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アレッポ陥落、真の勝者はイラン
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8663
2017年1月16日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
12月13日の英フィナンシャル・タイムズ紙で、ガードナー同紙コラムニストは、アレッポ陥落はイランとロシアの勝利で、トランプ政権は両国と交渉してアサドの退陣時期を勝ち取るべきだと述べています。主要点は次の通りです。
アレッポの陥落は、何よりもイランの勝利を意味する。そして、これによってロシアは国際社会でのグローバル・パワーに伸し上がった。ロシアとイランは同盟を組んでシリアにあたった。2011年に市民の反政府運動の弾圧に乗り出したアサド政権はその後三回にわたり崩壊の危機に直面したが、ロシアとイランはアサド政権の存立を支援してきた。
しかし、トランプ新政権の出方はロシア、イランで違う。トランプが国務長官に指名したティラーソンはプーチンと緊密な関係を持っている。しかし安保補佐官のフリンはイランに対する強硬姿勢を振り回している。
トランプとプーチンの関係は、公約通りイラン核合意を破棄するかどうかによって試される。合意は制裁解除と引き換えにウラン濃縮を規制しイランの核兵器保有の能力を凍結する唯一の方法であった。それがなければ中東は紛争に陥り、核開発競争に陥っていたであろう。
トランプの政策はツイート以上はわからない。しかしイスラム革命防衛隊等に対する「二次的制裁」の権限は残っている。これは米独自の制裁であるが金融などで大きな効果がある。そのこともありイランはアレッポの勝負を急いだ。
アレッポ陥落はイスラム革命防衛隊がヒズボラなどの勢力と連携して達成した。それによりイランが支援する領土はバグダッドからモスル、ベイルートまで連続して広がる領域になった。イランこそアレッポ戦争の真の勝者である。
サウジやトルコが今後ロシアやイランの方を向いてくるだろうという意味でもイランの勝利である。反政府勢力は未だ10万超の勢力を維持していると見られるが、都市部からは追放され、アサド・グループが政権を持つ限り彼らはISやアルカイダのような過激主義に向かうだろう。
かかる状況の中で米国が取るべき「分別のある」政策は、抑々核合意を欲してはいなかったイランの強硬派を勢いづかせるかどうかをよく考えて決めることだ。新たな制裁は必要ない。既にある十分な梃を使ってロシア、イランと交渉してアサド政権の退陣時期を勝ち取ることだ。その政策が「乱暴で無思慮な」ものになれば厳しく責任を問われることになるだろう。
出 典:David Gardner ‘Tehran is the real victor in the battle for Aleppo’(Financial Times, December 13, 2016)
https://www.ft.com/content/84efe470-c119-11e6-81c2-f57d90f6741a
上記論説は、透徹した見方です。アレッポの陥落の真の勝者はイランだと言います。ロシアとイランがこの時点で勝負に出てきたのはトランプ政権の発足の前に既成事実を作っておきたいとの判断があったと筆者は述べます。他の専門家も同様の分析をしています。
米国はロシア、イランと話し合いによってアサドの退陣時期を勝ち取るべきだと筆者は述べますが、それが可能かどうかわかりません。退陣というよりも権力共有を考えるということではないでしょうか。しかし、交渉によって問題を解決すべきというのは望ましい方向です。国連事務総長も代わるこの機会を良い方向に生かすよう努力すべきです。
シリア紛争は残酷な戦いです。多くの市民が犠牲になってきました。12月5日、アレッポへの人道支援のための安保理決議がロシアと中国の拒否権で否決されましたが、両国の責任は大きいです。なお報道によれば、反政府勢力とアサド側は市民の脱出につき合意をしましたが、秩序ある避難を確保すべきです。
シリアの紛争は多面的な戦いです。それには、ISとの戦い、アサドと反政府勢力の戦い、トルコとクルドの戦いがあり、それに外部勢力(ヒズボラ、米国、イラン、ロシア、サウジなど)が絡んでいます。アレッポはこのうちアサド(それを支援するロシア、イラン、ヒズボラ)と反政府勢力の戦いでした。アレッポはシリアの第一の都市であり、経済・金融のセンターでもあります。アサドにとり最も重要な勝利です。これでアサドはシリアの心臓部を確保しました。
■今後シリアはどうなるのか?
反政府勢力は支配地域であるイドリブ州に避難するようですが、今後同地域でアサド側との戦いが始まるとの見方もあります。反政府勢力も、トランプ新政権の出方待ちでしょう。
オバマにとりアレッポ陥落はもう一つの失敗となりました。もっと早い段階で行動していればこんなことにはならなかったかもしれません。2013年秋のオバマのレッドラインに係る不介入の判断は最初の節目でした。
今後のシリアはどうなるのでしょうか。先ずトランプ政権の発足を待つ必要があります。しかし統一された政策が出てくるかどうか覚束ありません。トランプの考え(ロシアとの緊密な関係)、フリン安保補佐官(イランに強硬)、マティス国防長官(厳しい軍人、イラン核合意の破棄には反対)など主要人物の意見は揃っていません。ティラーソン国務長官の中東政策も明らかではありません。
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