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絆?共感? 犬はなぜ飼い主を守るのか――科学的な理由を探る
2017.08.26 Sat posted at 10:09 JST
https://www.cnn.co.jp/fringe/35103342.html
犬が飼い主を守る理由について、科学的見地から探ってみた
(CNN) 米メリーランド州ボルティモアで昨年の夏、火災が発生した家に閉じ込められた乳幼児の救出に入った消防士たちは信じがたい光景を目にした。
生後8カ月の女児は重いやけどを負っていたものの、生きていた。CNN提携局のWBALによると、不思議なことに、飼い犬のポロが女児の上に覆いかぶさった状態で発見されたという。これが女児の命を救うことにつながったようだった。ポロは火災が原因で死亡した。
2012年、コネティカット州では、犬が真夜中に両親を起こした。幼児期の娘の呼吸がとまったことを警告するようだった。その後、両親は赤ちゃんを蘇生させることに成功した。
こうした話題はメディアの見出しを飾るとともに、次のような疑問を投げかける。家庭の犬が人間の飼い主を守ろうとする動機は何なのだろうか。ペットが命を賭した行動へと駆り立てられる場合、その心や頭の中では何が起こっているのだろうか。
スイスのベルン大学獣医公衆衛生研究所で博士課程に所属するアニカ・フーバー氏によれば、犬は我々への共感を可能にする人間に似た感情を持ち、これに基づいて行動している可能性があるという。
実際、犬は人間に共感する能力を持つと示唆する研究もある。実験のひとつでは、共感能力と「あくびの伝染」の間に関連があることが判明。そばの人間があくびをしていると、犬もあくびをし始めた。
同研究ではこの現象について、「犬が基礎的な共感能力を持つことを示している可能性がある」と結論づけた。もっとも、単に疲労やストレスから犬があくびをしていたとも考えられるという。
米デューク大のブライアン・ヘア博士によれば、犬は人間との間に絆を作ることを学び、他の動物とは異なって一定程度まで「我々の心を読める」ようになったという。
犬が我々との間に絆を作る方法は、人間の親子が絆を形成する過程に若干似ている。この絆の存在は、「オキシトシン・ループ」として知られる生理現象を通じて確認されてきた。
赤ちゃんが親の目を見るとき、両者の体内ではホルモンが放出される。ヘア氏によれば、オキシトシンと呼ばれるこのホルモンにより我々は気分が良くなる。そこからオキシトシン・ループが生じ、赤ちゃんのことを守り、気に掛けようという思いが触発されるという。
人間と犬の間でも似たようなことが起きている。犬が飼い主の目を見るとき、飼い主のオキシトシン濃度は増大する。飼い主が犬の目を見ると、今度は犬のオキシトシン濃度が増えるという。
犬の脳が人間の声に反応するか確かめるため、MRI(磁気共鳴断層撮影装置)を使った研究も行われてきた。犬の脳の活動を示す画像を調べたところ、人間のポジティブな声を耳にした場合、脳の特定の部位が活性化していた。
別の研究では、人間の表情に表れるさまざまな感情の違いを犬が区別できることも示された。
フーバー氏が以前飼っていた犬は、同氏にストレスがかかる状況でのみ、飛びかかってきたり吠えたりするなど興奮した反応を示しているようだった。ストレスがかかっていない状況では、こうした行動は見せなかったという。
ただ、一部の飼い犬が命を賭して人間を守ろうとする本当の理由をめぐっては、依然として多くの未解決の疑問が残る。
例えばボルティモアの昨夏の住宅火災の場合、ポロが女児の命を救った理由は不明だ。ヘア氏は、ポロの行動を説明しうる科学的な答えは今のところ存在しないとの見方を示した。
同氏によれば、科学者は恐らく将来的に、共感能力以外の犬の複雑な能力についても研究を深めていくとみられる。「道徳的行動」のような、従来は人間に特有のものと考えられてきた能力が研究対象になる可能性もあるという。
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