2017年8月8日(火) 南シナ海問題で合意 ASEAN外相会議 立場の違い超え共同声明 平和と安定求める文言 【マニラ=井上歩】東南アジア諸国連合(ASEAN)は6日夜に発表した外相会議の共同声明で、各国に立場の違いが残る南シナ海問題について、平和と安定を求める文言で合意に達し、8日のASEAN創設50周年記念を前に一定の結束を示しました。外相会議は4日からマニラで行われ、議論を積み重ねてきました。 共同声明は南シナ海での「埋め立てとその他の活動が信頼を損ない、緊張を高め、地域の平和と安定を弱めかねない」と一部外相が中国の活動を念頭に示した懸念に留意。緊張の増大や情勢の複雑化を避けるため行動を自制し、軍事化せず、相互信頼を高め、国連海洋法条約と国際法に従った紛争の平和解決を追求することが重要だと確認しました。 ASEAN外相は、南シナ海行動規範(COC)の枠組みの承認など「ASEAN・中国間の協力改善」を評価。COC本交渉と海上衝突回避規範(CUES)の運用開始などに期待を表明しました。ASEANと中国は11月の首脳会議でCOC本交渉の開始を宣言する予定です。 この問題をめぐっては、中国とのCOC本交渉で「法的拘束力ある」規範を目指すとする文言をベトナムが提案。一部に異論があったことが関連文書で判明しました。合意・採択された共同声明は、「実効的な」COCを目指すとの表現を採用しました。 情勢への懸念を述べる文章ではベトナムが「拡張工事」、マレーシアが「軍事資産(装備)の配備」への言及を提案。最終的には「埋め立て」への言及などで合意しました。 共同声明は、紛争の平和的解決で「法的・外交的プロセスを完全尊重」するASEANの原則を確認し、南シナ海に関して国際法と司法判断を尊重する意思を示しました。 10カ国外相はまた、国際課題への対応や地域の安全保障構造づくりでASEANの結束と中心的役割を強化する重要性を確認しました。ASEAN主導の多国間会合・メカニズムを発展させるとともに、国際情勢や地域問題に10カ国共通の立場で対応していく意思を表明。地域・国際の平和のために「多国間主義と地域主義を推進」していく考えを示しました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-08/2017080807_01_1.html 2017年8月8日(火) 主張 ASEANの50年 「平和の共同体」先駆的に示す 東南アジア諸国連合(ASEAN)がきょう結成50周年を迎えます。1967年にインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国で結成、その後ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアを加え、99年に東南アジア10カ国全てが参加する地域機構となりました。 重層的な枠組みを発展 50年前の結成宣言は、外部の干渉を拒否して域内の平和と安定を実現することを表明、76年の東南アジア友好協力条約(TAC)は、武力行使と武力による威嚇の無条件の放棄を確認、2008年にはASEANの基本法に当たるASEAN憲章が発効、15年には「ASEAN共同体」創立を公式宣言しました。 ASEANは東アジア全体で平和と安定を促進するために、重層的な枠組みづくりの中心的役割を果たしてきました。アジア太平洋地域の安全保障に関する対話と協力のための「ASEAN地域フォーラム(ARF)」は現在、26カ国と1機関が参加し、北朝鮮が定期的に参加する唯一の安保対話の場となっています。 TACには2000年代以降、中国、日本、米国など域外諸国が相次いで加入しています。ASEANと日米中ロ印韓豪ニュージーランドの計18カ国は、「地域の平和と安定を維持するフォーラム」である東アジア首脳会議を毎年開催しています。 こうしたASEANの実践は、「大国や先進国が主導し、小国や途上国は従う」という国際政治の「常識」を根底から覆しました。その影響は世界に広がり、一握りの大国が国際政治を牛耳ってきた時代は終わりつつあります。 日本共産党は、ASEANのような平和の地域共同体を構築するために「北東アジア平和協力構想」を提唱しています。北東アジアの「友好協力条約」を締結する、北朝鮮核問題の解決をめざす「6カ国協議」を平和と安定の枠組みに発展させる、領土紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ、侵略戦争と植民地支配の反省が不可欠の土台―という内容です。 北東アジアには北朝鮮の核兵器問題、領土紛争問題、歴史問題をめぐる対立と相互不信が存在するため、構想の実現は困難にみえます。しかしASEAN結成前の東南アジアは、領有権紛争などで軍事的衝突もあった地域でした。ASEANの歩みは、困難を克服して平和の共同体を発展させることができることを証明しています。 北東アジアの平和協力へ 北東アジアには既に平和の基礎があります。05年の6カ国協議共同声明は、北朝鮮の核問題、朝鮮半島の平和体制構築、日朝・米朝国交正常化など域内問題を包括的に解決することで合意しました。 東アジア首脳会議は11年の「バリ宣言」で、国家関係の原則としてTACと同じ戦争放棄などを確認しました。日中韓は11年から首脳間の合意に基づいて常設の「日中韓3国協力事務局」をソウルで運営中です。こうした実績を生かす外交に転換すれば、北東アジア平和協力構想を実現する展望が開けるでしょう。 「軍事同盟から平和の地域共同体へ」という21世紀の平和と安全保障の仕組みのあり方を先駆的に示したのが、ASEANの50年の歴史です。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-08/2017080801_05_1.html
|