Mischa Elman plays Brahms - Hungarian Dance No. 7 http://www.youtube.com/watch?v=GSlI6cNtkqg 今回のCDで演奏しているのは、“エルマントーン”で当時一世を風靡したウクライナ出身のヴァイオリニストのミッシャ・エルマン(1891年―1967年)である。
“エルマントーン”とは一体何か? 一言でいうと「甘いヴィブラートと官能的なポルタメント」が特徴とでも言ったらよいのであろうか。常に音程が揺れ流れており、曲全体が甘く、官能的に聴こえてくるのである。 ここまで徹底して自己のヴァイオリンの音色を主張し続けたヴァイオリニストも珍しいのではないかと思えるほどだ。ちょっと鼻に掛かったようでもあり、ジプシーの音楽を聴いているような感覚にも陥る。多分、今こんなヴァイオリンの奏法したらたちどころに先生に矯正されるに決まっているし、リサイタルを開いたら、古い弾き方だと非難轟々となり、そのヴァイオリニストの将来はお先真っ暗になるのは目に見えている。 ミッシャ・エルマンが生きていた時代はまだおおらかな空気が流れ、充分にその存在価値を主張できたのではないであろうか。でも、今また、ミッシャ・エルマンみたいなヴァイオリニストが登場してくれないかな、と私は密に思っている。 http://blog.goo.ne.jp/classic_2007/e/b1486287087f3db0342b4b394e322b68 これはもう、エルマンの「芸」を聞くべき演奏だ。芸術を聞くつもりでいると、ムチウチ症になること間違いなしだ。 出だしからして普通じゃない。リズムの崩し方がすごい。最初に聞いた時は、のっけからのけぞってしまった。まさに大爆笑の大拍手ものだ。これを採譜しようとすると、無茶苦茶悩むことになるだろう。エルマンは日本でも明治時代から甘美な演奏家として広く知られていたようだが、その芸の集大成ともいうべき演奏だろう。大ヴィルティオーソ時代の最後のあだ花かもしれない。 たしかにこの演奏は技術的にはかなり危なっかしい部分もある。エルマンの全盛期は1930年代にはもう過ぎていたという人もいる。しかし、それでも、これらの欠点はエルマンの「芸」の凄まじさにはかすんでしまう。 エルマンは1940年代後半から1950年代前半までの約10年間、自分のスタイルを変えようとしていたように思える。英 DECCAへの録音による1950年代前半のモノーラル録音にはエードリアン・ボールトやゲオルグ・ショルティによる指揮でチャイコフスキーやベートーヴェンなどの協奏曲が録音されているが、第二次世界大戦後に起こった「楽譜に忠実」派の隆盛によって、エルマンがそういった演奏スタイルに変えようとして喘いで様が記録されている。
それは、1940年代から始まったRCAーVictorのエルマンへの冷遇(それはハイフェッツの録音量に比例している)によってエルマンを悩ませていたようだ。しかし、1950年代後半、米Vangurd と契約した頃には「自分は自分でしかない」という結論に達したようだ。 とにかく、この演奏はエルマンの奏でる「歌」を聞くためのCDだ。ピアニストで言えば、パデレフスキーやパハマンと同じように、楽譜を材料としてそれを如何に料理するかを楽しむための演奏だ。だから、ベートーヴェンやブラームスなどの音楽の根っこにある「観念」を表現しようとする音楽には向かないが、そういう背景があまりない曲では抜群に面白さを感じさせるものになる。
今日、このような演奏はまず聞かれない。それは、学術的研究の成果なのかもしれないし、あるいはコンクール全盛期の弊害なのかもしれない。 エルマンのような音楽家は今の音楽界では決して認められないだろう。 しかし、人間が音楽の上位にいた頃、それがエルマンの時代ではなかったのではなかろうか。そう考えると、果たして今のリアルタイムで聞くことが出来る音楽が当時よりも優れているかどうか、疑問が残る。 http://stokowski.web.fc2.com/jp/nattoku/elman.htm 1月20日は、ミッシャ・エルマンの誕生日です。 ◆昔のヴァイオリニストです。美音でした。
しばしば、昔のヴァイオリニストは、個性的で、いまのジュリアードで習った人達はテクニックはあるけど、 つまんない、というような、ことを言います。 それほど、単純では無いと思います。今のヴァイオリニストでも、「あ、これは・・・」と音を聴いて分かる人、 弾き方の特徴(曲の解釈上の個性とでもいうのでしょうか)で、「あ、これは○○だ」と言う人はいます。 ただ、今の方が、世の中がギスギスしているのと、みんなテクニックがどんどん向上していくので、 つい、そちらの方に演奏者も聴き手も気を取られて、何だか少しカリカリしている気がします。 特にコンクールとなると、本来の演奏会じゃなくて、皆同じぐらい上手いので、ミスをした方が負け、のような(実際はそれほど単純じゃないでしょうが)状況ですから、ピリピリしています。 でも、少しぐらい間違えたっていいですよね。全部デタラメでは、お話になりませんけど。 そのようなことを、ロシア生まれのアメリカの往年のヴァイオリニスト、ミッシャ・エルマン(1891-1967)の小品集を聴いていると、感じます。 エルマンの美しい音は「エルマン・トーン」と呼ばれた、と言われています。 私は生で聴いたことがないので、本当はどういう音だったのか、分かりませんが、 そんなの今更どうしようもないんですから、ムキになることはない。 いや、失礼。
何を独りで怒っているかというと、
Wikipediaでミッシャ・エルマンの項 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3 を読んだら、 要するに上手かったのは、若い頃で、晩年はテクニックも衰えて、音色も、さほど大したことはなかったと、 珍しく情緒的な説明だったので、何かエルマンに恨みでもあるのか? と少々不愉快だったからです。
失礼を致しました。 ◆エルマンより今の日本の若い人の方がテクニックはあるかも知れませんが・・・。
純粋に早いのを正確に弾けるかとか言うことで言ったら、それは今の学生さんの方が、 これからお聴き頂く晩年のエルマンより上手いでしょう。
そこが、逆に貴重でして、エルマンのヴァイオリンを聞くと、音楽家というのは、テクニックは身につけなければいけませんが、上手ければ良いというものではない、ということが分かります。
◆【音楽】アンコール集 エルマン(vn)セイガー(p) より。
CDは、AmazonでもHMVでもTowerRecordでも買えますが、Amazonだけ試聴できないので、 HMVのアンコール集 エルマン(vn)セイガー(p)と、 Towerのヴァンガード名盤選38::ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン・マスターピースにリンクを貼っておきます。
ガヴォット(ゴセック) http://www.youtube.com/watch?v=EqkRbC4EC-8 http://www.youtube.com/watch?v=y3ztkHOYtDc
エルマン先生、1拍目から弾かないで、前の拍のウラからシンコペーションにして弾いてます。
たしか、楽譜はそうなっていないはず。でも良いんです。これぞ「エルマン節」なんです。 今時、こういう可愛い小品を弾いてくれる、プロのヴァイオリニストっていませんよね。
或る意味では、大変怖いかも知れません。プロを目指して所謂「英才教育」を受けた子など、小学校に入学する前に弾けていたと思います。易しい曲ですから、誰でも弾けます。素人ですら、兎に角弾くだけなら弾けます。そういう曲を大勢の前で弾くのは、間違えたらすぐにバレますから。 2曲目はこれまた泰西名曲、ドヴォルザークの「ユーモレスク」です。
N響の第1ヴァイオリンで30年弾き続けた鶴我裕子さんは、仕事ではやれ、マーラーだ、ブルックナーだ、ショスタコーヴィッチだ、バルトークだ、と難しいのを弾いておられたのに、著書「バイオリニストは肩が凝る」の中で、エルマンの「ユーモレスク」を聴くと、ホッとする、と書いています。プロですらそうなのか、と、何だかこちらもホッとしたことを思い出します。 ユーモレスク 変ト長調 Op. 101 No. 7 (ドヴォルザーク--編曲:アウグスト・ヴィルヘルミ) http://www.nicovideo.jp/watch/sm7897609 http://www.youtube.com/watch?v=20xtbVx8sn8 http://www.youtube.com/watch?v=MrdrXJ73Xa4
エルマンが来日した時、日比谷公会堂かどこかで、リサイタルがあり、アンコールでエルマンは、この「ユーモレスク」を弾いたそうで、それを実際に見て、聴いた人によると、今の若いヴァイオリニストだったら、照れちゃってこんなの弾きませんが、エルマンは、実に気持ちよさそうに楽しそうに弾いたそうです。
ベートーヴェン 「ト長調のメヌエット」 http://www.youtube.com/watch?v=TwjzTHF2jgw http://www.youtube.com/watch?v=iwE_40PrJ0c http://www.youtube.com/watch?v=n7tuuEzLvBg
お聴きになれば、「ああ、あれか。」と思われる筈です。
ここまでの曲、いずれも「ヴァイオリンが歌っ」ています。その「歌心」が、聴き手の心の琴線を震わせます。
以上は技術的には易しい曲ばかりです。このレコードは1958年にエルマンのアメリカデビュー50周年を記念して作られたとか。
エルマンの晩年ですが、Wikipediaで批判的な文章を書いている人物は「チゴイネルワイゼンに至っては、技術が衰えているため、難しいところは思い切りテンポを落として弾いている」という意味のことを書いていますが、私はそれはどうかな?と思います。
聴いて頂きましょう。 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン http://www.youtube.com/watch?v=eFtNt0d7KHo
ハイフェッツと比べたら、それは確かにテンポは遅いです。最後モルト・ヴィヴァーチェ。ハイフェッツは一番速いところでは、テンポ180近い。全盛期のハイフェッツと比較したら気の毒です。
岩城宏之さんの「棒振りのカフェテラス」という本に書いてありますが、ハイフェッツですら最晩年は、小品すら通して弾くことができず、編集でつないでいたそうですから。 エルマン先生は思いきり遅いですが、音質は乱れていないし、音を飛ばすこともない。
左手ピチカートもきちんと鳴らしている。曲の最後の最後ではアッチェレランドをかけて非常に高いポジションの音程が狂っていない。ただ、何度も出てくる、和音が三つ続くところで、あまりにテンポを落とすし、演りたい放題なので、これは伴奏者、ジョセフ・セイダー氏の健闘を讃えるべきでしょう。 最後です。
マスネー:歌劇「タイス」 - 第2幕 瞑想曲 http://www.youtube.com/watch?v=nYsSrhamhb0 http://www.youtube.com/watch?v=eL9xlJqd0zQ http://www.youtube.com/watch?v=eaonFKJKG7U
全体としてお分かり頂けたかと思いますが、エルマンの音は決して、刺激的に鳴らないのです。
録音が古いこととは無関係だと思います。奏者が常に「美しい音」をイメージいていなければ、ヴァイオリンのみならず、どんな楽器でも良い音が出せるようにはなりませんし、それを維持できない。 エルマン氏は、一生、理想の音を追い続けていたのかも知れません。 好き好きですが、このCDはお薦めです。とにかくエルマン聴いたこと無い、じゃ、問題外でっせ。 コメント
しばしば、言われることですが、昔のヴァイオリニストって、本当に音に個性があるのですよね。 音を聴いて、「あ、○○の音だ!」とすぐ分かるような音色や、歌い方の個性は、何故か技術の進歩と共に埋没してしまいます。 ゴセックの「ガヴォット」やドヴォルザークの「ユーモレスク」など、素人でも弾くだけなら弾ける曲でなおかつ、聴衆を魅了するということは、プロコフィエフやショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲で高度なテクニックで人を「驚かせる」よりも難しいことだと思います。 今の時代にエルマンを愛好して下さる方がいらっしゃって、とても嬉しく思いました。 投稿: JIRO | 2011.04.18 23:12 昨日、私もエルマンのジュビリーアルバムとクライスラー愛想曲集を買い、同じように、ガボットの快活さに舌を巻き、音の素晴らしさに酔っていました。そして、同じくWikipediaの分かったような解説に腹を立てていたところです。 こんなに素晴らしい小品集は他にないと思います。 投稿: kuma | 2011.04.16 23:57 http://jiro-dokudan.cocolog-nifty.com/jiro/2010/01/12018911967-566.html
|