れなくなる」 と当惑の声が漏れた。 原子力規制委員会の更(ふけ)田(た)豊志委員長は同日の定例会見で、決定が今後の安全審査に与える影響について 「ない」 と断言する一方、 「基準やガイドは不変のものではなく、科学的・技術的知見に基づき常に改善を考えている」 と強調した。 決定では、約9万年前の阿蘇山の噴火で、火砕流が原発敷地内まで到達した可能性を指摘した。四国電はこの噴火について、火砕流の堆積物が山口県南部にまで広がっているものの、四国には達していないとしており、規制委も審査でこれを妥当と確認していた。 規制委は 「火山影響評価ガイド」 と呼ばれる内規を基に審査を行っており、原発の160キロ圏内で将来活動する可能性がある火山が対象となる。 原発の稼働期間に噴火の可能性が低くても、過去に火砕流が原発のある場所まで到達したと考えられる火山は、電力会社に監視を義務付ける。 電力関係者の一人は 「規制委の自然災害に関する審査は非常に厳しい。数年かけて認められた結果が、裁判所の短期間の審理で否定されるのは納得がいかない」 と指摘した。 規制委の担当者は「裁判などとは関係なく、火山などの原発への影響を評価する基準の見直しは自主的に行っている」と話す。 広島高裁決定の2週間前の11月29日、規制委は原発周辺の火山が大規模噴火した際、設備や機器が機能を維持できる火山灰濃度の基準の試算方法を変更し、実質的に濃度基準を引き上げることを決めた。関西電力美浜原発3号機の審査書案に寄せられた公募意見や、電力中央研究所の報告などをきっかけに、昨年10月から検討されていた。 更田氏は会見で決定内容への言及は避けたが、 「われわれがどのような判断をしても、納得しない方は常にいる。私たちは私たちで規制の役割を果たすのみだ」 と述べた。 ●2017.12.14 07:09更新 伊方原発差し止め 翻弄されるエネ政策…「電力事業継続できない」 http://www.sankei.com/region/news/171214/rgn1712140060-n1.html 広島高裁が13日に出した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止め決定に、九州電力をはじめ九州の経済界は大きな衝撃を受けた。3人の裁判官は、原発から約100キロ離れた場所に住む反対派の訴えと、数万年に一度規模の噴火を重視し、科学的知見にのっとった安全審査の結果を覆した。電力業界からは 「安価で安定した電力を届けるのが使命だが、事業継続が難しくなる」 との声が上がる。 (中村雅和) ◇ 「火山の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理だ」 広島高裁の野々上友之裁判長は、最大のリスクとして、阿蘇山の噴火を挙げた。 四電は訴訟で、阿蘇山が大規模に噴火しても、原発の敷地に火砕流が到達する可能性は小さいと主張した。原発が立地する佐多岬半島で現在まで、9万年前の阿蘇山の大噴火に由来するとみられる堆積物が発見されていないことを理由に挙げた。 この点を野々上裁判長は 「火砕流が到達してないと判断することはできない」 と切り捨てた。 「堆積物が残りがたい地形だ」。 これが根拠だ。 つまり、 「佐多岬は火砕流の堆積物が残りにくいから、火砕流が来なかったとはいえない」 という理屈で、原発の運転差し止めを命じた。 また、規制基準では九州北部一帯を火砕流で埋め尽くすような大噴火の場合、数十年規模のマグマの移動など兆候があり、対応できるとしている。 火山も含め、新しい規制基準については、国際原子力機関(IAEA)も、福島第1原発事故の教訓を実効的に反映にさせた、と評価している。広島高裁はこの点も認めなかった。 この仮処分の結果、失う物は大きい。 × × × まず、原発が運転できないことによって、火力発電用の燃料費が増加する。四電の場合、伊方3号機停止で、月約35億円も収支が悪化する見通しだ。 四国という経済規模の小さなエリアにとって、四電の存在は大きく、その収支悪化はエリア経済全体の悪化につながる。 エネルギー自給率の低下による国際競争力の落ち込みや、二酸化炭素排出量の増大など環境問題もある。 しかも今回の仮処分は、噴火リスクを理由とした。反原発派は今後、全国の原発訴訟で、同様に噴火リスクを前面に打ち出してくるだろう。 九電どころか、全国の電力会社にとって対岸の火事ではない。 福島の事故後、全国の原発の長期停止によって、平成23〜27年度で計14・7兆円もの燃料費が余分にかかった。この結果、電気料金は大幅に上がった。全国平均で家庭用25%、大口40%もの上昇だった。 訴訟によって、全国の原発が停止に追い込まれれば、こうした事態の再現となる。 × × × 原発は確かにリスクがある。ただ、資源小国・日本には「原発がないリスク」も存在する。 原発がなければ、生活や経済活動の基盤である 「安価で安定した電力」 が揺らぐ。 広島高裁の決定は、こうした 「原発のないリスク」 に目をつぶったものといえる。 福岡商工会議所の礒山誠二会頭は 「電気料金が上がれば、企業の競争力や生活に影響がある。最終的にはコストは、国民が負担しなければならない」 と語った。 ある電力会社首脳は 「司法判断が揺れ動く状況で、腰を据えた投資など不可能だ。電力事業の継続も厳しくなる」 と嘆く。 国の長期的なエネルギー政策を考える上で、司法リスクはもはや無視できないほど大きくなった。最高裁での判例が確立するしか、司法リスクは軽減できない。 さらに政府・与党は、原発が持つリスク、そして 「原発のないリスク」 を明示して、エネルギー政策を国民に問う必要がある。 ●2017.12.13 23:06更新 【伊方原発運転差し止め】 再稼働に影を落とす司法リスク 政府のエネルギー政策にも影響か http://www.sankei.com/economy/news/171213/ecn1712130061-n1.html 広島高裁が13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを決定したことで、再稼働へのハードルは高くなった。四国電は執行停止などを申し立てる方針だが、来年1月に予定していた再稼働は大きく遅れる見込み。原発に対する司法リスクが高まる中、電力会社の経営や、政府が目指すエネルギー構成の実現に不透明感が漂う。 「裁判は一つのリスクと受け止めていた。それが顕在化した」。 四国電力東京支社の山野井勝弘副支社長は判決後の記者会見で、こう話した。 四国電の平成29年9月中間連結決算は、伊方原発3号機の再稼働で経常利益が前年同期の約12倍の314億円となった。しかし、30年3月期は今年10月からの定期検査で代わりの火力発電の燃料費が膨らみ、経常利益は250億円に縮小すると予想。今回の運転差し止めで稼働停止が長引けば、さらに月35億円の利益が失われる見込みだ。 四国電は 「当面は効率化で乗り切る」 と電気料金値上げは否定する。 ただ、決定は来年9月30日までの運転差し止めを命じており、経営に大きな打撃になる。 また、今回の決定は政府のエネルギー政策にも影響を与えそうだ。 政府は原発を安定供給に資する 「ベースロード電源」 と位置付け、42年度の電源構成に占める割合を 「20〜22%程度」 と設定した。 実現には原発30基前後の稼働が必要になるが、現在は伊方原発3号機や、関西電力の高浜原発(福井県)3、4号機など5基にとどまる。 今回の決定で、伊方原発3号機の再稼働の遅れは必至。九州電力玄海原発3、4号機なども神戸製鋼所のデータ改竄(かいざん)問題で再稼働が遅れ、最適な電源構成の実現への歩みは遅れている。 原発をめぐっては、28年に大津地裁が高浜原発3号機などの運転停止の仮処分を求める住民の訴えを認める決定を下し、関電は稼働中の3号機を一時停止した前例がある。予測できない司法リスクに直面し、安定的な経営や電源構成をどう実現するのか、電力会社や政府の大きな課題になっている。(会田聡) ●2017.12.13 15:56更新 四国電力株が急落、8%安 伊方原発運転差し止め決定で http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130067-n1.html 13日の東京株式市場で、電力会社の株価が軒並み下落した。同日午後に広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転を差し止める決定を出したことを受け、四国電力は前日比126円(8・31%)値下がりし、1390円で取引を終えた。原発の再稼働が遅れや停止が相次ぐ懸念が浮上し、原発を持つ関西電力、九州電力などの株価もつられて値下がりした。 伊方3号機の運転差し止めが決まり、四国電力は当面、原発に頼らない火力発電中心の経営を余儀なくされる。燃料費の増加で収支は月約35億円悪化する見通しだ。平成30年3月期の通期決算でも前期比で大幅な増益を見込んでいたが、伊方3号機の運転停止で下方修正される可能性がある。 四国電力株は朝方に買われて1530円まで上がったものの、午後1時半に差し止め判決が出ると直後から株価は急落した。一時は1353円まで下がった。原発停止の長期化による業績悪化が懸念され、株が売られた。 四国電力の差し止め判決が出た直後から、東京電力ホールディングス(HD)を除く、原発を持つ各電力株も値下がりした。 関西電力は3・16%安の1440円、九州電力は2・29%安の1235円。このほか北海道電力は1・76%安の780円、東北電力は1・59%安の1477円で取引を終えた。 ●2017.12.13 16:10更新 【伊方原発運転差し止め】 野々上裁判長、今月で退官 民事畑、任官37年目 広島勤務は通算16年 http://www.sankei.com/west/news/171213/wst1712130069-n1.html 四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを認める決定を出した広島高裁の野々上友之裁判長(64)は任官37年目のベテラン。広島勤務は地裁を含めて通算で約16年に上り、今月下旬に定年での退官を迎える。 岡山県出身。昭和56年に横浜地裁で裁判官生活をスタートし、主に広島や大阪、和歌山など近畿や中国地方の裁判所で民事畑を歩んできた。 平成21年には裁判長を務めた広島地裁の原爆症認定訴訟で、当時としては一連の集団訴訟で初めて認定行政に関する国の責任に踏み込む判断を示し、国に被爆者らへの賠償を命じる判決を言い渡した。 その後、同24年12月に岡山地裁所長へ就任し、26年9月から現在の広島高裁部総括判事となった。
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