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「大東亜」の呼び名は、真珠攻撃の後、1941年12月10日大本営政
府連絡会議は、
「今次戦争ノ呼称並ニ平戦時ノ分界時期ニ関スル件」
(一、今次ノ対米英戦争及今後情勢ノ推移ニ伴ヒ生起スルコトアルヘキ戦争ハ支那事変ヲモ含メ大東亜戦争ト呼称ス)
以後(12日、閣議決定)使われます。
閣議決定を受けて同日、内閣情報局は、
「今次の対米英戦は、支那事変をも含め大東亜戦争と呼称す、大東亜戦争と称するは、大東亜新秩序建設を目的とする戦争なることを意味するものにして、戦争地域を大東亜のみに限定する意味に非ず」
との声明を発表。
つまりアジアに攻め入っていた当初から使われていたわけではない。
しかも、呼称をめぐる議論では、海軍側から、主敵は米英で、主戦場は太平洋であるとの観点から
「太平洋戦争」、
「対米英戦争」、
他方、より政治的目的を明確にした「興亜戦争」
というように各種の案が出されたが、「支那事変」
(中国戦線)を含めることを考えると適当ではなく、さらにソ連が参戦した場合も考慮して、最終的に「大東亜戦争」が採用された。
「大東亜」という用語が、初めて使用されたのは、1940年7月26日第2次近衛文麿内閣が発足にあたって決定した「基本国策要綱」での、
「日満支ノ強固ナル結合ヲ根幹トスル大東亜ノ新秩序ヲ建設スルニアリ」との記述。
さらに、同年8月1日、松岡洋右外相は談話において、
「日満支をその一環とする大東亜共栄圏の確立」と、初めて「大東亜共栄圏」
という用語を使用。
しかし、この呼称が、戦争目的を自存自衛一本であると強調するもの、大東亜新秩序建設を加えた二本建てであると考えるもの、大東亜新秩序建設こそが戦争目的である理解しているものがあって、思想の統一を欠いており、
このような戦争目的の不統一が、「大東亜戦争」という用語の是非を焦点とするその後の戦争呼称をめぐる議論にも大きく影響を及ぼしたことは否定できません。
呼称の使用禁止
敗戦後も、1945(昭和20)年11月24日幣原喜重郎内閣が「大東亜戦争調査会官制」を公布したことから明らかなように、暫らくは「大東亜戦争」が使用されていた。
しかし、同年12月15日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、神道の国家からの分離、神道教義から軍国主義的、超国家主義的思想の抹殺、学校からの神道教育の排除を目的として、
「国家神道(神社神道)ニ対スル政府ノ後援、支持、保護、管理、布教ノ廃止ノ件」との覚書(いわゆる「神道指令」)を日本政府に対して発した。
そこでは、「『大東亜戦争』、『八紘一宇』ノ如キ言葉及日本語ニ於ケル意味カ国家神道、軍国主義、超国家主義ニ緊密ニ関連セル其他一切ノ言葉ヲ公文書ニ使用スル事ヲ禁ス、依テ直チニ之ヲ中止スヘシ」とされていた。
この覚書にしたがって、先に設置された「大東亜戦争調査会」は、1946年1月11日「戦争調査会」と改称され、官制条文中の「大東亜戦争」の語句もすべて「戦争」に改められた。
また、12月20日文部省は次官通達(官総第270号)により、管轄の学校、機関などに対して同覚書を伝達した。
ヒロヒト氏は、戦後初めての「お言葉」である1945年1月1日の「人間宣言」において、
「長キニ亘レル戦争」と発言している。
また、毎年8月の全国戦没者追悼式では、
明仁氏も含め、「先の大戦」を使用され、晩餐会等では、
「あの不幸な戦争」、
「不幸な一時期」
などの表現がなされている。
特定の呼称を使用しない点について、宮内庁は、
「その(人間宣言:引用者注)後も戦争名を頭に付けない表現を繰り返しているうちに定着した。特定の意図をもって○○戦争という言い方を避けているわけではない」と回答している。
一方、記者会見などにおいては、
「第二次世界大戦」という言い方をすることが多い。
内閣総理大臣などの演説や談話において、
「先の大戦」、
「過去の戦争」、
「過ぐる大戦」、
「第二次世界大戦」などが使用されている。
ちなみに防衛省の公刊物(年史)においても、
「太平洋戦争」もしくは「第二次世界大戦」が使用されている。
社会的影響
和図書のタイトルについて、国会図書館(NDL-OPAC)の書誌検索(2010年4月7日時点)により分析した結果は、
「太平洋戦争」1576件、
「大東亜戦争」592件、
「15年戦争」287件、
「アジア・太平洋戦争」91件である。
しかし、最近5年間(2005年以降)は
、「太平洋戦争」323件、
「大東亜戦争」59件、
「15年戦争」76件(シリーズが43巻含まれているため多い)、
95年以降の呼称である「アジア・太平洋戦争」47件というように、
「アジア・太平洋戦争」が増えつつある。
安倍首相の見解
大東亜戦争の定義に関する質問主意書」
(提出者:鈴木宗男、平成18年11月30日提出、質問第197号)
及び「内閣衆質165号第197号」
(内閣総理大臣安倍晋三、平成18年12月8日)、
「大東亜戦争の定義に関する質問主意書」
(提出者:鈴木宗男、平成19年1月26日提出、質問第6号)
及び「内閣衆質166号第6号」
(内閣総理大臣安倍晋三、平成19年2月6日)によると、いずれも
質問:大東亜戦争の定義如何。大東亜戦争という呼称の法令上の根拠を明らかにされたい。
答弁:昭和16年12月12日の閣議において、
「今次ノ対米英戦争及今後情勢ノ推移
ニ伴ヒ生起スルコトアルヘキ戦争ハ支那事変ヲモ含メ大東亜戦争ト呼称
ス」とされているが、お尋ねの定義を定める法令はない。
質問:太平洋戦争の定義如何。太平洋戦争という呼称の法令上の根拠を明らかにされたい。太平洋戦争に1941年12月8日より前に行われていた日中間の戦争が含まれるか。
答弁:
「太平洋戦争」という用語は、在外公館等借入金の確認に関する法律(昭和24年法律第173号)等に使用されているが、お尋ねの定義を定める法令はなく、これに日中間の戦争状態が含まれるか否かは法令上定められていない。
とあり、
第一に、1941年12月12日の閣議において、
「支那事変ヲモ含メ大東亜戦争ト呼称ス」とされたが、
「大東亜戦争」、
「太平洋戦争」共に法令上の定義・根拠はないということ。
第二に、公文書における使用は、
「太平洋戦争」が一部法律で使用されているが、使用は文脈等によるものであり、「大東亜戦争」の使用を禁止するものではないということ。
だが、前述したように「大東亜戦争」呼称は使われていない。
呼称の問題点
1. 戦争目的の不統一。
2. 海軍側から「太平洋戦争」呼称の提案があり、日本の見解ではないのか?
3. 線引きはいつか?
4. 天皇が呼称する「太平洋戦争」との齟齬
5. 内閣総理大臣による「第二次世界大戦」との齟齬
などがある。
参考:
『日本における戦争呼称に関する問題の一考察』
庄司 潤一郎 防衛省防衛研究所 戦史研究センター長
http://www.nids.mod.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j13-3_3.pdf
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