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『白痴』が書かれてから150年:ドストエフスキーのキリスト的な傑作が読まれる5つの理由
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投稿者 中川隆 日時 2020 年 2 月 28 日 09:16:04: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: ドストエフスキーの貧困生活 投稿者 中川隆 日時 2020 年 2 月 28 日 00:14:44)

『白痴』が書かれてから150年:ドストエフスキーのキリスト的な傑作が読まれる5つの理由 2018年5月21日
オレグ・エゴロフ
https://jp.rbth.com/arts/80224-hakuchi-ga-kakareta-kara-150-nen

 2018年に、つらい目に遭ったキリストのような人物を描いたこの象徴的な小説は、発表から1世紀半を迎える。作家自身が死に近づいた経験もこの作品の中には書かれている。


1.残酷な世界に生きる完璧な人の物語


 自分が善人なのか悪人なのか分からないという人がいるかもしれない。とりわけ、二日酔いのときとか、渋滞で誰かの邪魔をした後となるとそうだ。「なぜ私は完璧ではないのか?自分を捨ててすべての人を助けることのできる、誰をも愛することのできる善人ではないのだろうか?」と、この不安定な時代に我々は自分自身にこう問うこともあろう。まあ落ちついてください。フョードル・ドストエフスキーが『白痴』の中で証明しているように、完璧であることは良い事ではない。

 この小説の主人公レフ・ムイシュキン公爵は理想的な人間だ。「ドストエフスキーの着想は、完璧な人間を描くことだった。すべての人への共感に満ち、悪の世界にいるすべての人、堕落した人々をも理解できる人物を」と、ロシア文学サイト「ポールカ」では説明されている。創作ノートでドストエフスキーは、「ムイシュキン」を「キリスト公爵」と呼んでいる。そして彼は、本当にキリストのような人だ。愛と許しに満ち、怒りを感じることはない。

 しかし、彼の周りの人たちは、ムイシュキンを馬鹿にしている――白痴だと(彼は健康上の問題を抱えている)。彼の善意が報われるようなことはほとんどない。ネタバレは避けるが、結末は必ずしもハッピーエンドではないと言っておこう。


2.忘れがたい登場人物がたくさんいる


 ムイシュキン公爵以外でも、この小説に登場する人物は誰もがある程度、何かに、あるいは誰かに取りつかれている。ムイシュキンはナスターシャ・フィリッポヴナを愛しているが、彼女は子供時代に性的に虐待され、(自分自身でも)自分は卑しく「堕落」していると思っている。あるいは、18歳のイッポリトは、肺結核で死にかけており、自殺しようとしている。

 いつものごとくドストエフスキーは、登場人物たちの最も深く神秘的な面を引き出している。19世紀のロシアの出版人アポロン・マイコフは、『白痴』について、「すべての人物が電気の光に照らされているように明るく多彩で、彼らは超自然なほどの輝きを与えられ、彼らの内面をより深く見たいと思わせる」と書いている。


3.勇敢で稀有な体験


 『白痴』を執筆している間、ドストエフスキーはこの作品を中断せざるをえなかった。当初の計画では、最終的に神を見出す悪人について書く予定だった。しかし、その後、作家は考えを変え、ムイシュキンによって具現化されたキリスト的理想像が現代世界において望ましいものなのかどうかという問いに、この小説を捧げたのである。

 ドストエフスキーは、できるだけ現実に近くあらねばならなかった。そのため、彼は確固たる結末は決めずに、ただ諸々の状況を提示し、登場人物たちが彼らの性分にしたがってどう反応するのかを記録したのである。これは容易なことではなかった。

 「私はめまいがしていました。頭がおかしくならなかったのが不思議なくらいです」と、ドストエフスキーは、友人への手紙で説明している。そして、結末は――もちろん、ネタバレはしないが―― 作家にとっては非常にハードなものだったのかもしれない。


4. 19世紀ロシアへの窓

 ある程度は、人生そのものがドストエフスキーに書くべきことを指示したのである。彼の登場人物たちは、同時代人として作家と同じ新聞の同じ記事を読んでいる。さらに、ドストエフスキーは、現実の出来事から『白痴』における非常に重要な殺人事件を拝借している。

 「ドストエフスキーは外国滞在中に『白痴』を執筆していた」と、作家の知られざる点に言及しているウェブサイトArzamasの記事は語っている。「だから、彼は母国のことに疎くなってしまうことを恐れ、この本が注目されることを望んでいた。彼はロシアの新聞は全部読んでいた。特に“ニュース速報”欄には注目していた」。だから、19世紀のロシアについて知りたいと思うなら『白痴』を参照するのが良いだろう。


5. ドストエフスキーは死に近づいた自分の体験を描いた


 最初のほうの章で、ムイシュキン公爵は、死刑判決を受けたある男の話をする。「死刑囚の男の最後の瞬間についての彼の3つの記述は、文学における最もスリリングなものに入る。だからこそ一層、これらが作り出されたものではないと分かるのである」と、ノースウエスタン大学教養学部のゲーリー・ソール・モーソン教授は、『白痴』に関する自身の論文に書いている。

 確かに、ドストエフスキーは、1849年に革命派サークルのメンバーであったために死刑判決を受けた。執行のわずか数分前に、ニコライ1世が彼の刑を数年間の重労働に変更したことが告げられた。数日間、この未来の作家は、自分の死を待っていたのであり、この恐ろしい体験は彼を永遠に、そして深く変えることとなった。

 死刑囚をめぐるムイシュキンの言葉がとりわけ力強いのは、彼が話していることについて知っていた人間によってもたらされているからだ。こんな驚くべきシーンを見逃すのは惜しい。


https://jp.rbth.com/arts/80224-hakuchi-ga-kakareta-kara-150-nen  

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