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http://www.tibethouse.jp/news_release/2019/190310_Statement_JP_20190310.html
チベット民族平和蜂起60周年記念日におけるロブサン・センゲ主席大臣の声明
2019年3月10日
中国人民解放軍は、列を成してチベットの地に初めて足を踏み入れたとき、チベットとその人々に「平和と繁栄」をもたらす「道」を築くと約束しました。しかし、その「道」が築かれた途端、銃を手にした人民解放軍の兵士が戦車で次々となだれ込み、チベット高原を占拠しました。
1959年、60年前の本日、チベット本土に暮らすチベット人たちは、チベットを占拠する中国軍に対し、立ち上がりました。拳を頭上高く掲げた勇敢なチベット人たちは、スノーランドはチベットの土地であると主張して、デモ行進を行いました。チベットはチベット人のものだと、声高く訴え、一致団結し、私たちチベット人の導師であり最も敬愛する指導者であるダライ・ラマ法王14世の御身をお守りしました。
過去60年にわたって、北京の中国政府はチベット人を激しく弾圧し、基本的人権を否定して、チベットの言語、文化、独自のアイデンティティ、宗教を消し去ろうと組織的な活動を続けてきました。中国はチベットの文明をこの地球上から抹消しようと手を尽くしてきたのです。
ヒューマンライツ・ウォッチの今年の年次報告書では、中国当局が「全国規模の防犯運動」の名のもとに、ダライ・ラマ法王に少しでも傾倒する疑いのある者がいれば、その地域の住民がその者を告発することを奨励していると報告されています。
さらに、近年では人権保護活動に対する弾圧が激化しています。言語保護活動家のタシ・ワンチュク氏は、中国の刑務所に懲役5年の刑で現在も服役中です。犯したとされる罪は、チベット人の子どもたちのために、チベット文化と言語の権利を提唱していたことのみです。これらの権利は中国憲法で保障されているはずです。ところが中国政府は最近では、チベット人の子どもたちに地域の僧院で行われる非公式のチベット語講座に出席することさえも禁じました。
世界規模の監視ネットワーク管理をもくろむ中国は、その手始めにチベットをハイテク監視システムの試験地区に利用しています。中国共産党は「グリッド監視システムによる社会管理」を導入して電子機器と監視員を配置し、隅々まで徹底した管理体制を敷いています。2008年からは市街地や郊外のあらゆる主要道路のほか、チベット高原の僻地にまで、バリケードや検問所が設置されています。チベット自治区では、平均でチベット人20人に対しひとり以上の担当官が政府から配置されています。こうした政策の結果、息子が父親を、娘が母親を、兄弟同士で監視しあうような悲惨な状況が起こっています。
「世界の第三極」としても知られるチベット高原には、北極と南極を除いて世界最大の氷河があり、アジア最大の河川群の水源として、数十億人の暮らしを支えています。そのため、チベット高原で気温が上昇するとアジアで数百万人の生活が危機にさらされるほか、世界中の気候変動に影響が及びます。中国は誤った環境政策のもと、資源の豊富なチベット高原で鉱業とダム建設を大規模に展開し、事態をさらに悪化させています。
チベットの土地や住民に対する弾圧はあらゆる方面から行われてきました。200万人を超えるチベットの農民や、特に遊牧民たちが、祖先から受け継いだ土地を奪われ、大規模な居住区に移住を強いられました。そこには個人が伝統を重んじた尊厳をもった暮らしを送る余地はありません。
チベット本土で起こる厳しい抑圧政策に対し、2009年以降、153名のチベット人が焼身抗議を行いました。一番最近の焼身抗議は、2018年11月4日に起こった、ドポという23歳の青年によるものでした。焼身抗議者の大半は、チベットの自由の回復と、ダライ・ラマ法王のチベットご帰還を求めていました。
フリーダムハウスが発表した2019年の報告書では、チベットは4年連続で、シリアに次いで最も不自由な国に挙げられています。国境なき記者団は「報道の自由が組織的に侵害されていることに怒りを覚える」と表明しました。ジャーナリストがチベットに入るのは北朝鮮に入ることより難しいというのです。
世界中に暮らす私たちチベット人は、チベットの歴史の中でも最も暗い時代を体験していますが、あらゆる障害を乗り越えて、多くのものを共に勝ち得てきました。これまでの60年は、希望を忘れず、屈することなく抵抗する、そうした旅路でした。
1950年代の初頭より、中国による弾圧に対し、チベット人たちは、確固たる姿勢できわめて平和的に抵抗運動を行ってきました。1959年3月のチベット民族平和蜂起、獄中や強制収容所での勇敢な抵抗運動を行った1960年代と1970年代、大規模デモを行った1980年代。チベット人たちは一致団結して、権利と自由、正義を求めて闘い続けてきました。
2008年には、新しい世代のチベット人たちが中国の占拠に対してチベット全土で蜂起し、自由と尊厳を求めるチベット人たちの揺るぎない勇気を世界中に示しました。彼らはこう宣言しました。「我々の声を抑えることはできない。我々の活動を止めることはできない」この確固たる抵抗運動は続いていきます。
亡命したチベット人たちも同様に、チベット人社会を立て直すだけにとどまらず、コミュニティは発展し繁栄するまでになりました。私たちの祖父母の世代がインドに60年前に到着したときには、明日どうなるのかもわからない状況でした。しかし、ダライ・ラマ法王のご指導のもと、チベット人たちは復興に尽力しました。土を掘り、ひとつひとつ煉瓦を積み、家を建て、学校を作り、僧院、尼僧院、居住区を建設し、家庭が集まって社会を築き、トウモロコシ畑に希望の種を蒔きました。伝統的な敷物を織る技術を発展させながら、子どもたちのためにより良い未来を敷いていきました。
こうして造り上げた施設や社会で、私たちはチベット人としての言語、文化、精神的伝統、そして私たちの最も大切なアイデンティティを復興させました。私たちには奥深い歴史、伝統、思想、芸術があり、犠牲者としての物語を、逆境に屈しない者たちの物語に変えることができました。私たちの主張は真実であり、また私たちは様々なプロジェクトを実現し、成功させる実績を数十年にわたって積み重ね、世界中の支援者や支援団体から大きな評価を勝ち得てきました。
ダライ・ラマ法王のご指導のもと、中央チベット政権は亡命先の社会で、法治主義、男女平等主義、普通選挙権に基づく民主主義を発展させました。2011年、ダライ・ラマ法王は、その政治的指導者の立場を、チベット人が民主的に選出した指導者に委譲されました。今日、中央チベット政権は世界40か国に広がるチベット人社会を代表する組織となり、13か国に置かれたチベット代表事務所がその連携の役割を担っています。
中央チベット政権の任務として、チベット人居住区71カ所、僧院・尼僧院276カ所を統括するほか、68校の学校施設ではおよそ2万人が学び、南アジア、東南アジアの大半の国々より高い識字率を誇り、病院、診療所、老人施設も管理しています。すべて、インド、ネパール、ブータンに暮らす亡命チベット人たちのニーズに応える施設です。
私たちの成功は、地域社会だけに留まってはいません。日本では、超党派議員90名から成る日本チベット国会議員連盟が結成されました。チェコで結成されたチベットのための国会議員団は、ヨーロッパ大陸最大の国会議員団で、上院、下院から合わせて50名以上の議員で結成されています。40か国を超える国々で、国の支援グループが設立され、54か国でチベット支援団体が活動を行っています。
2018年の国連人権理事会では、加盟国のなかでも強大な影響力のある国々が、中国に対し、チベットでの人権侵害を中止するよう要請しました。オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカは、中国の第3会期の普遍的定期審査のなかでチベットへの支持を表明し、私たちは大変感銘を受けています。
もう一つ特筆すべきこととして、2018年12月、アメリカは、「チベット相互入国法」を可決し、前例のない一歩に踏み切りました。この法律は、中国当局がアメリカ政府高官やアメリカ人報道関係者のチベット立ち入りを禁止した場合、中国当局者の訪米を拒否するというものです。また、ドナルド・トランプ大統領は「アジア再保障イニシアチブ法案」を発効させ、チベット支援を強化しました。これはチベットの文化、教育、環境の保護と発展に対するアメリカの経済的支援を保障するものです。
中国政府が「協力」や「対話」などという言葉を使うときはリップサービスであると私たちはよく知っています。「世界平和は協働により実現が可能である」ということが中国の真意であるなら、ダライ・ラマ法王の代表団との対話を再開すべきです。何度も表明していますが、私たちは中道のアプローチに基づいてチベット問題を対話により解決する用意は整っています。
中国政府は、チベットで60年続く抑圧を終わらせるどころか、「0と100政策」を打ち出しました。この新しい政策では、国際メディアと亡命チベット人からの情報がチベット本土に流入するのをゼロにし、チベットに関する公式ニュースの100%を中国政府が管理し諸外国や亡命チベット人に普及させる、というものです。
中国政府はチベット問題が時間とともにやがて風化していくと考えてきました。しかし、私たちは50年以上にわたるあらゆる経験から、その逆の現象が起こっていると考えます。チベット本土で暮らす若い世代のチベット人たちは、抑圧と抵抗を経験していますが、一方で亡命先の地で暮らす若いチベット人たちは、自由と民主主義を経験しています。チベット本土のチベット人たちと亡命社会のチベット人たちは、共に協力して、真実と正義を求めようとしています。この新しい世代のチベット人たちは、チベット人の独自のアイデンティティと尊厳を守ろうと行動しています。また、その活動のバトンを次の走者に、チベット問題が解決するまでつないでいこうとしています。結局は、チベット人が自分たちやチベットの運命を決めるのは、チベット人自らのためなのです。
60年にわたって私たちチベット人を支援してくださった各国の皆様に謝意を伝えるために、2018年を「感謝の年」とし、「サンキュー・インド」にはじまる謝恩プログラムを、新旧のチベット支援者の皆さまのために各国で開催し、「サンキュー・アメリカ」で締めくくりました。インドをはじめ、世界中の親愛なる友人の皆さまに、ここに再度、謹んでお礼申し上げます。
チベットの悲劇を考えると、すべきことがまだ山積していることを思い知らされます。チベット占拠とチベット人弾圧は60年にもわたって続いています。そこで、内閣(カシャック)は、チベットの自由を求める活動を前進させるために、今年を「行動の年」とすることを、本日ここに宣言します。世界中の自由を愛する皆様に、チベット本土での弾圧を終わらせ、正義のために闘うことを呼び掛けたいと思います。各地のチベット人の皆様、正義のために行動を続けましょう。チベット本土で自由に同胞たちと集えるよう、屈しない姿勢を強くしていきましょう。ダライ・ラマ法王14世に、本来住まわれるべきポタラ宮へお戻りいただけるよう、行動していきましょう。
ダライ・ラマ法王万歳!チベット万歳!
(翻訳:植林秀美)
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