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米国がアフガンに作った真空にロシアが進出
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8812
2017年2月8日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
パキスタンのジャーナリスト、アーメド・ラシッドが、1月13日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載のコラムで、米国がアフガンに作った真空にロシアが進出してきており、アフガン自身の混沌と相俟って、地域のパワーバランスを変えることになり得る、と指摘しています。要旨、次の通り。
ソ連は、1989年にアフガンと同地域から撤退したが、今、その立場を再建しようとしている。米国のアフガン政策が手詰まりになる中、ロシアは、米国及びNATOのアフガン残留軍について、批判的な声明を出している。ロシアの外交官はアフガンの政治家との関係を築き、中国、イラン、パキスタンなどの近隣国にすり寄っている。最も重要な点は、ロシアはタリバンと対話していることである。その目的は、米国の地域における影響力を奪い、米国が失敗してきたアフガン政府とタリバンの間の和平プロセスを促すことだろう。
12月に、ロシアはパキスタン、中国と会議をし、アフガンからの中央アジアへのテロの脅威、タリバンがどのようにISISとの対抗に使えるか、アフガンの長期にわたる戦争をどう終わらせるか、議論した。米国は、最近のシリアに関するロシア主導の会議と同様、排除された。アフガン政府も招かれなかった。アフガン政府は会議を批判したが、タリバンは自分たちが今や軍事的・政治的力として認められたとして会議を歓迎した。明らかに、ロシアとタリバンの接近が示唆される。
依然として米国はアフガンの最大の援助国だが、過去1年、オバマはアフガンにほとんど関心を示さず、和平対話を促進する国務省の試みへの支援もしなかった。
アフガンは混沌としている。タリバンは軍事的に多くの成果を上げ、政府は内紛で麻痺し、経済は悪化している。トランプが米国の援助を維持したとしても、アフガン政府は長く存続できないかもしれない。一方、イラン、パキスタン、中央アジアの近隣諸国は、タリバンとの秘密の対話を進めている。
そして、米国が残した真空にロシアが入ってきている。ロシアは既に地域に多くの友人を持っている。中国、インド、イランは緊密な同盟国であり、パキスタンに接近している。ロシアがタリバンと友好的になることを、パキスタンもイランも歓迎しよう。中国も新シルクロード構想への莫大な投資を守るため地域の平和を欲しており、タリバンと折り合いをつけることを望むだろう。ロシアは現在、和平対話を促進する会議の開催について、最も強い立場にある。
ロシアは今日、ISISをロシアの影響下にある中央アジアに浸透し得る主敵と見ている。アフガンにおける混沌とロシアの動きは、中央アジア、南アジア全体の力の均衡を変化させ得る。今のところ、ロシアの地域における野心は止められそうもない。
出典:Ahmed Rashid,‘Moscow moves into the Afghanistan vacuum’(Financial Times, January 13, 2017)
https://www.ft.com/content/9317a845-553c-341e-9ae9-5928bb5956f0
ロシアがシリアのみならず、アフガニスタンでも影響力を保持しようとしていることを、この論説はよく描写しています。ロシアは親米のガニ政権は長持ちしないと見越して、タリバンとの関係を構築し、あるいはカルザイ政権の復帰を念頭に先を見据えた政策展開をしているのかもしれません。また、米国が困ることをして、それを取引材料にトランプ政権との関係強化を狙っているのかもしれません。動機はよく分かりませんが、事実として、ロシアがアフガン関係でそれなりの動きをしていることは念頭に置く必要があります。
■コストのかからない対米けん制策
1989年にソ連がアフガンから撤退した後、ソ連は共産主義者のナジブラ政権をカブールに残しましたが、ナジブラ政権は1992年に崩壊しました。ロシアがその経験上、ガニ政権も米国、NATO軍撤退後、それほど持たないと考えることはあり得ることです。ただ、ナジブラ政権を倒したのはタリバンであり、タリバンはソ連の宿敵であったしテロの脅威のもとにもなりますから、ロシアにとりタリバン政権が良いとは必ずしも言えないでしょう。あまりコストのかからない対米けん制策と考えているのかもしれません。
ロシア指導部は、ロシアのシリア介入を一つの成功体験と考えていると思われ、それがアフガンをめぐる介入にもつながっているように思われます。それにしても、ロシアは国力もないにもかかわらず、実に色々な局面で頑張る国であり、そういう意味では感心させられるところもあります。
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