2019年 10月 02日 アルゲリッチ・酒井茜 ピアノデュオ 秋の音楽シーズンの三日目は待望のアルゲリッチです。アルゲリッチは親日派ですね。二十年以上も続けている大分別府の音楽祭も、最近始まった広島の音楽祭も、同時に全国各地で行う演奏会も、毎年開かれています。ソロでの演奏は25年ぐらいやっていなくて、必ずほかの演奏家とのコラボレーションを行っています。あるときは、ヴァイオリンソナタ、あるときはチェロソナタ、ピアノ協奏曲、室内楽などです。 今回は、待望のアルゲリッチと酒井茜のピアノデュオで、プロコフィエフの「シンデレラ」とストラヴィンスキーの「火の鳥」です。会場も久しぶりのサントリーホール。地下鉄を二本乗り継いで行きます。30分ほど早く着いたので、開場までの時間六本木一丁目駅二隣接するビルのしたのコーヒーショップに入りました。注文するとお店で飲まれますか、お持ちかえりですかと訊かれました。お店で時間つぶしするために店内でと答えたとき、あ!そうか今日から消費税が違うのだと気づきました。ちなみにと訊くと、持ち帰りと店内飲食では6円違うそうです。しかし、ややっこしいですね。来年までの増税感を薄めるためだけの煩雑さで、レジを買えたり打ち込み時に区別したり、お店に多大な負担を与えています。
街の定食屋さんや家族経営のお店では、その煩雑さがいやでやめるところも続出しています。諸費税を乗せられない定食やさんなどのお店は、結局その分を負担しなければなりません。少ない売り上げから2%分、お代官様に取られるのです。黄門様ならなんと言うでしょう!
f0108399_11034604.jpg 広場には会場前のファンファーレが鳴っていました。開場自体は時間通りでしたが、ホールの中では、最後の音合わせをしているのでしょう。15分前まで内側のドアは開けられず、ホール内の通路に人は溢れかえりました。サントリーホールは、特に二階のホワイエが狭いのが難点ですね。待っていると、ひさしぶりに、O画伯とお会いしました。席もすぐそばでした。
f0108399_11035392.jpg ピアノの調律はようやく終わりに近づいています。響きは透明ですが、少し線が細い感じもしました。でも調律師とアルゲリッチでは、まったく音が違いますから参考にはなりません。対面のLB席には、パグ太郎さんとOrisukeさんが並んで座られていました。白いシャツのがっしりとした体格で、日焼けした顔が見えないのが、Orisukeさんです(爆)。
f0108399_11040002.jpg ゆったりとアルゲリッチさんと酒井さんが入場してきます。歩きは遅いですが、とても77歳とは思えません。最初の曲は連弾で、モーツァルトの4手のためのピアノソナタです。低音部をアルゲリッチさん、高音部を酒井茜さんが演奏します。この二人はしっかりと特徴が違い、スピード速く、切れ味のいいのが酒井さんで、鉈で断ち切るような凄い響きがアルゲリッチさんです。しかし、16歳の時のモーツァルトのお姉さんとの連弾を目的に書かれた曲には、アルゲリッチの特徴を活かすようなパートはなく、響きも弱く、物足りなさも感じました。 ところが、二曲目のプロコフィエフ・プレトニョフ編曲の二台のピアノのための組曲「シンデレラ」はまったく変わりました。この曲は、編曲者のプレトニョフとアルゲリッチとのSACDは私の部屋の音調整用の定番になっています。
f0108399_11204558.jpg 耳だこになっているほど、聞き込んでいる曲ですから、演奏の差はすぐにわかります。酒井茜とプレトニョフの差はやはり大きいです。力強さが違います。高域の切れは素晴らしいですが、低音部が活躍する右側のピアノはプレトニョフの様にはいきませんが、これはこれで素晴らしい演奏です。アルゲリッチ側は、先ほどのピアノと同じ楽器なのかと思うほど違う響きです。左手の破壊力は、77歳とは到底思えません。二台の響きが、CDより軽いのは、演奏者とホールの差だと思っていました。 それにしても、凄い演奏です。第九曲目の魔法が解けて、カボチャの馬車もすべてが崩壊していく様は、アルゲリッチしか演奏できないかもしれません。プレトニョフは指揮者として日本に良く来ています。アルゲリッチとスケジュールが合えば、ぜひ聴いてみたいですね。 休み時間にOrisukeさんが、右側のピアノは何でしょうかと訊いてきました。蓋が取ってあってわかりにくいからです。プログラムにはKAWAIの宣伝があったので、両方ともKawaiでは無いかと言われました。確かに、スタインウェイの低域と違う響きがしています。会場に戻ってよく見ると、右側のピアノもKawaiでした。高域の切れ味は素晴らしいのですが、低域の混沌とした響きがすっきりと整理されるのが違いますね。 休憩後は、ストラヴィンスキー自身の編曲になる、『春の祭典』でした。今回は、アルゲリッチが右側のピアノで指使いがよく見えます。彼女の奏法はどんなに大音量でも、指は延びたままです。ホロヴィッツと同じですね。指を曲げて打ち下ろすのではなく、指の腹でコントロールしているのです。驚きました。音量の差は、タッチするスピードの差なのでしょうか?ストラヴィンスキー特有の不協和音がオーケストラよりピアノ版の方がより鮮明に解ります。ピアノからオーケストラのいろいろな音色が聞こえてきます。
堪能しました。長い曲なのですが、あっという間に終わりました。会場中割れんばかりの拍手です。何回か呼び出された後、二曲のアンコールを連弾で演奏しました。ラベルのマ・メール・ロアから第五曲と第三曲めからでした。どちらも柔らかくストラヴィンスキーとは対極の音楽です。大満足の演奏会でした。
演奏会終了後、近くのレストランで、大満足の感想会を行いました。演奏会を批評するような発言は勿論なく、三人とも世紀の名演を見た満足感で一杯でした。アルゲリッチはどこまで行くのでしょうか?彼女の演奏に毎年接することが出来る、日本の幸せも感じました。
Orisukeさんは、明日のあさから仕事で、これから車で三時間以上走って帰られるそうです。そんなスケジュールの中を良く来られたと驚き、感心しましたが、今日の演奏を経験できたのは、一生の宝物ですね。 https://tannoy.exblog.jp/30810575/
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