<■153行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可> 『レナー弦楽四重奏団の芸術』戦前のロマンティック・スタイルを満喫!(21枚組) https://tower.jp/article/feature_item/2020/10/30/1111 第一次世界大戦が終結すると、当時の状況から逃れようと決意したブダペスト歌劇場の4人の奏者は、弦楽四重奏曲の楽譜をトランクに詰めて田舎の村へと旅立ちました。彼らは、独自のスタイルと音色、アンサンブルと洞察力、個性と卓越性を備えた四重奏団へと発展するために、猛練習と猛勉強を重ねました。こうしてレナー弦楽四重奏団は1919年にブダペストでデビューします。1920年のウィーン・デビューは絶賛され、演奏を聴いていたモーリス・ラヴェルからパリに招かれ、パリでも大成功を収めました。1922年にはイタリアへツアーしたあとイギリスで公演を行い、一躍ロンドンの人気者となりました。彼らの人気に目をつけたイギリス・コロムビア社は、同年11月13日、ラッパ吹込みでハイドンのセレナード(現在は偽作とされる)をSPの片面盤に録音。これが彼らのデビュー盤となりました。
ロンドンの聴衆、特にウィグモア・ホールの人気者となった彼らは、解散する1939年までほぼ毎年ロンドンを訪れ、演奏会を開くとともにレコーディングも行いました。その間、1925年にはマンチェスターでベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を6晩にわたって演奏し、1927年にはベートーヴェン没後100年を記念してクイーンズホールでも演奏しました。1930年頃からはブッシュ弦楽四重奏団やブダペスト弦楽四重奏団といったライヴァルが出現し、とくに愛好家の間でのブッシュの人気はレナーを凌ぐほどとなりましたが、レコードの分野での人気はレナーが一番でした。1935年には室内楽のSPレコードとしては破格の通算売上100万枚を達成し、コロムビア社からリーダーのレナーにゴールド・ディスクが贈られました。 レナー弦楽四重奏団は1929年に北米ツアーを行いましたが、そこでは評価さませんでした。1939年、四重奏団を解散した後、リーダーのレナーは渡米。そこで新しい四重奏団を始めましたが、それは成功せず、1946年で活動の終止符を打ちました。この頃になるとレナーのロマンティックなスタイルは時代遅れとみなされました。レナーはハンガリーの名教師フーバイの弟子であり、幅広いヴィブラートを特長としていました。このことはレナー弦楽四重奏団の演奏を聴けば明らかですが、それは彼らの暖かい音の秘密でもあり、グローブ音楽辞典は「豊かでまろやかな音色と4つの楽器の驚くほど均質なブレンドが組み合わされている」と評したほどでした。彼らの特徴であるポルタメント奏法(音のずり上げ、ずり下げ)の使用は演奏される作曲家によって異なり、モーツァルトやベートーヴェンでは比較的控えめでした。 レナー弦楽四重奏団の録音がこのようなBOXで21枚も集成されるのは初めてで極めて貴重な一組と言えます。上記したように演奏会でロンドンの聴衆を魅了したベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を始め、甘美な演奏で評判だったハイドン、モーツァルト、ブラームスの弦楽四重奏曲、そして片面約4分というSPレコードの収録時間に合わせて録音して人気を集めたトロイメライやアンダンテ・カンタービレなどのサロン名曲の数々まで、ぎっしりと収録されています。共演物ではオーボエのグーセンスと組んだモーツァルトのオーボエ四重奏曲が今日においても同曲CD中ベストを争う名演。クラリネットのドレイパーと組んだブラームスのクラリネット五重奏曲も独特の深いロマンが魅力的です。 (タワーレコード 商品本部 板倉重雄) 【曲目】 [CD1] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 Op. 18-1 録音: 1928年10月25&27日 弦楽四重奏曲 第2番 ト長調 Op. 18-2 録音:1926年9月28日&10月28日 弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op. 18-3 録音:1926年12月2日 [CD2] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第4番 ハ短調 Op. 18-4 録音:1935年3月11日 弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 Op. 18-5 録音:1936年7月9日 [CD3] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 Op. 18-6 録音:1926年11月8&21日 弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 Op. 59-1 「ラズモフスキー第1番」 録音:1926年10月29日&1927年3月2日 [CD4] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調 Op. 59-2 「ラズモフスキー第2番」 録音:1938年9月15日 :弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 Op. 59-3 「ラズモフスキー第3番」 録音:1926年11月7,8&29日 [CD5] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op. 74 「ハープ」 録音:1932年3月10&14日 弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op. 95 「セリオーソ」 録音:1926年11月4&5日 [CD6] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op. 127 録音:1926年11月23&29日 弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op. 131 録音:1932年3月2&3日 [CD7] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 Op. 132 録音:1935年3月13,14&19日 大フーガ 変ロ長調 Op. 133 録音:1930年2月19日 [CD8] ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op. 130 録音:1926年12月3日&1927年1月17日 弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op. 135 録音:1936年3月6日 [CD9] ブラームス 弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 Op. 51-1 録音:1933年2月22&27日 :弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op. 51-2 録音:1931年8月11&13日 [CD10] ブラームス 弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op. 67 録音:1929年3月4&5日 クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op. 115 録音:1928年11月7&10日 チャールズ・ドレイパー (クラリネット) [CD11] モーツァルト 弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 KV 387 録音:1930年1月20&21日 弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調 KV 421 録音:1926年3月27&29日 [CD12] モーツァルト 弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 KV 458 「狩」 録音:1928年11月3日 弦楽四重奏曲 第19番 ハ長調 KV 465 「不協和音」 録音:1923年11月7&8日 [CD13] モーツァルト セレナーデ 第13番 ト長調 KV 525 「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」 録音:1929年3月6日 ディヴェルティメント 第17番 ニ長調 KV 334 録音:1933年3月1日 オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K. 370 録音:1939年2月16日 デニス&オーブリー・ブレイン (ホルン) レオン・グーセンス (オーボエ) [CD14] ハイドン 弦楽四重奏曲 第62番 ハ長調 Op. 76-3, Hob. III: 77 「皇帝」 録音:1935年1月10日 :弦楽四重奏曲 第61番 ニ短調 Op. 76-2, Hob. III: 76 「五度」* 録音:1935年1月10日 弦楽四重奏曲 第64番 ニ長調 Op. 76-5 Hob. III: 79 録音:1924年2月22&23日 [CD15] ハイドン 弦楽四重奏曲番 ヘ長調 op. 3-5 Hob. III: 17 「セレナーデ」 録音:1924年10月30日 弦楽四重奏曲番 ヘ長調 op. 3-5 Hob. III: 17 「セレナーデ」 録音:1928年12月7日 弦楽四重奏曲 第53番 ニ長調 Op. 64-5 Hob. III: 63 「ひばり」 録音:1928年3月15日 弦楽四重奏曲 第64番 ニ長調 Op. 76-5 Hob. III: 79 録音:1928年11月7&10日 [CD16] シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D. 803 Op. 166 録音:1928年3月23日 チャールズ・ドレイパー (クラリネット), オーブリー・ブレイン (ホルン), クロード・ホブデイ (ダブルベース), アーネスト・ヒンチクリフ (バスーン) レナー弦楽四重奏団 シューマン:弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op. 41-3 録音:1936年7月6&13日 [CD17] モーツァルト 弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 KV 516 録音:1930年3月2日 弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 KV 458 「狩」 録音:1924年10月23日 ルイス・ドリヴェイラ (第2ヴィオラ) レナー弦楽四重奏団 [CD18] ヴォルザーク 弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op. 51 録音:1938年9月20日&11月28日 ピアノ五重奏曲 第2番 イ長調 Op. 81 録音:1930年10月1&2日 オルガ・ローザー=レバート (ピアノ) レナー弦楽四重奏団 [CD19] ベートーヴェン 七重奏曲番 変ホ長調 Op. 20 録音:1930年3月4日 チャールズ・ドレイパー (クラリネット), オーブリー・ブレイン (ホルン), クロード・ホブデイ (ダブルベース), アーネスト・ヒンチクリフ (バスーン) レナー弦楽四重奏団 弦楽五重奏曲 ハ長調 op. 29 録音:1936年7月15日 ウィリアム・プリムローズ (第2ヴィオラ) レナー弦楽四重奏団 [CD20] アンコール・アルバムVol.1 1. チャイコフスキー: 弦楽四重奏曲第1番ニ長調op.11〜第2楽章 2. シューマン: 弦楽四重奏曲第3番イ長調op.41-3〜第3楽章 3. メンデルスゾーン: 弦楽四重奏曲第4番ホ短調op.44-2〜第2楽章 スケルツォ 4. ハイドン: 弦楽四重奏曲ヘ長調op.3-5「セレナード」〜第2楽章 5. モーツァルト: 弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421〜第4楽章 6. モーツァルト: 弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」〜第2楽章 7. ドヴォルザーク: 弦楽四重奏曲ヘ長調op.96「アメリカ」〜第2楽章 8. ブラームス: 弦楽四重奏曲第2番イ短調op.51-2〜第2楽章 9. ドビュッシー: 弦楽四重奏曲ト短調op.10〜第3楽章 10. ハイドン: 弦楽四重奏曲ニ長調op.64-5「ひばり」〜第2楽章 11. ハイドン: 弦楽四重奏曲ニ長調op.64-5「ひばり」〜第4楽章 フィナーレ 12. シューベルト: 弦楽四重奏曲第14番ニ短調D.810「死と乙女」〜第2楽章 13. ボロディン: 弦楽四重奏曲第2番ニ長調〜第3楽章「夜想曲」 録音:1922-1935年 [CD21] アンコール・アルバムVol.2 1. バッハ: 管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068〜アリア 2. バッハ: トッカータ,アダージョとフーガ ハ長調BWV564〜アダージョ 3. シューマン: トロイメライ 4. チャイコフスキー: 舟歌 5. シューベルト: 楽興の時第3番ヘ短調op.94-3 6. シューベルト: ピアノ・ソナタ第12番ト長調D.894〜メヌエット 7. シューベルト: 楽興の時第2番変イ長調op.94-2 8. ショパン: 前奏曲第6番ロ短調op.28-6 9. ショパン: 前奏曲第4番ホ短調op.28-4 10. ショパン: 練習曲第7番ハ長調op.10-7 11. ディッタースドルフ: 弦楽四重奏曲第1番ニ長調〜第3楽章 12. グルック/ブラームス: ガヴォット 13. ショパン: 練習曲第19番嬰ハ短調op.25-7 14. メンデルスゾーン: 弦楽四重奏曲第1番変ホ長調op.12〜第2楽章「カンツォネッタ」 15. メンデルスゾーン: 弦楽四重奏曲第4番ホ短調op.44-2〜第2楽章 スケルツォ 16. ヴォルフ: イタリアのセレナード 録音:1922-1935年 レナー弦楽四重奏団 [イェヌー・レーネル,ヨージェフ・スミロヴィッツ(ヴァイオリン),シャーンドル・ロート(ヴィオラ), イムレ・ハルトマン(チェロ)] https://tower.jp/article/feature_item/2020/10/30/1111
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