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12月7日、ひとたび大統領に就任すれば、トランプ氏(写真)はイスラム国との戦いとその封じ込めは、必然的に、シリアでの複雑な戦争への介入を意味することを悟るだろう。ウィスコンシン州で8月撮影(2016年 ロイター/Eric Thayer)
コラム:シリア介入は必至、トランプ氏が迫られるIS対策転換
http://jp.reuters.com/article/column-trump-syria-is-idJPKBN13Y0AN
2016年 12月 10日 07:58 JST Mohamad Bazzi
[7日 ロイター] - 米大統領選に向けた運動期間中、ドナルド・トランプ氏は多くのテーマについて意見を変えた。だが、ある外交政策については一貫している。
シリアのアサド政権と戦っている反体制派に対する支援を終わりにしたい、ということだ。トランプ氏は、米国はシリア反体制派支援の代わりに、過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いに全力を注ぐべきだと主張している。
11月11日付の「ウォールストリート・ジャーナル」紙に掲載された、当選後初となるインタビューのなかで、トランプ氏は「シリアに関して、私は多くの人と反対の見解を持っていた」と語った。
「私はこう考えていた。君はシリアと戦っている、シリアはISIS(イスラム国の別名)と戦っている、そして、排除しなければならないのはISISである、ということだ。ロシアは現在、完全にシリアと協調している。そして、われわれのせいで力を付けつつあるイランも、シリアと協調している。今、われわれはシリアの反体制派を支援している。そしてこの反体制派の素姓については何も分からないのだ」
アサド政権と戦う反体制派(特に訓練と対戦車ミサイルの提供というCIAの秘密作戦により支援されているグループ)に対する支援を打ち切るという脅しの姿勢をトランプ氏が維持しているとしても、1月20日に大統領に就任すれば、まもなく対シリア政策に関して重要な試練に改めて直面することになろう。
米国はシリア領内における2つの軍事作戦を同時に支援している。1つはアサド政権に対する戦い、もう1つはイスラム国に対する戦いだ。
トランプ氏は、アサド政権に対する戦いを米国にとっての優先課題であると見なさないことを明らかにしている。だが、反体制グループの連合であるシリア民主軍(SDF)に対する米国防総省による支援・訓練プログラムについては、別個に続けるつもりなのだろうか。というのも、彼らは、イスラム国の自称「カリフ国家」の首都であるラッカをイスラム国から奪還するための地上攻勢の中心となっているからだ。
ラッカ奪還作戦は11月6日に開始された。約3万人の反体制派グループを動員してラッカを包囲し、あらゆる方角からの補給を絶ち、イスラム国に武器や戦闘員の補充を許さない作戦である。聖戦主義者たちをラッカから追い出すための戦闘には数カ月を要するだろう。誕生まもないトランプ政権のもとで攻勢が衰えるようであれば、イスラム国は、シリアおよびイラク、そして西側諸国への新たな攻撃を繰り出す安全な拠点を確保することになろう。
イラク第2の都市モスルをイスラム国の戦闘員から奪還するための待望の進攻作戦が10月半ばに開始されてからまもなく、米軍の作戦担当者はラッカ攻撃を早く始めるよう主張した。国防総省の当局者によれば、モスルへの攻撃を逃れた者も含め、イスラム国の工作員がラッカを西側諸国の標的に対する攻撃の準備拠点として利用することを懸念しているという。
在イラク米軍の最高司令官であるスティーブン・タウンゼンド中将は10月26日にバグダッドで行われた記者会見で、「この地域で行うべき活動については、切迫感を抱いている。彼らがいつどこで何をやろうとしているか、確信が持てないからだ」を発言。「だが、彼らがラッカを拠点として計画を練っていることは分かっている」と語った。
トランプ氏は、中東地域における代理戦争へと発展したシリア内戦に米国が直接介入することを避けたいと発言している。ロシアとイラン、そしてレバノンのヒズボラなど同調する武装勢力は、アサド大統領が支配を固め、反体制派や聖戦主義者グループに奪われた地域を回復することを支援している。
アサド政権側やその支援者が、ラッカやシリア東部の他地域を支配しているイスラム国と直接戦う例はほとんどなかった。トルコ、サウジアラビア、カタール、そして米国が支援しているのは、アサド政権およびその同盟者を相手に、そして時にはイスラム国を相手に戦っている反体制派グループである。
オバマ政権のもとでは、アサド政権と戦うシリア反体制派のうち米当局者が穏健派と見なすグループに対し、CIAが年間10億ドル相当の武器(小火器、弾薬、対戦車ミサイル)を流してきた。だがこれらの反体制派の一部は、アルカイダ系グループを含む聖戦主義者グループと現場レベルでの共闘をやむなくされている。
ラッカを支配するイスラム国に対する攻勢はオバマ政権末期に始まったが、実を結ぶためには、新たに誕生するトランプ政権からの支持が必要である。だが、ラッカ奪還作戦は、SDFにとって不可欠な存在である米国の同盟国(特にトルコ)の反発を招いている。SDFは、クルド人、スンニ派アラブ人、キリスト教徒、トルクメン人反体制グループによる連合であり、その軸となっているのは、シリア領内のクルド人戦闘員であるクルド人民防衛隊(クルド語の略称でYPG)である。
トルコ指導層は、YPGその他のシリア領内のクルド人グループについて、1980年代以来クルド人地域の自治を求めてトルコ政府に対する抵抗運動を続けているクルド労働者党(PKK)と同盟関係にあるとみている。トルコのエルドアン大統領は、スンニ派アラブ人住民の多い都市であるラッカを、イスラム国から奪還する際にYPGが主導権を握ることを米国政府が認めてはならないと主張している。
トランプ氏は選挙運動中、米国はイラク領内・シリア領内双方のクルド人に武器を与えて支援すべきだと主張。7月に同氏は「私はクルド人勢力の大ファンだ」と発言した。トランプ氏がクルド人に対する称賛の責任を取るならば、SDFおよびその最大の武装勢力であるYPGにとっては朗報となるだろう。
だがそのトランプ氏も、ひとたび大統領に就任すれば、独裁色を強めつつあるトルコのエルドアン大統領といった同盟相手からの反発を考慮せざるを得なくなる。トランプ氏が早々に指名した政権トップ幹部のなかには、安全保障担当補佐官として陸軍出身のマイケル・フリン元国防情報局長の名がある。フリン氏はかつてロビイストとして著名なトルコ財界人から報酬を得ていたことがあり、エルドアン政権に対する強い支持を表明し、米国政府は同政権の懸念にもっと配慮すべきだと主張している。
トルコは8月末、シリア領内に特殊部隊数百名を派遣し、空爆を開始した。トルコ政府と連携している反体制派がトルコ・シリア国境付近の地域で支配権を確立するための支援である。トルコの後押しを受けた反体制派は、イスラム国の聖戦主義者と戦うとともに、時折ではあるが、米国が支援するYPG系の民兵とも交戦している。
エルドアン大統領は10月、オバマ大統領との電話会談で「トルコは自力でラッカをイスラム国から奪還できる」と伝えたと述べた。別のトルコ当局者は、イラク軍がモスルのイスラム国に対する攻撃を完了するまでは、ラッカ奪還作戦を始めるべきではないと主張していた。モスル攻略はここ数週間、ペースが落ちている。
だが米国の当局者は、ラッカを孤立させること、ラッカ包囲のためにシリア反体制派勢力を使うことに執着している。その理由は主として、モスルから逃げたイスラム国の工作員が西側諸国に対する新たな攻撃を画策することへの懸念である。この懸念は本心からのものだ。イスラム国はこの1年間、米国主導の集中的な空爆を受け、イラク・シリア両国で対抗勢力への敗北を重ねて弱体化しているとはいえ、状況に適応して新たなテロを仕掛ける高い能力を示している。
今後数カ月のあいだに、イスラム国は米国主導の組織的なラッカ攻撃に耐える新たな方法を見つけ出すだろう。米国の政権交代にもつけこもうと試みるだろう。ひとたび大統領に就任すれば、トランプ氏はイスラム国との戦いとその封じ込めは、必然的に、シリアでの複雑な戦争への介入を意味することを悟るだろう。
*筆者はニューヨーク大学教授(ジャーナリズム論)。元「ニュースデイ」紙中東局長。サウジアラビア対イランの代理戦争をテーマとする著書を執筆中。
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