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[透視図]変えられぬ原発政策
効果疑問の福島第1凍土壁、責任不明のまま完成へ
一度決めた原子力政策は変わらない。だれが方針を決め、だれがその帰結の責任をとるのかがみえない。象徴的なのが東京電力福島第1原子力発電所で建設が最終段階を迎えた「凍土壁」だ。
「ウソだもん、これ」。客観的に技術を評価する原子力規制委員会の会合には似つかわしくない発言が飛び出したのは、6月28日のこと。福島第1原発の現状を検討する会議で、更田豊志委員長代理が東京電力の説明に声を荒らげた。
東電は原発建屋に流入する地下水の量を制御するため、建屋周囲のサブドレン(井戸)から地下水をくみ上げている。合わせて1〜4号機の建屋を囲う凍土壁を完成させ流入阻止を狙う。
凍土壁は冷凍配管を長さ約1.5キロメートルにわたって地下に埋め込み深さ約30メートルまでの土壌を凍らせる。山側の7メートルを残して凍結が終わり、最後に残りを凍らせる「閉合」の了承を規制委から得るばかりの状態だった。
この日の東電の説明資料は地下水位を制御する凍土壁の効果を強調していた。しかし更田氏はサブドレンのくみ上げ能力を強化した結果とみて納得せず「陸側遮水壁(凍土壁)とは何の関係もない」と切り捨てた。
最終的に、効果は期待できないが安全上問題はないとして「閉合」は了承されたものの、凍土壁の有効性に関し規制委と東電の見方の違いをあらわにする一幕となった。
「補完」のはずが
凍土壁は最初からいわくつきだった。2013年、タンクからの汚染水漏れが相次ぎ問題視される一方で東京オリンピック・パラリンピックの招致が国家的課題だった。そんななか「汚染水対策の切り札」として政府が直接予算を投ずる事業として建設が決まった。
粘土や砕石で地下に恒久的な遮水壁をつくるのに比べ、施工がしやすく短期間で完成が見込める「仮設構造物」として選択された。当初15年度前半の稼働をうたったが、すでに2年以上遅れた。
技術的な有効性に疑問を呈する声は当時からあった。「切り札」と吹聴されたが、実は専門家会合ではサブドレンが不調な場合の「補完的役割」が期待されたにすぎない。しかし主役のサブドレンが順調に機能しても「降板」はない。走り出したら止まらない。建設に345億円、維持のための電気代に年間十数億円がかかり続ける。
8月30日、規制委と東電トップの意見交換の会合。更田委員長代理は「東電は主体性を取り戻すプロセスにある」と指摘した。東電に主体性がないと指摘したも同然だ。
廃炉などの責任を負いながらも国有化された東電には決められないことがあまりに多い。放射性セシウムなどを除去した処理済みの水(トリチウム水)の扱いもそうだ。
では決定権者はだれか。官邸や経済産業省など組織の名はあがっても責任者が表に出て話すことはかつてない。
再処理でも問題
日本原燃が青森県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料の再処理工場の稼働がまた遅れそうだ。すでに23回延期を繰り返し現在は来年上期を目標にする。しかし規制委の安全審査で火災など重大事故への追加対策が検討されている。
同社は6月、新規制基準への対応に7千億円を投じ、総事業費を1.3兆円増の約14兆円とする見通しを明らかにした。そこへさらにコスト増の懸念である。
再処理で生ずるプルトニウムの再利用が経済的に引き合わないのは原子力委員会などの検討結果から明らかだ。加えて高速増殖炉開発の後退でプルトニウムが余剰となる心配がある。情勢の変化にもかかわらず既定路線は不変のまま。合理的に考えれば使用済み核燃料を再処理せずにそのまま処分する選択肢が出てきてもおかしくないが、影すらみえない。
政策変更をすれば巨大な埋没費用(サンクコスト)が生ずる。その責任を問われる。変えたくない論理は役所にも企業にもある。原子力の世界でそれが著しいのは、体面を保つため余計なコストをかけても電力料金で回収する道があるからだ。
3.11後、原子力をめぐる政産官の力関係は変わった。しかし責任者不在の風土は今も変わっていないようにみえる。
(編集委員 滝順一)
[日経新聞9月4日朝刊P.10]
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