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寝不足でいつも「酩酊」状態の自衛隊員たち
対策を進める米陸軍、自衛隊は組織文化から改革を
2016.12.28(水) 部谷 直亮
自衛隊の寝不足問題は深刻だ。護衛艦「やまぎり」艦長の大谷三穂二佐も寝不足だという(資料写真、出所:Wikipedia)
国を問わず、そもそも軍事組織は寝不足になる傾向があるが、中でも日本の防衛省・自衛隊の睡眠不足問題は特にひどいものがある。
自衛隊の事実上の準機関紙「朝雲」も筆者の指摘に対して「睡眠不足は仕方がない」という根性論を述べており、睡眠不足の現状を認めている。
他方、米陸軍では睡眠不足問題に関する報告書の作成、各種施策、議論が始まっている。11月20日、米陸軍向け軍事誌「Army Times」は「陸軍には睡眠の問題がある。これを解決するための方法」と題する現役の陸軍少佐ジェフ・イェーガー氏らによる論説を掲載した。
これは自衛隊にとっても非常に参考になる内容なので、その内容を要約して紹介しよう。
(参考・関連記事)「自衛隊幹部はもっと寝よう 寝不足では中国に勝てない」
飲酒運転は許されず睡眠不足は許されるのか?
アルコールの摂取が心的能力を損ない、ひいては意思決定を損なうことはつとに知られている。軍事組織は、そうした常識的に理由に基づき、任務中の飲酒を禁止している。
しかし、飲酒と類似した損傷を与え、同様の影響をもたらす寝不足については褒め称え、それこそが強さだと偽る。我々は酩酊状態の兵士を危険な場所に送り込むことは許容しないのに、なぜ、睡眠不足の兵士を投入することを許すのか? 調査によると、睡眠を1日に5〜6時間しかとらないことの影響は、血中アルコール濃度0.08%に匹敵するという(筆者注:ウィスキー3杯もしくはビール瓶2本に匹敵)。
米陸軍における睡眠不足の文化は、入隊時の訓練から始まっている。最初の部隊研修から、そのほかの任務にあたる時を除いて休みなく動くことが続けられる。残念なことに、米陸軍は、十分な睡眠が、任務成果、意思決定、公衆衛生、体力、その他全てにおいて重要だということを理解していない。
米陸軍が2015年10月に発行した初の「軍健康報告( Health of the Force report)」によると、米国人の睡眠時間の平均以上を満たしているのは現役兵のわずか15%にすぎない。兵士の10%は睡眠障害と診断されている。米兵の約3分の1は、1晩につき5時間以下の睡眠であり、半数が医学的に重大な睡眠問題を持っている。
米陸軍はこうした問題を認識し、「3本の能力プログラム」という取り組みにで睡眠不足問題に対処しようとしている。睡眠を、身体活動と栄養に並ぶ重点領域と見なして啓発・普及する取り組みである。
だが、組織文化の壁が立ちふさがる可能性がある。6〜7月、現役および予備役221人にアンケートした結果、41%はこのプログラムに共感していたが、42%近くが「聞いたことがない」と答え、18%が反対していると述べた。
米陸軍は、飲酒運転を職業的殺人者と見なし、飲酒運転を防止する強力なプログラムや文化を持っている。他方で、少ない睡眠を自慢するたくさんの兵士がいる。これは明らかに間違っている。生死に関わる決定を下す組織である米陸軍において、寝不足が自慢するようなものではないのは自明だ。
これを解決するには、第1に、睡眠の大切さをもっと啓発するべきである。第2に、兵士に「睡眠トラッカー」の使用を義務付け、睡眠状況をチェックするべきだ。一部の兵士たちはこうした提案を笑い飛ばすだろうが、彼らは酔いどれ兵士が軍法の下でどのような扱いを受けるか思い起こすべきだ。第3は、睡眠科学を任務策定に組み込むと同時に、昇進時などの兵士の評価項目に睡眠時間を組み込むことである――。
米陸軍よりひどい自衛隊の睡眠不足
以上が米陸軍ジェフ・イェーガー少佐らによる主張の概要である。
こうした論考から、「米軍も寝不足であり、自衛隊同様に対策はまだ進んでいない」と捉えるのは大きな間違いだ。米陸軍は既に大々的な睡眠レベルの調査を行い、そのための施策「3本の能力プログラム」を実行に移している。そして、現役の少佐が事実上の準機関紙でこのような問題提起をしていることからして我が国のはるか先を行っていると言えよう。
対して自衛隊では、こうした調査もプログラムも一切なく、現職の自衛官が改善を求める声を挙げたり、議論することもない。あまつさえ、自衛隊における事実上の準機関紙「朝雲」は、「有事はもちろん、平時の訓練でも『時間が来たので寝ます』というわけにはいかないのは確かで、改善は至難だ」などと述べている。こうした無益で時代錯誤の思考がまかり通っているのが現在の自衛隊とその周辺である。
それを象徴するエピソードはいくらでもある。例えば、海上自衛隊初の女性艦長、大谷三穂二佐は日経新聞のインタビューに対して「昼夜なく報告を受け、ずっと寝不足・・・」であると答えている。大谷艦長は防大に入学した女性の一期生であり、周囲からの評価も極めて高く、女性艦長第一号であることから組織的に期待されている逸材であることは明らかである。その彼女をして、こうであることは、どのような組織であるかは分かる。
実際、海上自衛隊の艦艇部隊の幹部の睡眠時間が平均2時間であることは珍しくない。日米共同演習では、交代制と暖衣飽食の米海軍に海上自衛隊が徹夜と握り飯で対抗し、初戦で圧倒するものの、最終的にはヘトヘトになって敗北することがままあるという。また地方の基地では、キングカズでもない40代の佐官が夕方まで競技会に向けてサッカーの練習を行い、5時に仕事を再開し、部下に先に帰るのを許さないといった話も聞かれる。
日米共同演習等で交代制をとらず、やはり途中から壊滅していた陸上自衛隊は、近年、三交代制を導入した。しかし、平時や実働では導入されていないので、皮肉なことに演習時がもっとも寝られるということになってしまっている。
自衛隊が採るべき3つの対策
では、どうすれば良いのだろうか。ここでは筆者が考える3つの対策を提案したい。
第1に、ジェフ・イェーガー少佐の論説にあるような「睡眠トラッカー」の導入である。
この種の装置は5000円程度で良い性能が手に入るので、事務官を含めて25万人弱の防衛省・自衛隊に配布しても13億円以下で済む。来年度予算における10式戦車(8億円)の調達を2台減らすなり、ほとんど役に立たない予備自衛官制度の予算80億円から一部を転用するなりすれば、すぐできるはずである。
第2は、仕事を無限に増やすような非効率な組織文化の改革である。
自衛隊は仕事が無意味に丁寧すぎる部分がある。例えば、中央観閲式では、戦車・装甲車・高機動車をいちいち隊員が手で再塗装している。しかも、ムラができれば、塗装を剥がしてやり直す作業を繰り返し、最後には「つや消し」を施すというガンプラのようなことをやっている。観閲式のベンチやトイレなどの会場設営と撤収にも、約2カ月もかかっている。
こうした無意味な慣習は排すべきだし、自衛隊の広報イベントの実施や準備はできる限り民間に委託するなり縮小が筋だ。実戦に向けた取捨選択による業務改革が必要である。地元のお祭りの手伝いや面子のための演習のような優先順位の低い任務の縮小・廃止による負担軽減も実施すべきだろう。
第3は人事制度の改革である。自衛隊では長い幕僚(指揮官を支える幹部)時代を経てから指揮官になるため、指揮官になっても幕僚気質が抜けない人物がよく見受けられる。要するに、いつまで経っても「優秀な部下」のままだということである。こうした上司はしばしば自分にも部下にも厳しく、部隊の寝不足を加速する。指揮官を歴任するようなキャリアプランを設け、指揮官気質の指揮官を増やしていくべきだろう。
以上はあくまでも試論だが、これを機に、自衛隊員や防衛省職員が、誰かのメンツや自己満足のための無意味な仕事に追われることなく、良質な睡眠によって高いポテンシャルを発揮できるようにするための議論が高まることを祈念してやまない。
[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48768
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自衛隊幹部の不眠不休の働きで日本は窮地に?(写真はイメージ)
ジェームス・スタヴリディス元米海軍大将は、NATO軍司令官を2009年から4年間務めた優秀かつ高名な軍人である。その彼が、「睡眠は兵器」という論説を米国のネットメディア「ハフィントンポスト」に掲載した。
スタヴリディスは同論説で、軍人の睡眠こそがミサイルや戦闘機よりも重要な戦力であり、国益を守るために必須の要素だと主張し、不眠不休を尊ぶ米軍の組織文化を批判する。
実はこの不眠不休を尊ぶ文化は、自衛隊の方がよりひどい。しかも、今後の自衛隊の改革によって、さらに悪化する蓋然性が高いのである。その意味で、スタヴリディスの指摘は、日本の離島防衛を考える意味で非常に重要な意味を持つ。
まずはスタヴリディスの主張を簡単に紹介しよう。
睡眠不足で200人の民間人を虐殺した米軍
私は40年間を海軍士官として過ごしてきた。私は軍艦乗りだったので月のほとんどを海上で過ごしたが、その際は1日に18〜20時間働いて過ごしていた。士官の通常の責務以外にも活動中の部下たちに対してリーダーシップを発揮し、マネジメントを行い、皆をまとめあげねばならかったからである。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47074
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