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中国反腐敗、紅二代に波及 党大会へ権力闘争か:標的はトランプ氏当選直後に保有ホテルで会食した安邦保険集団呉小暉董事長
http://www.asyura2.com/17/china11/msg/619.html
投稿者 あっしら 日時 2017 年 6 月 19 日 03:27:34: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


中国反腐敗、紅二代に波及 党大会へ権力闘争か
党・軍幹部の子弟に親密な保険大手トップ拘束

 【重慶=多部田俊輔】中国の反腐敗運動が、これまで聖域視されてきた「紅二代」周辺にも及び始めた。建国に功績があった幹部の子弟である紅二代に近いとされる中国保険大手経営トップの身柄拘束が14日までに明らかになった。習近平国家主席の盟友、王岐山・党中央規律検査委員会書記が指示しているとみられる。共産党の最高指導部が大幅に入れ替わる5年に1度の秋の党大会を控え、権力闘争がうごめいている可能性もある。


 中国の保険大手、安邦保険集団は14日、呉小暉董事長が「個人的な理由で職務を履行できなくなった」と発表した。5月に開かれた国際会議や北京市での大使館イベントを最後に姿を見せておらず、当局に身柄を拘束されたもようだ。

 呉氏は浙江省出身。浙江省幹部の娘と結婚し、1990年代に自動車リースなどで起業した後、2004年に安邦を設立して経営トップを担ってきた。副首相などを歴任した陳毅氏の息子、陳小魯氏と親しく、中国の改革開放を進めたケ小平氏の孫娘と再婚したとされる。江沢民元国家主席と近いともいわれる。

 安邦は自動車保険会社としてスタートし、米名門ホテル「ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク」の買収など業務を拡大。呉氏は昨年秋にトランプ米大統領の長女の夫、クシュナー大統領上級顧問と会ったことなどでも注目を集めた。

 安邦が急成長をたどる中で、中国大手メディアの「財新」は安邦の資金調達にかかわる不正や呉氏の紅二代との関係を報じてきた。呉氏は誤報などとして財新の記者を訴えるとしているが、財新の背後には、腐敗撲滅を進める王岐山氏が協力しているとの見方も根強い。

 王氏を巡っては4月に、親族にかかわる不正調査を米国逃亡中の実業家、郭文貴氏が米メディアを通じて暴露したばかり。今回拘束されたもようの呉氏は郭氏に連なるとの見立てもある。

 王氏が指揮する党中央規律検査委は4月、規律違反の疑いで中国保険監督管理委員会の項俊波前主席の身柄を拘束した。項前主席は郭氏と共謀したとされるほか、呉氏や安邦の不正を支援したとの観測も浮上している。3人が共謀した可能性も調べるとみられる。

 5年に1回の党大会は最高指導部が大幅に入れ替わるため、その前には権力闘争が激しくなる。5年前は重慶市トップで、一時は習近平国家主席のライバルとみなされた薄熙来氏が腐敗や妻の殺人事件などで失脚した。権力闘争と絡んで反腐敗運動が活発になる中で、中国で有力な地位を持つ紅二代にかかわる腐敗の深刻さが明らかになる可能性もある。

紅二代とは

 ▼紅二代 中国建国に参加した中国共産党や軍の幹部を親などに持つ子弟。中国を「我々の親が作った国だ」という意識が強いとされる。

 社会で高い地位に就いていることが多く、政治やビジネスなどでも大きな影響力を持つとみられる。現在の最高指導部7人のうち、習近平国家主席のほか、王岐山氏や兪正声氏、張徳江氏が紅二代とみなされている。

[日経新聞6月15日朝刊P.9]

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トランプ政権を手玉に、中国の人・カネ・外交  編集委員 飯野克彦
2017/5/28 2:00

 米国のドナルド・トランプ大統領が、就任する前とは打って変わって中国に融和的な姿勢を鮮明にしています。選挙戦で対中強硬論をぶっていた大統領候補が当選後に中国重視へと旋回するのは珍しくありませんが、トランプ氏の旋回ぶりには目覚ましいものがあります。大統領の個性による面が大きい印象ですが、中国がトランプ政権の「つぼ」を巧みに押さえた面があることも指摘できます。

 北京の中心部からやや西寄り。「金融街」とよばれている一角にザ・リッツ・カールトン北京という高級ホテルがあります。ここで5月6日、中国の富裕層に米国への不動産投資をうながす商談会が開かれました。主催した「北京僑外出国諮詢服務」は、海外への移民をのぞむ人々へのサービスで成長してきた企業グループ「僑外集団」の中核企業です。宣伝ポスターが「50万ドルで米国移民」とうたっていたように、米国内で50万ドル以上の投資をした外国人は米国の永住権を得られるという「EB−5」プログラムを活用した、投資商談会でした。

■娘婿とその関係者に食い込む

 習近平・国家主席の号令で「反腐敗運動」が猛威をふるっていることもあり、中国ではこのところ移民熱が一段と高まりを見せています。移民の機会を提供するこうした商談会は珍しくありません。ただ今回は、米ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズなどの記者が取材をこころみるなど、一部のメディアが強い関心を寄せました。投資を勧誘する側の代表として、ニコール・クシュナー・メイヤーさんが登場することになっていたからです。


中国富裕層に米国への不動産投資を促す商談会で、プロジェクターにはトランプ氏自身も映し出された=AP

 名前からうかがえるように、トランプ大統領の女婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の妹です。トランプ家とおなじくクシュナー家も不動産事業で財をなしました。政府の要職に就いたジャレッド氏は少なくとも形の上では家業から手を引いていますが、ニコールさんは幹部としてつとめているわけです。この日の商談会で投資対象として紹介されたのは、クシュナー・カンパニーズがニュージャージー州のジャージーシティーで開発を進めている「ワン・ジャーナル・スクエア」という複合ビルでした。

 兄が大統領の顧問をしていようが、その義父が大統領の座にあろうが、民間企業の幹部として自社商品を宣伝するのは当然の商行為ではあります。物議をかもしたのは、商談会のなかでニコールさんが「兄は最近ワシントンへ行き政府の仕事をしている」などと語ったことでした。政権中枢とのつながりをビジネスに利用したのでは、といった疑念を招いたのです。また、トランプ大統領が大統領選で移民問題をことさらに強調し、実際の政策としても移民受け入れの要件を厳格化しようとしているときに、大統領の親族がこれまでの仕組みに沿った移民を勧誘した形になったことも、違和感をもって受けとめられたようです。

 翌日、ニコールさんは上海の商談会にも顔を見せましたが、その後の予定にあった広州(広東省)や深圳(同)などでの商談会には出なかったそうです。クシュナー・カンパニーズは「投資を引き出す目的で(ジャレッド・)クシュナー氏の名前を出したと解釈されてしまったのであれば謝罪する。(ニコール・クシュナー・)メイヤー氏が意図したことではなかった」との声明を出しました。

 いずれにしても、トランプ政権の周辺に中国マネーが浸透しつつあることを浮き彫りにしたエピソードです。実は6日の商談会に際し、僑外集団は「クシュナー家と再び手を組んだ」と大々的に宣伝しました。ジャレッド氏が経営を退く前からクシュナー・カンパニーズは僑外集団と取引関係があったのです。1月20日のトランプ大統領の就任式に、僑外集団トップの丁頴・総裁が招かれていたことから、両企業グループの親密ぶりがうかがえます。僑外集団が食い込んでいるのは、トランプ政権の周辺というよりは中枢そのものとみるべきかもしれません。

 僑外集団に対して中国共産党政権がどれほどの影響力を持っているのか、実態はわかりません。ただ、海外への移民のあっせんという業務は当局との緊密な関係がなければ公然とできるものではありません。僑外集団からクシュナー家、そしてトランプ政権の中枢へと通じるルートを共産党政権は押さえた――。こんな構図が浮かび上がります。

■米中首脳会談でもクシュナー氏と連携

 ジャレッド氏が中国マネーと因縁浅からぬ関係にあることは、別のエピソードでも明らかになっています。

 トランプ氏が当選を決めてほぼ1週間後に当たる2016年11月16日の夜。ジャレッド氏はニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンにある高級ホテル、ウォルドーフ・アストリアの中華レストランで食事をしました。ニューヨーク・タイムズによると、1本2100ドルするワイン「シャトー・ラフィット・ロートシルト」を酌み交わした相手は、中国の大手保険会社、安邦保険集団の呉小暉・董事長。同社は2014年、ほかでもないウォルドルフ・アストリアを19億5000万ドルで買収したことで世界に名をはせました。呉董事長みずからは、かつての最高実力者・ケ小平氏の孫娘と結婚したことで知られています。

 ことし3月になって、クシュナー・カンパニーズがマンハッタンに所有する高層ビルの再開発事業に安邦保険集団が巨額の投資を検討している、と報じられました。それから間もなくクシュナー・カンパニーズは「もはや安邦とは協議していない」と発表しました。実情はどうあれ(1)ジャレッド氏は中国の大手企業の経営者と親しい(2)その経営者は中国で「太子党」と呼ばれる、共産党政権高官の子弟でもある(3)すくなくとも一時は中国マネーがクシュナー・カンパニーズに流れ込む動きがあった――ことはあきらかです。中国の崔天凱・駐米大使はトランプ氏の当選から短い期間のうちにジャレッド氏と太いパイプを築きましたが、その背景に呉董事長や丁総裁らの人脈と中国マネーの作用を読み取る向きは少なくありません。


4月に開催された米中首脳会談で、クシュナー氏(左から2人目)は大きな役割を果たしたとされる=ロイター

 セクレタリー・オブ・エブリシング(あらゆることの長官)――。米紙が皮肉を込めてこう評しているように、ジャレッド氏はいまや大統領の腹心としてトランプ政権のさまざまな意思決定に関与しています。米フロリダ州にあり「南のホワイトハウス」と呼ばれるトランプ氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」で4月上旬に開いた米中首脳会談も、ジャレッド氏と崔大使が手を携えて下ごしらえをしたとされています。そんなジャレッド氏に中国マネーはしっかり食い込んだ印象がありあます。

 ジャレッド氏の夫人、すなわち大統領のまな娘であるイバンカ・トランプ大統領顧問にも、中国マネーの影はちらついています。

 イバンカさんは自分の名前を冠したファッションブランドの創設者です。米AP通信によると、米中の両首脳が「マール・ア・ラーゴ」で夫人たちも交えた夕食会を開いた4月6日、中国当局は宝石やバッグなど3分野で「イバンカ・トランプ」の商標登録について仮承認したそうです。

 周知の通り、トランプ政権をめぐっては政治倫理にかかわる問題がいろいろと浮上しています。足元では、ロシアとの不透明な関係をめぐる疑惑「ロシアゲート」が大きく政権を揺さぶっていますが、中国マネーがからんだ問題も疑念を招いているのは確かです。中国からみれば、米国の政策が中国にとって都合のいい方向に動くよう影響を及ぼすことができれば、それにこしたことはないでしょう。たとえそうならなくても、トランプ政権が政治倫理の問題に揺さぶられ米国の国際社会での指導力の減退につながるのなら中国にとって利益になる、とみている可能性もあります。

もちろん、中国のトランプ政権への働きかけは、クシュナー家やイバンカさんといった私的なつながりを通じたものだけではありません。たとえば、米中首脳会談で貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」で合意して1カ月あまりたった5月中旬、米国産牛肉の輸入再開などを盛り込んだ「10項目合意」の発表にこぎつけました。トランプ政権は2国間の交渉を通じて貿易赤字の削減を目指すことを対外経済政策の柱に据えています。そのモデルケースともいうべき成果を中国は提供したわけで、なかなか「つぼ」をこころえた一手です。

■アジアから米影響の排除狙う

 もう一つ、中国がトランプ政権をたぐり寄せるための「つぼ」の役割を果たしているのは、北朝鮮の核・ミサイル問題です。


北朝鮮問題などでも、アメリカからの圧力を中国に有利に動かしている=AP

 この問題では、トランプ大統領が武力行使も示唆して北朝鮮への影響力を行使するよう習主席に圧力をかけ、中国は金正恩政権の説得に四苦八苦している、というのが一般的に語られている構図でしょう。しかし視点を変えれば、中国は北朝鮮の暴走に歯止めをかけられる立場を生かして米中関係を自らが有利になるよう動かしている、という構図でもあります。2001年の米同時テロと比べると、わかりやすいかもしれません。

 16年前、発足して間もないブッシュ政権は厳しい対中姿勢を鮮明にしていました。それを一変させたのが同時テロです。米中関係に及ぼした影響は劇的で、中国の専門家が「テロは米国にとって悲劇だったが、中国の発展にはとても有益だった」と語ったこともあるほどです。米中の間で、16年前の同時テロと同じ役割を現在は北朝鮮の挑発的な行動が果たしている、とみることができます。

 「アジアの問題はアジアの人々が対処し、アジアの安全はアジアの人々が守るべきだ」。習主席は2014年、上海で開いた国際会議の場でこう演説したことがあります。それ以前には、中国政府の高官が米軍の高官に対し、太平洋の東半分は米国が、西半分は中国がそれぞれ管理する、というアイデアを持ちかけたこともありました。

 アジアの安全保障で米国の影響力を排除し中国の勢力圏におさめる、という戦略を中国は持っているのでしょう。19世紀の前半に、ジェームズ・モンロー米大統領が南北アメリカに対する欧州からの干渉を拒否する考えを表明したのを連想させます。いわば中国主導のアジア版モンロー主義で、遠い将来の歴史書には「習近平主義」と記されることになるのでは、などという想像まで誘います。

 だからこそオバマ前大統領は「アジア回帰」を掲げ、環太平洋経済連携協定(TPP)を推進して中国に対抗しようとしました。けれどトランプ大統領はTPPから離脱し、北朝鮮への対処で中国に下駄(げた)をあずけ、さらに最近は南シナ海の問題でも中国に配慮する考えを公然と表明しています。アジア版モンロー主義には格好の追い風です。

飯野克彦(めしの・かつひこ)1983年日本経済新聞社入社。北京支局、バンコク支局長、中国総局長、ベンチャー市場部長などを経て論説委員兼編集委員。専門は中国、東南アジアを中心としたアジア情勢。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO16883210W7A520C1000000/

 

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