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この稿では政治的な内容はなるべく避けたいと思っているのだが、今回は韓国社会を揺さぶり続けた大統領の弾劾宣告について書いてみることにする。天地がひっくり返るほどの事件であったからだ。写真は朴槿恵氏の私邸への帰宅を伝える韓国の報道。
<コラム>韓国の天地がひっくり返った弾劾宣告、憲法裁判所の判決文に衝撃を受けた
http://www.recordchina.co.jp/b172044-s116-c10.html
2017年3月13日(月) 19時30分
この稿では政治的な内容はなるべく避けたいと思っているのだが、今回は韓国社会を揺さぶり続けた大統領の弾劾宣告について書いてみることにする。天地がひっくり返るほどの事件であったからだ。
2016年10月に崔順実(チェ・スンシル)ゲートが明るみに出て、12月9日には朴槿恵(パク・クネ)大統領に対する弾劾訴追案が国会で可決された。それから3カ月がたった17年3月10日、韓国の憲法裁判所は大統領・朴槿恵氏に罷免を言い渡した。
昨年10月から毎週土曜日に行われた「ろうそくデモ(チョップルシウィ)」は、大統領の即刻退陣を要求してきた。一方「太極旗(テグッキ)デモ」といって太極旗(韓国国旗)を掲げながら弾劾反対を叫んでデモしてきた連中がいる。ろうそくデモには延べ数百万人ともいわれる人々が参加してきた。一方の太極旗デモの方は今年に入って急速にその参加者を増やし、ろうそくデモに負けないくらいの数を動員するようになっていた。韓国が完全に真っ二つに割れていた時期とも言える。この対立が、憲法裁判所の弾劾妥当との宣告によって一応収まる様相となったわけである。
朴槿恵氏はなぜ弾劾の訴追を受けることになったのか。
ニュースなどを通してもうご存じかと思われるが、簡単にそのいきさつを書いてみよう。20代以来の友人・崔順実がすべての原因だと言ってもいいだろうと思う。あるいはこうも言えるかもしれない。大統領に選ばれながらその権力を崔順実のために使い過ぎたからだと。例えば崔順実の娘が名門・梨花(イファ)女子大へ入学するのに、大統領の権限を振りかざして不正入学させたとか、崔順実が立ち上げた財団を生かすためにサムスンなど大企業に無理やり融資を求めたなど、朴氏の容疑は多種多様にわたっているが、3月10日の憲法裁判所の判決文で注目されるのは次の点だ。
朴槿恵氏が数度にわたる対国民談話で言及していた「検察の取り調べにも応じるし特検(特別検察官)チームの取り調べにも応じる。憲法裁判所への出廷にも応じるし青瓦台(韓国大統領府)の捜索も容認する」としていた自分の言葉とは裏腹に、それらすべてに対して「反対の行動」、つまり何にも応じず、呼ばれても無視するの一点張りだったことが、憲法裁判所の判決で相当に重視されていた。
大統領という職にある人間は、検察に呼ばれてもすぐに応じなくてもよいような特権が保障されており、また特検チームの取り調べにも応じたくなければ黙っていても罪にはならないといったような法があるらしいのだが、それをかさに着てすべての捜査に対してこれを無視し、さらにはうその発言をしながら諸々の容疑を否定しようとしてあくせくしていたことを憲法裁判所の裁判官らはしっかりと見ており、法理的な部分もさることながら、こうした一見ささいな部分を取り上げて判決文にしたためていたことが筆者の目には驚きであり衝撃であった。多くの市民もあの判決文の簡潔でありながら理路整然とした内容に驚きの念を抱いたのではないか。
朴氏は罷免の判決が言い渡された3月10日午前11時21分をもって即刻大統領の地位を剥奪されることになった。年金など大統領をやめた後の特典の99%を失うことになってしまった。
弾劾された大統領の悲惨さをひしひしと感じていることだろう。青瓦台からすぐに出て行かないといけないのだが、この稿を書いている3月11日にもまだ青瓦台にとどまっているらしい。帰るべき自宅の水道やガス、オンドル(床暖房システム)などが工事しないと使えない状態にあるからというのが言い分らしい。最後まで国政壟断(ろうだん)をやってのけている格好だ。いずれにしても近く青瓦台を出て行くことになるだろうけれど、これほどの惨めな最後ってあるだろうか。かわいそうな気分にもなるが、しかしやはりそれだけのことをやってきたわけなので、これは仕方のないことだと言うしかないだろう。父親の朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領も大統領任期の途中に凶弾に倒れてしまったのだが、実の娘の朴槿恵氏も任期途中での惨めな下車となった。不思議な巡り合わせを感じてやまない。
■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。
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